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7話目-⑯

新作と並行してやっていきますので、よろしくお願いします!



「《大丈夫か、姫!?》」



「amwtgm」



「私と灰土は無事な様ですね……!」



「か あさま!? なん で ちが いっぱい…」



シャーロット君の絶叫に近い悲鳴が部屋を満たした。

視線を向けるとその光景に戸惑った。フランソワールがシャーロットの上に覆い被さり護っていたからだ。意味が分からなかった。お前その子を嫌っていただろう。なのに、なんだそれ。

背中からジュクジュクと血が大きく噴き出している。誰が見ても重傷だ。

いや今の攻撃を庇って受けてこの程度ならむしろ幸運だろう。2人丸ごと両断されていても不思議ではない威力だったのだから。シャーロットはお陰様で傷一つない。ならこいつはいっそのことそのまま……



「フランソワ!」



姫の言葉にハッ!とさせられる。

ドカッ……!自分で自分を殴った。少しだけ痛い。思えばこの世界に来て初めて痛覚が働いたように思う。

殴ったのは不意に良からぬ考えが一瞬過ぎってしまったからだ。人として最低だ。今のは



「ぐっ……カハッ カハッ。降霊魔法で下級精霊に自分の身代わりとして受けたダメージを請け負わせる手段があるんだ……お陰でこの程度で済んだ」



「その割には死にかけですね」



「くはは であるな。 チャーリー。お願いだ。少しだけ目を閉じてて。

なあ白雪……普通の親がどうして子供の事をあんなに愛おしいと思うか、考えたことはあるか?」



「もう喋らないで下さい、思ったより傷が深い。それに妙な粒子で魔力が阻害される。私が応急処置を施してから、灰土!それから貴方が治療を!」



「jmtgad.wjd」



「妾は考えたよ。必死に考えた。そして多分それは成長というものが目に見えて分かるからなんだと思う。変化と言い換えてもいいのかもしれない。

それが普通の親には嬉しいんだろうな。何気ない表情や仕草とか、変わっていくんだ。この手で抱き上げた子が、いつの間にか気付けば太陽みたいな声で"ママ"って呼んでくれるようになるんだよ。それがきっと堪らなく嬉しいんだ」



「つくづく妾は親に向いてないと実感したよ、なにせ才能にしか価値を感じなかったからな。この子はもう10歳で簡易的な降霊魔法すら使えない。酷く落胆したし当たり散らした。妾は7歳の時に降霊魔法を覚えたというのに。

でも、この子は才能が無くても努力家だ。妾の期待に応えたくて陰で必死に努力していた事も知ってる。

最終的には誰もなし得なかった上位悪魔を肉体に降ろす事にも成功した。

でもこの子はそれ以降、体の成長がピタリと止まってしまった。それどころか次第に耳が聞こえなくなって、心と体の不均衡で目に見えて波長までズレ始めて、5年以内に死ぬときた。

そこまでして漸く妾がここまでこの子を追い込んだんだと気付けたよ。この子だっていつか気付く。全て妾のせいだとな。ここまでしておいて、今更どの面下げて優しく出来る。憎まれ抜いて殺されてやるのがこの子の為になると思わないか?」



