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6話目-?

この世界で最大の問題は瘴気である。世界のどこかで溜まり続けた瘴気がある日突然、火山灰のように大量に降ってくるのだ。それを浴びた結果、土地の瘴没や生物の魔獣化が引き起こされる。当然ながら今日までの被害は甚大だ。



又魔獣は討伐という対抗手段があるのに対して、現状瘴没に対応する有効な手段は聖女の行える"浄化"のみであり、魔導師の研究はおろか、過去幾度となくやって来た別の世界の渡航者たちの力でもその解決の糸口すら掴むことはできなかった。

既に全大陸の合わせて3割は凡そ生命の住めない場所となっている。99代目聖女ルテアが役目を果たせなくなった今、日毎に生存区域は狭まってきており、少しずつ首に緩やかに縄が絡みつき絞まってきていることに気付いている人はどれだけいるのだろうか。


或いはそれを解決する力。或いはそれを支配する力。それらが存在するとすれば世界の命運を握るも同じ。手に入れたいと考える邪な者たちが現れるのは自然だ。どんな手段を用いても。どんな犠牲を払おうとも。絶対にその力を我が物にしようとする者たちが。



ー ティムール大陸最西端 ロートレーク城最深部 ー




喧騒と炎に包まれたロートレーク城の最深部に行き着いた2人の仮面の男が立ち止まった。



「あれれのレ?行き止まりだよ お兄ちゃん」



「誰がお兄ちゃんだ。虫唾が走る。ぶち殺すぞ

チッ、見落としてる所があったか」



割れた卯の面を付けた1人は小柄でまるで少年のような体躯であった。対照的に隣にいた奇妙な出立ちをしていた大男は寅の面からも隠しきれない苛立ちを壁にぶつけて踵を返す。少年も遅れて着いていく


グシャリ。グシャリ。挽き肉を靴底で踏み潰す不快な感触と共に音を奏でるのは此処を守っていた戦士たちの成れの果てだ。

それをまるで草花か何かみたいに男たちは躊躇もなく踏み潰している。本当に無人の野を征くが如く漫然と歩んでいる。そんな異常な状況を意に介すことすらせず当の本人たちは自然に会話をし始めた



「大体僕らは何を探しているのさ?

此処には玉の器もいないしさー」



「お前は大父の話を聞いていなかったのか?

玉のお守りには"人類最強'と"夜叉の眷属"が付いている。だから迂闊に手は出せんと」



男はため息を吐くが、少年は気にしていない様で割れた仮面からニヘラと笑みをこぼしている。或いはこの人を嘲笑する悪意のある笑みこそが少年の真骨頂なのかもしれない。道化を演じて人の警戒心をドロドロに溶かしてしまうのだから



「じゃあ僕たちはこの城で何を探しているのさ」



「術式の媒体だ」



「ほぇー?」



「魔導師の親玉である四賢人は渡航者や皇国の守護者と協力して最上級魔獣をエクリフィスという大陸に封じ込めた」



「だから?」



「ゲイル、お前のその頭は飾りか何かなのか?

四賢人は当時存在していた全ての渡航者たちの力を使い、エクリフィスそのものを1つの檻へ変貌させた。

そこは不滅である最上位魔獣を倒した際にその存在を取り込み隔絶した領域として封じ込めるもの。

そしてその領域を維持する為に、全大陸の龍脈を送り込む術式が存在している。というのが大父の見解だ」



「なるほどのナ!その術式の一つがここにあるからそれの破壊が今回の目的ってわけね」



「だからお前も必死に探せ。騒ぎは思いの外大きい。騎士団が来るのも時間の問題だ。言っておくが、間違っても騎士を見くびるなよ、下手をすれば死ぬぞ」



「死ぬって大袈裟だなー。僕らが三大流派以外の騎士に殺されるわけないのに。はいはい、ちゃんと僕の三千人のお友達に城全部探させてますよー」



「……あり?」



ゲイルと呼ばれていた少年が不意に外の違和感に気付く



「どうした?」



ゲイルは両目を抑えて、まるで何かと自分の視覚を繋ぎ、外の景色を見ているかのようだった



「……ロロカール!もういるっぽい。僕のお友達が消されてるよ。それも凄いペースだ。もう200人は消されてる」



「くそっ!掲げてる旗の色は何色だ」



「……白と鎖と薔薇」



それを聞いて大男ロロカールは不愉快そうに地団駄を踏んだ



「聖騎士直下の騎士団か。こうなれば与えて貰った特級魔法具"ユーリの花束"でこの城丸ごと吹っ飛ばす。準備できるまで時間を稼くぞ」



「時間稼ぎ?相手100人くらいしかいないよ

僕のお友達(デッドマン)はまだ二千人以上もいる。戦力比は20:1だ。返り討ちにしてやる」



そう言ったゲイルの目が怪しく光った




ーロートレーク城南門付近ー



「イブンス隊は目標地点Aを制圧。観測(アミュレット)魔導具を設置。地形把握。残存勢力把握。指示を」



『全員が配置に着いたら、イブンス隊はそのまま中央路を前進し地点Dでオマール隊と合流し内部制圧にかかる。ジニング隊は全員が配置に着き次第残存する兵たちの火力支援開始、プラン1-4で進める。』




誰もが勘違いをしている。三代流派の聖騎士(シュヴァリエ)竜騎士(ドラゴンリッター)天馬騎士(ペガサスリッデル)以外は本物の騎士ではないと。ただ武勲を立てて王侯貴族から認められただけの騎士(ナイト)であると。

否。騎士と呼ばれる者たちは総じて優秀である。最高峰の精鋭集団。秀でた戦闘判断能力に卓越した戦闘技術を加えて、集団戦闘を得意としている。それが騎士だ。

此処にいる白薔薇騎士団の騎士団長タジフスキンの直接指揮する100騎もそうであった



「オマール隊西地区のB地点までの敵勢力を排除。D地点へは20分ほどで合流可能。現在待機」 「ジニング隊配置に着きました。これより火力支援を開始します」



帰ってきた返事にタジフスキンは合図する



『出撃開始』



号令に真っ先に反応したジニング隊の狙撃が始まり、そこからの騎士たちの動きは迅速であった。

敵は組織的な動きをしておらずバラバラであった。相手になるはずもない。一人一人が流れるような動きで敵を排除して、目標と定めた場所まで一矢乱れない動きで駆けていく。順調であったが故に先に敵の異変に気付いたのは高台から鋭い眼光で目を光らせていたジニングであった



「こちらジニング。どうやら城内の敵性勢力が組織的な動きを見せ始めている。イブンス隊の方へ向かっている模様」



「イブンス了解。隊列を組み敵を迎撃する」



『オマール隊は背後から敵を衝き、イブンス隊の援護。この程度の相手ならこれで十分だ』



「了解。隊長目標地点については」



『俺1人で十分だ。以降の指揮権はジニングに引き継ぐ』



既に城の内部にいたタジフスキン・スパスタングスは寅の面を付けたロロカールと向き合っていた



「何者だお前たち」



「イライラさせんなよ、俺たちは何者でもない。ありたくねえんだ」



ロロカールは既に癇癪を起こしていた




ーーー×□○△ーーー


生き残った生存者の報告によると、ロートレーク城一帯に大規模な魔法攻撃が行われた。この攻撃により、────が失われ■■■の術式が一部消失。また生存者は白薔薇騎士団の団員数名のみであった。敵は────であり、魔力の残滓から特級魔法具"ユーリの花束"と断定。敵の目的は不明だが────の可能性がある────────。


現時点より四賢人から魔導教会に件の問題の最優先解決事項として発令がなされた

次回から7話となります

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