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8話目-㊼

次の更新は恐らく本日の19時ごろ予定

「なるほどね〜。大体の事情は把握したよ。白ちゃん」



「白ちゃ……ええ、まあ分かってくれたのなら良かったです。力を貸してもらえますか。

()()()如月 千夏様」



「うん。okok 多分期待に応えられると思うから」



【軽いな】



如月千夏(きさらぎちなつ)は早生まれの同級生兼前世の我の思い人である。

彼女は赤みがかった黒色の髪の毛を綺麗にボブカットで切り揃えており、願いが叶うまでの間、願掛けと称して髪の毛を添って巻き髪にする癖がある(少なくとも常に一つある)

少し変わっているが、それをチャラにするほどの彼女の性格といえば、正に意気軒昂と明朗快活を体現しているといっていいだろう。可愛くて人当たりも良いし胸も大きいし太陽みたいに常に人の輪の中心にいる明るい女の子、そんな子がクラスにいて好きにならない男子がいますか?いないね(断言)



(やっぱ本物は可愛いな)



【本物は…?××。それは聞き捨てならないな。大体お前今どこを見ている?そんなに見たいなら同じ姿の私様がいるぞ】



【お黙リンスinシャンプー!】



星には引力があって物を引き寄せるように、女性のとある箇所には男性の目を惹きつけて止まない力がある。万有引力ならぬ万乳淫欲の法則と我は名付けている。現代の乳トンとは我のことです。はい。これはほぼ無意識に行う抗い難い本能に近い。しかしながら昨今の情勢でそれを実験的に抑止するために、見るハラ啓発なるものが行われた。世知辛い話であるが、理性と本能、果たして強いのはどちらだろうか?実に興味深い……ってちがーーう!



【んと……。一つ気になることがある】



【年齢のことか?】



【うん】



目の前にいる彼女は弱冠20歳といった。なんで我が死んで転生してる間に歳抜いてんだ!?はっ!まさかこれが異世界相対性理論だとでも!つまり異世界とあっちの世界では時間の流れが違う、的なやつ……!?

そもそも20歳をハタチって呼ぶのは何でだ?特殊な呼び方過ぎない?謎が謎を呼ぶ新展開に好奇心が抑えられない所であるが状況が状況だ。コトアの言われた通りに控えよう。先ずは……



「んー?なになに君 さっきから腑に落ちないって顔をしているけど私に何か言いたいことあるの?えっと、あっくん」



【あっくんやめーい……20歳ってのは間違いないんだよな?15歳とかじゃなくて】



あちゃー。思わず尋ねてしまった。



「……ふふーん?いくら千夏さんが可愛すぎるからって流石にそこまでピチピチじゃないですよ!あ。もしかして肌年齢の話?だとしたらその通りかな!なにせスキンケアは毎日かかさずしているからね!

まあ10代に見られて恐縮だけど正真正銘の20歳だよ。じゃあアーカーシャ君で」



【ピチピチって言い方がアレだが、そっか20か。

じゃあそれで】



「なんだよーー!20の何が悪いってんだーーー!女の子が好きで年取ってるって思うんかーーー!このっ!このっ!アーカーシャ君め!デュクシ!デュクシ!」



殴られた。っていうかなんなん。効果音も口で言ってるし。あれ?なんか空元気さを感じるというか、昔はもっと、こう……あれー?



【誰も悪いって言ってないじゃん……如月。ただ知ってるか?指を折っていくとさ、1人じゃ10までしか数えらんないんだぜ。20まで数えるには相手が必要なんだ。

そんでこの状況にNeed you(あなたが必要) あなたは20。二重でかけてみた。なんてね】



「!?……その文言」



「お二人で歓談しているところ悪いのですが、そろそろ」



「あ、うん」



「それと偉大なる龍王様……先に謝っときますね。ごめんなさい」



【え、なに? あべしっ!】



姫が突然巨大な氷の拳骨を頭に降らせた。別に痛くはないけど、え、突然なんなん。怖いんだけど



【姫さま?】



「なんか無性にムカついてしまって」



【……そ、そう。なんかごめん】



ムカつかせてしまったなら仕方ない。うん。姫の琴線に無自覚に触れてしまったらしい。気を付けたいので、それ教えて欲しいかなって。

そんな我の横で如月は額に指を当てて、何かを探っているようだった。



「全部見つけた。じゃあ行くよ。無限の手」



アーカーシャである我にはそれがハッキリと視えるが、如月が目には映らない力の塊をバルディア上空に放った。それは咲き誇る大樹のように無数に枝分かれする。その枝の一本一本が手の機能を有しているようだ。