「《……》」



「屁理屈をこねるな。貴女はこの子と向き合うのが怖いだけでしょう。偉大なる龍王様(アーカーシャ)。外をお願いしても良いですか」



姫がピシャリと言い切った。外が眩い光に包まれる。先程の攻撃をもう一度するようだ。悠長に話している時間などない。我は外に飛び出した





「横薙ぎにした方がはやいか。全部消し飛ばそう」



牛柄のコートの女性が魔力を込めて剣を振るう。普通の剣の間合いは精々1m程度。だが彼女の剣は恐るべき間合いの広さだった。



「《やめろよ》」



「!!」



光の剣を腕で受け止め押し返す。その光景に絶句したマスコットのネズミが隣で口をあんぐりと大きく開けていた



「お前!昼間のやつか。素手で"蚩尤の剣"を押し返すなんて無茶苦茶だな」



「姉御!マヤの姉さんが言ってた赤い龍ってこいつじゃないか!?」



「黄金樹を使用した魔物を瞬殺した龍か。失敗した言い訳だと思ったが……先に行ってろ」



「分かりました!」



短距離型の転移ポータルを使ってネズミの男は我を避わして、屋敷近くまで転移したようだ。これが転移か。思った以上に短い距離なんだな。すぐに追いつけるが屋敷には姫がいるし任せて大丈夫だろう。それにあのネズミよりこっちの方が大分強そうだ



「《おらぁ!》」



我の怒涛の乱撃を牛の女は素晴らしい身のこなしで華麗に避けていく。武道に疎い我でも嫌でも分かる。一つ一つの所作が流麗。まさに達人だ



両腕で挟み込もうとして、牛の女は宙に飛ぶ。これは避けられないだろうと、尻尾を振るったら、足場のない宙を蹴って体勢を立て直し、幾つもの攻撃を掻い潜りながら避ける



「はは これはやばい。完璧に避けてこれか。一つでも直撃すれば即死だな」



反応速度が異常だ。攻撃が全く当たらない。

攻撃そのものをもっと速くする事はできるが、この威力でこれ以上速くし過ぎると、相手を戦闘不能どころか殺してしまうだろう。



「"蚩尤の剣"で強いのを10回以上叩き込んでまるでダメージが通らない。鱗に覆われている部分は兎も角として、鱗の繋ぎ目に覆われてない耳や腹、ましてや目まで硬いってどんな原理の生き物だよ」



「困ったな。殺し方が思いつかない。守護者と同じタイプで戦っちゃダメな奴だな お前は」



「《じゃあさっさとあの鼠小僧引き連れて夢の国に帰れよ!こっちは今イライラしてるんだ》」




なんだこの余裕は。少なくとも勝ち目が無いと思っている奴の顔じゃない。何か勝算があるのか?答えはすぐに分かった



「だから、勿体無いけどこうしよう────特級魔法具ラビリンス発動」



取り出されたそれは掌サイズの小さくて不気味な水晶だった。その水晶が明暗し始める。発動と共に不気味な光と影が我の周辺だけを包み込む。

────まずい。閉じ込める気か。




†††

雪姫は侵入してきた男ネズにもう何度目になるか分からない魔法を叩き込む。しかし



「だから無駄だっての、俺に攻撃は効かない」



そういって平然と立ち上がる。雪姫の魔法を食らっても立ち上がる者はいた。墳墓にいたラーズなどは攻撃をまともに受けていた。あれは果てしない耐久力が原因だ。しかしネズはそうではない。



「大体分かってきました。貴方の着ているその魔法具は、触れたエネルギーを無効化している。魔法は無効化された時点で消滅。運動エネルギーの方は、失ってから物質は止まる」



「正解。だから俺を殺すのは無理だぜ」



「それはどうですかね」



姫は別段焦った様子もなく、無効化に対応策を考え出す。だが手を打つ前に1人の女性が静かに入ってきた



「先に行かせたのに、何をノロノロしてんのお前」



「!!」



姫が初めて表情を変える。目の前の敵は強い。だがそれに対処していたのはアーカーシャだ。姫は彼より強い存在を知らない。その彼を倒してここに来た、なんてことは天地がひっくり返ろうと起こり得ないと姫は確信していた。だからこそ驚愕したのだ



「サキの姉御。こいつ強くて、なんとかしてくれよ」



「ネズ。お前はスフィアの発見と破壊を優先しろ。極力戦うなよ。」



牛柄のコートの女サキの立ち振る舞いは姫の警戒度を最大限に引き上げていた。先程まで戦っていたネズより数段上の実力者。目の前の敵以外に気にかける余裕はなかった。



姫の巨大な氷塊が獣となり、サキの光の剣が凝縮され放たれて激突した



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