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9話目-⑭

なんか地の文が今回は多いような‥

全ての命ある者が忌避する存在、魔獣。

あらゆる種族を問わず、瘴気によって肉体を50%以上侵食された場合に例外無く行き着く最果ての存在。侵食初期の魔獣化の場合には肉体を強固な外骨格で覆い、魔力を生み出す魂と心が物質として結晶化、高純度の魔石が核として出現する。

対象の魔力増大と肉体ポテンシャルの爆発的上昇が確認され、最低でも戦力が5倍は増加すると見積もられている。

又魔獣は侵食の状態により脅威度が大きく変わる為、三つの階級を指標として分けられている。

50%〜65%までが下位魔獣。

66%〜79%からは中位魔獣。

それ以上は上位魔獣に該当する。時間経過により侵食率は上昇していくが、侵食率が80パーセント以上になるためにはそれ以外にも特殊な条件があるが現時点では解明されていない。



魔獣は主に瘴気により瘴没した土地に出現する傾向が多く見られる。恐るべきは魔獣の戦闘能力である。凡そ下位魔獣一体ですら並みの高位冒険者では単独討伐が極めて難しく、中位魔獣になれば最高位冒険者からしか対応出来ないことが交戦規定として盛り込まれているほどである(討伐依頼における高位冒険者死亡率が余りに高すぎるため)

上位魔獣からは、その特異性と危険性から冒険者管理局の手を離れて、魔導教会と三騎士を中心とした管轄に移っている。



(私だって勇者だ。今まで何度も魔獣は討滅してきた。魔獣だって攻撃する時は魔力の流れを早め部位に集中させたりする)



「■キヒッ■」



しかし魔獣災害における被害は年々深刻化していって、今のペースで魔獣災害が増大すれば教会と三騎士は10年以内に損耗率が8割を超えて立て直しが不可能になるとされている。



(なのに魔力の流れは平時と変わらない。さっきの奴はほぼ垂れ流しに近い魔力放出で腕を振るっただけ

人間がハエを払い除けようとするみたいに‥‥‥)



「■キヒヒ■」



「気持ちの悪いやつだなぁ」



「ハウゼンたちに応援要請を出した。それまで凌ぐわよ」



「■キヒャヒャヒャ■」



エキドナの子ネメイアとタルタロスの子ギョウキが既に討滅されていることで、この地に残る最後の上位魔獣はカビサシのみである。



「■見つけた見つけた始祖の眷属■」



本来カビサシに発声機能も情動も無い。だというのに対外的に行った自身のアクションに面白そうに楽しそうに誰かを真似るようにゲラゲラと声ではなく甲高い黒板を引っ掻くような不快な音を上げるばかりで追撃も何もすることはなかった。ただどこか何かを見つけ喜びの感情を示しているようにみえた



「上位魔獣って言ってもさぁ、核を潰せば死ぬんでしょ!」



「それが出来たらいいのだけどね」



カサンドラとエヴァンスに上位魔獣と戦った経験は無い。だがこれまで何体もの魔獣を屠ってきた。

高く飛び立ったカサンドラが速射に適した紫の矢を放つ。毎分にして14400発、初速は1,750 m/s、向こう側の世界でのガトリング以上の火力性能を持ってしての圧倒的物量攻撃。だがその全てをカビサシは視線すら向けずにアッサリと回避してみせる



(あれを全部避けた!?)



「こ、のーーー!」



エヴァンスがコントンに乗り激しい追撃を仕掛ける。怒涛の猛攻である。並みの人間なら既に3桁はミンチになっているだろう。だがのらりくらりと避け続けるカビサシは、まるで2人の勇者を意識していなかった。こちらに顔を向けることすらなく別のことに気が散っているようで、敵としてすら認識されていないのが伝わる。それがどうしようもなくエヴァンスの癪に触った。

エヴァンスの感情の激動に呼応してツクヨミの時以上にコントンが力を発揮した。避けれないと認識したカビサシが漸くコントンの一撃を受け止める



(魔導陸戦兵器ですら吹き飛ばすコントンの力を軽々と受け止めた!?)



