5話目-⑭why is it so hard to say
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裏の世界はドブのような臭いがする。当たり前だ。日常に死体が転がっており血がそこかしこにこびり付いてるのだから。そしてそんな陽の当たらない暗く濁った世界に生きるはドブネズミにも劣る外道畜生共の群れである。
そんなクソとゴミの日陰者たちしかいない世界において彼女は。先代空蝉桐壺は空蝉篝火にとっての光であった
『流石は空蝉次期当主と名高い桐壺様だ。本家から離反しようとした3つの分家、合わせて350名余を子供から飼い犬に至るまでたった1人で皆殺しにされたそうだ!』『なんと!あの数を!しかも今回の首謀者はかの初音殿と言うではないか』『初音といえば数ある分家の中でも3本の指に入る腕利きぞ!それを!誠に桐壺様は傑物よの。あの方の時代が来れば我ら空蝉は益々安泰であるな』
『だそうだ。良かったな。ほぼこれで決まりだろ。次期当主様。みんなお前についていくってよ』
『……』
『なんだよ 浮かない顔だな 桐壺。流石のあんたも身内殺しは堪えたってか?それに初音とは仲良かったもんな』
『あいつが言っていたの。自分たちも生き方を選べると』
『なんだそりゃ 馬鹿で愚かな考えだ。俺たちに生き方も死に方も選べるものか』
『でも私思うんだが、もしかして今の生き方を捨てて別の生き方もあるんじゃ』
『桐壺っ!!お前、仕事のし過ぎで疲れてるのか?間違ってもそんな事言っちゃダメだ!』
『……そうかも。だからほらこの猫耳つけてお姉ちゃんを癒して〜』
『ったく、まじかよ これでいいか』
『カガリン語尾ににゃんを忘れてるよ』
『わ、わかった にゃ にゃ 言えるかー!阿呆』
先代空蝉桐壺は空蝉篝火の一回り歳の離れた姉である。そして彼女という存在は空蝉の長い歴史の結実でもあった。
それこそ、二代目魔王であるオルガ・ブルグを殺してみせたかつての伝説空蝉 総角が引き合いに出されてしまうほどに
『桐壺様 魔導教会の者が会いたいとお見えになっております』
『魔導教会ってあの魔女たちと戦争してるところ?』
『あいつら俺たちまで戦争に巻き込む気か』
『こら カガリン!そんな俺なんて強い言葉使っちゃだめでしょ!』
空蝉 総角は"死帰"と呼ばれる生物や物質に対して死を付与する旧神魔法を持っていた。そして彼女もまた同じ才覚を持って生まれていた。或いはそれ以上かもしれない。
兎に角それだけでもう彼女の才能を疑う者はいないだろう。いや もしかしたら いたのかもしれない。しかしその疑心は直ぐに勘違いだったと気付かされる。それほどまでに彼女の力は圧倒的であった
『お待たせして申し訳…って酒臭っ! 飲んだくれの魔導師様が何のご用かな』
『んー?ゴヨウ?違うぞーわたしはぁ?わたしはなぁ
うへへ、白を冠する魔導師で 白薔薇っていうんだ〜こう見えて偉いんだぞー 筆頭の次くらいになー!ぷはーっ!
