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「なぁ、あの地味な女とお前知り合いだったの?」


「ん? ああ、まぁ」


「地味と言っても一ノ瀬の例があるしあの手の女は磨くとめちゃくちゃ可愛かったりしてな」



今回は鋭いな。 そんな確率は滅多にないと思うけど藤崎は確信犯だからな。



藤崎が来た事で引き続き中の様子が気になる……



どれどれと覗いてみると中が何やら騒がしい。 藤崎か? と思ったがあいつは学校モードなので大人しいはずだ。



騒いでいたのはさっきの美人な女の子だった。



「私があーんってしてるんだから黙って言う通りにすればいいのよ!」


「ふざけんな! こんな所で!」



気の強そうなその女の子はやっぱり気が強かった。 ありゃ彼氏大変だな……



一方で西岡達が藤崎が来た事で藤崎の様子を伺っている。 吉原と一ノ瀬も少し意識しているようだ。



まぁいくら空気読めない一ノ瀬でもこんな所で藤崎を問い詰めたり出来ないようで普通に接している。



藤崎は顔が緩んでいた。 一ノ瀬にはあんな顔するんだな。 そして注文を承ったであろう一ノ瀬は藤崎から離れる。



それにしてもあそこのバカップルはいつまで騒いでんだ? そして少し経ち一ノ瀬が藤崎へ料理を持って行こうとしていた時だった。



「あー、なんか私も食べさせてもらいたいなぁ。 はい、今度は私にあーんして?」


「お前ずっとそうやって口開けてる気なの?」


「食べさせてくれないからでしょ! 早くしなさいよ!」


「わかったから静かにしろよ……」


「わーい」



彼氏がその子に頬張らせた時、後ろに引いた女の子の頭がちょうど藤崎へと向かっていた一ノ瀬の背中に当たった。 なんてタイミングの悪い……



「どわッ!」


「え?」


「ん? きゃっ!」



なんと一ノ瀬は藤崎の頭の上にケーキを落としてしまった。 これには遠巻きから見ていた西岡達もギョッとした顔をしていた。



「嘘ッ!? サヤちゃん!」


「はわわわッ、やっちゃった……」


「…………」



ケーキまみれになって黙って俯く藤崎…… これってヤバそうだ。 だって西岡達も青い顔してるし。



「おい、お前何やってんだよ」


「あらぁ〜…… 」



バカップルも言葉も出ない。



「ごごごご、ごめんなさい、藤崎さん!」


「大丈夫!? 藤崎さん」



一ノ瀬が慌ててタオルを持ってきて藤崎の顔に触れ付いたケーキを拭く。 藤崎の表情が見えない…… が、チラッと一ノ瀬の隙間から見えた表情は恍惚な顔を見せていた。 見間違いじゃないよな?



そして吉原も駆け付けようとすると藤崎は手で制止する。 吉原には少し厳しい表情をして……



「え?」


「いい。 一ノ瀬さん、ここにも。 あ、ここにも付いてる」


「は、はい!」



藤崎は胸の辺りや脚に掛かったクリームを一ノ瀬に拭いてのせがむ。 なんかとても気持ち良さそうな危ない顔をしている、大丈夫か?こいつ……



大体拭き終わるとさっきのバカップルの女の子が藤崎に謝りに行った。



「えーと…… 私のせいのようなんもんだから…… ごめんね?」


「いえいえ」



うーん、藤崎はとても満足気だ。 ある意味このバカップルのお陰で藤崎にとって嬉しいハプニングが起きたという事か?



「たく…… 気を付けろよ?」


「わかってるわよ!」



バカップルは席へと戻り、拭いたといっても汚れは取りきれない藤崎はコーヒーだけ飲んで出てきた。



「災難だったな?」


「うん、そうだね」



試しにそう言ってみたがそうだねと言ってる割には機嫌が良さそうだ。 藤崎が帰ろうとした時、東堂先輩がこちらに向かってきた。



げ…… まさかここに来る気か? その予想は当たり受付に来てしまった。



「やぁ。 ん? 甘い匂い」


「ああ、こいつ頭から一ノ瀬にケーキこぼされたんで。 そうなりたくなかったら来ない方がいいかもですよ?」


「あっははは! そりゃ災難だったね」



ポンと東堂先輩が藤崎の肩に手を置く。



「別に…… どうでもいいです」



東堂先輩にツンとした態度の藤崎。 やっぱり仲良くはないのかな?



「あらら…… まぁいっか。 それで? 当然芽依ちゃんもやってるだろ? 」


「そりゃまぁ……」


「じゃあ寄ってくよ」



そう言って先輩が入っていくと女子からキャーという歓喜の声が。 そぉいや昨日先輩はバンドのヴォーカルやって大盛り上がりしてたからなぁ。



「お前この後どうするの?」


「気になる?」


「いや、そこまでは」


「今日はこんなんだし早退しちゃおうかなぁ」


「一ノ瀬がお前に話したい事あるっぽいのに?」


「ふぅん? でも今日は帰るし一ノ瀬さんには後日改めてって伝えておいて?」



藤崎はそう言ってその場を去る。 そして再度吉原達の様子を見ると先輩はやはり吉原と話をしていた。



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