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「私爆死寸前……」
「俺もだ、珍しく意見が合うな。 ていうかお前の頭本当に爆発してるぞ?」
「2人とも名前で呼ぶくらいでそんな照れてるなんて幼稚園児以下だよ? 拗らせ過ぎじゃない? サヤちゃんなんてこんな本読んでるのに。 まぁ2人とも見ていて楽しいけど」
「はうう…… そ、それは社会勉強の一環でして」
薄い本で何の社会勉強をしているのだろうこいつは…… それにかなり絞った範囲だな。
あ、ていうか俺今女の部屋に来てるんだった。 男物の漫画がいっぱいあるからそんな気全然しなかった。
てかこいつ兄ちゃんいるって言ってたような……
「なあ一ノ瀬」
「ゴホン!」
「じゃなかった…… サヤ。 お前の兄ちゃんって今家に居るの?」
「あ、お兄ちゃん? 寝てたから…… 居るのかな? 呼んでくる?」
「あー、呼ばなくていい。 聞いてみただけ」
「そぉいえばサヤちゃんってお兄ちゃん居るんだったね! イケメン?」
「強面です…… 」
「「え?」」
そんな兄ちゃんが居て一ノ瀬はこんなオタクになっちまったのか? うーん、極端な兄妹だな……
「私怖い人苦手だから呼ばなくて確かに正解だね! それよりサヤちゃんお洒落しようね? 私が手伝ってあげる」
「わ、私がお洒落!? む、無理!」
「大丈夫だよ? こう考えたら? 今からお化粧してあげる。 それは言わば仮面、サヤちゃんの本当の顔じゃない。 つまりファンデの層で本当の顔を隠す」
「な、なるほど!」
なるほど! とかで納得してやがる…… なんてチョロい奴なんだ。
「で、でもでもお化粧してる所渡井…… じゃなかった! 周君に見られるの恥ずかしい」
「いや、その爆発頭見られてそれ以上恥ずかしい醜態ってあるか?」
「た、確かに!」
これまた納得しやがった…… こいつバカだったの忘れてた。
「よし決まり! じゃあお化粧しちゃうね! こんな事だろうと思って私準備してきたから」
吉原はポーチから化粧道具を取り出した。 だがまずは一ノ瀬の爆発頭から直す事にした。
俺はその間一ノ瀬の部屋の散乱している漫画を読んでいた。 この部屋暇を潰すのにもってこいだ。
一ノ瀬はそんな俺をチラチラと見ていた。 なんか話したそうにウズウズしているように見える。
「どした?」
「そ、それ面白いよね?」
「ん? ああ。 好きなの?」
「うん! 特にこの巻が面白くてね!」
「こら! 動かない!」
「う…… は、はい」
落ち着かない一ノ瀬を吉原はガシッと掴む。 髪の毛を整えようやく化粧に入る。
「化粧水塗ってくね」
「ひゃッ! 冷たい」
「サヤちゃんお手入れしてなさそうなのに肌綺麗だねぇ」
「よ、よくわかりません」
「私が教えてあげるよ」
「わわッ! 吉原…… 芽依ちゃんのお顔が目の前に…… き、綺麗」
「ん〜? サヤちゃんも可愛いよ?」
「キュン死にしそう……」
吉原相手になんで一ノ瀬が照れてんだ?
「うーん、まぁこんなもんでいいかな? ほら、周ちゃんに見せてみて」
「は、恥ずかしいよぉ」
「いいから! 周ちゃんもこっちきて!」
そして吉原は一ノ瀬を俺に向き直させた。 普段だったら絶対見る事が出来ないであろう一ノ瀬の化粧をした姿はとても可愛かった。 思わず目が丸くなる。
「どう? 周ちゃん」
「そんなマジマジ見ないでぇ」
「か、可愛い……」
「………… そっか。 良かったじゃん!? サヤちゃん」
「か、可愛いなんて…… この私が……」
その時チラッと何気なく見た吉原の表情が少し困惑している事に気付いた。 あれ? 今の今まであんなに笑っていたのにと思ったが吉原はすぐにまた笑顔になったので気のせいか?
「周ちゃんのお墨付きならバッチリだね! やったじゃんサヤちゃん」
「そ、そんな……」
「あとは服なんだけど…… 」
そう言って吉原がクローゼットの中を見るが微妙そうな顔をする。
「パーカーと地味な服ばっかり…… まぁこれも予想はしてたけど」
「女子力恐るべし」
「何が恐るべしだよ? お前も女子だろ?」
「あ、そうでした」
「今のサヤちゃんなら顔でカバー出来るしまぁいっか! とりあえず着替えて」
「は、はい!」
まぁ当然の如く俺は部屋から追い出されてしまった。