「エヴァ気持ちは同じよ。アンネリーゼ、魔を穿て」



諌める言葉と共にカサンドラも再び攻撃を仕掛けた。その瞬間、彼女の神装霊具アンネリーゼの力が発動した。それは使用者が対象となる的を見続けるほど攻撃が強力になり、見ている間は絶対に外れない不可避の攻撃。その矢は先程よりも明らかに遅い。カビサシの動きに合わせて追尾し、片手間に払い除けようとしたカビサシの迎撃を超越した力により、矢はカビサシの頭部に命中すると同時に頭が跳ね上がり体勢が崩れる。遅れてコントンが体当たりしてカビサシを大きく跳ね飛ばした。



「やった‥‥‥」



「■かゆい■」



「わけないか」



魔獣は一定以上の魔力放出に対して中和する力場を常時展開している。それに加えて強力な外殻と圧倒的な再生能力も兼ね備えている。つまりは今の人類の魔法レベルで上位魔獣を討滅するには戦略級か戦術級規模の火力を用意する必要がある。これは戦う上での最低条件だ



そして必中のカサンドラと物量のエヴァンス。どちらも勇者として申し分のない能力値である。だがこの場において求められるのは火力であり両者共にカビサシと戦うにはそれだけが欠けていた。



(私たちの攻撃が直撃したのにあの程度。数十秒見る程度じゃダメだな。)



「紀伊國牡丹からこいつを十分とは言えないが引き離した。私たちも一旦退いて合流を目指すわ」



「……了解」



カビサシに目は無い。ゆっくりと立ち上がり、グリンっと首を捻り初めて攻撃を当てたカサンドラたちの方へと顔を向ける。そのままカビサシは宙に浮くチリを掌で常識では考えられないほど圧縮する。そして力任せに投擲した



(何を投げた!?直線距離で450m)



ばら撒かれたチリは塊となり、それでなお人類の持つ既存の武器より遥かに殺傷能力の高い兵器としてカサンドラたちの肉体を貫いた



(空気中の微細なチリと一緒に魔素を混ぜ合わせて攻撃をしたのか!?化物め)



「お、おかしいよ。カサンドラ、なんか体が痺れる」



「!?」



エヴァンスだけでなくカサンドラの身体の動きにも支障を来す。上位魔獣カビサシの有する力は肉体の変質である。それが目には見えない極小の粒子として魔素を変質風させカサンドラたち勇者の体に入り込んだ。まるで毒のように。

勇者はカテゴリーとしては聖人であり、極限まであらゆる身体能力が特化したいる。それが仇となった。研ぎ澄まされた肉体は過剰に変質した粒子を過剰に取り込み過ぎた、それは勇者の身動きを封じるほど強力な麻痺を発生させたのだ。



「■かくれんぼしてる■」



戦闘不能になった2人に興味が失せたようでカビサシはただ1人、自身の敵となりえる原書の眷属紀伊國牡丹の存在を探ってそして跳んだ。

モヤがかかったように存在が希薄になっている。だが血の匂いに加えて隠そうとしてもその隠遁は既に万全には程遠かった。

故に────。



「■見つけた■」



「くそが、余裕で追いつけましたってか」



血みどろに染まった花宴。肩には牡丹、脇に葉月を抱えた状態である。3人とも戦える状態ではなかった。

カビサシが獲物に狙いを定めて飛びかかった。狂拳が迫る。その刹那、影が舞い降りた。



【すまん。遅くなった】



今度こそ赤い龍であった。尻尾を振るい、カビサシごと押し返す。



【一度言ってみたかったんだよね。ごめーん、待ったー?】



「ったく女をあんま待たせるなよ‥‥‥モテねーぞ」



【遅れてきた分、ちゃんと仕事はするさ。】

偏に魔石っていっても色んな種類があるので、必ずしも魔石=魔獣のものってわけではないです。毒が生物毒とか鉱物毒とかあるみたいに色々あります

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