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大晦日、どこかへ行ってしまった一ノ瀬を見つけた後、また出店に寄り3人で少しのんびりして帰る事になった。
「じゃあ私はこれで! 周ちゃん、サヤちゃんをちゃんと送って行ってね?」
「いつもちゃんと送って行ってるよ」
「芽依ちゃん…… いいの?」
「うん? いいに決まってるんじゃん! サヤちゃんだし」
「ん…… ありがとう」
吉原が帰るのを見届けた後、俺と一ノ瀬も家に向かう。 さっきよりはマシになったけどやっぱり一ノ瀬は元気ない、当たり前か。
「なぁ一ノ瀬」
「…………」
え? あれ? 無視した?
「一ノ瀬」
「…………」
やっぱり話したくないのかな? …… 試しに隣から一ノ瀬の前に出てみて止まってみた。
「うひゃあッ」
俺にそのままぶつかってしまう。 後ろにこけそうになった一ノ瀬を支えると目をパチクリさせてこちらを見る。 考え事していて話聞いてなかっただけか。
「な、何故いきなり前へ!?」
「あ…… ごめん、なんとなく」
「そ、それよりええと、あの……」
「え?」
一ノ瀬の腰に手を回して支えていた事に今気付いた。
「あ、悪い、つい」
「う、ううん! ぜ、全然気にして…… あ、じゃなくて、ええと…… 」
「へ?」
いきなり一ノ瀬に抱きつかれていた。 おいおい、吉原に告白したのにマズいだろこれ……
「あの、周君…… す、少しいいかな?」
「いや、ダメだろ」
そう言うと如何にもガーンという文字が頭の上に付いた一ノ瀬の顔が…… でもこれからはそうやって示していかないとダメな気がするんだけど、そう思うんだが……
「だ、だよね…… 」
物凄くしょんぼりさせてしまった。 一ノ瀬の気持ちに気付く前まではそうさせてもあまり気にしなかったんだけど……
「芽依ちゃんとなら納得って言ったの私だもんね。 うん、納得はしてる…… してるんだけどまだ私自身の気持ちが…… だ、だからね、周君の事ちゃんと吹っ切れるように頑張るから! だからいきなりよそよそしくされると悲しい……」
「それは……」
んん? あれ? でもそれで吹っ切れるんだろうか? 俺も一ノ瀬に突き放すように接するのは今となってはキツいものがあるけど……
「だから少しくっついていたい……」
なんか言ってる事とやってる事逆の事しているような気がする。
「うーん、でもなぁ。 吉原に悪いっていうか」
「へ、変な事はしないから!」
「変な事って」
あれ? 一ノ瀬の中ではこういう事しているのは変な事のうちに入らないのか? ここは人によっての尺度によるけど吉原はどう思うだろうか?
「抱きついたらするのは変な事じゃないのか?」
「………… ギリギリ違う…… んじゃないかな? よ、よくわかんないけど」
というより一ノ瀬がくっついてから離れてくれない、それどころかどんどん抱きしめる力が強くなっていく。
「あ、てかそろそろ行かないと。 夜中の2時過ぎてるぞ?」
「…… う、うん!」
「………… 一ノ瀬離れてくれないと歩けないんだけど?」
「ひあッ! そ、そうでした」
吉原、お前は一ノ瀬なら大丈夫みたいに言ってたけど大丈夫…… なのか?
一ノ瀬の家まで行くとなんか一ノ瀬は名残惜しそうだ。 俺もなんかソワソワしてくる……
「周君!!」
「うおッ、夜中に大きな声出すなよ」
「あうッ、そうでした。 あのね…… こ、今年もよろしくお願いします」
「え?」
「あの、その…… 吹っ切るって言ったけどそれまでの周君との思い出までは消したくないしやっぱりまだ周君は私には特別だしで………… と、とりあえずよろしくお願いします!」
「え、あ…… はい。 こちらこそよろしく」
「じゃあまた明日…… じゃないか! 明るくなったら」
そう言って一ノ瀬は家の中に入って行った。
また明るくなったら? あれ? 特にそんな約束もしてなかったけど……
そして何気なく携帯を見ると吉原からメッセージが来ていた。 一ノ瀬となんやかんやしていたのでちょっと時間が経っていた。
これはマズい、すぐ返さなかったから俺と一ノ瀬が何かしていると勘付くかもしれない、初っ端からこれとかって俺ってどうしようもなくないか?
メッセージをちまちま送るのも面倒なのでそのまま歩きながら吉原に電話する事にした。 流石に寝ているかな? と思ったがすぐに吉原は電話に出た。
「あ、起きてたか」
「うん、今お風呂から出たとこ。 周ちゃんは?」
「…………今帰った所」
「嘘だぁ、今の間怪し過ぎ」
「う…… ごめん。 まだ家に向かってる最中」
「もう〜、そんなしょうもない事で嘘つかなくていいから! サヤちゃんといろいろ話してたからでしょ?」
「全く持ってその通りです」
「だと思いました。 だってサヤちゃんの立場なら私だってそうなると思うし…… サヤちゃん大丈夫だった?」
「うーん…… どうだろ? 俺の事吹っ切るからって言ってたけど」
「そっかぁ、周ちゃんを吹っ切るかぁ。 うーん……」
「うん?」
「あ、ううん! それと朝になったらまた会いに行っていい?」
「え? 吉原も?」
「吉原も? って? あ、サヤちゃんにも誘われた?」
「まぁそうだけど」
「なら誘う手間省けたね! じゃあ3人で遊ぼう!」
そういう事になった。 俺は一ノ瀬としっかりけじめをつけるもんだと思ってたからある意味拍子抜けしてしまった。




