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「なんか…… ごめんなさい。 私がドジしたせいで」


「え!? ううん、サヤちゃんのせいじゃないって。 謝らないで?」


「にしてもなんなのよ!? あのバカ達のお陰で雰囲気わるくなっちゃったじゃない! 完全に言い掛かりよ」


「あの2人前から芽依の事文句言ってたけどここぞとばかりに言ってきたわね」



あの2人と言うのは「西岡にしおか 沙英さえ」と「及川おいかわ めぐみ」だ。 先日コンビニでも吉原の文句を言ってたな。



放課後、篠原と西条がみんな居なくなった後、俺を呼んで今日あった出来事を話してくれた。 吉原の奴はそんな事あったってのにまるでなかったように振舞っていたしその後クラスで吉原の悪口が女子の間からヒソヒソと聞こえてきたからどうしたんだ? と思ったらそういう事か。



「でもそんなのすぐ終わるかもしんないじゃん? 気にしなくていいよ」


「芽依、あんた今までもずっとあいつらから影でヒソヒソ文句言われてきて今回は思いっきり言ってきたのにあっさり終わるわけないでしょ?」


「そうだよ? 後で私らと一緒にあのバカ達に言ってやろう?」


「そんな大袈裟な事しなくていいよ。まりえ達も目の敵にされて文句言われちゃうかもしれないじゃない?」


「あ、あの! わ、私があの場でちゃんと否定しなかったのも原因があると思うし私が言うよ」



一ノ瀬はそう言うがこいつが言いに行ったら逆にいじめられそうだ。 今までそんなのと無縁だったろうし体育の時間で吉原とそいつらの時も怖くて硬まってしまったんだろうと容易に想像できる。



「サヤちゃんいいのよ。 サヤちゃんがそれで何かあったら私悲しいもん」


「確かに一ノ瀬はこういうのには向かないわ。 逆に返り討ちにされるのが落ちね」


「とにかく少し様子を見よう? まりえ達も煽って事を大きくしないでよ?」


「あーもう! そんなんじゃあいつらを調子に乗らせるわよ?」


「由紀も落ち着きなよ? 私そんなに気にしてないから」


「ったく…… そう言うと思ったから渡井呼んだんだけど」


「なんで俺が出て来るの? 確かにそいつら2人はなんかムカつくけど」


「何よそれ? あー、あんたってそんなに薄情な奴だったの? 芽依はねぇ……」


「ちょっとストップストップ! 周ちゃんの言う通りだよ! 周ちゃんに迷惑掛かっちゃうじゃない」


「芽依、あんた迷惑とかって……」


「いいって言ってるでしょ? とにかく様子を見よう?」



吉原がそう言うとなんだか納得いかないようだ。 だけど俺が吉原だったら吉原と同じ選択だな、吉原と仲良くなった頃俺もいろいろ言われたがそんなの最初だけだったし。 女子同士での事はあんまりよくわかんないけど……



「はぁ、渡井呼ぶより東堂先輩の方がまだ良かったかもしれないわね!」


「やめてよッ!!」


「ひえッ!」



ダンと吉原が机を叩いた。 さっきまでと違い今はなんか怒ってる。 借りてきた猫状態でオロオロしていた一ノ瀬は机を叩く音でビクッとした。



「ちょ、ちょっと私らは芽依の事が心配で……」


「だからって私の気持ち考えた? 私さっきからいいって言ってるよね? まりえ達の気持ちは嬉しいけど…… そっちの方が迷惑なのッ!!」



最後はデカい声で吉原は言った。



ええ…… それはいくらなんでも酷すぎない? だってそいつらは俺より前からの友達だろ? それを迷惑だなんて。 良い友達だよって言ってたじゃんかお前。



「………… わかった。 あんたがそう言うならもう私達何もしないわ。 行こう由紀」


「芽依、あんたにそんな事言われると思わなかったよ。 バイバイッ!」



売り言葉に買い言葉、篠原と西条は怒ってしまい乱暴に教室の扉を閉めて帰って行った。



教室には俺と一ノ瀬と吉原の3人が取り残される。 どうしろってんだこの状況……



「おい吉原……」


「芽依ちゃん」



なんて話し掛ければいいかわからない気不味い雰囲気の中背を向ける吉原の正面に立つと吉原は涙を流していた。



「吉原…… 涙」


「あ…… ほ、本当だね、バカだ私」


「あ、あのこれ……」



一ノ瀬はカバンからハンカチを吉原に渡した。



「ありがとうサヤちゃん」



吉原はハンカチで涙を拭うとガクッと崩れ落ちた。



「おい吉原! 大丈夫か?」


「きゅ、救急車……」


「いや、それはいくらなんでも……」



一ノ瀬のアホはさておき、吉原はさっきよりも泣き出してしまった。



「吉原、どうしたんだよ?」


「私ほんとバカ…… まりえと由紀になんて事言ってんだろ」


「だったら謝りに行くか?」



吉原は小さく首を横に振る。



謝りには行かないのか…… いったいどうしたいんだよ吉原は? そもそもそんなに泣くほどなら言わなきゃよかったろ?



まったくどう言ってやればどうしてやればいいのかわからないこの状況に俺は泣いてる吉原を見つめる事しか出来なかった。



そんな状況の中一ノ瀬をチラッと見ると何故かこいつまで目に涙を浮かべていた。 やめてくれ…… 頼む…… 更に状況を悪化させないでくれ。



そんな俺の願いも虚しく一ノ瀬も泣き始めた。



「ご、ごめなさぁ〜いッ!! 芽依ちゃんは何も悪くないのに…… わ、私がドジで間抜けでグズでおたんこなすでノータリンなせいで…… うわぁーーんッ」



凄いなお前…… よくそんなにポンポン出てくるもんだ。 ってやっぱりこうなってしまった。 どうしよう…… 消え去りたい。



俺がそんな風に思っていると泣いてしまった一ノ瀬を見て吉原はピタッと泣き止む。 そして立ち上がり一ノ瀬の頭を優しく撫でギュッと抱きしめた。



「ごめん…… ごめんね。 サヤちゃんまで悲しくさせちゃって。 もう大丈夫だから」


「ふえッ…… グスッ……」



よしよしと一ノ瀬の頭を吉原は撫でると一ノ瀬はようやく泣き止む。 なんで落ち込んでる吉原に慰められてるんだこいつは…… でもなんとか吉原も泣き止んだし一ノ瀬も泣き止んだ。



結局俺は何も出来なかったけど俺だってこんなの経験ないしどうしていいかわかんないだろ……



その後は一ノ瀬の事を思ってか吉原はスッキリしたと言って明るく振舞っていた。





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