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朝になり目覚ましが鳴る。 うるさいなぁ、ちょっとしか寝てないのに早くにセットし過ぎた。 そう思い目を瞑りながら目覚ましに手を伸ばす。
「むぐぁッ」
むぐぁッ? 中指が硬い物に当たったと思ったらシトッと妙な感触に……
「ぷあッ!」
なんか指が湿ってる。 ん?
「周ちゃん…… 流石にそれは」
吉原が呆れ顔で言った。 え? なんで吉原と一ノ瀬が居るんだ!?
そして一ノ瀬は口を押さえて真っ赤になっていた。
もしかして俺の指湿ってるのって一ノ瀬の口の中に指突っ込んだからか!?
「うあああッ、ごめんなさい! 目覚まし止めようと思ったら周君の手がッ」
一ノ瀬は横からティッシュを取り俺の指をゴシゴシと拭いた。
てかまだ8時なのに…… それより父さん居たよな?
「吉原、俺の父さん下に居ただろ?」
「え? うん、居たね。 ご挨拶したら周ちゃんの部屋に行っていいよって。 ね? サヤちゃん」
「うん、周君のお父さんすんなり通してくれた」
まったく勝手に通しやがって……
「私達一応ノックもしたもんねぇー?」
「周君気持ち良さそうに寝てたから寝顔でも見てようねって芽依ちゃんに」
「そうかよ…… で、こんな朝早くからでお前ら眠くないの?」
そう言うと吉原がムムッとした顔で俺に近付いた。
「眠くないの? ってあんな事あったからドキドキしちゃって眠れるわけないじゃん! 周ちゃんは違うようですけどー?」
「み、右に同じ……」
あれ…… 一ノ瀬まで……
「いや、そういうわけじゃなくてハラハラし過ぎて疲れて寝ちまったんだって!」
「まぁそういう事にしとく。 ん? サヤちゃんどうしたの?」
「あ、えっと…… なんでもないよ!」
「んー、あ! 気遣い無用だよ。 だってサヤちゃんだもん」
吉原はニコッと一ノ瀬に微笑んだ。 だってって…… いいのか?
「あ、ありがとう芽依ちゃん」
「ん! だからこうして、こうしてっと! ほら、いつもみたいにね!」
吉原は俺の手を取って反対側に一ノ瀬の手を握らせた。 ええ? 吉原は何を考えているんだ?
「ふええ? よ、よろしいのでしょうか?」
「いいよね? 周ちゃん」
吉原は俺を見て頷けという感じの目線を送る。
「あ、ああ。 そうなのかな」
「そうだよ、それに周ちゃんが眠くないのって言ったせいでなんか急に眠たくなってきちゃったよ。 だから少し3人で寝よう?」
「寝るってこのベッドでか? セミダブルだけどいくらなんでも3人はキツいって」
「ぴったりくっつけば問題ないよ、ねぇサヤちゃん?」
「へ!? …… は、はい」
「じゃあゴロン!」
吉原は無理矢理俺をベッドの真ん中に押し倒した、そして一ノ瀬を左側に行かせて右側には吉原が……
というか一ノ瀬は吉原がどうしてここまでやっても何も言わないどころか吉原からやられているのでとても不思議そうな顔をしている。 俺もとても不思議なんだけど?
「狭くないの?」
「くっついていられるからいいかも」
「わ、私も……」
サンドイッチにされて身動き取れない……
それから何分経ったろう? 気付けば2人とも寝息を立てていた。 考えてみれば変わったようで変わってない。 吉原に好きと告げたんだけど……
まぁ変に一ノ瀬とも気不味くなってないからこれで良かったのかわからないけど。 それにしても2人が俺向きに寝てるから寝返りもうてないし寝ているのに見られているようでソワソワして寝れない。
狙ってやっているんじゃないのか吉原の奴め……
それより吉原の奴ベッドから落ちそうだな、こんなベッドに3人で寝ようなんて言うから。 まぁ腕にひっつかれてるし大丈夫だろうけど。 なんて思ってれば吉原は落ちる方向に俺を引っ張り案の定俺に引っ付いていた一ノ瀬ごと落下した。
「きゃあ!」
「うわっ!」
「あだッ!」
◇◇◇◇
芽依ちゃん一体何考えてるんだろう? あの時の告白で私ははっきりと周君からフラれた。 そう思ってた、そしてもう周君とは終わり…… そう思ってたんだけど私はそんなに物分かりがよくなくていまだに周君に縋ってる。
それがいけないってわかっていても。 でも芽依ちゃんは面白くないだろう、だからその内芽依ちゃんから疎まれて。 周君からも疎まれて……
そうなると思っていたのに芽依ちゃんは私が周君と前のように接してもいいと言わんばかりに。
だったらあの時の告白ってなんだったんだろう? 意味があったのかな? でもやっぱり周君と芽依ちゃんと変わりなく居られるってのが私の中では大きい。 いつまでこうしていられるんだろう? 周君と芽依ちゃん次第でそんなの明日にでも崩れてしまうかもしれないのに……




