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9話目-㊶

プロポーズ。結婚という男女が次の関係性を進めるにあたり行う儀式の前振りである。ところで恋とか愛とか何が違うの。教えてアーカーシャ!



良い疑問!ってわけで横型授業スタート。

恋と愛って一見同じ意味合いに思えるけど、この2つを結合させると愛は読み方が変わらないのに対して恋は読みがコイからレンに変化してるんだ。つまりくっ付いて変わるものが恋であり変わらないものが愛なのよな。

付け加えるならレンの頭文字はRだよね。どうしてLじゃないのかってことなんだけど、Rには隠された意味があるということをご存知だろうか。

RといえばR15やらR18やらR-99にくっ付けて用いたりするよね。用途はその年齢に達していない者の目に触れないようにするというもので、このことからRとは禁止したり隠したりするのだ。言いたいことが伝わってきたかな?そもそもLはlibido。つまり性欲のLを連想されLen愛だと愛の上に性欲がある(付随するenはendの未完成形であり性欲がある限りは関係性が終わらないとも捉えられかねない)それは見栄えが良く無い。

ってわけで性欲を表向き隠して置くという意味でRen愛なのだ。今日も我の授業を聞いてくれてアカシャ感謝のありがとんとん!



(私様は嫌いじゃないけど×× はそのトンチキな言葉を羅列する発作は控えた方がいいのよ。あと愛も愛娘とかで読み方普通に変わるわよ)



【君のように勘のいい神は嫌いだよ。

つぅーか!我は友達のためにちょっと扶桑にカチコミかけて暴れただけなのにどうしてこうなった】



「偉大なる龍王様」



驚きで固まっている我をゆっくりと名前を呼びかける声にびくりと肩が跳ね上がる。背後に立つ姫の感情の消えた美しい瞳が我を写している。お手本のような笑顔と共にいつもの彼女の優しく澄んだ白雪のように撫でる言葉がこんなにも背中を寒くして突き刺さるのはどうしてだろう。ああ、この感覚は覚えがある。綺麗さっぱり忘れていたが緑鬼を殺した帰り道の夜間飛行で今の姫を見たことがある。どうして忘れていたのだろう。この感覚を。



「説明して下さい」



姫の口元がゆっくりと動き、本能的に後ずさる



「やめよ 私の旦那様が酷く怯えている」



()()()



怯えた我と姫の間に大和が割ってはいる。そもそもこいつがトチ狂ったのが原因であるが、それはさておき我は大和の背中に隠れて姫を盗み見る



「発言には気をつけたほうがいい 貴女のじゃない」



「ならばお前のか?」



「……」



ピシリっ。氷河期の来訪を予感させる冷気の感触は裸なので辛い。帰ってお布団でぬくぬくしたい。

2人が口論を続けている横で復活を果たした伽羅がダメージを引きずった様子なくやってくる。流石に始祖の眷属、あれだけやってこの程度か。今後始祖クラスを相手にする場合も想定して何か考えておく必要があるな



「これはいったいどういう状況だ」



【さてな。

カラ 我はもう帰る。あと我も頭に血が上っていたとはいえやりすぎた。すまん】



「けしかけた奴らを殴っていかないのか」



【……もうお前に任せるよ。ただ桐壺の弟さんの身柄はこちらで預かるぞ】



「承知した。オレの名に懸けて異論は挟ませない。それでアーカーシャ あの諍いをどう止める?」



【聞くなよ、まじで】



姫と大和。どちらも曲がりなりにも龍を従える者である。我と伽羅は互いに苦笑するしかなく手をこまねいて静観するしかなかった



「何もおかしくはない!だいたい扶桑という國が成立する以前より、この大陸では凶兆には列を成して大いなる存在に村娘を捧げ物として運び祈り拝んだ時代があったのだ!」



「だから?」



「そして古来より龍とは大いなる存在の使いとされており、その王ともなれば気立のいい王族の生娘を捧げるのはなんらおかしくないだろう」



「それがどうして結婚と結びつくのですか」



「一々細かいことを気にするな!生贄も結婚も似たようなものだ。大体お前はアーカーシャのなんなのだ」



「私は偉大なる龍王様の……」



歯切れ悪く尻すぼみに言葉が萎んでいく。そんなに答え辛いのか?普通に主従契約した関係と言えばいいのに。



「私は!この國の大王だ。皆を導く責務がある。だが見よこの有様を。何も出来ず。ただ見てただけだ。なんとも無力なものよ」



我が暴れた余波で街の一部は壊滅している。その有り様を悲しそうに大和は目を細めて見やる。その哀愁ある背中にチクリと罪悪感が痛んだ



「私は私を慕う者たちを導かねばならない。時に道を誤る者がいたときはなおさら道を示さねばならない」



「そんな輩は取り除いた方が早いでしょう」



「はっはっは その方が楽ではある。だがそれは人の上に立つ為政者の考え方であり人民を導く指導者の考えではない。自分の意にそぐわない者の存在を認めないそんな輩が行き着く先は決まって排斥と差別だ」



「私は実利主義なのだ。しかし私には今回の件で龍王様に譲歩してもらうしか解決の糸口が見つけられない。だがそのお人柄、いや龍柄を見るに彼にこの方法は有効だと感じられた。だからこうする」



【情を持って譲歩してもらう……打算的だね】



【他者のために自己犠牲を厭わない。それを尊いと言う人もいるかもしれないがその精神性は我に言わせれば狂気的だ】



「龍王様。貴方は自己犠牲を悪のように宣うのだな。なら病に臥せる子供のために自己を犠牲にして一日中身を粉にして働く親と傷付いた友の為に國に独り立ち向かった貴方といったい何が違う?

その狂気には善や悪も色付けされていない。多分最も近い言葉は"愛"と呼ぶもぬと純粋なものではないのかな」


 

その言葉に愛はあるがI(じぶん)は無い。大王という役割を全うする彼女は思考が合理的なのだろう。國に実利さえあれば自分の人生を蔑ろにし切り捨てる決断を下せてしまうほどに。それはきっと……



【大和 結婚はしないがお前が死ねばこの國を見逃すといえばどうする】



「分かりきった答えを言うのは好かんが敢えて言わせてもらう。死ぬ」



【お前は苛烈だな。自分以上にこの國が大切で大好きだというだけで死んでしまえるなんて実に若い】



「それで死ねばよろしいですか?」



彼女にアーカーシャのような力は無い。前世の我と比べても恐らく何ら変わらない小さくか弱い1人の人間だろう。それがこんなにも眩しく美しい。多分彼女は立つべくして人の上に立っている。




【いやいい。もうその件についてはカラと話をつけた。だからお前が何をどうこうする必要もないというわけだ】



「……そうは言われましても、私としても出張ってきた以上は部下が話をつけたから何もしないで良いと言われると示しがつかないのですが」



【ならお願いが一つある】



「なにをご所望ですか?世界の半分とは言わずとも世界の1割の財くらいは集めてご覧にいれましょうか?」



【そんなにいらん。船を一隻くれ。別の大陸に行けるくらい上等なやつを】



「それで何処に行くつもりですか?」



【行きたい場所は無いが会いたい人たちがいるもんで】


これで9話は終わりで次から10話目予定です

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