9話目-㉘
「もっかい聞くぞ?だれが!何を!倒したって?えぇ?!聞き違いかもしれねぇからほらハッキリと言ってくれよ〜!」
【いやだから我がカビサシを】
「黙れぇぇぇえええ!まだ言うか!?そもそもお前みたいなチンケな魔物に倒せる存在じゃねぇんだよ!上位魔獣カビサシは!あれは災厄だ!何千何万もの命があいつ一体に虐殺されてきたんだ!
立ち向かった最高位冒険者や騎士や魔導師の腕利きたちが何人も返り討ちにあってきた。つーかそもそも魔獣を討滅したら瘴没ってのが起こるんだよ!上位魔獣ならその甚大な被害だ。お前の言葉が本当ならそれが起きてなきゃおかしいだろうが!だがこの近辺で確認されていない。頭の悪い魔物はすぐにバレる嘘をつきやがる!吐くならもっとマシな嘘をつけや」
「三王同盟の一角はその魔物の国なのですよね?なら、その言い方はやめた方がいいのではないですか」
「彼女の言う通りだ。奈良茂田村麻呂」
「お前らはだぁってろ!
唾を勢い良く撒き散らしながら奈良茂田村麻呂が食ってかかる。この調子じゃ何を言っても彼に信じてもらえないだろう。か、勘違いしないでよね。別にこんな奴に信じて貰えなくても我はぜんぜん気になんてしないんだからね!それに取り返しがつかない失敗もしたし‥‥‥本当に。自慢する気にもなれない。
我が負のオーラを発し過ぎたせいだろうか。気に当てられて背後の姫が殺気立ち始めているし、これ以上色々言われると血のバレンタインをやらかしそうだ。
証拠か、そういやカビサシの核となっていた魔石をアーカーシャの権能で浄化して、そのまま胃袋にしまっていたんだった。ゲロリと吐き出す。魔石がピカッーと光り屋内を眩しく照らしてみせた
「突然なにをしてくれて‥‥‥!?」
【おっ あった。あった てってれー カビサシの魔石〜!】
「え、なっ‥‥‥は?」
「はぁ!?」
「はぁぁぁあああぁぁあ!!?」
「な、なんという高純度の魔石!輝いているぞ」
「いや、そもそもあれは魔石なのか!?魔石は大きければ大きいほど結合が強くなる性質だ。採掘や加工をするにしても先ずは細かく小さくしていく必要がある。そうしなければ加工はおろか傷をつけることすら難しい。故に大きいサイズの魔石でも掌で収まる程度だ。しかしそれでも大型魔導汽船が一月は動く。だがあれは両手でも収まらない。あれほどの大きさ見たことないぞ。一体どれだけの莫大な魔力が‥‥‥」
「へ 下手をしたらあの魔石一つの価値で小さな町のエネルギーを一年は賄えるのでは」
「それ以上だ」
周りが色めき立っている。思いがけずに相当に価値ある物だったらしい。やれやれ、我が何かやっちゃいました?
『中にしまっていたからか、私様のエーテルで神性も僅かに帯びている。この魔石を精霊たちやドワーフどもに頼めば特級魔法具や神装霊具に匹敵する霊具を創ってくれるのよ』
【コトアさんや、霊具と魔法具ってそもそもなんぞや】
『私様より彼女に聞くと良いのよ。ほぅら、興味津々だこと』
「偉大なる龍王様。どうして早く私にそれを見せなかったんですか?嫌がらせですか?」
【……】
姫。綺麗な顔が台無しになるから、その能面みたいな表情やめない?マジで忘れてただけなの。だから我の顔を血走った目で凝視するのやめて!!寝れなくなるから。不眠で倒れたら健康被害で訴えるぞ
『それは暁光。始祖は本来寝むらなくても平気だから睡眠の代わりに別のことをやるのが建設的なのよ』
【正気かこいつ!!】
「……それがどうした。高純度の魔石なのは俺も認める。だがそれがカビサシのだとどう証明するってんだ!」
「私こう見えて魔石鑑定得意ですがしましょうか?10分貰えればできますが」
「テメェはどうせこのホラ吹き飛竜とグルだろうが!それに魔石の鑑定なんて魔導師でも時間がかかるんだ。それを素人の見立てで10分見てはいそうですかなんて信じられるか」
「‥‥‥1度目は我慢しました。2度目も聞かなかったことにしました。でも次はない……グーでガッツリいきます」
【姫さんステイ】
ボソリと呟いた姫。部屋の空気が少しだけひんやりする。不穏な空気が肩にのしかかり場の重圧が増した。いよいよ姫の導火線に火がついたか。おいおい勘弁してくれ。その事に気付かないのは目の前の彼らだけだ。大王。あんたの宮殿が消えて無くなるぞ。早くなんとかして。そんな願いが通じたようだ。静観していた大王が口を開く
「そうだ失念していた。奈良茂の。その事だがカビサシは本当に討滅している。私自身、先日魔導教会の調査団からその報告を受けていた。そうだ!そいつらは今この場に訪れている。第三者としてその魔石がカビサシのかどうか確認させよう。魔導師なら魔石の目利きも確かだろうからな」
それから少し待ち、侍女たちに連れられてドタドタと何人かが呼ばれてきた
「ってなわけで呼ばれてきましたー!特別調査魔導団所属の班長ナターシャ・ウィドーズ。と!」
「あー、ピムだ。ピム・レッド補佐以下班員7名現着。要望により魔石の照合と解析を行います。時間は‥‥‥デカイな。これだと1時間は最低でも頂きます」
「待ってください」
「はい、何でしょうか‥‥‥えと」
「玻璃、でいいわ。鑑定の前に質問いいかしら?ナターシャ班長」
姫が何か気になったのか、やって来た魔導師たちに待ったをかける。そういや特別調査魔導団って魔導師でそれなりに立場のある姫が組織した団だっけか。何を言うつもりなのだろう
「わかりました玻璃さん。それで何か気になりましたか?」
「ピムが着けている三角目がシンボルの尖り帽子は魔女のものよね?これはどういうことなのかしら」
「どういうこともなにも、自分が魔女だという正体を大々的に明かしたアイリーン・イスカリオテが下級魔導師になった事を契機に魔導教会トラオムに魔女の宴サバトの御三家の一つルチア・イスカリオテ一派が統合されました。それに伴い正式にピム君含めた魔女も魔導師という形で編入になりましたが……」
「ピム君言うな」
「そう。いいことね、それは
所で前の団長は失踪したと聞いたのだけど、今は誰が魔導団の団長をしているのかしら?」
「はい。先代失踪後から現在まで赤を冠する色付き魔導師序列4位赤空花団長が務めています」
思いがけない名前が出て、我の目が少しだけ大きく開いた。それを聞いた姫が少しだけ懐かしさと嬉しさを混ぜ合わせた表情を浮かべて口元を緩めていた
勇者が魔王を倒す有名な某RPGのゲームをやっていて筆が止まってました。
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