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キスされたって? 東堂先輩に?



吉原は俺にこれまでの事を話し俺の様子を伺っているようだった。



「…………」


「吉原…… ええと」


「何か……」


「え?」


「何かないの? 怒ってくれないの? 私キスされたんだよ? どうして呆けてるだけなの? なんで!?」



吉原は俺の肩を痛くなるほど掴んで言った。 何もないわけないだろ? でもいきなり過ぎて。



「落ち着けよ吉原、俺だってビックリしてんだよ」


「落ち着け? だって落ち着ける!? 先輩に仕返ししてほしいとかじゃない! だけど、だけど…… 周ちゃん私が何を言いたいのかわかる? 慰めてほしいの、こんな時優しく抱きしめてほしいの」


「…… ごめん」


「ッ!? バカッ! 周ちゃんのバカッ!!」



吉原はそう言って俺の家から出て行ってしまった。



自業自得だ。 俺は楽観的に考えていたのかもしれない、こんな状態いつまでも続けていいわけない。



吉原が先輩に付け入れられるのも俺がはっきりしない態度だからじゃないか。 一ノ瀬だって俺の答えをずっと待ってるんだ。



しばらく考え俺は吉原にLINEを送った。 だけど既読にならない、当然か…… 怒らせちまったもんな。



明日は学校だ。 よし、明日…… 明日俺は吉原と一ノ瀬にちゃんと伝えよう。






次の日学校へ向かう時一ノ瀬の家に近付くと一ノ瀬が出て来た。



「周君おはよう」


「おはよう一ノ瀬」


「ん? 周君どうかした?」


「一ノ瀬、今日大事な話あるんだ。 だから部活終わるまで待ってるから付き合ってくれないか?」


「ふえ? 大事な話? ………… うん、わかった」




一ノ瀬は少し間を置いて答えた。 多分俺の様子から何を言いたいか察したかもしれない、後は吉原にも伝えなきゃ。



学校へ着き、吉原を探すと篠原達と一緒に居た。 徐に吉原に近付くと気不味そうに吉原は篠原達の陰に隠れる。



「渡井、あんたまた芽依に何した? 凄く嫌そうにしてるけど」



篠原が俺を睨みつけてそう言った。



「ま、まりえ、私嫌そうにはしてない! てか…… そう見える? ただ……」


「あのさ吉原、ごめんな。 今日大事な話あるんだ。 だから放課後俺に付き合ってほしい」


「え?」


「ここじゃ言えないの?」


「まりえ! この様子だと渡井……」



篠原と西条はコソコソ何か話している。そして……



「ふんふん、だね。 芽依、渡井がそう言ってるんだから付き合いなさいよ?」


「……あ、うん」



なんかこいつらにも察さられた。 まぁもういい、今日俺は2人に言うんだ。



そして授業が始まる。 2人になんて言おう? 俺もう一方に嫌われてしまうかもしれない、そんな考えがずっと頭の中でグルグルと渦巻き全然何も頭に入ってこない。



吉原と一ノ瀬も俺に好きだって言おうと思った時こんな感じだったのかな? 俺って臆病者だな、引っ込み思案な一ノ瀬だって俺にちゃんと好きって伝えたのにな。



そう考えると俺で良かったんだろうか? なんて思いまで出てきてますます不安になる。 だから俺ってこういうの苦手なんだよ……



ボケーッと机から窓を見て考えていると肩をトントンと叩かれる。 振り向くと吉原が居た。



「あの…… ごめんね」


「あ…… いいよ。 俺こそ気の利いた事すら言えなくて悪かったよ。 吉原がしてほしい事全然してやれなくてさ」


「ううん、もういいんだ。 私冷静じゃなかったし。 ね! お昼一緒に食べよう? サヤちゃんも誘ってさ」


「わかった」



そして授業も終わりとりあえず吉原と屋上の階段の踊り場でのんびりしていた。



「気になってたんだけどさ、大事な話って?」


「ああ、まぁそれは一ノ瀬にも話したいからさ」


「ふぅん…… まぁそりゃそっか。 なんかちょっと緊張しちゃうね! あはは」



俺の心はもう決まっていた。 そろそろ一ノ瀬の部活も終わるので迎えに行こうという時……



「なんか緊張したらトイレ行きたくなっちゃった。 周ちゃんはサヤちゃんの所に先に行ってて?」


「ああ、じゃあ待ってるぞ」



一ノ瀬の所へ向かうと既に一ノ瀬は美術室を出ていて俺をキョロキョロと探しているようだった。



「あ! 周君」



にっこり笑ってこちらへ走ってくる一ノ瀬を見てやっぱり前と比べて表情豊かになったなぁと思う。



「遅くなっちゃった」


「気にすんなよ。 吉原トイレに行ってるから少し待ってようぜ」


「うん。 あのー、それで大事な話とは? わ、私気になり過ぎてどうしようかと……」


「ああ、それは……」




「へぇ。サヤの様子がおかしいと思ったらそういう事か。 ねえ、その大事な話って私にも教えて欲しいなぁ」



藤崎がいきなり俺達の横から現れ針で刺されるような鋭い視線をこちらに向けそう言った。 なんでこんな時に藤崎が来るんだよ!?



物凄く嫌な予感がするのは気のせいだろうか……






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