手が捕まえる。この地で起きた死というモノを。一つずつ。手作業で。



「捕まえた。」



「もう少し近づく必要あるかな。やっぱこっちから先に済ましておこ。来い」



右手で捕まえた死を静止させたまま、左手で別の何かを引っ張った。これは地下にある龍脈のエネルギーだ。まさか吸い上げているのか。この天変地異が巻き起こせるレベルのエネルギーを。この地に埋没された莫大な龍脈の力。恐らく今のアーカーシャに匹敵するほどのエネルギー量だ。それを如月は一身に受ける。容姿が激変する程の内包する力の増大だった。

異質。異様。異常。

人の赦された限界を遥かに踏破する音がする。



【来て早々にこれか】



圧縮された力が徐々に人の姿へと構成されていく。

美しいプラチナ色の長髪とそれに引けを取らない呪いのような美貌。艶やかな血と死を思わせる美しい着物と価値を測ることすら出来ない意匠。最も特徴的なのは頭部から生えている二本の角。我は……アーカーシャは()()()()()()()()



【鬼姫 夜叉】



アーカーシャと同じく"三君"と称される始祖だ。

今の我には彼女が行ったことが理解できる。もうこれは天賦の才能どころの話ではない。如月千夏、彼女はチートを超えてバグの領域だ。莫大な魔力を糧に肉体を擬似エーテルに再変換。そして龍脈を逆算して世界にアクセス。既に記録されている始祖の力を解析して自身の肉体を受信体にしたのだ。恐らくその気になれば、他の始祖の姿と力を同様に扱うことも可能だろう。



「死して色を失わない命たち ならばおいで 真黒な死の盃に 常闇に沈まぬ命たち その死を肴に飲み干して 真黒に染め上げ 戻ってこいこい 死出の道」



一目で巨大な力を纏っている血よりも紅い酒器が現れた。酒瓶に捕まえた死が順に焚べられていく。

どんな言葉を並べ立てても、死は絶対に避けられないものである。例外なく必ず全てのものが当てはまる。人も。それ以外も。神も。星も。宇宙でさえも。終わり()がある



だが我らが正しく認識できていないだけで、死にも実は多種多様な種類があるのではないだろうか?恐らく肉体的な死は状態としての固定であり、本当の終わりとしての意味を含む死ではないのだ



「不廻転生」



如月から立ち昇った温かなエネルギーが雨のようにこの地全てに等しく降り落ちた。染み渡るように正邪全てのものが癒やされた。傷を。痛みを。死さえも。



「終わったのですか?」



「……ごめん。半分成功。半分失敗。みんな生き返ったよ。でもあれを何とかしないと結局みんな死ぬかも」



如月が苦々しく顔を歪めて指を指す。そして酒瓶から真っ黒な得体の知れない泥のような何かが盃に溢れて注がれる。泥の雫が落ちて触れた地面が即死した。それだけではない。

ピシリっ!酒瓶にヒビが入り始めている。時期に全て漏れ落ちるだろう



「なんですか、あれは」



「この地に集まる"死"だよ。無くしたわけじゃないからね。引き剥がしたって言い方が1番近いかな。そんで死を負のエネルギーに変換した。多分その時に憎しみとか余計なものも引っ張ってきちゃったかも」



アレが全て降り落ちたら、恐らくこの大陸全てがダメになるだろうという確信。



「どうすればいいのですか?」



「エネルギーを相殺するしかない。けど、この戦力じゃ無理だね。逃げた方がいいかも。同規模以上の死が振りまかれる。とりあえず時間も無いし、何か逃げ切れる良い方法あるかな?」