あーで、こっちは弟子のね〜』
『お師匠様!私の事はいいですから話を進めてください』
『何しに来たの 白薔薇様は』
『君、強いんだってなぁ!金なら出す!だから私と一緒に今から悪党懲らしめてこようぜ〜うぇーい!』
齢7つにしてガレオン船よりも巨大であり、どれだけ砲弾を叩き込んでもびくともしない。海に生息する魔獣の中でも当時トップクラスに危険なA級海洋魔獣(冒険者ギルド基準)ウガムを何の変哲もないナイフの刺突で死に至らせる人間がどこにいる
『で、今回の依頼は結局どんな殺しだったんだ?』
『殺しっていうか、なんか重税課してる貴族をしばいてきてお金巻き上げてきた はいこれお土産』
『なにこれ』
『あの飲んだくれが創ったやつで説明書あるから読むね
魔導具名は"どしたん背中さすろうか君"
なんでも酔った時にあなたの背中を優しくさすって吐き気を増幅させてすっきりさせる魔導具なんだってさ』
『なにそれ』
齢8つで並の人間が100人束になっても相手にならないほど屈強な肉体を持つ亜人種闘鬼族。
その闘鬼よりも更に強力な力を手に入れて進化した上位種のハイオーガの群れを素手で死に至らせる人間がどこにいる
『おー 桐壺〜
闇ギルドが経営してるボッタクリの飲み屋見つけたからタダ飲みしに行こうぜー!』
『白薔薇様は暇なのかな?』
『んだよ!お酒の付き合いも仕事だろうが!べらんめぇ。これだから今の若いのは じゃあ金出すわ』
『そんなもの無いです お師匠様 なぜならこの間の博打でお金ほぼ全部溶かしたからです』
『……なら闇ギルドからカツアゲしてそっから払うからいいだろ だから付き合えよー』
『無一文で私に依頼してくるやつ初めて見たわ』
齢10になる頃には強すぎるあまり国が簡単には手出し出来ないほどになっていた。孤高にして絶対なる裏世界のカリスマ
『桐壺!なにしてんだ?』
『あいつに魔導具創りかた教えてもらったから真似て作ってる。意外と面白いな これ カガリンもやr『やらない』
彼女のその力の研鑽の為に一体どれだけの死と殺戮と骸が積み重ねられてきたのかは、想像に難くない
『おい桐壺!お前最近金貰わないであの魔導師とつるんで暴れてるだろ!!どういうつもりだ』
『いや でも ほら 魔導具とか結構貴重な物貰ってるよ。この送り狼だって酔った時に家まで送ってくれる』
『ゴミじゃねえか!あの魔導師といっしょに世直しでもしてるつもりか!?
あんな子供まで拾ってきて次期当主としての資質を疑う奴が出始めてるんだ。このままじゃあんたの立場は』
『それならそれでいいじゃない』
『なんだそれ』
『カガリン?』
『その呼び方やめろ』
『いやでもカガリンは…』
『だからそれをやめろって言ってるだろうが!!』
冷酷非情にして殺しの達人集団 空蝉雑技集団の中に置いてさえ殺害数がずば抜けており、彼女は空蝉史上最も多くの命を奪った絶対なる殺し屋として記されている。
終いには相手を何手目で殺せるか分かってしまうとさえ云われており、『王手決殺』という2つ名と共に海洋大陸エルガルム一帯を震撼させたのはいまだ記憶に新しいだろう
『白薔薇。あんたも大変な時に済まない』
『気にすんなって 話は聞いてるよ 女の子助けて世話してるんだって?正義の味方も随分板についてきたねー』
『だな あんたのおかげだよ。ところで手を貸して欲しい。上位魔獣ネメイアを討滅するために』
人間離れした偉業がまことしやかに囁かれ、一時は唄にさえなった。その強さは留まるところを知らず、遂には最上位魔獣の一体 エキドナの子であるネメイアを当時の白を冠する魔導師と共に撃破を成功するほどに
上位魔獣は人外である。災害であるといっていい。
そんな存在の討滅をたかだか2人で成し遂げたのだ。代償として桐壺は類稀なる才能を手放した。とある少女のために。だがきっと彼女はその選択に後悔はなかった
ある者はバカな事をしたものだと嘲るだろう。しかし才能とは必ずしも望んだ者の手にあるわけではない。
彼女にとって、自身の才能よりも少女の未来の方がずっとかけがえのないものになっていた。それだけの話なのだ。
そして彼女にはもう一つ心残りがあった。弟である。他の生き方があるのに、それを知ろうとしない臆病な弟が。
彼女は決めていた。才能がなくても、いつからでも。決断と勇気さえあれば生きていけるということを弟に示すことを
