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8話目-㉕

誰かが言っていた。願いを叶えるためには対価が必要だと。

与えすぎてもいけない 奪いすぎてもいけない 過不足なく対等に、均等にあるべきだと。

今度は罪と罰という考えについて考えてみよう。現代社会では定められた幾つかのルールを破ったりすると課せられるペナルティがある。万引きをしたからといって手を切り落とすのは量刑としては重いだろう。逆に人を殺して略式起訴だったら軽すぎるだろう。

その上で本題に入ろう。不法侵入の妥当な量刑はなんだろうか。なんでそんなことを聞くのかって?どうやらこっちの異世界の場合だと、不法侵入にはどうにもハッド刑が適応されるみたいだからだ。要するに現在進行形で我らはKKKみたいな頭部全体を覆う三角白頭巾を被った見るからにヤバい奴らに追われていた。手に持つ凶器の数々。垣間見える殺意。これで捕まえても何もしないは嘘になるだろう。

つーかKKKの略がK(確実に)K(君を)K(コロコロしちゃう団)ってまじなのですか?だとしたらやっべぇぞ!



「このままだと捕まるのも時間の問題だ。魔女探しどころではないな」



「だな。だから逃げるのやめるわ」



いったい何を血迷ったのでしょう。ハドラーさんが突然足を止めて拳を上げるいわゆるファイティングポーズを取った。頭いっちゃってんの?あいつらが持ってるの武器っていうかどう見ても拷問器具よ?歯医者さんでよく見るやつ。

ハドラーさんの実力を疑うつもりはない。筋肉のつき方や立ち振る舞いだけでも何となく分かる。彼はかなり喧嘩慣れしているのだろう。だがサキと比べるとどうだろう。武道の有識者ではないので断言はできないが、少なくとも格闘技を学んでいる動きではないように思える。



「オラァッッ!」



30人はいるというのに、そんな彼らをものともせずにハドラーさんは向かっていって拳を振るった。技術もへったくれもない力任せの一撃としか言えないが、拳が命中する度に人間ってあんな飛ぶんだってくらいギャグみたいに打ち上げられていた。あれ?でもこの人……



「流石はかの喧嘩屋。噂に違わぬ強さですね」



【なにか知ってるのか、サキ!?】



「はい。彼は冒険者になる前から名が通っていました。

ハドラー・アルカン 裏の世界の元締めブレックファスト専属取り立て人の1人。どんな相手からでも絶対にお金を取り立てるらしく、聞いた話では以前借りた金を踏み倒そうとした貴族の邸宅に押し入った際に素手で私兵100人を倒して貴族から取り立てたという逸話もあります。」



【凄いのかもしれないけど、魔法のある世界だと量より質を地でいく奴らが多すぎて特別凄く聞こえない不思議。】



「アーカーシャ様にとっては大したことがないように感じるかもしれませんが、気づきませんか?彼は今と同じように魔法や魔力を全く用いなかったという話です」



感じていた違和感。やっぱりあれ自前の強さなのか。いくら鍛えてるっていっても魔力無しでここまでの強さはもう人間やめてない?前々から思ってたけど、この世界の奴ら人間含めて一部が身体能力異常なんだよ。純粋な身体能力を競うスポーツとかだと下の人たち勝ち目0じゃん。前の世界だとトランスジェンダー組が女性スポーツで無双してるけどその比じゃなさそう……。



「あったな。そんなのも でもそいつはデマだ。兵隊の中に元騎士がいてな。そいつにだけ魔法を使ったぞ」



【他は使ってないんだ……っていうかあの人たちみんなノシちゃったんだね】



相手30人くらいいたんだけど、大した痛手を負う事もなくハドラーさんが戻ってきていた。



「待たせて悪かったな。んじゃあ先を急ぎますか。

ん?なんだ。」



どこからかシャンシャンと鈴の音が聞こえる。ヒュッと一度耳にしたことがある風切り音。

トレンチコートを着た黄色の魔導師黄穂鈴が空を蹴って目の前に降りてきた。



「あれ。アーカーシャ君とサキちゃんまでいるね。

うーん?なんでだろう、な」



「重っ……!」



次の瞬間には姿が消えたかと錯覚するほどの速度で懐まで潜り込んだ黄穂さんの蹴りが体躯で勝るハドラーさんを隣の建物まで余裕で吹っ飛ばす所であった。



「覚えのある顔だ……思い出した。最高位冒険者No.72ハドラーアルカンか。今は軍国のジャジャ馬姫のお守りをしているって話だったけど。」



「く〜〜。今の効いたぜ。200キロ近い俺を上回る馬力。そんなチャチな身体でウチのギルマスみたいな奴だな」



「ギルマス……最高位冒険者No.08"百手の怪物"ヴァレンティナか。お前が裏の世界から冒険者になった経緯は不明だが彼女が関係してるって話だ。是非ともお話し聞かせて欲しいものだな」



「へへっ。俺に勝ったら教えてやるよ」



ハドラーさんと黄穂さんの戦いが始まる。これは、どっちを応援すべきなのだろうかと迷っていると突然コトアが我に呼びかけてくる。



【×× イルイという娘っ子の気配が消えたぞ。あっちだ】



コトアが頭の中で指を指した気がする。曰くそこで突然イルイちゃんの気配が不自然に消えたみたいなのだ。



【2人とも。一旦ストップ】



「「な(に)んだ!?」」



【向こうで友達の気配が消えた。嫌な感じがする。助けて下さい】



互いに戦う手を止めて我が指を向けた方向に黄穂さんは顔を向ける。何か生き物を通して景色を見ているのだろう。暫くしてから口を開く



「……あっちの方角はガカクリョウがあるね。つまり学生たちが住んでるところだ。あ。結界が張られている。」



【よしいくぞ!】



「……私の力は"加速"っていうんだ。あらゆるものを加速する。この力をハドラー、お前に使う」



「おう。そして俺がぶん投げる。そうすりゃにいちゃんは1秒で向こうに着く」



2人は息が合ったようにそういって準備を始める



【え?お前さんたちも、そのー、来るんだよね?】



「今度ニースで冒険者の特集組もうって話が挙がってて、その、なんといいますか、うへへ」



「悪ぃ、にいちゃん。っ後で追いつくからよ。先に行っててくれ」



【おいおい、こいつらひ弱な小龍と牛の人形だけで現場に臨場させる気なんか!】



そうして、我は天高くぶん投げられて、イルイちゃんの目の前にタイミング良く落ちてきたのだった。


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