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「ええと…… 渡井君」


「なんだよ?」


「ひえッ…… な、なんかさっきからピリピリとした霊圧が渡井君から」



あ、あの先輩のお陰だ。 てか俺って今までなんやかんや言われるの慣れっこだったような……



なんでだろう? 明確な敵意とかそんなの向けられたから? 吉原を好きにしたいんなら変に俺に突っかからず俺の事なんて放っておけばいいのに。



大体吉原の奴も俺と一ノ瀬をいちいち気にするから変に因縁付けられるんじゃないか。



「うう…… どんどん押し潰されそうな霊圧が」



一ノ瀬のそんな反応にチラッと一ノ瀬を見る。 吉原が結んだヘアピンがまだそのままでこいつの素顔があらわになっている。



隠れてないの忘れているのだろうか? 忘れてるだろうな、間が抜けてるから。



「お前のその恥ずかしいご尊顔とやらが思いっきり見えてるけど」


「うえッ!? どわぁ! ほ、ほんとだ!」



一ノ瀬は慌ててピンを外そうとするが俺は一ノ瀬の手を掴んで制する。



「ええ!? なんで?」


「罰だ」


「ば、罰!? 何故に?」


「今日面倒な目にあったのは吉原とお前のせいだ。 罰としてお前はその恥ずかしい素顔のまま家に帰れ」


「そ、そんなぁ…… 鬼! 鬼畜! 悪魔!」



そんなん無視して隙を突いて解いてしまえばいいのにこいつは律儀に顔を晒し続けるなんてバカな奴。



「お、恐ろしい」


「あ?」


「やっぱり私の顔は不幸を呼ぶ」


「何それ?」


「小学生の頃までは普通にしてたんだけど6年生になった辺りから急に男の子が私に詰め寄ってきてなんだか喧嘩になったり女子から調子乗ってるとか言われたりブスとかキモいとか…… その時から私の顔は不幸を呼ぶから封印しようと」



なんだそれ? ただ単にひがみとかそんなんじゃねぇか。 ほんとくだらない事でこいつは悩んでるんだな。



まぁある意味痛い勘違い野郎なのは確かだ、野郎ではないけど。 痛いというかバカなんだな。



「確かにお前のその顔のせいで俺はとても不快な気分を味わう羽目になった」


「はうッ…… や、やっぱり」


「そしてそのお前の性格にもイラついている」


「しょ、しょぼん……」



俺って何様なんだろう? 人の事言えた顔でもないし。 一ノ瀬に八つ当たりでもしてるのか?



「せっかく…… せっかく渡井君と吉原さんと友達のままでいていいのかなって思ったばかりなのに」


「世の中そんなに甘くないからな」


「で、では明日からまた私は……」


「却下」


「ええ!?」


「またお前がそんな事したら吉原がうるさいだろ? そしたらまた俺も引っ張り回される事になるんですけど!」


「う……」



うわぁ…… 俺って今最低な事スラスラ言えるわ。 友達とか言っておいてこれだもんな。 でも俺って性格悪いってこいつに通告してるのでいっか。



「吉原さん……」


「ん?」


「あの…… なんだっけ? あのキラキラオーラ出してる藍染惣右介みたいな先輩」


「ああ、東堂先輩な」


「うん、その先輩と凄くぴったりだったなって思って。 美男美女同士といいますか……」


「それってさっきの俺と吉原と違って嘘じゃないな」


「うん…… あっ!!!」



一ノ瀬はしまった、というような顔をするがもう遅い。 俺は一ノ瀬のおでこにデコピンを食らわせた。



「い、いたぁ〜いッ!」


「あ、悪い。 軽くイラッときた」



別にわかってるので特になんとも思っていないが天然は時として痛い目に遭うという事を教えただけだ。



一ノ瀬はおでこを両手で押さえてうずくまる。



「…………」


「どした?」


「あ、ううん。 吉原さんが人生観変わるかもって言ってたけど……」


「うん」


「とりあえず前がよく見える!」


「は?」


「渡井君の顔もよく見える!」



一ノ瀬はパッと立ち俺の顔を見た。



「お前の顔もよく見えるけど?」


「はふッ! そ、そうでした」



そう言って一ノ瀬は俺に慌てて背を向けた。 こいつを家まで送るのどれくらい時間がかかる事やら……





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