彼女は今まで築いた全てを投げうって0から"更衣"と名乗り魔導師見習いとしての道を歩んだ。
ポツポツと雨戸を叩くかのような心地の良い声色で雪姫は懐かしそうに目を細めていた。思い出に浸って漏れ出る言葉に篝火は静かに耳を傾けている
「ご存知かもしれませんが、更衣には魔導師としての才能が全くありませんでした。魔導具の作成も簡易的な魔法術式の構築も殆ど出来ません。お陰で学院での総合成績は常にドベで同じ部屋という理由で年下の筈の私が色々と面倒を見ていました」
「……あの姉さんがドベ どんな顔してた……後悔してたのか…それとも悲観していたのか」
「笑ってましたよ。いつだって更位は創ったガラクタの魔導具を宝物のように自慢してくるし、簡易の魔法術式の構築なんて出来て当然なのに、一回成功した位で本当になんであんなにはしゃげるのか不思議なくらいで」
「分からない 姉さんがなんでそんな才能のない道を選んだのか……」
「才能は大事ですよね。私もそう思います
でもきっと才能があるとかないとか、そんなこと彼女にとっては些末な事だったんじゃないかしら」
「……そんなことは無い きっと後悔したはずだ。自分は愚かだったと……与えられた才を活かさなかったことは間違いだったと」
「そうだ 才能が無いのに……そんなバカな夢を見るから……姉さんは死ぬ羽目になったんだ」
「嫌いなのですか? お姉さんが」
篝火はその言葉から逃げるように雪姫から視線を逸らした
「嫌いだから 不幸になって 後悔して 惨めに 死んで欲しかった?」
「そんなわけないだろ!!!」
雪姫の再度の詰問を死にかけとは思えないほど篝火の叩きつける様な怒声が掻き消す
「嫌いなわけが、ないだろう 姉さんだぞ……!俺の姉さんなんだ!だから幸せになっていて欲しかった!」
苛立ちを隠さず吐き出した。それが答えだった。短い言葉であるが、雪姫にもそれで篝火の思いが充分に伝わっていた
「幾つかの挑戦の中には人生を変えてしまう程の成功と失敗があるわ。そして、周りから見たら 更衣は夢破れて魔導師の挑戦に失敗し続けながら醜く足掻く者に見えるかもしれない」
「けどそれでも更衣本人の口から後悔なんて言葉を聞いた覚えは遂ぞありませんでした」
「……聞いたことがないからなんだ 挑戦して人より多くの挫折を何度も味わって失敗してるんだぞ それは不幸じゃないっていうのか 間違いじゃないってお前は言うのかよ! 全部無駄だ 無意味な徒労じゃないか! 鳥には鳥の。魚には魚の。相応しい生きるべき場所がある。」
「そんなことないわ。失敗は苦しいものだし、恥ずかしいものよ。当然自信満々に誇るものでもない でもそれだけよ。間違いと不幸を意味するものじゃない。種を植えれば花はしっかりと根を張りどこでも咲ける。彼女はそれを知っていた。だから自分を信じて何度膝を折っても立ち上がり足掻いた。
それに言わせてもらうけど 魔導師が一つの挑戦で どれだけの試行錯誤 失敗と間違いを起こす生き物だと思っているの?
貴方の理屈だと魔導師は世界一の不幸者集団じゃない。だから私たちの名誉のためにも、彼女の行いが無駄や無意味なんて絶対に言わせない」
「そんなもの そんなものは 失敗した人が自分を慰めるための詭弁だ……自己満足の綺麗事だ」
篝火は力無く項垂れる
「自分の人生なのに自分以外の誰を満足させたいのよ。彼女はワガママだから自分以外も満足させたかったみたいだけど。それに綺麗事で良いじゃない あなたは汚い方が好きなの? だとしたら変わってるわね 変人は社会で生きていくのが大変なのよ ね。アーカーシャ?」
「uga!!?」
「……夢見ていいなら」
「じゃあ あったっていうのかよ……おれにも」
縋り付いて今にも消えいりそうな声だった
「人なんて殺さなくて良い生き方が
姉さんみたいに生きられる人生が おれなんかにもあったっていうのかよ」
「そう決断すれば、そうあったわ」
その問いに雪姫は迷わず即答していた。あっさりとそれが至極当然みたいに肯定した
「なんで言い切れる」
「だってそっちの方が素敵と思えるもの」
篝火は大きく息を飲み込み、後から後から溢れ出てくる涙を必死に拭いながら、小さく同意を示した
「そうだな 本当に 素敵だ」
雪姫が小さくほくそ笑み、釣られて篝火の口角も上がる。そこからは少しだけ流れる時間が緩やかであった
「話を戻して良いですか?
