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4話目-㉓DEAD MAN WALKING

空蝉篝火は殺しが好きではない。それは生まれながらの気質であるといえる。だが空蝉として生まれた以上、この世界で生きるという決意(アキラメ)を抱いた。

空蝉篝火は殺しが得意である。それは生まれた環境によるものだ。だからといってこの仕事に誇りはない。誰かに自慢できるものとも思わないし、ましてや感謝されるだなんて……。

空蝉篝火は殺し屋(この生き方)が苦手である。余りにも人の道を外れているからだ。だというのにそれを恥ずかし気もなくひけらかす輩と自分が同種と考えるだけで堪らなく不快感を覚えてしまう。


 

「ふぅ〜〜〜。」



詰まるところ、空蝉篝火は東屋松風という男が嫌いであった。顔を合わせれば呪いを吐きあい、今よりずっと未熟だった頃には価値観の相違から何度も殺し合っていた。早く死んでしまえと心の底から何度願ったのかも分からない。

そんな東屋松風の魔力消失を最初に感じ取ったのは、他でもない空蝉篝火だった。



そこに喜怒哀楽はなかった。ただ一抹の寂しさを感じてしまい、言葉なく篝火は物憂げにキセルを吸って煙を吐いた。それだけである。



「大掃除が終わってからこっちは動くって段取りだったんだがな。まあ先に死に顔くらいは拝んでおくか」



そうして彼は血で薄汚れた屋敷の門を静かにくぐり抜けた。



ーーーアーカーシャsideーーー


ぱんぱかぱーん!例年数多の男の子が一度は成ってみたい生物ランキングで不動の1位に君臨し、その字面と画数と響きだけで人生を迷える仔羊に雄々しさと気品さを魅せつけてしまい、常に周りから羨望と嫉妬を一身に受けながらも、人々の心を掴んで離さない生き物とは誰でしょうか?

そう、(わたし)です!さあ、七つの玉を集めるのです。さすればギャルのパンティを与えましょう。



……ははっ!まあそれも今となっては過去の話である。悲しいかな。何でも今年から人類の滅亡までアカシックレコードには、男女問わず成りたい生物ランキングにはぶっちぎりで鬼と記されてるそうな。



鬼かぁ。



ちょっと待って!?鬼ってそんなに言うほどかっこいい?

言うてライバルからして桃のおしべとめしべを合わせて生まれた出自不明の神州無敵とお団子に釣られて鬼ヶ島まで着いていく3匹のケダモノよ?いやー俺にはそんなのが宿敵ってどうかなーって思っちゃうのよね。



まあ、確かに、確かにね?ほんの。ほんのちょっとだけ敵が魅力的なのは認めるよ?特別な呼吸使ってきたり、額に妙な痣を浮かべたりしちゃってさ〜?お供の犬と猿と雉にしたって団子を食ったせいか、どこぞの海軍大将になっちゃう位強くなったしね。でもだからってねー?

っていうか、寧ろそんな奴らと戦わされるのに鬼になりたいって馬鹿なの?死ぬの?



よく考えろ。そもそも鬼なんて、男も女も虎柄のパンツしか穿けない頭テンパのくるくるパー。なんなら語尾にはだっちゃって付けなきゃいけねーんだぞ。正気とは思えねえよ。なんなの?その安易なキャラ付けは逃げだろ。逃げるなよ、卑怯者。ずるいだろ。俺悔しいよ。

……そっちがその気なら受けて立ちますよ。

ほよよ、こっちだって挨拶はんちゃ!から始めるわ。そしたら人気は……どうやらこれはダメみたいですね。余計下がったわ。龍一気に圏外まで逝ったわ。なんなんすかこれ。もうネガティブキャンペーンに全てをかけるしかねぇわ。



どうせ鬼なんてあれだぞ。やり甲斐搾取を社訓にして、時間外労働、休日出勤、原論封殺、etc...を強要してきますよ!しかも給料はきび団子。鬼か!鬼だけど。厳しすぎる断固拒否。

俺は辛い。そんなの耐えられない。だから、龍になれ。



まあ龍になった結果が悪魔のような女に奴隷として使役される事になった奴がここにいるんすけどね!

