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「でね、まりえと由紀ったらその後なんて言ったと思う?」
吉原の奴、かなり喋るな。 あの後西岡達に見つからないように少しあっちに行ったりこっちに行ったりして引き返す。
もうここら辺でいいと言ったんだけど吉原は学校ら辺までついていくよと言って俺の隣を歩いていた。
そして校門まで来たところに……
「あ…… 芽依ちゃんに周君?」
「一ノ瀬、それに藤崎も」
「あれ? 吉原さんに渡井君。 どうも」
この間会った時とは打って変わり前に俺と吉原が会った時と同じく落ち着いている藤崎。 こいつ二重人格なのか? と疑ってしまう。
「サヤちゃん…… えっとさっき絡まれちゃってちょうど渡井君が通り掛かって助けて貰っちゃったの。 ね? 渡井君」
「ん? ああ、そんなとこ」
「え? 芽依ちゃん大丈夫だった? それに周君も」
心配そうな顔をして俺と吉原を見つめる一ノ瀬。 そんな様子を見た藤崎は……
「そっか、大変だったね。 じゃあ私はこれで」
「藤崎さん?」
「気にしないで。 私は用事思い出したから吉原さん達もいるしそっちと帰ってて。 バイバイ」
藤崎は俺達に手を振って帰って行った。 なんか一ノ瀬と帰ってるとこ邪魔しちゃったみたいだな。
「ええと。 じゃあ私もこれで」
「待って芽依ちゃん! 」
藤崎に続き吉原もクルッと背を向け帰ろうとした時一ノ瀬が呼び止める。
「寂しいよ、なんかそんな風にされると…… 私前の事本当に悪かったって思ってる。 あの…… だから」
「サヤちゃん…… ううん、こっちこそごめん。 なんでもないよって言ったくせに私こそ引きずってたみたい。 私ってバカだね」
「そ、そんな事ないよ! 芽依ちゃんごめん」
「あ〜! ほらほら、サヤちゃん泣かないで? うん、よし! じゃあ今日は私の家に招待しちゃう!」
「え!? 今からかよ? 大丈夫なのか?」
「あ…… そっか。 大丈夫かな? サヤちゃん」
「ええと…… 親に聞いてみる」
「あ、でも渡井君もついてくれば安全かもね」
「はぁ〜、まぁそうくると思った。 まぁ俺は別に大丈夫だけど」
そして一ノ瀬が電話をしてOKという事なので吉原の家に向かう事にした。
あ、今思えば一ノ瀬の家はなんか適当で大丈夫だったけど吉原の家は果たして俺が行っても大丈夫なのだろうか? もう時間も時間だし……
「そうだ、でもさすがに夕飯は2人の分ないと思うしどこかで食べていこう? それで大丈夫かな?」
「あ! 私お金が……」
一ノ瀬はごそごそと財布を取り出し溜め息を吐いた。
俺は親から夕飯代とか結構もらってたからさっきカフェに行った時も大丈夫だけど。
「じゃあ私奢っちゃうよ、ね!」
「そ、それは流石に悪い」
「いいからいいから!」
近くのファミレスへ寄り一ノ瀬がトイレに行った時思い出した。
「吉原、さっきのカフェ代返すよ。 元は俺が呼び止めちゃったしな」
「え? そんなのいいのに」
「いいから。 それでもいいと思うんだったらこれで一ノ瀬の分にすればいいだろ?」
「うん…… じゃあわかった」
「急に素直になるんだな」
「あはは。 なんかめんどくさい女になっちゃったね私」
「ほんとだよまったく…… まぁ俺もめんどくさい奴だからおあいこだな」
「ふふッ。 だね! 」
一ノ瀬がトイレから戻りメニューも決まり夕飯を済ませた。
「芽依ちゃんご馳走になりました。 後でいつか必ず……」
「わわッ、そんな畏まらなくたっていいって。 んふふ、そんなのいいんだよ」
吉原の奴嬉しそうだ、それに一ノ瀬も。
3人で話しながら歩いていると吉原の家にすぐに着いてしまった。
本当に俺は入ってもいいのだろうか? 一ノ瀬は女の子だからいいとして。
「ただいまぁ。 友達連れて来たよ」
吉原が玄関を開けると吉原の母さんらしき人物が出てきた。
「いらっしゃい、こんな時間に大丈夫なの? 芽依」
「うん。 2人とも家族に言ってるから大丈夫! ほら、上がって?」
うわぁ…… 吉原の母さんめちゃくちゃ美人なんだけど。 道理で吉原もこんな可愛いはずだ。
「お邪魔します」
吉原母と軽く挨拶をする。 なんで俺みたいなのがとか思ってるだろうか? うーん、ニコニコしてるからよくわからないや。
「私の部屋行こう」
そう言って吉原が部屋へと案内する。
「入って入って」
「わわわ…… 女の子の部屋に入るなんて」
一ノ瀬…… お前も女だろ? 少し緊張してるので言動がおかしくなってるなこいつ。 俺も吉原の部屋なんて少し緊張するけど。
「あはは、そんなに硬まらなくてもいいよ、私の部屋漫画とかないからあまり面白くないと思うけど」
「あ! いえいえ、そんな事は」
吉原の部屋に入ると綺麗でさっぱりとした部屋だった。 それにいい匂いもする…… って吉原の匂いか。
「ね? そんな面白い物なんて特にないけど、まぁくつろいで」
「うん? あれ? なんかいる」
一ノ瀬が何かに気付いたようで……
「ああ! ネズミえもんッ! ネズミえもんだ!」
「え? チュウ太なんだけど…… あはは」
ハムスター飼ってたのか吉原。 にしても勝手に人の家のハムスターにネズミえもんとは……
「私適当にお菓子とか持ってくるから構ってあげてて?」
吉原は部屋から出て行った。 それにしても一ノ瀬の部屋と違ってごちゃごちゃしてないし綺麗に片付いてるからこれはこれで目のやり場に困るので俺も一ノ瀬と一緒にとりあえずハムスターに構う事にしよう……




