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8話目-㉛

雪姫の援護により、魔女マヤのオルガノンの杖による妨害がほぼ無くなる。とはいえ、魔法の常時展開は出来ない。万が一にでも術式の解除をさせるわけにはいかないからだ。

魔法が使えることになった黒水は瞬間的に拳の周りに黒い渦のようなモノを覆わせる。黒水とキメラの一撃、そのどれもが本来なら致命傷になり得る。僅か数十秒で数百の応酬が行われる。膂力はほぼ互角、しかし両者の技量の差によって、ほぼ確実に2人の削り合いは埋まらない差となって黒水有利に運んでいた。



「mugam2amtgあはははwmt#jg」



「ん?」



だがキメラには唯一黒水を圧倒的に上回るものがあった。負傷をものともしない無尽蔵の体力と回復力だ。キメラにとっても決して無視出来ないダメージを誇るはずの拳撃を無視して質量攻撃によって押し流される。



(打ち負ける……悠長にやるのは危険だな。私の消耗を度外視してもさっきより強くなっている)



確実に開いていた両者の差が少しずつ埋まり始めている。キメラの反応速度も上がっている。手数の多さにも徐々に対応され、反撃の精度も高くなり、遂には黒水の長い髪を爪が掠った。



「おっと」



「あdp姉ぇmtgktちゃんw殺し@jxpjm遊ぼawpt」



キメラが大きく身体を広げる。攻撃範囲が更に倍に伸びる



「攻撃の内側にも入れなくなってきている。一息で決めるか」



「雪」



「分かりました」



マヤの一瞬の隙をついて、雪姫は黒水の足元に氷柱を出現させ、それに呼吸を合わせて足場にする。つまり氷柱を強く蹴り、超高速でその身を砲弾のように打ち出していた。



キメラの過密な攻撃全てをくぐり抜けて、力任せにそのままぶつかる。ぶつかった衝撃波で周囲の窓ガラスが粉々に砕け、そのまま古い建物の一画へと叩き込む。



「素晴らしい。発展途上であの強さ。

あの天峰冥君が勝負を決めに行ったぞ。これなら。」



「貴女は彼女を誰だと思ってるんですか。

あの魔導教会トラオム筆頭魔導師 黒水 歪ですよ。負けるはずがない」



「痴れ者が。お前のような若輩こそあいつのことを知った風な口を聞くなよ!」



雪姫の言葉がマヤの秘めた琴線に触れたのか、影の刃が無数に投げつけられる。



「その程度で」



「かかったな!」



オルガノンの杖が光り、氷の盾の術式が解除される。にも関わらず攻撃は防がれる。



「なに!?」



「使い方が丁寧過ぎるわよ、あなた」



「くっ、なるほど、氷の盾をそれぞれ独立して複数出したのか!一つ消しただけじゃ無意味だな。」



「魔女の至宝の一つもこんな小技一つで簡単に相殺できるなら思ったよりも怖くないわね。」



「余裕こいてんじゃねえぞ!このっ」



「実際余裕だもの」



氷と影の暴威が激突する。





「aywtgm痛tpmd苦しtpmt誰かd@jgt」



「閉じろ黒傘(カラガサ)



キメラの全身が輝き、その光がやがて一つの腕に集まっていく。何が来るか分からないが、直感的に理解して顔色が変わった黒水は黒い球体を出す。それが黒い傘にと変わり、そのまま振り下ろした。ほぼ同時に熱線が放出された。

黒水の身体が衝撃で軋む。激突と同時に周囲の魔素を固定化し、踏み止まるための足場とする。


その熱線の威力は先程のアンタレスの攻撃の優に何十倍もあるだろう。だが黒傘が受けきり、上空へと飛ばす。



「ふぃ〜。あれだけの威力だ。避けるわけにもいかないし、弾き飛ばすにしても上しかないよね、やっぱりさ」



攻撃こそ耐え切ったが、黒水の指が何本かあらぬ方向に曲がっている。だが黒水は魔力を操作することで筋肉を操り、無理矢理に拳を作る。そして────。



「あjmt'mw"怖いgpjそれtjtjtgp」



キメラが何かを察知して魔力を矢のように拡散させて何十本も撃ち放つ。黒水はその軌道が最初から見えているかのように、横に三歩ほどずれる。雨のように降り注いだ攻撃は掠りもせずに全て外れた。



「!?」



黒雨(パルスボム)



無数の黒い雨がキメラの身体を包み込む。当たった箇所はひしゃげてる。声にならぬ悲鳴を上げながらキメラは大きく仰反る。



「痛gpjwm怖いmtgdtいやだgtpjp」



「吸い上げろ 黒死 茨」



黒い茨がキメラの身体を覆っていく。絡め取り、魔力を吸い上げていく。その全ての魔力を茨は食らった。茨はそのまま天高く上がる。茨はドス黒い太陽のように輝いた。



「眠れ 黒死 崩落」



キメラの真上から重力が滝のように堕ちてくる。黒水の暴力的なまでの力がべちょりと虫のようにキメラを叩き潰した。




「あちらは終わったようですね。」



「……」



雪姫の言葉に同意こそしないが、キメラの魔力が消えたことを理解したマヤの表情は重い。



「もう杖を返して降参した方がいい。それとも私怨のために死にますか?」



「それもまた一興だ」



だが。マヤは杖を向けた。勝算など無視して。それが酷く気がかりな雪姫は小首をかしげる



「はっ、理解できぬだろうな。お前には。

私怨だけではない。この世界で如何に呪術が邪道で忌み嫌われようと、力と魔力で決まるこの優劣。呪いで覆してこそ我が面目。私にはそれを証明する義務がある。

なればこそ、邪道を否定する貴様ら魔導師にはどうあっても白旗を振るわけにはいかぬ」



「白夜の弟子!我が研鑽と練磨の粋に賭けて。譲れぬものがあると知れ!」



「……生と死の狭間に答えなんてないですよ。それでも退かないというのなら、私も相応の力で答えましょう」



「蠱毒 影蛇竜弾」



「紙吹雪 白蓮」



紙吹雪白蓮はハスの花を思わせる形をしていた。対してマヤの呪いは巨大な影の蛇となる。蛇はハスを呑み込むように口を開ける。花はあっさりと食い散らかされ、紙の花弁が無数に大小様々な色紙となって舞い落ちる。

雪姫の創りし、試作魔導具の一つに割り玉がある。割り玉は中に入れた物に簡易・初級魔法の術式を自動で刻印する機構を持つと言ったものだ。



そして最大の特徴は数メートルに限り、一つの刻印が作動したら連鎖して刻印が誘爆するといったものだ。



「ON」



雪姫の手に持つ一枚の紙が起動した。その瞬間、散った紙の海を悠然と突き進んでいた影蛇が腹の内より爆散した。呑み込んでいた紙の魔法術式が全て誘爆したのだ。

そして、紙吹雪はいつの間にか空に何百万と漂っている。その全てがマヤの元へと落ちた。



「まさか。この全てが独立した魔法だとでも……!?」



「貴女はそのたった一本の杖でこの天を覆う数百万の魔法の一体どれを停止させようとしてるのかしらね。」



「こ、の」



どれだけ魔力を込めようと所詮は初級と簡易の魔法。魔法抵抗力で凌げる。現に雪姫に準ずる魔力を持っていたイルイの魔法は受け切れた。だがそれが幾百万に上れば。



「紙吹雪 百連」



一斉に魔法が起動した。

三連休だから更新頑張りたいところですね

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