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俺と吉原は屋上から体育館裏に来ていた。 吉原が先輩にあんな事言うなんてびっくりだ。



「ふぅ…… 周ちゃん大丈夫?」


「ん? ああ」



もっとボコボコにされるかと思ったけど情けない事に吉原が庇ってくれたお陰で目立つのは顔を殴られたくらいだ。 俺も先輩の顔殴っちゃったけど。



「顔腫れてないかな? 伸一がつっこんできそうだし」


「んー……」



吉原が俺の頬に手を伸ばす。 そしてピトッと冷んやりした吉原の手の感触が頬に。



「少し…… 熱い?かな?」


「やっぱり腫れちゃうかな。 まぁいいか、ていうよりお前こそ大丈夫か?」


「え? 何が? ああ……」



吉原は一瞬なんの事? と思ったようだがすぐ先ほどの先輩の件に関してと察したようだ。



「ふ…… ふふ……」


「え? 吉原……さん?」



吉原はいきなり下向きになり肩を震わせている。



「ふふふッ、アハハハハッ!」



そして急に笑い出したのだからビビった。



「お、おい、大丈夫か?」


「はぁ〜、ごめんごめん。 思い出したらおかしくて。見た? 先輩のあの顔」


「見た? って言われてもお前が俺を抱きしめてたから表情見えなかったし」


「あ、そっかぁ。 でも清々した! 周ちゃんが前に絡まれてた時私何も出来なくてサヤちゃんに先越されちゃうわで。 それに言った相手が東堂先輩だしね! なんだか笑えてきちゃう」



なんかよくわからないけど吉原にとってスッキリしたんだな。





そして時は過ぎ終業式になる。



「はぁ〜、もう今年も終わりだねって感じになるよねぇ」


「周君とクリスマス…… 嘘みたい」


「サヤちゃん、私も居るけど?」


「あ! そうでした。 芽依ちゃんとクリスマス……」


「もう〜、取って付けたみたいに言わないの! ねぇ、周ちゃん楽しみだね!」


「うん? ああ、そうだな」



多分こういう関係でのクリスマスは最初で最後だろうなと思いながら返事をした。 その時……



「どわぁッ!」



一ノ瀬が誰かとぶつかる。 一ノ瀬は鼻を押さえて涙目になっていた。 こいつってよく鼻をぶつける奴だな、その内本当に潰れるんじゃないだろうか? というか誰とぶつかったんだと思うと…… うん、知らない奴だ。



「あ、ごめんな? 大丈夫か?」


「うへぇ…… そ、そちらこそ大丈夫でしょうか?」


「俺は大丈夫だけど君のぶつかり方の方が痛そうだったから。 鼻血とか出てない?」



そいつは一ノ瀬を心配そうに見つめた。 



「ふ…… ふぁい、よくぶつけるんでもう慣れまひた」


「あはは、何それ? でもまぁごめんな? ん?」



俺の視線に気付いたそいつは俺に何か? という感じで見る。



「ああ悪い、誰かなって思ってさ」


「ああ、相葉あいば 哉太かなとだよ。3組の…… 君らは渡井と吉原と一ノ瀬だよな?」


「あれ? 知ってるのか?」


「まぁ吉原と一ノ瀬ってうちのクラスでも可愛いって評判だったし。 その2人と仲良い渡井も自然にな。 じゃあ俺はこれで。 もうぶつかんなよ? ははッ」



そう一ノ瀬に言って相葉は帰って行った。 なんか爽やかな奴だなぁ。



「もうぶつかんなよ? だって」



吉原は一ノ瀬の鼻をすりすりしながら言った。



「ふぁい……」



そして吉原とも別れ俺と一ノ瀬は一緒に帰る。



「周君」


「なんだ?」


「周君って何か欲しい物とかある?」


「なんだよいきなり…… 欲しい物ねぇ」



なんだろ? いきなり聞かれても……



「そういう一ノ瀬は?」


「ふえッ!? そ、それを私に聞くの!?」



え? 聞いちゃいけなかったか? 一ノ瀬は物凄く困った顔をしている。 だってそう振られたから俺も単に聞き返しただけなんだけど……



「そんなに不味かったかな?」


「だ、だだだだって…… そんな恥ずかしい事聞かれるなんて」


「え? 恥ずかしい事?」



一ノ瀬の頭では一体どういう変換の仕方をしているんだろう?



「てかそんな恥ずかしい質問を俺に投げかけたのか?」


「ぐふぅ…… ブーメランになってかえってきた」


「マジで? 俺にそんな恥ずかしい事言わせる気だったの? そもそも一ノ瀬の欲しい物ってなんだ?」


「そ、それは………… です……」


「え?」



ゴニョゴニョしてまったく聞こえなかった。



「なんて言ったんだ」



一ノ瀬は立ち止まり顔が真っ赤どころか手まで真っ赤になっている。



「わ、わわわ私がほほはほほほほッ」


「落ち着けって。 呪いの笑い袋みたいになってるぞ?」


「ほッ!? 欲しいのは………… 周君です……」



一ノ瀬はやっと言えたという感じに壁にもたれ掛かる。



「一ノ瀬……」



俺はそんな一ノ瀬の頭にポンと手を置いた。



「ごめんな? 大晦日の日に何があってもちゃんと俺あの時の答えを言うから…… それまで待っててくれるか?」


「周君………… はい」



一ノ瀬は頭に乗ってる俺の手に両手を乗せてコクンと頷いた。

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