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「とにかく今日学校終わったら一ノ瀬の家に行く、それでいいな?」


「うん。わかった」



話は済んだので売店に向かおうとすると吉原が俺の前に回り込む。 そしてジッと俺を見上げる。 なんだかよくわからないので俺は横からすり抜けようとしたけど吉原はサッとまた立ち塞がり邪魔をした。



「何したいんだ? ディフェンスの練習?」


「作ってきた……」



吉原が控えめにいじらしく言った。



「え? 何を?」


「周ちゃんのお弁当」


「は!? なんで?」


「だって…… あんなに美味しいって言ってくれたら嬉しくなってついつい作っちゃうじゃん」


「でも作ってくるなんて聞いてないけど?」


「言ってないもん。 でも今言ったでしょ?」



そして吉原はすぐ近くの廊下の曲がり角に行ってちょうど弁当箱が2つ入りそうな弁当入れを持ってきた。 置いてたのか……



「ほら」



そして俺に見せてきた。 そんなに美味しいって言ったのが嬉しかったのか。 わざわざ俺の分まで作ってくれたんなら食べないわけにも行かない。



「サプライズ! ね? だから一緒に食べてくれる?」


「わかったよ。 どこで食べる?」


「教室は…… 流石にちょっとあれだから…… 静かなとこ。 あッ! 前に美術室で食べたじゃん? そこがいいかも」


「ああ、あそこか」



決まったので俺と吉原は美術室に向かう。 さっきまで少し落ちてたようだけど今はニコニコしている。



美術室に入ると1人の生徒が居た。 あれ? もしかして使用中? でも昼になったばっかだぞ?



「吉原……さん?」


「お前の知り合い?」


「え? ううん……」


「あ、ごめん。 私吉原さんと同じ学年で隣のクラスの藤崎ふじさき あや。 前からたまに見掛けて凄い綺麗だなって思ってて」


「へ? ありがとう」


「でも今吉原さん変な噂流れてて……」



少し気不味そうに藤崎は言った。 もう広まってるもんな。



「うん、ちょっといろいろあってね」


「言っとくけど流れてる噂は嘘だぞ」



吉原のためにもそう藤崎に俺は言った。



「だ、だよね!? 吉原さんって一ノ瀬さんとも凄く仲良さそうであの子も吉原さんって凄く優しくて大好きって言ってたし……」


「サヤちゃんが…… そっか」



吉原は嬉しそうに微笑んだ。



「だけど夏休みの直前から来なくなっちゃって」


「俺もそれは気になってたんだ。 スランプとかだったのか?」


「スランプ? うーん。 それはどうかわかんないんだけど描いてた作品も全部捨てたみたいで…… 本当どうしたんだろ……」



それって…… 思い浮かぶのは焼却炉で炎を見つめていた一ノ瀬の姿。 あれってまさか……



ゴミって言ってたよな? でも自分の描いてた作品をゴミなんて。 いや、本当にそんなんじゃなくただのゴミだったってオチも考えられなくはないけど。 あの後ら辺から一ノ瀬はイメチェンしたんだよな。



「………… サヤちゃん」


「大丈夫だよ、今日あいつのとこ行くしな」



何が大丈夫なのかわからないし保証もないが少し沈んでしまった吉原にそう言った。



「うん……」


「あ! 私もう行くね? 自由に使っていいよ」



藤崎がそう言って出て行った後、吉原は気を取り直して「食べよっか?」とニッコリ笑った。 最近こいつは本当に心労が絶えなそうだ、一ノ瀬の事だけでも解決すれば少しは楽になるだろうか?



「んふふ、お弁当だから冷めちゃってのが残念だけどね」


「まぁ吉原の料理は実際美味しかったからな」


「あはは、そう言われると何度でも作りたくなっちゃうなぁ。 周ちゃんのくせに褒めてくれるなんて嬉しい」


「くせにってなんだよ? じゃあいただきます」



弁当のおかずをいくつか食べる。 やっぱり吉原の作ったのって美味しいな。



「美味しい?」


「…………」


「え!? もしかして美味しくなかった?」


「いや、美味しいなって再確認してたんだ」


「あ! 意地悪したでしょ!? 変な間あけて!」


「悪い悪い。 でも弁当も十分美味しいよ。 それにありがとな」


「今更もう遅いです! せっかく周ちゃんのために作ってあげたのになぁ」



吉原は口を尖らせプンスカしてしまっている。 でもこんな感じのやり取りも西岡達のせいで少なくなったよな。



「出来ればサヤちゃんともこうしてお昼一緒に食べたいんだけど」




そして学校が終わり一ノ瀬宅の前まで来た。 インターホンを鳴らすといつも通り一ノ瀬母が。



そして一ノ瀬の事を尋ねるとなんともアホで一ノ瀬らしい理由で休んでいた。 だけど昨日の事は謝っておこうとお見舞いに一ノ瀬の部屋をノックした。



「はーい……」


「一ノ瀬、俺と吉原だ。 入るぞ?」


「うへぇッ!? ちょッ!」



ガチャッと開けると爆発頭で少しゲッソリしたような一ノ瀬が居た。



「サヤちゃん、大丈夫?」


「食べ過ぎでお腹壊したってお前……」


「死ぬほど恥ずかしいです…… そ、それと2人とも昨日はごめんなさい。 芽依ちゃんが大変なのにあの時私だけ仲間外れにされたと思って…… 芽依ちゃんはいつも私に優しかったのに酷い態度しちゃった、凄く反省してます」


「いや、いいんだ。 俺の言い方も悪かったし今日は謝ろうと思って来たんだ」


「うん、サヤちゃんこっちこそごめんね」


「私が悪かったのに…… か、かたじけない、ありがたき幸せ。 グスッ……」



安心したのか一ノ瀬は泣き出してしまいそうになったので吉原はよしよしと慰めた。



解決して良かったとこの時は思っていたけど吉原と一ノ瀬の根っこの部分はまだ解決してなかったんだと後で思い知らされる事になるなんて思わなかった。



一ノ瀬が部活に行かなくなった事、どうして急に思い切ってイメチェンしたのかもう一度聞いてみようと思った事も、とりあえず仲直り出来たので安心して聞くのを忘れていた。



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