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ていうか一ノ瀬の両手を握ったまま吉原はいつまで一ノ瀬を見つめてるんだ?
そんな事をしているから見る見るうちに一ノ瀬の顔が赤くなっていく。
「な、なんでしょう?」
「へ? ああ、やっぱり一ノ瀬さんって凄く可愛い」
「うへッ!? や、やめてくだちぃ……」
寧ろ俺の方がやめてくだちぃなんだけど…… いつまでやってんの?
「よ、吉原さんみたいに可愛い方から可愛いと言われても」
「ううん! 本当に可愛い、見れば見るほど……」
「んあッ! こ、これ以上は! わ、私の瞳は破幻の瞳なので吉原さんは大変な事になります!」
「え?」
「いや、それ忍者じゃないから多分意味ないぞ?」
「な、なら写輪眼です……」
「ことごとく使い所違うよな?」
「メドