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6話目-①

紆余曲折あって、『創作の書』という物を手に入れた。玉藻ちゃん曰く200年前に異世界から来た渡航者と呼ばれる存在が持っていた物らしい。渡航者というのはまず間違いなく、異世界から来た人間を指す言葉だ。そしてそういう奴らが持ってるってことは、とんでもない物に違いないのだ。なぜ分かるのかだって?



20XX年。日本はかつてないほどの異世界ブームに包まれた。現代は悲しいかな、ストレス社会と揶揄されている。子供の頃から激しい競走社会に身を置いた結果、人は心身共に軋轢と不和を生じさせ、ついでに海も枯れた

皮肉にも人々を豊かにするはずの科学と倫理が徹底した人間のコントロールと管理社会を生み出し、ついでに大地も裂けた



目には見えずとも自由が抑圧されているのを誰もが感じ取り、ついでに空には死兆星が輝いていたとかいなかったとか



そんな社会と対比する様に痛快で爽快感MAXノンストレスの異世界が颯爽登場したのだ。人気に火がつくのも山梨谷梨平伏するより他に梨なのだ



その人気に目を付けた文部科学省が異世界転生物を重点的に学習させる方法を導入したのはある種の必然である。古文、漢文、現代文、そして異界文

故に俺たち日本人は異世界に対して専門的な知識を有している者も多い。言うなれば異世界転生のエキスパートである。この状況になった時点で義務教育の勝利、とも言えるかもしれない。



龍に転生して早10日。お待たせしました!この書を使って新世界の神になる為の、俺のストレスフリーの異世界無双〜エブリバディチートデイ〜がはっじまるよー!



「アカシャ様なんかすごい吠えてますけど怒ってるんですか?」



「あれは笑っているのよ。所で早朝からどうして花が此処にいるのかしら」



「先輩と一緒に朝ごはん食べようと思って、ふへへ、作ってきました!」



「……少し多いわね。私、食が細いから朝はカーフィー一杯で済ましたいのだけれど」



「くぅーん……」



「食べない、とは言ってないわよ」



「雪先輩ーーー!」



毒魂アナムの攻撃を喰らってから、自分に何をやれるのか何となく分かる様になっていた。魔力を操って、手と同じ役割を与える。そうすると書に直接触らずとも考えるだけで、書を浮かせ、捲ることが出来た。超能力みたいですごい便利だ



早速書を開くと説明文が目に入る



『この書は自称超高校級の発明家 白痴様が作り上げた創作の書《上》となります。《上》では白痴様が作り上げたNo.001〜No999までの作品が情報として保管されています。情報の閲覧は無料ですが、作品を取得する場合には、存在する世界に準拠しての通貨が必要となります』




「《さてさて、どんな物を作ったのかな、白痴様よぉ》」




作品No.001『世界一重いヒノキの棒』

作品説明:天才白痴様の記念すべき最初の作品。ファンタジーの世界でお馴染みの最弱武器。だがそんな武器を最強足らしめる為に工夫を凝らした結果、重さがアフリカ像5頭分くらいになったんだ。一撃必殺をコンセプトにしてるので、大抵の敵は一回殴れば死ぬぞ!仮に生きてても虫の息だぞ!トドメを刺そう!

要G1S5



「《うん。いらないな。ところでGってなに?ゴキブリ?ゴキブリなの?じゃあSはなにを……通貨って言ってたから、Gはゴールド……Sはうーん。あ、シルバーか。金貨1枚と銀貨5枚ね》」



はてさて、お金の価値が分からないから、これが高いのか安いのかも分からんな。次々っと



作品No.002『そこそこ重いヒノキの棒』

作品説明:前作が重過ぎて、少し扱い辛いと多数のクレームが寄せられたので、より実践的に改良を加えました。アフリカ像4頭分並の重さなので、威力は落とさず手軽に扱える様になってます。1回殴れば虫の息、トドメを刺そう!