彼女との事を語れる人ってそうはいませんからね」
「ああ」
側から見ると共通の友人の事を語らう友のようにも見えた
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ーー
ーーー
「そういえば、彼女とは最初よく些細なことで喧嘩をしていました。例えば二段ベットの上か下かとかでね」
「姉さんと ケンカ いいな
おれとは してくれ なかったから」
「ふふ 喧嘩しないに越した事はないですよ」
ー
ーー
ーーー
「────ということがありましてね。結局彼女と共に四賢人の秘宝 賢者の石を手に入れた当時の第五守護者を倒した折に肝心な石の方を破壊してしまいまして、そこから色々あって私は特級の称号を剥奪されました。なのに更衣はお咎めなし。失うものがない人が無敵という言葉は正に彼女の為にある言葉だと思い知らされました」
「 楽しそう だなぁ 」
「今の話のどこに楽しい要素が?」
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ーー
ーーー
「そろそろ 時間……かな
姉さんに 謝りたかった なぁ」
「そういえば更衣が妹が欲しいってぼやいた翌日から弟が女装するようになったって言ってましたけど今も女装をしているのは────」
「────あ。」
突然何かに気付いたように明後日の方を振り向いた。その時篝火の目には一体何が写ったのだろうか。だがその表情は無くしてしまった大切な物をみつけたかのように。確かに幸せそうに緩んでいた。篝火は何かに手を引かれるように手を伸ばした
「なんだ ずっとそこにいたんだね 姉さん」
それが空蝉 篝火の最後の言葉であった
まるで蝋燭でも静かに吹き消すように、微かに灯っていた命の篝火がフッと消えた。
手が空振って堕ちそうになるが、雪姫がそれを受け止めた
「ちゃんと向こうで仲直りしてくださいね」
雪姫はそう言って動かなくなった彼の手をギュっと握り只々眺めていた。どれくらいの時間が経ったのか。雪姫が立ち上がるタイミングを見計らったかのようにボロボロの装いの玉藻が勢いよく雪姫の胸元へ飛び込んできた
「ぬぉぉぉ!終わったのじゃ!終わったのじゃ!ありがとのう……ありがとのう 雪姫殿!!アーカーシャ殿も!!!」
「これは。こんなことは許されない どさくさ紛れに雪先輩の胸に飛び込み、あまつさえ合法的に匂いまで嗅ぐなんて、ポッと出の畜生の分際で立場を弁えて欲しいというか。そもそもそういうのは後輩である自分の役目のはず それを差し置いて……これ殺されても文句は言えないよね? アカシャ様はどう思う」
「uga...」
《やっちゃえ ニッサン。全ての責任は俺が取ると言ってます》
「gaa!!?」
「言動が矛盾してるよ?どいて アカシャ様 そいつ殺せない」
「Aho!」
側でライトオフした赤空花とアーカーシャの戯れを無視して、抱きついてくる玉藻は感極まって泣いているので、雪姫は子供でもあやすよう要領で頭を撫でた
「無事終わって良かったですね」
その言葉にどこか弱々しさを感じた為に玉藻が不思議そうに首を傾げる
「そういう雪姫殿はなぜそんなに浮かない顔をしておるのじゃ?」
「……ちょっとだけ 疲れたのかもしれません」
「そうか。しかしこれにて丸っと解決なのじゃ。本当にありがとのう」
玉藻の宣言通り、こうして長いようで短かった空蝉雑技集団による武王項遠の襲撃は無事幕を閉じる事となったのであった
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今回のオチ。というか後日談
俺たちはあの後、数日滞在した。空蝉篝火の死亡により、今回の武王暗殺事件は無事に解決した。とはいっても、事件の首謀者である魔人ラドバウトは取り逃しているので、それも踏まえて軍国バルドラは正式に魔国リーブルと会談を設ける様だった。
玉藻ちゃんは事と次第によっては大きな戦争になるかもしれない、その時はまた力を貸して欲しいと恐ろしい事を口走っていたが、俺の返答は行けたら行くわ!である
というか一体何が始まるんです?
