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幕間 最良の従魔士とスライム その4

その時代において従魔士と契約して共に闘う魔物を指して従魔と呼ばれていた。彼らは時に数奇で。時に輝かしい運命を辿った。その勇ましくも美しく戦う姿に多くの者たちが魅了され熱狂した。

従魔無くして従魔士無し。その言葉通りある種裏方の側面が強い従魔士の中で"最良"と呼ばれた者がいた。遠い未来においては無名である彼女も今この時代に限っていえば自国の王族よりも名が知られていた。彼女の名前はプラネ・リュッネッダー。未だ負けを知らない。最良にして最強の従魔士である。



「しかしよ、マスターの手腕にケチを付けたくはないが、あれで本当に勝てるのかね?」



「……」



そんな口上虚しく早速妖虎族のライオットJrがそんなプラネを前にして心配そうに言葉を吐露していた。心外そうにする彼女を他所に彼は言葉を続ける



「前回の一撃。あれは確かに凄かった。ええ認めますよ。俺っちだってあれを無傷で受けられる自信なかったですし。

だけど問題がある。あの攻撃はタメに時間がかかりすぎて瞬発力に欠けるって点です」



「その点なら大丈夫だ。問題にすらならない」



「と、いうと?」



彼女は根拠なき自信ではなく確かな手段と理をいつだって示す。それこそが従魔士の本懐だと言わんばかりに。

ライに興味深そうに続きを促されたのでプラネは懐から一つの鉱石を取り出した。それは純度の高い魔石であった



「これがどうしました」



「魔力を溜めて攻撃に転用するまでに時間がかかるなら、初めから魔力が宿っている魔石を取り込ませて代用させる。これで攻撃時間が大幅に短縮される」



「魔力を外付けする。しかし言うほど簡単なことじゃないでしょ。魔力の質が異なっていたらそもそも魔石を体内で分解しても魔力不全が起きる」



「私を舐めるな。魔物と魔石の相性の良さを見極めるそのくらい造作もない。後はこの魔石を幾つケイオスが使えるかってことだな。複数個取り入れたらほぼ確実に勝てるが、とりあえず私もそろそろ右フックの練習でもするかな」



翌日のケイオスの修行においてプラネはライと話したことをそのまま話した。だが予想外の反応が返ってくる



「いやだっ!おれそんなズルしたくないっ!」



「いやこれはズルじゃなくて立派な作せ「い〜〜や〜〜だ〜〜!!」



話にならなかった。まるで子供が駄々をこねるかの如くケイオスは聞く耳持たなかったのだ。見習いならともかく最高位のグランドテイマーである彼女にとって、そもそも従魔が拗ねて自分の訓練の指示に従わないという行為そのものが思慮の外であった。正式な契約を交わしていないのでケイオスに自身の魔力を与えてブーストする手段も取れない。彼女は久しぶりに大きく頭を抱えた。



「ったく流石に勝ち方を選ばせる余裕まではないんだがな」



「やあマスター。息災で何よりだ」



天井を見上げていた彼女を背後から呼ぶ声がした。振り返るも誰もいない。だが小さく開けていた小窓から白い流砂のような粒が雪崩れ込み旋風のように舞いながら明確な像を結んでいく。現れるは白く染め上げられた1匹の魔鯨。プラネが知るその体躯とは大きくかけ離れてこそいるが見間違えるはずがない。空を覆う巨星の如き圧倒的存在感。

だが彼女は興味の失せた玩具に向ける冷ややかな視線と同じ類のものをぶつける。



「ムー。何しに来た」



「……あの時から君はボクが嫌いなんだね。まあいいや」



プラネは史上最良の従魔士である。それは疑いようもない。だが比類なき才能ではなかった。グランドテイマーと呼ばれる者たちの中には彼女に比肩しライバルと呼ぶに足る者たちが数多くいたのだ。負けこそしなかったが常に勝負は紙一重であり切磋琢磨した。



ある時に一体の才ある魔物に自身の比類なき持てる才能の全てを尽くして心血を注ぎこみこれ以上無いほどの集大成として仕上げた。そしてその事を酷く後悔していた。

いつしか"巨星"という二つ名を携えてその従魔は、かつてのプラネのライバルたちを一人残らず完膚なきまでに叩き潰した。今度こそと立ち上がる者もいた。だが何度挑んでも過程も結果も何一つとして変わらない。

彼は300戦以上の戦歴で唯の1人にも善戦すらさせず一方的に。己が無力さを痛感させ嘲笑うかのごとく誰も彼もを塵芥のみたいに蹴散らした。



気が付けばプラネのライバルたちは全員心を折られていた。最終的には勝負を放棄してコロッセオから姿を消す始末だ。この絶望は筋違いなのは重々承知しているが要するにプラネの八つ当たりであった



「カイネから聞いたけどスライムに修行つけてるんだってね。その子は強いの?」



「これから強くなる」



その言葉にムーの目が嬉しそうに輝いた



「会わせてよ 彼に」



「はっ?」




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