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6話目-⑮

「雪先輩ぃぃぃ!!!血塗れじゃないですかぁぁぁ!うわぁぁぁん 」



「心配かけたわね 花。あと貴方にも」




魔迷宮を出てきた我らをみて苺水晶は涙を滲ませながら抱きついてきた。さながら大好きな飼い主の胸元に飛び込む犬の様であると思ったのは内緒だ。

後ろではバツが悪そうにトーチカさんがその流れを見守っていた。魔迷宮に引き込まれた際に何の力にもなれなかった事を悔んでいる様相だった。無事だったのだから、あまり気に病まないで欲しいが……



「なぜそんな顔をするのですか?」



「玻璃 すまない。俺が付いていながら。いや、魔導師の白雪姫か。どちらにせよ新人のお前たちを魔迷宮にみすみす入れちまったのは俺のミスだ」



「間違えないで下さい。私は新人冒険者の玻璃ですよ」



「……そうだったな。これも含めて謝罪を」



「それに冒険者に危険は付き物、なのでしょう?本で読みましたよ」



「俺は」



「しつこい男は嫌われますよ。私たちは無事ですから、これで話はお終いです」



「無事じゃないです!先輩口から血がぁぁ!服もこんなに汚れて!汚れてぇぇぇ!うぇぇぇん!」



「ぐぅ、すまない……」



落ち着いた後に魔迷宮を無事に攻略したことを2人に伝えると凄く驚いていた。なんでも鳳仙が創った魔迷宮自体挑戦出来る者が限られていることもあるが、それを踏まえてもこの長い歴史で見ても攻略出来た者は両手の指で足りる程度らしいからだ



攻略した人たちはみんな鳳仙みたいな核を倒したのだろうか?あのチートを突破できるなんてどんな化け物なのだろう。背筋が凍る思いだ。我ってもしかして最強じゃないのでは……ブンブンと顔を振って雑念を消す。だったら今よりもっと強くならないといけない



兎には角にも、トーチカさん曰くどの魔迷宮だろうと攻略した時点で冒険者ならS級昇格が約束されるし、平民であっても爵位や上級騎士相当の地位へと取り立てられることも珍しくない偉大な功績らしい。

まあ、姫が冒険者としての活動を公に知られると困ると譲らなかったので、魔迷宮攻略自体が秘密ということになったし異論は誰にもなかった。

魔迷宮へと続く大きく開いた地面の口は我が無理矢理力付くで閉じたので発見はされないだろう。

アヤメが攻略した魔迷宮の扉そのものを消すことも可能と提案したが、そうなると扉から漏れ出た魔力を吸って成長していた周囲の魔草に影響が出る可能性が高く、そうなるとキプロウの住人に迷惑がかかる為にこれも姫が却下していた



ん……?アヤメが誰だって?おいおいそんなの黒い妖精ちゃんの名前に決まってるじゃないか。皆であれやこれやと名前を提案してたので、形だけでもと我も菖蒲の花言葉は縁起が良いなーとぼやいたら、それを聞いた魔導具の玉ちゃんが我の名前を借りてこうすべきだとゴリ押しして皆を納得させた結果である。

淡雪ちゃんといいアヤメといい、名付けってこんな適当で良いのだろうか……そうして我らは紆余曲折ありながらも依頼を達成し冒険者ギルド 怪物たちの檻への帰路に数日かけて漸くついたのであった、





「おかえりなさい。玻璃さん 苺水晶さん初の依頼はどうでしたか……って、えええぇぇ!?玻璃さんの服が血で汚れてる!強い魔物とか魔獣に遭遇しちゃったんですか!!?トーチカさんは何してたんですか!!」



「……すまないっ!」



慌てふためきながら出迎えてくれたのは、冒険者ギルド受付嬢知的でクールビューティーなエレインさんであった。凄いギルド内を1人でせっせと飾り付けをしているのを見ると、我らのためにやってたのだろうか?

後ごめん。そのくだりは一通り魔迷宮抜けた後の花ちゃんたちとやったんだ



「おいっ! どうしたエレインそんな大きな声出して!って、ってえええっ!血塗れじゃねえか!?強い魔物とか魔獣とかに遭遇しちまったのか!?何やってんだ!トーチカァァァ!」



「本当に、俺ってやつは……」



もうその辺にしてやって!トーチカさんは悪くないよ!?