第三次人魔大戦だ。誰かメイトリックス大佐でも呼んできてもらえませんかね。いや、なんならエクスペンダブルズという部隊も招集して欲しい
そして俺を某武器商人を守るPMCの如く守ってほしい
「ヌハハハ。まっことすまぬのぉ!祝いの宴でも開きたい所なのじゃが、そうもいかぬようでのう」
元気に笑うのはこの国の王 項遠だ。腕を切り落とされていた筈だが、よく分からん内に腕がくっ付いていた。かがくのちからってすげー
「したいのは山々なんじゃが、流石に王都の復興を優先しなければならぬ。すまぬの
礼を失しておるのは承知で雪姫殿の見送りをわしら2人だけで済ますことをどうか許して欲しい」
「騒がしいのは苦手ですので、気にしないで下さい」
「そう言うと思っておったよ」
「あ そうじゃ。皆で話した結果、その献身に対して国として報いねばという話になっての 無論わしとの約束とは別なんじゃが、心ばかりの褒美を渡そうということになったのじゃ」
「魔導師は金銀財宝より得体の知れない物に価値を見いだすじゃろ?蔵を探していたら、面白い物を見つけての 故にこれにした 今から200年くらい前かのう、別の世界から来た渡航者の方から貰った物じゃが、誰も読めなくての。主らの手にあった方が良いじゃろう」
そう言って古ぼけた一冊の書を懐から取り出した。題名は『創作の書 上巻』であり、明らかに"日本語"で書かれていた。著者は不明だが興味を惹かれた俺が手に取る。
それに異世界から来た渡航者ってあれだよな。どう考えても俺たちの世界からこっちの世界に来た人たちだよな
考えてみたら、俺の場合は淡雪ちゃんの力でこの世界に連れて来て貰っただけで、他の人間が来れない道理はないんだよな。200年前ってことは、この人はもうとっくに亡くなってるだろうけど、探せば他にもいるのだろうか、俺のような人が
「偉大なる龍王様が今回最大の功労者ですし、彼が興味を示しているので有り難く頂きましょうか」
「《ごっつあんです!》」
思わぬ収穫であった。収穫祭であった。もはやハロウィンであった。なに?収穫祭とハロウィンは異なる行事?黙れ。俺は日本人だぞ
ぐぅぅ……魔人からハロウィン砲でも受けたのだろうか?突然脳内をハロウィンという言葉が覆い尽くしている。ハロは宇宙に関する言葉、ハロウィンってケルト人が起源みたいなこと言ってますけど、ケルトって言葉もそもそも未知を表す言葉。未知×宇宙=ハロウィン
つまりハロウィンを読み解くと、宇宙人祭りなのだ。なにそれ怖い。しんあなである。NASAとMIBの連絡先ってタウンページに載ってますか?
閑話休題
軍国バルドラを後にして、俺は飛んでいた。眉間の方と頭部にそれぞれ姫と花ちゃんが乗って、何かを懐かしむように語らっている
「ねえ、先輩。死んだあの人ってもしかして、更衣先輩の家族か何かですか?」
「どうしてそう思うの?」
「鼻につく臭いがしたもので」
流石ライカン。どうにも鼻がいいようだ
「そうですか。そういえば花は昔更衣のこと毛嫌いしてましたね」
「何を言いますか! 今も嫌いですよ……でも先輩の横に立つのに最も相応しい魔導師は更衣先輩だと今でも思ってますよ」
「ふ ふふ」
「何か自分変なこと言いました?」
「嫌いなのに更衣を魔導師と認めてるんだ」
「肩書きなんて無くても更衣先輩は確かに魔導師でしたよ。姫先輩だって同じ考えでしょ」
「ええ そうね。やっぱり」
「?」
「やっぱり無意味なんかじゃなかったのね」
天を仰ぎ見て、姫はそう呟いた
ちょっとした補足
白薔薇は白雪姫の先代の白でまた姫の師匠です。お酒好きとネーミングセンスが受け継がれてます。なお本編開始時点で死亡済みとなります
描写してませんが更衣が死んだのは魔導師になるための卒業試験(学院に在籍していたら年一で受けられるやつ。受かれば即卒業)前日です。因みに受ける事さえ出来ていたら更衣は魔導師になってた可能性が高い




