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「ほらほら〜!」
「そんなにハムスター好きだったのか?」
「か、可愛い……」
一ノ瀬がハムスターに戯れていると吉原がお菓子とジュースを持ってそっとドアを開け戻ってきて俺に静かにと合図して一ノ瀬に忍び寄る。
その持っているお盆と今の状態の一ノ瀬を脅かそうとするなんて嫌な予感しかしない……
「わッ!!」
「うひゃあッ!!」
「ええッ!?」
後ろから吉原に脅かされた一ノ瀬は吉原の持っていたお盆を手で弾いて頭からジュースを盛大に被ってしまった。 勿論一ノ瀬に……
「うきゅう…………」
「あ〜! ごめんサヤちゃん、まさかこんな事になるなんて……」
俺は容易に想像出来たぞ?
頭からオレンジジュースを被り制服までびしょ濡れになってしまった一ノ瀬。
ブレザーを脱ぎシャツになると透けて下着が……
「本当にごめんッ! すぐに洗わなきゃ!」
「うえ〜ん、ベトベト……」
「お風呂入ってきて? 着替えは私の貸すから」
「は、はい…… 私こそ絨毯汚しちゃってごめんなさい」
「いいからいいから。 脅かした私悪いんだし…… それよりこれ乾くかな?」
吉原が一ノ瀬のブレザーを広げて不安そうな顔をする。 何やってんだこいつら……
「お、おい! 一ノ瀬、ここで脱ぐな! 俺も居るんだぞ!?」
「はへ? そ、そうでした!」
「サヤちゃんお風呂場行こう? あ〜ん、ほんとごめんね? 渡井君ちょっと待っててね」
ドタバタと一ノ瀬と吉原は階段を降りて行った。 初っ端かならやってくれるな吉原の奴も……
そしてすぐ吉原は戻って来て俺の後ろに回った。
「渡井君ちょっとごめんね?」
「え?」
吉原が俺に退いてと促し俺の後ろにあった収納ケースの引き出しを開けるとそこには下着が…… こんな所にあったのか、思わず見てしまった。
吉原は急いでいて気付かないのかそこから下着を取り出し閉め忘れて部屋を出て行った。 おいおい……
出したまま戻さない収納ケースには吉原と思しき手付かずの下着が。 ってこのままにしていると俺が変態に思われそうなのでそっとケースを戻した。
少しして吉原がふうッと一息ついて戻って来て俺を見た。
「あ…… もしかして見た?」
「いやいや! お前が開けっ放しだったから見ちゃ悪いと思って戻しただけだ」
「…… はぁ〜。 エッチ!」
「見てないって!」
見たけど……
「まぁ私が悪いし仕方ないか。 うん、そういう事にしておく」
「まったく…… こうなるの目に見えてたわ俺は」
「だって…… サヤちゃんってつい脅かしたくなっちゃうんだもん。 やり過ぎちゃった」
「ほんとそうだな」
「制服は…… 乾かなかったら私の貸しちゃおッ!」
「え? じゃあお前どうすんの? 明日も学校なのに」
「えへへ〜。 実はもうひとつあるんです、ジャーンッ!」
クローゼットを開けると確かにもうひとつ制服があった。
「なんだ。 用意がいいなお前」
「うん、もし何かあって制服ダメになったらと思ってもう1着買ってもらったんだ。 あ……」
吉原がしまったという顔をした。 もし何かあってって…… 西岡達にいじめられての事か?
「吉原、お前本当にこのままでいいのか? 」
「………… 仕方ないよ。 もうこうなっちゃったんだし」
「なんでそんな我慢するんだよ? そこら辺黙ってちゃわかんねぇよ。 俺ってそんな頼りないか? …… まぁ頼りになる方じゃないってのは自覚してるけどずっとそのせいでお前に壁を感じるんだけど?」
「…………」
「わかったよ、やっぱそうなんだな」
「違う。 私そんな風に渡井君…… ううん、周ちゃんの事思ってないよ」
吉原が前のように俺の事を呼んだかと思ったら表情が曇る。
「じゃあ話してくれるよな?」
「………… うん。 わかった、話すよ。 でもどうしよう、サヤちゃんも居るのに」
「一ノ瀬に聞かれちゃマズいのか?」
そう聞くと更に表情が曇る吉原。 一ノ瀬も関係してるんだな…… でもこれを逃したらまた聞けなくなってしまいそうだ。
「だったら一ノ瀬が風呂から上がったらあいつを送ってまたここに来るよ」
「え!? ここに?」
「あ、吉原の部屋じゃなくて…… 吉原の家の前にな。 こっそり外とか出れるか?」
「あ…… うん。 大丈夫だと思う」
こうしてようやく吉原にこれまでの事を話してもらえそうになった。




