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09


「おい、今日調理実習一緒の班になってやるよ」



伸一がそう言ってきた。 今日の家庭科の授業の内容だ。 こういう時はこいつが居て良かったと思える数少ない機会だ。



「好きな者同士で4人1組で班を組んでいいからな」 と言われていたがはっきり言って勝手に決まっててくれた方が友達の少ない俺には楽なのだ、まったく……



でも伸一が居れば他の奴もあいつが勝手に決めてくれるだろうと安心できる。



クラスの連中の話に少し聞き耳を立てると他の奴らも一緒になろうとかあいつとは嫌だとか聞こえてくる。 そして……



「芽依〜! 一緒の班になろう?」



吉原も他の友達からお誘いを受けている。 吉原は誰に頼まずともこういう時って可愛いからか性格が良いのか取り合いになる事が多いんだろうな。



それとは逆に…… 俺は一ノ瀬をチラッと見ると一ノ瀬には誰もお誘いが掛からない。 あいつにも一応少ないながら友達は居るようだけどクラスが違うもんな。 弁当とかも違うクラスで食べてるし。



そんな風に思って一ノ瀬を見ていると目が合ってしまった。



「ん? どうした周人」


「え? あ、いや……」



俺の視線の先を伸一も見る。



「あ〜、一ノ瀬か。 まぁなんというか当然の結果だよな、あいつが入るのは誰も組む相手居なかったとかある意味罰ゲーム的なあれだもんな。 ってお前まさか……」


「違うって! ていうかいくらなんでも酷すぎね? 話してみると意外と面白いぞ?」


「え? え? やっぱお前……」



と、伸一と話していて気付いた。 これって内容は違うけどこの前吉原が友達と話してたのと全く同じような会話じゃないか……



そう思うと苦手とかそんな事言って吉原を避けてたりした自分にどうしようもなくムカついてきた。 やっぱり俺って結構最低だな。



そして俺は席を立って一ノ瀬の前に来ていた。 吉原にはもう完全に嫌われてしまったかもしれない。 でも…… 一ノ瀬とは友達だ。



「ふあ? 渡井君?」


「一ノ瀬、俺と同じ班に入らないか?」


「え? 私なんかが? どうして? いいの?」


「お、おい! マジかよ周人!?」


「別にいいだろ? いつもと違って」


「いや、確かに違うけど…… でも、だってなぁ」


「伸一の言う事は気にすんな。 一ノ瀬、一緒に組もう?」


「…… う、うん!」



一ノ瀬は嬉しそうに頷いた。 だがここで予想外な事が起こった。



「ええと…… ごめん! 私組みたい人いるから今日はパス!」



後ろから吉原のそんな声が聞こえた。



「え〜! 芽依もう決まってたの? 」



聞こえたと思ったらこちらに近づく足音。 そして俺の目の前の一ノ瀬の目が俺の後ろ側に注目する。 振り返ると吉原が居た。



「私、渡井君と同じ班になるね」



その言葉にみんな一瞬騒つく。



「え? 渡井と?」


「はぁ?」


「なんで?」


「え? マジで!?」



伸一も当然ながら驚き、そんな疑問の声が走ってる中……



「渡井君、いいかな?」



いいかなって…… この前の事で俺の事完全に見放したと思ってたのに。



「一ノ瀬さんも…… いいかな?」


「うえ!? あ…… う、うん」



一ノ瀬がそう言って俺を見た。



「えっと吉原こそ俺なんかと一緒の班でいいの? なんか変な目で見られてるけど」


「そんなの…… 気にしなくていいよ」



吉原は俺に向かってパッと微笑んだ。






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