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4話目-⑭自分とは真逆の世界で生きてる人

日が昇りそして落ちていく。日本でも異世界でも何らそれは変わらない。でも夕暮れ時はどうにも理由なく物寂しく感じるのは何故だろう?



「《とはいったものの‥‥‥どうしたものか》」



待ち続けるのも神経をすり減らすので中々シンドイな。マッポの張り込みもこんな感じなのだろうか。カレーパンなきゃやってらんないわ。こんなのが日常的に行われるヤバい組織があるってマジですか?労働基準法も守れない組織に市民の平和が守れるとでも?そんなんだから国家権力笠に着たヤクザなんて言われるんですよ。それに毒を持って毒を制し続けたら、いつか蠱毒の壺に行き着くと思うぞ。

にしてもかれこれ2時間以上が経過しただろうか。既に日は暮れて逢魔が時に差し掛かっている。

彼は誰時、逢いたい人は、不在なり、うつむいて、魔が時の、橋渡る‥‥ってか。



「《しりとりでもしておこう‥‥‥しりとり、り、り、リフレクソロジー!じ、じ、ジントニック!く、く、クルトン……あ、終わった》」



一人遊びは得意なんだ。ほら、俺って常にソロだから……もう隣人部か奉仕部にでも入部して脱ぼっちの自己変革に努めるとしようかな……はは、鬱だ、氏のう。



気を取り直して上から見下ろす。上空からだと屋敷の全貌が直ぐに見渡せた。屋敷のパーティに参加している偉い人たちの人数は100人程度だろうか。みんな凄い金持ってそうで、それに比例してなのかファッションセンスも凄い。プロデューサーさん!これは実質異世界のパリコレですよっ!パリコレ!!



コレといえば、因みに俺もご存じ大人気ブラウザゲームの『家具これくしょん-家具これ-』をやっていましたよ、はい。因みに俺はTVの擬人化テレビ子ちゃんが1番好きである。『ご主人様にずっと観てもらえるよう頑張ります!』という台詞からも分かる通り、この一言で彼女がいかに健気で凄い頑張り屋さんであるかは聡明な諸兄らにも伝わった────っていかんいかん。



人によっては、『闘犬ランデブー』とか『牛息子 マッスルボディー』とかもあるよね。そっちはあんまり嗜んでないけど、いやー三千円払えば無料で十連ガチャ回せるとかほんと凄いシステムよね。



閑話休題



元々この屋敷を守っていた警護は50人程度だったが、来訪者が来るたびにボディーガードが随伴して来るものだから、現在200人強にまで膨れ上がっている。入り口には常に10人前後が入れ替わっており、屋敷を取り囲むように30人は固めており、残りは屋敷本館かそのすぐ隣にある別館で待機している様子だ。



こういうのってアクション映画とかだとやられ役なんだけど、実際の彼らは対人護衛のプロフェッショナルなわけで、さてどんな手を使って仕掛けて来るのだろうか。怖いもの見たさではあるが、どうやるのか興味が湧くな。



ーーー清正sideーーー



貴族の社交会は大々的に月に何度か開かれていて、意外にも王はこういった場で積極的に貴族たちと関わりを持っている。貴族は偶々生まれが良かっただけで特権階級を笠に着て威張り散らす鼻持ちならない連中が多いがその財力だけは侮れないからだ。



この国が軍国バルドラと呼ばれる由縁。それは軍事に幾つもの小国が傾くレベルで相当の財を充てているからに他ならない。それでもこの国が全く揺るがないのは、こういった貴族たちの存在が大きい。口が裂けても言うつもりは無いが、彼らの存在無くして今のこの国は成り立たないだろう。



だが我らの王のように平民から武功で名を馳せ、最終的には亡き女王陛下に見初められたとはいえ、この国の王として君臨した存在に貴族たちが反感を覚えないわけがない。



それでも貴族たちはまるで愛国者の如き惜しみない援助を国にしてくれるのは何故か?忠誠心などではない。もちろん相応の見返りがあるからだ。例えば大金を融資することで、巫女に未来を見てもらえる。何よりも自身の保身を考える貴族たちにとって、この上なく価値のある情報だ。



無論それだけではなく、市民権の無い奴隷使役の黙認、兵役義務の免除等幾つかの特権が他にも付いているが、端的に言い表すならば打算的な関係であると言って相違ないだろう。



言って終えばその程度の関係。王の喉元に刺客の刃がいつ届くかも分からない状況でまで貴族との交流を優先する。それは余りにも不可解だ。幾ら四大貴族の一角『楽魏』の誘いで在ろうとも。だが不思議と不安はない。王は俺などには及びもつかない考えを張り巡らせているのは間違いないからだ。



会場内を見渡していると、あの『白夜の魔女』が壁に寄りかかりながら何処を見るでもなく、もう何度目になるかも分からないグラスに注がれたワインをあおる様に飲み干した所が目に付いた。



あちらもあちらで王の意図が読めずに苛立つ気持ちは分からないこともないが、だからといって王の護衛という名目で来ているのだから、いざとなった時に酒の飲み過ぎで戦えないでは此方としても困るのだがな。止めるか