後、フィッツさんは風呂に入ってたのか、急いで奥から出てきたのだろう。服を殆ど着てなかった。あ エレインさんがしばいてる。そこはやめてあげて。男は弱点丸出しなの。か弱い生き物なの。だからあまり虐めないであげて





「ではこれより新人2人の依頼成功を祝して慰労会を始めようと思います!音頭は僭越ながら私エレインめがそこで死んでるギルドマスターフィッツに代わって取らせて頂きたいと思います。カンパーイ!」



「「「カンパーイ!」」」



催された宴席に集まっていたのは、70〜80名程度。ギルドの建物二階まで人がぎっしり密集している。怪物たちの檻って20数名しかいないのに、きっと近隣住民たちも集まったのだろう。

主役は我ら?いやどう見てもこの人たちエール片手に酒盛りしたいだけなのでは?と突っ込まずにはいられなかった



「自分エールって飲んだこと無いんですよね。普段はセレウコス地方の蜂蜜酒ばっかり飲んでますから」



「そういえば私もエールは初めてね。果実酒はよく口にするのだけれど」



姫と花ちゃんが手に握ったグラスにはエールが注がれていた。それを口に運ぼうとしたので我は急いでグラスを奪い取った



「《ってなにやってんだぁぁぁ!20歳未満が酒を飲むんじゃねえよ!ぎゃぉぉぉん!!》」



「アカシャ様そんなにお酒飲みたかったの?

……あ!さっきちょっと口付けたから、かかか間接キスとかになっちゃうよ!?自分は全然気にしないんだけどね!?」



偉大なる龍王様(アーカーシャ)。今すぐ私にソレを返しなさい」



「《なんと言われようとお酒は20歳になってからだ。我の前では飲まさんぞ》」



我も姫も本気だった。思えばここまで主義主張が表立ってぶつかるのは初めてな気がする。でも譲らんぞ!我の目が黒いうちは未成年飲酒は許さない。成年年齢の引き下げ?そんな話は今してません!!



「ごごごご主人様たち。けけ喧嘩はいけないです!よよよ良くないです!やめてください」



割って入ったのは、黒い妖精アヤメだ。だがここは引くわけにはいかない



「うぅぅ〜」



引くわけには……



「アヤメ。さっきも言ったけど、私のことは白雪姫で良いのよ。ご主人様なんて堅苦しいもの」



「ゆ、雪姫、様?」



「……うん。さっきより良いわね。アヤメに免じて今回はこの町の名物メイロアの乳と血を混ぜ合わせたミルクで我慢するわ」



あっさりと姫も引いたので、それに倣って花ちゃんも別の飲み物を頼んでいた



「うぅぅ、俺は。俺はなんてダメなやつなんだ。新人に怪我させちまうなんてよぉぉぉ!これじゃあフランさんたちに会わせる顔がねえよぉぉ!うぉぉぉん!」



「おい 誰だよ!トーチカさんに酒飲ませたのは!この人泣き上戸なんだぞ!」



「分かる。トーチカぁ!俺も頑張ってんだよ。必死なんだよ。フランみたいにギルドマスター上手くやれてないのは分かってんだよぉぉ!うぉぉぉん!」



「親っさーーん!」「トーチカぁぁぁ!」



感極まって泣きじゃくるオッサン2人が抱き付いてる絵面は何というか凄い見てられなかった。そうだ。見なかったことにしよう。そうしよう



《アーカーシャ様。魔迷宮攻略おめでとうございます》



「《おう》」



《所で我が主に贈り物を贈って頂く話ですが、あれはどうなりましたか?》



「《抜かりはないのだぜ》」



実は魔迷宮の宝物庫の財宝を創作の書に結構な量を投入したので、書の中身は大抵なんでも引き出せるようになっていた。透明の薬も無事手に入れたしね。けっけっけ。これでいつでも全裸で走り回れるぜ



「《じゃんじゃじゃーん オルロフのチョーカーっやつにしました》」



《え 首輪》



「《失礼な。付けたら魔法耐性がほんの少し上がる効果がある実用的なネックレスよ!これは!》」



《私の方から渡しますから中に入れて下さい》



そう言って、玉ちゃんにチョーカーを預ける運びとなり、そこからまた一波乱あるのは、この時の我に知る由もなかったのであった



因みにその日は結局皆夜通し飲み続けて、気付けば皆が酔い潰れてしまっていた。1人起きてる我が外で静かに空を見上げて思いを馳せていると、まるで暖でも取るかのように誰かに抱きしめられた。これは覚えのある強さだ



「寒くないですか?」



「《いんや大丈夫》」



「……私は少し寒いです」 



互いに言葉はなかった。思えば、キケ司教に対するやり方を見て以降はちょっと壁を作ってしまって、それをどこか気不味い空気と感じてしまった。

我は意外かもしれないが結構話すタイプだ。なので無言になるのを避ける癖がある。よし、1,2,の3でこっちから話しかけよう



1,2の



「鳳仙カムイが言ってました。貴方には知る権利があると。確かにその通りでした」



粛々と姫はそう告げた。



「だからちょっとずつ教えます。知っていって下さい。私のこと。この世界のこと。そして教えてください。貴方の事も」



「《……よろしく》」



姫は平平淡々と言葉を告げる。人よりも表情の変化は乏しいだろう。でもそれは感情の起伏が無いわけではない。少しずつ姫という人格に触れて僅かな機微も感じ取れてきている気がする、なんて思った1日でした

6話目は次で終わる予定です。多分

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