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「ふんふんふーん♬」



藤崎は鼻歌を歌いながらご機嫌だ。 なんせ一ノ瀬の家に行くのだから。



今度はちゃんと一ノ瀬に連絡を取り俺と吉原も来るのならと了承した。



「周ちゃんと歩くのなんだか久し振りに感じるね」


「まぁしばらく吉原休んでたしな」


「とろとろ歩いてないで早くしなさいよ。 サヤが待ってるんだから!」


「お前を待ってるわけじゃないってのに」




そうして一ノ瀬の家に着くと藤崎の興奮はもうMAX状態だった。



「ここでサヤは暮らしてるのね、ご飯食べたりトイレ行ったり!」



なんでトイレ行ったりが出てくるんだろう? 不気味でしょうがない……



「じゃあ……」


「ちょっと待ってよ! 心の準備が」



インターホンを鳴らそうとしたが止められる。 吉原の時はさっさと押したってのにえらい違いだ。



「い、いいわ、やってちょうだい」



何故か変に決意のこもった言い方をする藤崎、これから手術でも受けるような面持ちだ。



ピンポーンと鳴らすと連絡していたので一ノ瀬本人が出て来た。



「周君、芽依ちゃん!」


「サヤ!!」



俺と吉原を押し除け藤崎は会った途端に一ノ瀬に抱きついた。



「うええ!? あ、綾ちゃん!?」


「もう! 会いたかった、会いたかったの!」



まるで子供のように一ノ瀬に抱きつき押し倒しそうな勢いだ。



「あ、綾ちゃん、苦しい」


「藤崎、玄関で何やってんだよ? 一ノ瀬も苦しそうだから一旦離れろよ」


「そ、そうね! じゃあサヤの部屋に行こう?」



なんか藤崎の奴息が荒いけど大丈夫だろうか? まぁ来た時から荒かったけど。



「ここがサヤの部屋ね」


「う、うん……」



すると藤崎は一ノ瀬のベッドに飛び込み枕に顔を擦り付けている。 ここまでくるとドン引きだ。 いや、もう最初からドン引きしてるけど……



「そうだ!」



藤崎はパッとベッドから起き上がると一ノ瀬に近付いた。 忙しい奴だな……



「サヤ! 頬っぺた見せなさい!」



吉原と同じく絆創膏になっていたのをペリッと剥がし藤崎は傷を見る。



「ああ〜、やっぱり痛々しい。 私のサヤがこんなになっちゃって。 おまじないしてあげる」


「お、おまじない!?」



ペロッと一ノ瀬の傷を藤崎は舐めた。



「ひ、ヒイェァァッ」



一ノ瀬は奇声をあげて戦慄していた。 見ている俺もなんだか鳥肌が立ってきた。



「ふ、藤崎さん、サヤちゃんビックリしてるからそれくらいにしといたら?」


「え? そんな事ないよね? サヤ」


「しゅ、周君、ヘルプミー」


「そんな事あるだろ。 見ろよ一ノ瀬の顔を。 思いっきり憔悴し切ってるだろ」


「そんなサヤも可愛い可愛い! もう本当にサヤが可愛いくて忘れてた。 サヤ、今更だけどごめんね? 許して欲しいの」


「ゆ、許しますんで何卒ご容赦を……」


「嬉しい! ちゅッ!」


「ひええ……」



おい、吉原の時と全然態度が違うぞ。



「吉原、あんまり気にするなよな?」


「え!? あ、うん。 ある意味これよりはマシかなって思ってる、あはは」


「あ、綾ちゃん、お気持ちは嬉しいんだけど私が好きなのは周君なわけで……」


「うん、認めたくないけどそういう事になるんだよね。 でもね?」



藤崎は俺をジトッと見つめる。 なんだよ……



「私誰も傷付かない方法を見つけたの!」


「へ!?」


「人間の身体は手足が一本ずつ、だから2人まではOKって事で!」


「う、うん?」



え? 何を言ってるんだ藤崎の奴……



「サヤったら両手に花だね! 一本は花でも枯れ花だけどさ!」



俺を見てそう言った。 俺が枯れ花だってか!? そりゃ大した事ないけどさ…… なんてとんでも理論繰り出すんだこいつは。



「ええ!? しゅ、周君!」



思わず一ノ瀬が俺に抱きついていた。



「BLならまだしも…… うえ〜んッ」


「いや、そっちも勘弁だけど…… そのくらいにしとけよ藤崎」


「だって私また少し学校休むからいいじゃない?」


「え? なんでだ?」


「私落ち込んでて仕事休んでちゃったし明日は朝から忙しいの」


「仕事?」


「あ、ううん。 こっちの話よん! ねぇ、だから今日はサヤに目一杯甘えさせてもらうからね!」


「お、お助け……」



もはやオヤジみたいな藤崎の一ノ瀬に対するセクハラ紛いな絡み方にだんだん見ていて恥ずかしくなってきた。



「うわ…… 藤崎さん大胆、あんな事まで」


「え?」


「え!? あははッ、た、大変だね」



そしてようやく帰る事になりげっそりとした一ノ瀬は力なく俺達を見送った。




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