……もしもし、ポリスメーン?ここに世界人権宣言につば吐いてる輩がいますよ。もうこれ半分宣戦布告だろ。あいつに人の心とかないんか?



「生きて、ます……?」



「《なんとかな》」



「こっちは一瞬走馬灯が見えましたよ」



「《なんてエキセントリックな感想だ》」



俺と空蝉桐壺は弱々しく言葉を紡いだあと、同時にテーブルに突っ伏していた。燃え尽きたぜ。なにもかも。真っ白に、な

初めこそ熾烈な戦いだったが、直ぐに夢乃さんに料理で遊んではいけないと叱られた俺たち2人は渋々料理に手をつけたのだ。



感想としては、あまり他人の料理をこき下ろしたくは無いけれど、この料理で食戟を申し込んだらみんな倒せるんじゃないかな?脱衣どころか、肉体を脱ぎ捨てるレベルだよ。



「……アーカーシャ。最初の時にいきなり攻撃してごめん」



「《カバめ。あんなん俺からしたらあれよ。元気いっぱいなボディタッチとそう変わらんよ》」



桐壺が謝罪を込めてなのか、右手を指し出してきて、俺は自然とそれを握り返した。

死線を共にくぐり抜けて奇妙な連帯感から生まれた関係から友となった俺たちはもはや無敵で最強の2人なのだ、もう何も怖くない。



「あらあら、良かったらデザートも用意しているのだけど、如何かしら?」



「《 》」



ここがラストオブアスだ。もうだめだぁ‥‥おしまいだぁ!



「おいしそうですね……」



これ以上の摂取は人間のポイントオブノーリターンを大きく過ぎる。出されたデザートらしきものを見ろ。さっきよりも禍々しい色合いだ!そしてまたしても土鍋に入れられている!死ぬ!今度こそ死ぬから!



「《待て!》」



俺は空蝉桐壺の手を掴んで止めた。

夢乃さんもその反応から察したのか恥ずかしそうに笑って謝りながらデザートを下げようとした。心苦しいのではあるが、おふざけ抜きでこれ以上は命に関わる。



「何言ってんですか。頂きますよ。ありがとうございます」



そう言って空蝉桐壺は俺の手を優しく振り払い、スプーンを手にゼリーらしきものを口に運ぶ



「うぐ‥‥!」



空蝉桐壺は一口で苦しそうに呻いたが、無理に笑顔を作る



「う、美味いのです‥」



その言葉を聞いて分かりやすく夢乃さんは喜んでいた。



「《嘘が下手だな。Noと言えない日本人か、お前は》」



「日本人?私は正義の味方ですよ。アーカーシャ。だから、だからね?善意には誠意で応えてあげてぇんです」



少しだけ気恥ずかしそうにしながらも、桐壺はまたデザートを口に運び始める

‥‥‥忘れちゃいけないのがこいつは殺し屋だ。俺の敵なんだが、こういうスタンスは案外嫌いじゃないかもしれん。


俺は空蝉桐壺をドンと押しのける



「い、いてぇのです」



「《のけっ!このバカちんが!》」



ぐつぐつ煮え沸るデザートを目にして僅かに尻込んでしまったが、気合を入れる為に両頬を叩く。

覚悟を決めた俺は土鍋を手に、ラッパ飲みするように丸ごと全てを口に流し込んだ



「《うごごご‥》」



命を、燃やせぇぇぇぇ!!!

キャラクター紹介

【清・メイデール・モルド・正】

獣人/モルド族



【ステータス】

パワー  C

魔力   C

スピード B+

技術   C


【剣術 虎剣】

七大流派の一つ。特殊な呼吸法により瞬間的に身体能力を引き上げる技術に長けている。剣術そのものよりも足運びや体捌きの方に重きを置く傾向にあり、特に初速の踏み込みと剣速の鋭さに関しては流派随一。


【説明欄】

軍事国家バルドラの人口の1%の少数民族モルド族出身の獣人。メイデールは家名にあたる。王族特務親衛隊第四官。王より与えられた国宝白牙・黒爪の二刀一対を扱い、バルドラ上級兵(師範・達人)の中では師範よりの達人の腕前。

双虎の力を借りた場合には全ての能力値が1ランク以上アップする。バクウによって昏睡状態の家族(弟)がいる。

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