「おい!お前何やってんだ!!」



やってしまった。怒鳴るつもりはなかったが、つい声を荒げて話しかけてしまった。



「何を‥‥‥。見て分かる通りお酒を飲んでいるのですが、他に何かやっていそうに見えましたか?」



対して顔色の変わらない白夜の魔女は抑揚のない声で平坦に言葉を返してくると、此方に唯の一度も視線も寄越すことなく、ワイントレイを持って歩き回る使用人を手招きで呼んでグラスを新たに替えてもらう。



「そういう事を言ってんじゃねえよ。お前は……」



「ゴホン。ああ、君、ちょっといいかね。」



言葉半分で横から誰かが割って入る。見ると、煌びやかな服装で上下を彩った、服のセンスが修正不可能な典型的な貴族男性が立っていた。自分に貴族が何か用だろうかと訝しんだが、その疑問は直ぐに払拭された。



「いやはや、酒が無くなったので、新たな飲み物をだね‥‥‥やや!そんな所に見目麗しい女性がいるではないか!」



白々しい。と毒づきたくなった。こいつ、俺をダシにして女に近づいてきたな



「わたくし、南領オスクレイク地区を治める 名門貴族 景藍 の一員で名を景・パット・モーガン・趙伯爵というものであるのだが、良ければ美しい貴女の名前をお聞かせ貰えないだろうか」



自分の家柄を讃えるように伯爵を強調して景趙と名乗った男は魔女に向き直り優雅に一礼する。

魔女は私的な感情を抜きにするならば、誰もが目を奪われてしまう程に容姿が人並み外れて優れている。魔性と言い換えてもいいだろう。だが冬の花のように白く刺すような冷温が彼女からは感じられて、それが人を寄せ付けないのだろう



景趙という男もそれはヒシヒシと感じているだろうに流石は貴族。自信に満ちた様子を見るに自分に失敗はないと思っているのだろう。



「不躾な態度は重々承知ですが、お教えしたくありません。」



それは悪手だ。それで納得する程、貴族の連中は物分かりが良くない。案の定顔を真っ赤にして景趙という男性貴族は唾を吐き散らして憤慨した。



「わたくしが名を聞いているのに、ぶ、無礼にも程がある!!」



「わたくしを誰だと心得る!名門 景藍にその名を連ねる景趙伯爵だぞ!それをどこの馬の骨とも知れぬ女中風情が、名乗りもしないだと!?バカにするのも大概にしろ!!」



それは豹変と言って良いのかもしれない。いきなり男性にまくし立てられれば、女性なら恐怖が生まれ萎縮してしまうだろう。まあ、普通ならだが



「申し出たから断った。それなのに大層な肩書きを傲慢に振り翳し他者を威圧し貶める貴方の方が、よっぽど不作法だと思いますが、貴族云々の前に、人として恥ずかしくないのですか?」



火に油を注ぐとは正にこの事だろう。今この場で貴族との面倒事は避けなければならない。そう考えると柄にもなく仲裁に入ってしまっていた。



「2人共落ち着こう。冷静に話せば分かる」



だが、効果は余り見受けられなかった



「お、落ち着けるわけが、ないだろう!こ、この女が!」



白魔女を指差しながら景趙伯爵は喚き散らす。既にこの場にいる全員の視線を集めてしまっている。我らの王と巫女も何かあったのは察したようで此方に近づいてくる。

だが、誰よりも早く間に割って入ってきたのはこの集まりの発起人である魏良伯爵だった。



「まあまあ、お二人とも。事情は分かりませんが、こういった楽しい場をつまらない諍いで台無しにするのは止めようではありませぬか。ほら、啀み合ってる暇があるなら美味しい物を食べましょうよ」



「しかし、魏良伯爵!これは!」



「景 趙 伯 爵 二度も同じことを言わせないで下さいよ?

彼女は私の客だ。いいか、彼女に二度と近付くな。次はない」



有無を言わさない迫力を前に、流石に景趙伯爵も溜飲を下げるしか無かったらしく、素直に「はい」と小さく答えるだけだった



魏良伯爵はかつて勇猛果敢に多くの戦場を我が王と共に駆け回った武闘派の貴族だと聞いたことがある。俄には信じられなかったが、なるほど、この迫力、あながち嘘では無いらしい



「貴女に不愉快な思いをさせてしまい申し訳ない」



「いえ助かりました。ありがとうございます。ところで一つ尋ねたいのですが、私と貴方どこかでお会いした事ありますか?見覚えがある気がするのですが」



「……もしや口説かれてるのですかな?生憎既婚の身でしてな。それに貴女のように美しい人と出逢ったのなら忘れるはずがありませんよ。絶対に」



「そうですか」



白魔女が軽く会釈をすると満足そうな笑みを浮かべて膨張したお腹を揺らしながら、魏良伯爵は景趙伯爵を無理矢理連れてこの場から離れた。

だが白魔女の方も何を思ったのか直ぐに踵を返して、この場から立ち去ろうとした。



「っておい!?どこ行く気だ!」



「お酒を飲んだ女性が席を外すのです。察してあげるのが男性側のマナーですよ。それに私は此処に居ない方が良いと思います」



そう言われて漸く察する。それに加えて幾つかやましい視線が此方に注がれているのが分かる。特に男性たちの視線は好機を伺っているように思える。言い分は最もだろう



「チッ……早く行ってこい」 



此方がそう言うと白魔女は、この場から足早に立ち去った




ここから先は視点が何回か切り替わる予定です。分かり辛くなったりしたらすみません。

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