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「芽依ちゃん、そんなむくれるなって。 怒った顔も可愛いからいいけどさ」
「私一ノ瀬さんと一緒に遊ぼうかと思ってたのに台無しです!」
サッカー部が終わり結局最後まで一ノ瀬は離してもらえずついには疲れて寝てしまったのでちょっと前に部室のベンチに運んだところだ。機嫌最悪の吉原を東堂先輩は宥めていた。
宥めていたのだが東堂先輩は吉原と話したそうにしていたので計算通りなのかもしれない。 余計なお荷物の俺がいなければ。
「それに…… 見てくださいよ。 あんなに男子に寄ってたかって質問責めにするから一ノ瀬さんすっかり疲れちゃって寝てるじゃないですか」
「あはは、それは俺に言われても。 俺はさ、芽依ちゃんがそうしたかったんならすぐ帰してあげるけど他の連中までははちょっとね」
「まぁそりゃあそうですけど……」
「それにしてもあんな可愛い子が隠れてたなんてね。 彼女パッと見凄く内気そうだね?」
「慣れてないですからね。 こんな事になるなら学校出てから一ノ瀬さんの顔出しした方が良かったなぁ」
吉原が何かごめんね? という感じでこちらを見た。 うん、そうだな。 みんなも見慣れない一ノ瀬だから珍しがってさっきみたいな事になるからな。
それと吉原はさっきから俺を気にしながら話を切り上げようとソワソワしていた。
「まぁあの子も可愛いけどやっぱり俺は芽依ちゃんのが良いかな」
「え?」
「あの子とはほら、話合いそうにないじゃん? 見た目は凄く可愛かったけど」
「だからって私は関係ないですよね?」
「あははは、ところでちょっと前から気になってたんだけどそこの…… 君って芽依ちゃんの友達か何かなのかい?」
いきなり俺に話を振られたのでびっくりした。 今までずっと東堂先輩が吉原とお喋りしていたので俺ってこの場にいらないんじゃないかと思ってた矢先……
「俺?」
「渡井君です、渡井周人君」
先輩は俺の名前がわかってなかったようなので吉原が俺の代わりに自己紹介した。
「渡井周人君か。 よろしくね周人君」
爽やかスマイルで俺に握手を求めてきたので握手する。 なんだこれ?
だけど先輩の俺に対する笑顔は目が笑っていない。 まぁそりゃ野郎同士なんて所詮こんなもんだろと思うけどこの人吉原の事好きそうだしな。
そんな吉原と一緒に居る俺は鬱陶しくて仕方ないんだろう。 まぁだったら偽りの笑顔向けられるより態度で示してくれた方がこっちにとっては楽だ。
そんな態度が先輩に伝わったのかどうかは知らないが先輩はニヤッと笑う。
「どうやら周人君はもう帰りたいみたいだね。 もうこんな遅い時間だ、そこの一ノ瀬さんを連れて帰った方がいいよ?」
そうは言ってるものの本当は吉原と2人きりになりたいので帰ってくれと言っているんだという事だ。
「だったら私も一緒に!」
「おっと。 いくらなんでも一ノ瀬さんを送って芽依ちゃんまで送るなんて周人君も大変だろう? 慣れないサッカー部で足止め食らってさぞやお疲れだろうし」
「そ、それは…… 」
さも仕方ないだろうというような状況が出来上がった。
「うぐぐ……」
「今から一緒に帰ろうってのにそんな態度取られると悲しいなぁ」
「してやられた…… ごめんなさい渡井君」
「何も芽依ちゃんが謝る事ないさ、渡井君がここから早く帰りたそうだったからそうしたまでだしね」
あくまで俺を悪者か。 だけど帰りたかったのは事実だし。 この先輩と居ると俺の場違い感がぱない。
「起きろ一ノ瀬、帰るぞ」
「うにゅ…… いつの間にか睡魔に襲われて」
「いいから帰るぞ。 さっさと起きろ」
「? 渡井君?」
「じゃあ俺達も帰ろうか? 芽依ちゃん」
「あれ? 吉原さん一緒に? あ……」
何か一ノ瀬は言いかけたが途中でやめた。
そして吉原は時折…… というより頻繁にこちらを向き帰り先輩に連れられ帰っていった。
「アホらし。 俺らも行くぞ」
「う、うん…… 」




