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「へぇ、ここが吉原の家か」
「うん、ちょっと歩くんだ。 だからごめんね?」
夕飯を食べた後、吉原達を送って行く事になってしまった。 家を出る頃には薄暗くなっていたからだ。
吉原の家だけわからないので吉原も自分の家教えるよと言って、そして一ノ瀬も吉原の家を知りたいとの事で一緒に来たのだ。
「まぁ歩いて来れる距離だったんだな」
「私の家より立派…… お金持ち」
「そんな事ないって。 でも後で遊びに来てくれたら嬉しいな!」
「だってよ? 一ノ瀬」
「は、はぃ……」
「周ちゃんにも言ってるんですけど? 来てよね! じゃあ今日楽しかったよ。気を付けて帰ってね」
「おう」
吉原が帰ると吉原の家族の声が聞こえてきた。 なんかとっても仲良さそうだな、育ちがいいからあんな風に学校で言われてもめげないのかな?
「周君」
「芽依ちゃんって…… 明るいね」
「そうだな」
「私だったらあんなに嫌な事言われたら不登校になっちゃいそうなのに」
「でも吉原だって無理してるよ。 時々泣きそうな顔になってるし」
「そっか…… 平気なわけないもんね。でも私もあんな風に…… 芽依ちゃんみたいにハキハキしてて明るい子だったら良かったのかな?」
「? お前がハキハキしてて明るいってあんまり想像がつかないなぁ」
「わ、私だって出来るかもしれない…… 周君ももっと自信持っていいって言ってた」
「ああ、まぁ言ったは言ったけど…… じゃあニッコリ笑ってみろよ?」
「へ? い、今なんだ?」
「自然に出来るようにならなきゃな」
すると一ノ瀬は立ち止まり顔を触りながら表情をなんか整えている……
「で、では…… 」
「ああ」
「………… キラッ!」
まだ暖かい時期なんだけど冷たい風が吹いた気がした。
普段の一ノ瀬を知ってるから。 なんだろう? そのギャップと表情の硬さに凍ってしまった。
「うう…… うわぁ〜ん、ザ・ワールドッ!」
ザ・ワールドというより気化冷凍法だったんだけど……
「やらせるだけやらせて…… グスン、こ、こんなに辱めてッ、んんッ……」
「だから声がデカいっての! 外で喚くな、マジで通報される」
「…… じゃあその…… お、お詫び! お詫びを私に」
「は?」
「ひいッ! や、やっぱりだ。 鬼畜で変態…… 」
「待て待て! 静かにしろって、お詫びって何して欲しいんだよ?」
一ノ瀬がまた喚きそうなので仕方なく一ノ瀬に聞いてみた。
「そ、それは…… 周君も何か…… は、恥ずかしい事をしてもらわないと割に合わない…… です」
「恥ずかしい事?」
一体何をさせる気だ? 恥ずかしい事って……
「そ、そうだ! リア充的な何か…… よくDQNがやりそうな」
「なんだよそれ…… DQNがやりそうな事って?」
なんだ? この場で大声で歌うとか何かか!? マジで通報されかねない事か? でもそれはリア充ではないな。
「…………」
しばらく無言になる。
「じゃあ…… 頭を撫で撫で…… はうう」
「え? 誰の?」
「わわわ、私のッ」
一ノ瀬が自分を指差してそう言った。 お前が恥ずかしがってどうする……
「それでいいの?」
一ノ瀬はコクコクと頷く。
そして一ノ瀬の言う通り頭を撫でてやる。 これが一ノ瀬が言うリア充でDQNなのか?
「ふわああ、こんな所で一体何を」
「お前がしろって言ったんだろ」
一ノ瀬は耳まで真っ赤で撫でていると同時に膝が下がってきた。
「は、恥ずかしい……」
「結局お前が恥ずかしがってんじゃん」
「策士策に溺れた……」
「何も考えてないだろ?」
「…… そうでした」
もういいだろと手を離すと一ノ瀬は頭に両手を当ててエヘヘと笑った。
「なんだ、さっき笑ってみた時より全然いいじゃん」
「え?」
あッ! と気付いたように一ノ瀬はまた真っ赤になる。
「こ、これまたどうも……」
そして一ノ瀬の家まで送って行き、帰ろうとした。 だが一ノ瀬は俺の腕を引っ張って自分に寄せると俺にギュッと抱きついた。
「え? 」
「し、仕返し…… 恥ずかしい?」
恥ずかしかったかはわからなかったけど…… 一瞬ドキッとした事は内緒だ。




