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9話目-㉔

「改めまして紀伊國初見と申します。皆様のような正義心ある強くて勇敢な方々に妹を助けてもらえたなんて幸運としかいえません。あ、そうだ、粗品ですがこれをどうぞ。我が紀伊國屋の新商品苺銅鑼焼きです」



「あらあらご丁寧にどうも。そうだ。あんたも良かったらご飯でも食べてくかい?」



睦月さんの申し出を初見さんは断ろうとしたようだが押しの強さに根負けして結局皆で食卓を囲むこととなった。

竜宮は大衆食堂だ。多くの人が立ち寄るが故に様々な種族に合わせたレパートリーが存在する。一部のマニア用に昆虫食が用意されてたりもする。

虫を食べるなんてナンセンスだが、この世界の食の水準はかなり高い。向こう側から来た渡航者たちが現代知識と解明できない力(チート)により無双した結果だろう。

今日の晩ご飯は"黒鮫のムニエル"だ。捌いた魚を虹のバターを使って焼いており、完成した隣にはホワイトレモンとクリーム松茸が添えられていた。



「「頂きます」」



【頂きます】



談笑を交わす中、自然と全員の視線が此処の料理を初めて食べる初見さんの口元へ集まった。そんなことはつゆ知らずパクリ、と魚の身が彼の口元へ運ばれた。さて、反応は如何に…



「美味しい。なんだかいいですね。こういうの」



「分かってんじゃん。ちなみに半分はあんたの妹が手伝ってくれたんだよ」



「えっへん!」



「可愛い妹が料理までできるようになったなんて、もう何処にでも嫁に行けるな」



「前から言ってますがお兄様。わたくしは経営に関わりたいですの。ですから旦那様の方に来てもらいますわ!」



男は船。女は港って昔は言ったんだが、どうやら牡丹ちゃんは随分と先進的な考え方の持ち主のようであった。

その考えにやれやれと言いた気な初見さん。



「所でお兄様がわざわざ迎えに来たということは今日直ぐにでも帰るということかしら?」



「そうだ。可愛い子には旅をさせろというが帰り道には気をつけろということでな。俺が送り出された」



【その口振りだと初見さん強いの?】



「初見お兄様は商業ギルド紀伊國屋が抱える専属の冒険者なのよ!偶にだけど悪い賞金首を捕まえていてこう見えて最高位冒険者の1人なんだから」



「俺なんて全然ですよ」



家柄も良くて顔もカッコよくて強い。しかも謙虚。さぞかし女の人にモテるのだろう。あやかりたいものである



「あらまあ、是非うちの娘を貰って欲しいもんだね」



「それは無理ね。お兄様は女の人より強い男の人が好きなの」



「……こほん」



この世界では異種族との結婚も珍しくないらしいので性別を気にしない人も多いことだろう。知らんけど



「それでですね。助けてくれた皆様には約束の報酬をお支払いしたいのですが…」



「待って。牡丹ちゃんを助けたけど、依頼として承認はしてないですよね」



ストップをかけたのは弥生さんだ。確かに話としては耳にしたが依頼を正式に受注したわけではないということを前に言われた。そうなると支払う義務は無いらしい。金貨2000枚は惜しいが仕方ない。



「ではこちら側の気持ちだとお思い下さい」



【断るのもあれだし受け取ろう】



初見さんがパンパンと手を叩くと、黒いスーツを着た男たちが何処からともなく家に入ってきてケースを幾つかテーブルに置く。ガチャリと開くと大量の金貨が入っていた。

紀伊國崑峯が約束した金貨2000枚……いや、もっとある



「見間違いですか?金貨2万枚はありますよね」



「公表はされてないですが、五勇聖のスパスさんから其方に居るアーカーシャ様が上位魔獣カビサシを討滅したと聞きました。アレはこちらに大きな被害を与えていましたからね。流通ルートが復活したので大助かりです。これからも仲良くやりたい誠意も含めています」



誠意。気持ちを無碍にするのはよくないよね。受け取ろう



「その割には奮発し過ぎてませんか?私のような人間だと10倍は裏があるんじゃないかと勘ぐってしまいます」



「アーカーシャが三王の1人だからだろ。三王同盟国家と貿易ルートが開けたら大きいだろうしな」



桐壺の指摘に初見さんはどうにか笑って誤魔化そうと試みたが最終的にはそれを認めた



「これはお近づきの印です。近い将来、本格的に貴方様の国と国交を結びたいと扶桑の方が言ってましてね。その全てのやり取りを"紀伊國"と"奈良茂"のどちらかに一任すると。ですがエルガルムの東を受け持つ我々の方が長距離の分、経費が高くつきます。ですので、我が紀伊國に入出港の"優先権"や"入港税の免除"など優遇策を考えて頂けたらと。当然、こちらで売る商品は全て格安をお約束します」



【わ、賄賂……】



どうすべきかと困ったのでチラリと姫に助けてとアイコンタクトを送る。彼女は面倒そうに小さな溜息をついた



「折角の申し出を断るのは恐縮ですが、偉大なる龍王様が彼女を助けたのは此方にいる葉月さんを助けた()()()になります。カビサシを討滅したのもね。貴方たちの利益に繋がったのは運です。

ですから、そのお金をどうしても受け取って欲しいのなら要因を作った葉月さんに渡してください。」



【せ、せやな。誘拐された慰謝料だとでも思えば良い】



「えええっ!!?」



睦月さんたちは突然の提案に泡をくっていた。そして桐壺たちを見る



「別に私たちもお金はいらない。これまで衣食住のお世話になってるしな」



「う、ん。あ、……でも、花宴、の!」



「……そうだな。言った手前で翻すが死んだ仲間の看病と葬儀代で手に入れた金貨の10枚ほどでいいから修道院に納めて欲しい。無償でやってもらっていたから」



「わ、分かった」



目をグルグルさせながら睦月さんは了承していた。後日の話であるが修道院に金貨1万枚寄付したらしいと聞いた。



「急ですがこれから1時間後に船を出します。だから牡丹その前に荷物をまとめておくんだ。

そしてアーカーシャ様。貴方たちにも来てほしい。是非歓迎を受けてくれませんか?」



「折角ですが近々アナシスタイルに帰らないといけなくて」



「白雪姫様は魔法に関するものがお好きなのでしたね!?我が国扶桑には独自の魔法符術があります。きっと興味を引くかと」



「行きましょう。ね!偉大なる龍王様!」



目を輝かせる姫に嫌だとは言えなかった。

扶桑国。数百の島が存在する海洋大陸エルガルムを纏め上げる中心であり、世界三大列強に次ぐ力を持つ東洋の大国である。

大王(おおきみ)8人の国司(やくさのかばね)と呼ばれる者たちが国事を取り仕切っている。権威主義国家であるそうだ。

更新連日頑張ってるので評価してくれるともっと頑張れそうです。よろしくお願い申し上げます。

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