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今日はクリスマス…… だってのになんで私は仕事なのよぉーッ!!
サヤとイチャイチャしたいのに。 サボったのがいけないの? 私だって仕事な気分じゃない日くらいあるってのに!
でもまぁサヤと仲直り出来ただけでも良しとしなくちゃいけないのかもしれないけどクリスマスまで汚いオッサン相手しなきゃいけないなんて…… あうぅ、私のサヤ……
今頃何してるかしら? 渡井君とよろしくやってるのかしら? 考えただけで渡井君を八つ裂きにしたくなるけど我慢我慢。
そして支度を終えた私が外に出るとベンツが待機していた。
やだやだ、そう思いもう乗り慣れたベンツのドアを開けると……
「綾ちゃんお疲れ」
「疲れるのは今からでしょうよ」
「はははッ、今日はいつになく機嫌が悪いなぁ」
「当たり前でしょ? クリスマスなのよ? そんな時まで引っ張り回されちゃ堪らないわ」
「まがそう言うなって。 悪いとは思ってるから後藤さん今日はお金上積みさせてやるってよ?」
「そんなんするくらいなら他の子まわせば良いのに」
とまぁ、私は結構貢献してあげてるから待遇もそれなりにいいし何より困った時には助けてもらったりしてるから無下にも出来ないんだけど。
「吉田さんも大変ねぇ、いつも小娘のアッシーで」
「もう慣れたもんさ」
そうして車は街へと繰り出す。 窓から外を見るとどこもかしこもカップルで溢れてる。 いいなぁ、私もサヤと一緒にイルミネーションの中を歩いてみたいわ。
「吉田さん、今日は事務所に寄らないでこのままここで降ろして?」
「え? まだ早いし…… 事務所でのんびりしてからでも」
「クリスマスにヤーさんばかりの事務所でのんびりしても面白くないわ。 私だって女の子なんだから」
「はいはい、じゃあ後藤さんにはそう言っとくよ」
車から降り、吉田さんが行くのを見届ける。
さて、気分だけでもサヤと一緒に歩いてる妄想でもしながら時間潰そうかしら、ウフフッ。
でもやっぱりカップルが目にチラつくとムカつくわねぇ、全員死なないかしら? なんて思って歩いていると、ふと見た事ある人が。
あれって…… 東堂先輩か。 隣には女の人。 まぁ不思議じゃないわね、聞く所によれば吉原さんに振られたって聞いたわね。 まぁどうでもいいんだけど!
私は気付かないフリをして先輩の横を通り過ぎようとしたところ……
「んん? あれ? 君って」
「え? 何ですか?」
横にいた彼女らしき人物を放って何故か私に話し掛けてきた。
「どこかでお会いしました?」
「あはは、とぼけちゃって。 ほうら、サヤちゃんの友達の…… 確か藤崎…… 綾ちゃんだ。 へぇ、学校じゃない時ってそういう感じなんだ、ふぅん」
「そんなに見つめても何も出ませんよ? じゃあ私はお邪魔なようなのでこれで」
その場から立ち去ろうとすると先輩に腕を掴まれた。
「ねぇ、その子誰よぉ?」
「ちょっと黙っててくれないか? いや、それより今日はこの子と用事が出来た。 悪いけど俺達これで失礼するよ」
「は、はぁ?」
先輩と最初に居た女の子はわけがわからず食い下がる。 だが先輩がしつこいと言わんばかりに冷たい表情をするとその子はムスッとして帰って行った。
「ていうか私もわけがわからないんですけど? 私は先輩と違って本当に用事があるんで手離してくれません?」
「いやいや、それは出来ないなぁ、ちょっとついてきなよ?」
「はぁ?」
そう言って先輩は私の手を引っ張り無理矢理よくわからない所へと連れて行く。 心なしか人気がない場所に……
「なんですか? 私の体目当てなんですか? こんな所に連れてきて」
「わけがわからないって言ったね? 身に覚えないかい?」
「わかりませんしどうでもいいです」
「じゃあ芽依ちゃんの頬の傷はどうかな?」
「それが何か?」
「やったの君だろ?」
「なんでそんな事を?」
あれー? どこかでバレたかな? まぁあの時大声出してたし先輩知り合い多そうだし。 まぁバレてるっぽいな。
「そんな態度取ってたってもうわかってるからさ。 でね、俺が言いたいのは芽依ちゃんの顔を傷付けた君って許せないなぁって思ってね」
「ああ、そういう事。 でも私もう吉原さんに謝って許してもらったし、先輩もいつまでもそんな事でウジウジ言ってないで前を見てしっかり生きて下さい、じゃあ今度こそさよなら」
「待てよ」
クルッと後ろを向いた私の肩を先輩はガシッと掴んだ。 その手にあまりに力が入っていたのでちょっと…… というかかなり痛い。
「離してよ? 痛いんだけど」
そう言った瞬間力任せにドンとそのまま押されて地面に転ばされた。 あちゃー最悪、汚れたじゃん。
「君って随分勝手だな、芽依ちゃんが許しても俺が許すと思ってる?」
「吉原さんがもういいって言うならいいじゃないですか? 相手の望まない事しても吉原さんは喜びませんよ?」
あれれ? 言ってて自分にブーメラン。なんて思ったけど私は私。 この人もこの人で動いてるんだろう。 まぁ面倒この上ないや。 とりあえず立ち上がり考える。 どうしようかな?
「それで? どうしたいんですか?」
「そうだなぁ」
「うぐッ!?」
私は先輩にお腹を殴られていた。 私は地面に膝をついていた。 何よ、女の子に暴力振るうなんて最低じゃないこの人。 でも生憎そんな手合いには慣れていた、お客さんもたまに変なプレイしてくるし。
「先輩がこんな事する人なんて思いませんでした、いつもの爽やかさはどこへ行ったんですか? ああ、そうか。 吉原さんにフラれて余裕ないんですね、わかります。 でもこの辺にしといた方がいいんじゃないですか?」
「そう言う君は余裕だなぁ、状況わかってる?」
「先輩こそ」
再度私に何かしようと近づいた途端先輩はスーツの男にガシッと頭を掴まれる。
「あ?」
「あ? じゃねぇよ。 うちの綾ちゃんに何してくれてんだ?」
「吉田さんナイスです、後その他の人達も」
「は?」
先輩は周囲を見渡すと何人かのスーツのオッサンに囲まれていた。
「連絡ないと思ったらこれだ、仕事すっとばして何してんだよ? 後藤さんカンカンだぞ? まったく……」
「ごめなさーい! この人に絡まれちゃってて。 あ、程々にして下さいよぉ? 一応顔見知りなんで! 後口止めよろしくです」
「わかったからさっさと行けよ?」
「はーい!」
「え? あ、おい!」
「はいはい、にいちゃんはちょっとこっち来ようか?」
「え?」
後ろから先輩の声が聞こえるけど面倒な客と同じで無視無視!
はぁー、本当に最低なクリスマス。 殴られた上に今からオッサンの相手なんて。




