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吉原が帰って行ってしばらくして俺は家で映画を観て時間を潰していた。



最近吉原や一ノ瀬と結構居るお陰でこうして家まで来てもらって1人になると少し物寂しい気持ちにさせられてしまうな。



前までは当たり前だったからなんとも思わなかったけど。 それにご丁寧に吉原の奴夕飯の作り置きまで置いて行きやがって……



それがまた俺の少し寂しいなという気持ちを加速させてしまう。 そんな事を考えて映画を観ていると玄関がガチャッと開く音にビックリする。



誰だ? いきなり何もなしに玄関開ける奴なんて……



吉原は帰ったし俺の家にこんな感じで入ってくる奴なんて泥棒とかしか考えられない。 と思いそっとリビングから顔を出して玄関を見ると目に涙を浮かべさっき帰った吉原の姿が。



「周ちゃん……」


「え? 吉原!? なんで?」



吉原は走って洗面所の方へ行った。 そして何やらうがいを始めた。 そして収納ケースから開けてない歯ブラシを取り出し…… ていうかよくそこに置いてあるってわかったな。 あ、掃除してたからか。



そして新品の歯ブラシを開けて歯磨きまでしだした。



一体何してるんだ!?



「おい、吉原?」



俺の呼び掛けは無視してそのまま歯を磨き終わるり、吉原は俺を見て勢いよく突っ込んできて俺を押し倒して抱きしめた。



「はあ!? え? な、何?」


「キスしていい?」


「キス? なんでいきなり?」


「どっち!?」



大きな声で吉原は俺に尋ねる。 てか話が見えないんだけど……



「ええと……」


「わかった」



何がわかったのかわからないけど吉原はそう言って俺の顔を両手で押さえた。



「んッ!?」



吉原はそのまま俺にキスをした。 吉原の柔らかい唇が俺の唇を包み込んだ、どうしたんだ? という気持は俺は初めてキスをした感覚に吹き飛ぶ。



ゆっくりと唇を離す吉原は悲しそうな顔をしていた。 キスしていいって聞いておいて…… もしかして俺って何かおかしかったか? と不安になる。



「なんでそんな顔してんだよ?」


「キスされた……」


「お前がいきなり」


「違う! 先輩に」


「は?」


「周ちゃんの家から帰ってる時偶然会って……」



吉原はそれまでの経緯を話し出した。








◇◇◇








「はぁ〜、脂ぎった汚いオヤジだった。 これで金払い悪きゃフルボッコ確定ね」


「お前だったら大抵満足してくれるだろ? なんせここ最近じゃお前が1番稼いでくれるな」


「だったら私の取り分もう少し多くしてくれてもいいんじゃない?」


「こっちもビジネスだ、わがまま言うな」


「こんな事してチビチビ稼いでるセコい人達に言われる筋合いないわ」


「まぁそう言うな。 こんなセコい事でも大事なシノギの一環だ」



そう言って札束を数えながら男はほくそ笑んだ。



まぁお金さえ貰えればなんでもいいけど……



夜の営業が終わり私は家に帰る。 帰っても誰も居ないけどね。 両親は私が幼い頃両方他界して私は誰からも受け入れられず今は1人暮らしだ。



私が一体何をしたっていうの? なんて事今更言っても仕方ない。 受け入れられはしないが資金面は親戚からの援助は受け学校にも通えてる。 灰色の日々なのは変わらない。 そんな私は次第に道を踏み外して行った。



最初は悪友とオヤジから金を巻き上げ悪さをしていた。 そんな事をしているうちにスカウトを受け今の営業をやる事になった。 まぁ同じ事をしているだけだけど裏から更に強力なバックアップが加わったってくらいかな。



私は学校では大人しく真面目に過ごす事を選んだ。 前の私と似たような遊びをしている西岡さん達には程なくして私の正体を知られたけど所詮はお子様レベルのあの子達なんて脅せばどうにでもなった。私もお子様だけどね、ふふッ。



学校で真面目に過ごしている私はそれはそれで心地いい。 こういう風に過ごせたらどんなに幸せだろうといつも思う。



そんなある日、地味な部活を選んだ私にあの子との出会いがあった。




「ぶへッ」



美術室から出る時ひとりの女の子とぶつかった。



なんて鈍臭そうな子なんだろう。 見た目も地味だし典型的なオタクね……



「大丈夫? 」


「いたた…… 大丈夫です、前方不注意でした」



おでこを押さえて私に謝ってきたこの子の顔を見て顔が真っ赤になった。 女の子なのに……



なんて可愛いんだろうこの子。 野暮ったい前髪で隠しているけどチラッと見えた素顔に私は見惚れた。



「ええと……」


「あッ、ごめんごめん。 ちょっとボーッとしちゃった。 私は藤崎綾。 そちらは?」


「うえッ!? い、一ノ瀬沙耶華です!」


「一ノ瀬さんも美術部?」


「え? ええと、はい……」


「そうなんだ! なんだか一ノ瀬さんと私仲良くなれそう、これからよろしくね!」



私はその時からサヤに特別な想いを感じるようになっていた。





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