31
「え? 」
「芽依、最近付き合い悪いよ? 渡井と一ノ瀬ばっかに構ってんじゃん」
「そうかなぁ? …… そうかも」
その日の放課後、吉原が俺に「どこか寄って帰らない? 」 と話している最中に吉原の友達2人が割って入ってきた。
まぁ確かに最近吉原は俺と一ノ瀬の間を行ったり来たりだったからな。 もともとの友達のこいつらがそう思うのも無理ないだろうな。
「今日は私らと一緒に帰ろうよ? なんか言っててなんでわざわざ芽依にこんな事言ってんだろうって思うんだけど」
「そうよ。 いくら渡井と一ノ瀬と友達になったからって放置しないでよね?」
「あ…… あはは。 放置してたわけじゃないんだけど。 って2人とも部活は?」
「あんたに言われたくないわ。 今日はサッカー部休みだから私らもこのまま帰るのよ。 だから付き合いなさいよ?」
「ん〜……」
吉原はどうしようかという態度だ。仕方ない……
「いいじゃん吉原。 2人の言う通りだろ?」
「おっ! 渡井話わかるじゃん。 渡井もそう言ってるんだしさ」
「え〜? だったら周ちゃんも一緒に来ない?」
「は?」
「ね? いいでしょ? まりえ、由紀」
「え? そうくるの? いや、まぁ…… 芽依がどうしてもって言うなら」
「おいおい、いいよ俺は」
「断られちゃったね芽依、残念でした〜。 てかあんたどうしたいわけ?」
「どうしたいって…… ん〜、なんだろ? よくわかんない。 ていうか周ちゃん!」
吉原が俺をギロッと睨んだ。 え? 怒ったの?
「べ〜ッ!」
「べ〜ッて…… あんたってそんな表現方法しか取れなかったけ? まぁ芽依は今日私らが借りてくから恨まないでね」
「誰がそう思うかよ?」
そうして2人は吉原と一緒に帰って行った。 俺もそろそろ帰るか。
少し間を置いて昇降口へと行くと……
「あッ……」
「あれ? 一ノ瀬? お前も帰り?」
「う、うん…… 部活の用具忘れちゃったみたいで」
「へぇ……」
もしかして昼休みに美術室にこいつが来たのもそれのせいか? というか相変わらずオロオロとしてるな一ノ瀬の奴はと思っていると一ノ瀬が口を開いた。
「あ、そういえば周君1人?」
「1人で悪い?」
「うえッ!? ご、ごめん、周君は1人がお似合い…… じゃなかった…… ぜ、全然悪くないよ!?」
「お前…… 喧嘩売ってんの?」
予想通りテンパって誤爆して首をブンブンと振っている。
「な、なんという失礼な事を、はわわわ……」
「ププッ、もういいよ。 からかっただけだからさ」
「…… 不覚」
「じゃあ気を付けて帰れよ?」
そして俺はそのまま帰ろうとしたが……
「あ、あの!」
「ん?」
不意に一ノ瀬に呼び止められ振り返る。
「な、なんでしたら一緒に帰ってみていただけないでしょうか? ふ、不純異性行為とかは勘弁して下さい! 私とっても不味いので!」
「え? なんか言ってる事めちゃくちゃでよくわかんないけど? 普通に一緒に帰ろうって事?」
「…… へい…………」
へいって…… 今日は1人でさっさと帰ろうとしていた所に一ノ瀬からまさかの一緒に帰ろうとは……
「…… まぁいっか、どうせ帰り道だし。 じゃあ帰るか?」
そう言うと一ノ瀬はコクンと頷いた。 校門を出て一ノ瀬と歩くが下を向いて無言だ。
まぁ別に話とかしなくてもこいつはこういう奴だしなんら苦にもならないけど。一ノ瀬の家がもう少しという所で一ノ瀬はようやく喋り出した。
「そういえば…… もう少しで夏休みだね?」
「ん? そうだな。 早くなってほしいわ」
「な、夏といえばあれですね!」
「あれ? 海とか?」
「海…… じゃなくて夏コミ!」
「夏コミ? コミケの事か? え? お前コミケに行ったりしてるの? まぁ行ってても不思議じゃなさそうだけど……」
「たまになんだけど…… 楽しいよ? 会場開くまで地獄だけど天国だよ!」
なんか大体想像つく。 暑い中大勢のオタクの中にヘバッて待っている一ノ瀬の姿が……
「そうなのか? 俺にはよくわかんないけど。 だけどなんでいきなり夏コミ?」
「あ、ええっと…… そんなのがあったね! という事で。 うんうん……」
「それで一ノ瀬は今回行きたいの?」
「そ、そりゃあもう! 薄い本が…… じゃなくて! 行こうかなぁ……」
まさかこの流れだと誘われるんでは? と思ったけど一ノ瀬の家の前まで来ると「また明日」と言って俺と一ノ瀬は別れた。
引っかかるような事言うのやめろよ……




