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7話目-⑮

我は自分でいうのもなんだが、結構楽観的な方だと自負している。だから異世界転生しようと何とかなるのではと流れに身を任せているのが正直なところだ。

でもこれはだめだ。容認できない。看過するつもりもないが。


この行動が正しいのか間違っているのかなんて、どうでもいい。ただ我は許せないと思った。



「《フランソワール・ルネデド!!!》」



普段は相手のプライバシーに配慮して使っていないが、我はその気にさえなれば、いつでも半径数キロの存在、魔力、行動を察知できる。だから、無数の部屋の中からフランソワールを見つけることなど息をするより容易いことであった。



「なんだ、騒々しい。セバスよ、夜更かしは美容の大敵だとあれほど……お前か、不躾にもほどがあるな。それすら分からぬとは所詮は低俗な魔物か」



ベッドから半身を起き上がらせたフランソワールの寝ぼけ眼が即座に鋭くなり、煩わしそうに呟いた。

冷静に努めろ。冷静にお願いしろ。



【あの子に施している魔法を解除しろ‥‥…して下さい。お願いします】



「……他人の心にズカズカ語りかけてくるとは、遠慮を知らんやつだ。笑えもしない」



「初めに答えておこう。返事はお断りします、だ。妾の代で降霊魔法を絶対に完成させるつもりなのでな。

分かったなら、さっさと部屋に戻れ。お前は白雪の使い魔だそうだから、故にその非礼には目を瞑ろう。だが妾に同じことを二度も言わせるなよ」



【それはあの子の命よりも優先すべき事なのか?】



【子供に死ねと言う気か、お前は】



それを聞いて、フランソワールは不快そうにくつくつと嗤った



「多少事情を聞き齧った程度で、善人面で浅ましい同情か……」



「オホホ。こいつはお笑い草だな。あいつの命は尊いが必ずしも優先されるべきものではない。これで満足か?この言葉が聞きたかったんだろう?」



【じゃあ低俗な魔物らしく、力付くのお願いに変更だ】



「降霊"ノッカー"」



眼が魔法を勝手に看破する。降霊魔法。本来なら肉を持たない魔素の集合体、精霊が何らかの物質に憑依して現界する魔法、か。

特殊な名を札に記し、媒介にして、特定の精霊を呼び出したようだ。



鉱夫のような服装をした小柄な精霊たちが10体ほど現れた。全員がツルハシかピッケルを所持している。

しかし強さはそれほどでもない。



「《この程度で!!》」



「ノッカー。障壁発動」



ノッカーたちが道具を合わせて同時に同じ魔法で魔力の壁みたいなものを展開するが、構わず拳を叩きつけ破壊する。衝撃波により部屋中の硝子が割れ、フランソワールの頬に小さな傷が付く。ポタリ……血が一滴だけ床を汚した。それを見ながら、フランソワールは少しの間、静止する



ノッカーたちは時間制限付きなのだろう。札が燃え落ちるのと同時に姿を消す



「くははっ 妾に血を流させたな ならばこれで……」



懐から赤く装飾された札を取り出す。強い魔力を感じた。先程よりも上位の精霊を呼び出す気のようだ



「なにをしてるのですか!貴方たちは!!」



「mttadw@??」



追いついた雪姫と騒ぎを聞きつけた灰土。それと状況に戸惑うシャーロット君が扉には立っていた



【なんで、母さまとアーカーシャが喧嘩してるの?】



「《……》」



「すみません。フランソワ

これは私の落ち度です。この件に対する咎は全て私が請け負いますので、彼にはご容赦ください」



部屋の惨状に姫が大きく頭を下げて謝罪を述べる。どんなに気に入らなくても、相手は大貴族だ。今回の対応はやはりまずかった。じゃあどうすれば良かった



「この国では貴族に対する非礼は死罪と定められている。如何な権力による介入も許さない魔導師であろうとな。よって白雪姫。そなたは斬首となるがそれでも良いのか?」



「……ええ。構いません」



「随分と簡単に答えるのだな。斬首如きでは死なぬ、とたかを括っておるのなら大きな間違いだぞ。この国は皇国や聖国にも繋がりがある。執行人には守護者や勇者の力を借りる。あやつら人外の力は知っておろう。絶対に死ぬ。絶対だ」



「ならば尚のこと私が請け負います。彼に万が一があったら後が困るもの」



死罪?死ぬ。誰が?姫が。我のせいで?考え無しに行動するから。どうする?どうすれば。



……。



何を悩んでいる。簡単じゃないか。記憶を消せばいい。そうだ、この"虚空"の権能なら出来るじゃないか。あ!良いことを思いついた。どうせならフランソワールの存在も消そう。シャーロットに酷いことするんだもの。それが良い。

(アーカーシャ)なら……私様(開闢を冠する獣)なら簡単にやれる。



コクウってなんだ?それに私様って?

……あれ?

 


「であるか。難儀な立場に縛られてるな。お互いに……ふははっ。殊更好きになれそうだ。」



「か あさま ちが でて る」



シャーロット君がハンカチを差し出した。

正直余計なことはするなと怒鳴りながら叩くかと思ったが、特にそんなことはなく、フランソワールは静かにそれを受け取り、傷口を抑えた。



「ご めん なさい いわれ たとおり にでき なくて」



「……馴れ馴れしくするな。情は捨てろと散々教えたろうに。お前は、本当に、愚図だな……でも、ありが……っ!

下がれ!チャーリー!」



キュイイン。視ている世界がボヤけた。それは兆候。事象の予測が発動していた。我が一瞬だけ早くに気付き、近くにいた姫と灰土を守る。だが、少し離れていたフランソワールとシャーロット君まで間に合わない。

この屋敷は幾つもの種類の結界によって護られており、姫曰くここまで厳重だと一つの要塞のようなものだと姫は言っていた。



そのルネデド邸を巨大な斬撃が襲い、結界ごと難なく縦に両断していた。

寸断された壁の隙間から、攻撃した敵の2人が影が見えた。1人は気の抜けた鼠のようなマスコットキャラの着ぐるみを着ていた。

もう1人は昼に街で見かけた牛柄のコートの女性であった。見たこともない辛うじて剣だと分かるシルエットの武器でこれを引き起こしたのだろう



「姉御派手過ぎ!これだと街の奴らが騒ぎを聞きつけちまうよ!」



「そうか?それは困ったな。じゃあ早くスフィアを壊そう。」

ちょっとした補足

フランソワは笑い方が2種類ある。

好感度が高い場合と上がる場合→くはは

好感度が低い場合と下がる場合→おほほ

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