要G1S5




「《アフリカ像4頭分で少し扱い辛い……?ターゲティングにしてるの本当に人類かな?どこの戦闘民族?これ手軽に扱える生命体なら、もう素手で戦った方が強いんじゃないかな》」




作品No.003『ヒノキの棒〜ひとつまみのアフリカ像を携えて〜』

作品説明:ヒノキの棒とアフリカ像のお互いの強みを見事に融合させた傑作。今世紀最高の武器との評価も高い。ヒノキの棒にアフリカ像を1頭取り付けたことで攻撃範囲が増大しており、また生きたアフリカ像を使うことで攻撃に無数のバリエーションが生み出している

要G50S5



「《なんかボジョレーのキャッチコピーみたいなこと言い始めてるんだけど!?あの白痴さん?融合ってかっこいい言葉使ってるけどアフリカ像の頭にヒノキの棒突き刺してるだけだよね?》」  



武器っていうか生物兵器だった、心無しかアフリカ像が怒ってる様にさえ見えてくる。そりゃそうか、だって頭にヒノキの棒刺さってますもん!真っ先に使用者が殺されそう



No.004以降も似たような物ばかりであった。しかしNo20から漸く目が覚めたらしい。ヒノキの棒シリーズが終わっていた。

No.020は『アフリカ像Withヒノキ』だった。作品説明もアフリカ像をイメージしてヒノキの棒を加工して作った工芸品だった。そして次のページをめくった時に俺は超高校級の本気を目の当たりにすることになる



No.021『透明になれる薬 100粒入り』

作品説明:超高校級の天才白痴史上最高の作品。1粒につき1日だけ透明になれる。もうこれ以上の説明は要らない。男なら成すべき事を成せ。男……漢なら!

要G20



その瞬間、溢れ出す友との『存在しない記憶』



『ふと思ったんだが、裸で外を全力疾走したら気持ち良さそうじゃないか?』



『どうした 急に』



『おかしいと気付いたんだ。人間だけだぞ。服なんて着るのは』



『人には羞恥心があるからな』



『じゃあ、恥ずかしく感じる人間だけ服を着ればいいじゃん!そう思わない価値観を持つ人間を罰するのはおかしいだろ!!違うか ××!!』



『泣くほど力説するなよ 秀吉。まあ人の目があるからな、仕方ないだろ』



『ウッキー!じゃあ人に見られない方法を一緒に考えてくれ!親友』



『……見られない。見えない。透明人間、とか?』



「それだー!」



ーーー

ーー


あいつは外を全裸で走る為の手段を欲した

なら、手に、入れる。あいつの願いを叶える為に……!何をしてでも絶対に!



「《ほしーーーい!欲しい欲しい欲しい。透明人間になれる薬が欲しい!!!

別にやましい気持ちはないよ。でも折角だから使ってみたい》」



さて金貨20枚がどれほどの価値があるか俺は知らん。だけど一つだけ言えることがある。例えこれが金貨100枚だろうと安いって事だ




「《お金を稼がなきゃ》」



さて、ちょっと裏路地にでも立ち寄って、怪しい人の白い粉を運ぶ仕事でも手伝ってこようかな。俺は龍なんでよく知ないけど、きっと小麦粉かなにかだろう



《アーカーシャ様はお金を欲しておられるのですか?》



横から機械的な音声で"玉手箱"通称タマちゃんが話しかけてきた



「《お、お前はタマ!いつからそこに》」



《私は自力で歩行が出来ないので、最初から此処に置かれてましたよ。所で、アーカーシャ様はお金が必要なのですか?》



一定の速度で再度聞き返してきた



「《まあな。何か良いアテがあれば良いけどね》」



《それでしたら、冒険者ギルドに入ってみるのはいかがでしょうか》



「《冒険者ギルド?》」



聞くだけで凄いワクワクする響きだな



《玉も詳しくはないのですが、要するに職業斡旋所かと》



聞くだけで凄いワクワクしない響きだな



「《なんにせよアドバイスありがとな。流石次世代の魔導具?だな》」



《いえ、皆の役に立つことが、この玉の幸せですので》



《差し出がましいお願いを一つ述べさせて頂いてもよろしいでしょうか》



「《どうした?》」



《我が主 赤空 花は生まれてこの方、親しい殿方から贈り物を頂いたことがありません。あまりにも憐れです》



《ですから、その冒険者ギルドなるもので金銭を得て、幾分か余裕があったならば、我が主に贈り物をして欲しいのです》



俺も妹からしかもらった事ねえんだが?

それにしても、次世代型って言ってたがこの魔導具は持ち主に対して気を遣えるんだな、思ってたより凄い技術力だ



「《俺が必要なのは金貨20枚だからな。余ったらな》」



《その寛大な心に感謝を》

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