2話目-④ 言葉が通じなくても悪口はわかる
状況は最悪だ。なに言ってるかサッパリだがどうやら自力では出られないらしい‥‥‥媚び諂うしかねぇ!
「あれ?もう一度だけ聞くよ?自分の置かれた状況は理解できたよね。分かったら頷きなさい」
コクコクと俺が慌てて首肯すると白い少女は少しだけ安堵した様子だった
「聞き分けが良いわね。よかったわ。本当に
じゃあ今から出す条件を呑んでくれるなら、そこから出してあげる」
条件とは何だろう。俺も男なのでプライドがあるが相手が美少女なので靴を舐めるまでなら譲歩してやってもいいと思ってる
「偉大なる龍王様私と契約してくれませんか?」
どこぞの魔法少女勧誘のキャッチコピーを彷彿とさせる台詞だな。まあ、答えは決まってるんだけどね
「受けるなら、Yes。駄目ならNOでお願いね」
‥‥あれ?俺喋れないけど、どう受け答えすればいいの
「(受けるよ!YesYesYes。アーメンイエス)」
「なに言ってるんですか?相手に気持ちを伝える時はきちんと言葉に出して下さい」
白い少女は訝しげに顔を顰めているが
「(言葉が通じねえんだよ!せめて、身振りで分かるやつにしろよ、このアホ毛が!!)」
「まさか、今私の悪口言いました?偉大なる龍王様。少しだけ反省しなさい」
機嫌を損ねてしまったのだろう。彼女は俺から背を向けると外に繋がるであろう扉へヒールをコツコツと鳴らして足を進め始めるではないか
「(ウソーーー!!言ってない!言ってないです!貴女様の美貌を褒め称えていたのです。よっ!世界一可愛い!)」
俺は必死に白い少女を呼び止めたが一度も振り返らず、足も止めずに、外に繋がる唯一の扉から外に出て無常にも閉まった
本当に此処を出て行きやかがったのだよ。もしかしなくても、この窮屈な円陣に一生独り身で閉じ込められるのだろうか。転生して数分で此処まで追い詰められるなんて誰が想像できる
つい、祈る様に空を見上げる。本当に空が見えた
「(いや、空が見えるのはおかしくないか?)」
思案する。この建物は恐らく搭か何かなのだろう。建物は筒の様に空に長く伸び、なぜか天井が無い。お陰で白い雲と青い空がひょっこり顔を覗かせている
これ雨降ったら大惨事だろうな。湿気とか凄そうだ、カビの楽園ぇ‥‥‥今すぐ出せ!!無理無理無理!埃っぽいとかカビとかマジ無理なんで!なんなら出さなくてもいいから、天井作ってくれーーー!
「(待てよ。飛べば、出られたりしないかな)」
ピンチはチャンスと誰か言ってたな。
そして飛び方を教えられなくても、鳥は飛べる。本能的に理解しているのだろう。俺にも翼がある。飛んだことは無くても飛び方を知っていても不思議じゃないだろ?
難しい事を言ってるかもしれないがつまり、そういうことなのだ
無限の空へ!さぁ、行くぞー!
バサバサと翼を動かすと何の問題もなく飛べた。感覚的なものなので、口で言い表すのは難しいが。要は三輪車漕ぐのと同じ要領だと考えて構わない。
瞬く間に塔の頂上付近まで到達する
この陣がどこまで隔たっているかは見えないため分からないが、流石に成層圏辺りまで伸びているということはないだろう
効果が及んでない所まで飛んで逃げてやる。そうだ。俺は自由なのだ。そう考えたが無意味だった。外と塔の境界線に当たる部分で、俺は見えない壁にまたしても衝突したからだ
「(おんげえええ!!!)」
飛行と思考が停止する。身体が宙に停止するが直ぐにこの星の重力に脚を引かれて、俺の身体は地面に叩きつけられ地響きを伴う砲音が鳴り響く
赤いリンゴの様に見事に地面に落ちた俺を異世界のニュートンさんが見たら、きっとこの星にも万有引力がある事に気がつくだろうなんてぼんやりと思ってしまった。
ピンチはチャンス?否。ピンチはずっとピンチなのだ。
さて、まじでどうするか……
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