【××】



コトアが我の名前を呼んだ。分かっている。

アーカーシャの虚空ならこれを0にすることが出来る。だが一瞬で消せる訳では無いだろう。恐らく暫くの時間を要する。数十万の死を超えた力を受け止める必要がある



【我がなんとかする。全員退避しろ】



「王を置いて逃げ出す臣下はいません!」



【頼むよ。フィファ、イオス。我を信じてくれ】



「「……はっ!!」」



2匹の応龍は下がり、我の意図を汲み他のみんなの退避に尽力し始める。そんな中で姫が我の真横にずっと佇んでいる



【……姫もここから離れてくれ】



「独りでやるのですか?」



【あんくらい楽勝だよ】



「私も一緒に行きます」



【絶対ダメだ】



「なんでですか」



【なんでもだ。絶対ダメ】



「ちょいちょい!言い争ってる場合かっつーの!なら3人で行くよ」



【なんでお前まで!】



「失敗したの私のせいでもあるしね。それに1人より2人。2人より3人だろうが!べらんめぃ!」



「……アーカーシャ。時間が惜しい」



【くそっ!ヤバそうならすぐに離脱しろよな!】



遂に酒瓶が粉々に砕け散る。巨大で真っ黒な球体が姿を現した。そしてこの地に堕ちようとする。我は2人を肩に乗せ天高く上空に飛び立ち真正面からぶつかる。



「くぅ……」



【う ぐ ぐ ぐ !!!】



「もっと踏ん張らんかーーい!」



3人がかりというのに予想以上に抑えきれない。翼の方もぶつけるが表面の力と拮抗している。削り切るには時間が要る。だがジリジリと落下しているのが分かる。堕とすわけにはいかない。足元にはみんながいる。力を出し切れ!



「根源なる……真の魔法 三位一体!!」



姫が魔法を使った。3人の身体が発光し一つに溶け合い混ざり合う。そして新たな強い力に昇華された。それでもまだ辛うじての拮抗。だがそれで十分だ。拮抗して時間が少しでも稼げるなら、虚空で何れ必ず消し去れる。



「あ、やば……」



しかし先に限界を迎えたのは如月であった。突然、彼女の姿が鬼姫から人間の元の姿に戻ったのだ。どうやら力を使い切ってしまったようだ。そこを転機に徐々に押し込まれ始める。



【ふんぬらばぁぁぁ!!!】



止まらない。ギシギシと死が差し迫る。止めきれない。力に直に触れてるアーカーシャの肉体が朽ちては再生を繰り返す。痛みはないが熱い。これは……マズイ!

隣を一瞥する。この2人は死なすわけにはいかない。例え、我が死ぬことになっても……絶対に!



【姫!如月!これ以上はもういい!身体が保たない!

2人は下がれ!】



「うるさいです!やるしかないでしょう!アーカーシャ!!」



「手を貸そう」



その状況に新たな横槍が飛んで入る。何の主張もアクセントも無い仮面を付けた男がいた。こいつとてつもなく強い。多分今まで見たどの冒険者よりも。危険だ。だけど構ってられない



「貴方はまさか!」



「お初に、魔導師様。僕の名前はキルヒ・I・ラスバブ・クラウン。皇国の守護者が1人。難儀している様子なので微力ながらご助力を致しましょう」



そう言って、キルヒは身体ごとエネルギーにぶつかった。完全に押し返すが、アーカーシャの肉体と同様にキルヒの体も破壊と再生を繰り返している。



【あんた大丈夫か!?】



「くははっ!これが、この力が。或いは終点の……」



眩い光が我らを包み込む。そして────。







「ここは……」



「来ちゃったね ×××」



「……っっ!?淡雪ちゃん!!?」




気付けば、俺は真っ白な世界ヴァイナハテンに立っていた。

目の前にはかつての少女が少しだけ辛そうに向かい合っている。

死神の遺言ってゲームをずっとやってました。お陰で2週間かけて全然書きだめきれなかった

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