8話目-㊵
今回は短めです。とりあえず明日までは時間取って投稿頑張ります!
最高位冒険者に次ぐレベルの力を持っている支部長バイデ・ワルターに本来なら一介の冒険者であるシュウ・ハザマと宝人族ダイヤの力を合わせたとて及ぶべくもない。だが戦いとは常に強い方が勝つとは限らない。強さとは決して不変なものではないのだから。
「やったね シュウ君!」
「はは、まあギリギリだったけどね。あんがと ダイヤちゃん」
「それにしても探しても見つからないね、アヤメ様。お部屋の方にもいないし先に逃げちゃったのかな?」
「いやあの人は……」
2人は知る由も無い。意識を失ったアヤメが既に殺し回る狩人ギルド長のミリアス・アンクタスが確保しているなどとは。
考えを巡らしていると奥の通路から誰かがシュウとダイヤに強烈な殺気を飛ばしてきた。気配すら感じないくらいまだ遠い距離。だが確実に相手はこちらを見ている。2人は殺気から逃れようと反対側に一歩を踏み出した。
「バイデ お前負けちまったのか。怪物の再来と恐れられるトーチカに勝つなんてそれじゃあ夢のまた夢だな」
殺気を放っていた者の正体は略奪者たちの王様ギルド長アレクセイ・ニコラだ。その彼が振り向いた次の瞬間には容易くダイヤの目の前に立っていた。
「あ……」
「確か宝人族って殺せば宝石化するんだよな。なら、殺していいか」
咄嗟のことに立ちすくむダイヤに殺意が迫るが、シュウが瞬時に抱きかかえ一目散に逃げ出す。聖気を纏ったまま維持していたことが功を奏した。だからこそ反応できた。そうでなければ今のでダイヤは殺されていただろう。
「逃げ腰だな」
「なっ!」
アレクセイは聖気を扱えない。だというのに聖気を使っているシュウの速度にいとも容易く並走していた。
何も特別なことはしていない。魔力による身体強化だ。能力上昇値は間違いなくシュウの方が上回っている。しかしそもそも強化される元々の能力値が違いすぎる。アレクセイが手を翳す。強大な魔力が掌に収束していく。
(まず……)
「雷上級魔法」
「くそぉぉ!」
土壇場でシュウは聖気を肉体の延長で宝石剣金剛を纏うことに成功した振るう。聖気の運用の基本は練り上げて維持する所から始まる。聖騎士見習いなら数秒の瞬間的な発動のみ。厳しい訓練を経た下位聖騎士の初歩が数分保つか保たないかといったところである。
肉体の延長として武器に聖気を纏わせる。この技術は聖騎士であれば中位クラスから会得する技術であり、コントロールが難しく又消耗が途轍もなく激しい。
しかしその分の効果は絶大である。唯の袈裟斬りが強力な雷撃を切り裂いた。だが攻撃の余波で突風と一緒に押し流され、シュウたちは廊下をゴロゴロと転がることになる。
(ギリギリの反応だった…!あとコンマ0.1秒でも遅れてたら)
「ほぉ。女を庇いながら生き残るとはやるじゃねえか。流石にバイデを倒しただけはあるな。だが、どうやら力を使い果たしちまったようだなぁ!」
アレクセイの言葉通りにシュウの身体から聖気が消える。どうやら限界を迎えたようだった。
「あんた……何が狙いだ」
「あぁ!?狙い、か。くっくっく。別に大したことじゃねえ。超魔力伝導物質マナジウムそして宝人族を全部頂く。それを使って得た莫大な富を用いて、今の三大ギルドとかいうクソみたいな三竦みをぶっ壊して、俺たち一強の時代を目指すのさ。」
「そんな、下らない野心のために、どんだけ死なせてんだ!このクソ野郎が!」
「はっ!てめえの理解なんていらねえよ!これでとっとと消えろ。火炎上級魔法」
当たれば骨すら残らないであろう猛火が迫る。
「good。熱い攻撃は私好みよ」
銀色の液体金属がシュウたちを守るように展開する。攻撃も熱伝導もありとあらゆる全てを甲鉄のカーテンは遮断していた。
「あー〜?なんのつもりだ、シチー・スペンサー」
それは明確な敵対行為だ。だというのに最高位冒険者No.48シチー・スペンサーは不敵に笑った。
「worstよ、お前。はっ、なんのつもり?邪魔をするのよ。
そもそも今回のはどうにも気が乗らないし熱くなれないものね」
「踊りなさい 水銀の踊り子」
「同じ最高位だからって、俺とテメェが同格だとでも?シチーィィィ!舐めてんじゃねーぞ!
俺は数百万の略奪者たちの王様ギルド長にして、No.09アレクセイ・ニコラ様だぞ!!!」
「ならそのシングルナンバーも今日までよ。私がもらうわ」
アレクセイとシチーが向かい合って、そして互いの技をぶつけた
ちょっとした設定
物語の展開で今回はシチーがアレクセイと敵対する結果となっているが、シチーかフランクリンのどちらかは必ず敵対する流れとなる