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一ノ瀬と最後に一緒に帰って1週間以上経った頃、もう終業式も終わり夏休みに入っていた。
父さんはそんなものは当然なく仕事だ。 俺は家に1人で気楽に過ごしていた。 終業式の後、吉原は夏休みに遊びに誘うから遊ぼうねと言っていた。 一ノ瀬も一緒にねと。
まぁそんなお誘いはいつの事だかわからないし…… ゲームでもして今日は1日潰そうと思っていると吉原からメッセージが届いていた。
あー、ゲームしてたから気付かなかったけど3時間前だ。 返事を返すとすぐに連絡が来た。 しかも電話で……
「ちょっとぉ、今頃?」
「悪い悪い。 気付かなかった」
「はぁ、周ちゃんだからそんな事だと思ったよ。 それで書いてた通りだけど明日とか空いてるかな?」
「まぁ特に予定はないけど」
「よし! じゃあ明日遊ぼう? サヤちゃんにも連絡しといたから」
「あいつなんて?」
「大丈夫だってさ!」
なんだ、一ノ瀬はすんなりOKか。 ていうか前みたいに男俺1人だと微妙に気不味いんだよな……
「なぁ、それってさ、前出掛けた時みたいに俺1人だけ男?」
「大丈夫大丈夫! そうだと思って伸ちゃんも一応誘っておいたよ。 行く行くって張り切ってたよ?」
「ああ、伸一か。 あいつ前来れなかったしな」
「うん、そういう事で明日駅前に集合ね? 忘れちゃダメよ?」
「はいはい、行くよ」
そう言って吉原との電話を済ましベッドにゴロンと寝転び天井を見る。
なんか女と夏休み遊ぶなんて今までなかったな、しかも吉原とか。 別にだからなんだ? 何かあるわけでもあるまいし……
でもまぁあいつもよくも飽きずに俺と一ノ瀬に構ってくるな。 これが仲が良いって事なのか?
ふと吉原にほっぺにキスされた事を思い出した。
あいつ最初に先輩に絡まれてた時は困ってビクついてたくせにこの間の時は随分強気だったよな。 まぁ同級生だから先輩とは違うっちゃ違うけど。
………… いくら仲が良い友達、しかも男の俺にあんな状況だったと言ってもキスなんてな、ほっぺにだけど。
吉原はなんでもさり気なく自然だ。 俺からしてみれば結構大胆な事でもそんな感じにやってしまう。 あの時もそうなのか? 俺だったら…… 無理だな。 ていうか吉原が何を考えてるかいまいちよくわかんないし。
こういう時母さんでもいれば相談して解決してるのだろうか? いや、それはないよな。 父さんとだって今では「うん」とか相槌打つくらいでそんなに話してないしな。
それに一ノ瀬…… あいつも最近少し変だった。
それは終業式の前日の事……
その日の放課後、俺は売店でジュースでも買って帰ろうかとしていた。 吉原の奴はあの2人にまたとっ捕まり引っ張って行かれた。
売店の近くまで行くとゴミ袋が通路の端に置かれていた。 誰だよここに置きっぱにしてった奴は?
いつもはそんなのは放ってさっさと行ってしまうところだったがなんとなくその時は仕方ない、片付けてやろうという気持ちになった。 ゴミ袋を持ち校舎裏のゴミ置場に向かう。
くそ、なんでわざわざ反対側にあるゴミ置場に向かわなきゃいけないんだと早くも片付けてやろうという気持ちに後悔していた。
ようやくゴミ置場の近くに来ると人影があった。 そしてゴミ置場の近くにある焼却炉が使われていた。
先生か? なんで今頃焼却炉使ってんだ? そう思いゴミ袋を持ち近付いて行くと先生ではなくそこに居たのは少し長い先が燃えている木の棒を持った一ノ瀬だった。
は? なんであいつが焼却炉に? 勝手に使ってるのか? そう思い焼却炉の蓋を開けっ放しで燃えている炎をボーッと見てこちらに気付かない。 でも…… なんだか少し悲しげに見えるのは気のせいか?
「おい、一ノ瀬……」
「え!? ええ!? 周君?」
一ノ瀬は驚いているが俺も同じ気持ちなんだけど?
「お前何してんの? その棒先っちょ燃えてるけど?」
「こ、これは…… ざ、残火の太刀!」
「うん、ただのそこら辺の木の棒だよな。 で? 何やってんの?」
「ええと…… 火! 火を見てた!」
「それは見ててわかったけど先生に許可貰ったのか? ていうか何燃やしてんだよ?」
「そ、それは…… 後から焼却炉使いましたって報告しようかと…… 燃やしてたのは………… ゴミだよ」
「事後報告かよ? 絶対怒られるな、しかもかなりな」
「ど、どうかご内密に……」
報告するって言ってたくせに内密にとは? てかこいつおっちょこちょいだから下手したらボヤ騒ぎなんて事になりそうだし。 焼却炉をチラッと見るともう大分燃えていて何を燃やしていたのかわからない。 ゴミって言うからにはゴミなんだろうけど。
その後あたふたする一ノ瀬の横でこのままだといずれ下手こくのは目に見えていたので一ノ瀬の代わりに俺が焼却炉の火の始末をしてやった。 なんでゴミ捨てに来たのにこんな事まで……
「あ、ありがとう周君」
「まったく…… まぁお前が燃やした物もちゃんと燃え切ってたからもう跡形もないけどいいの?」
「…… うん」
「ゴミって言ってた割にはそんな物燃やしてるようには見えなかったけど? 大事な物とかじゃなかったのか?」
「へ!? そ、そんな事ない! ゴミだよゴミ!」
試しにそう聞いてみると一ノ瀬は首をブンブン振り否定した。 なんとなく嘘ついてるなこいつ…… そう思ったけどそれ以上つっこむ気にはならなかった。
今思い返してみても変だった。 まぁ次の日にはいつもの一ノ瀬だったけど。
考えても俺はよくわからないので俺は瞼を閉じるといつの間にか眠っていた。




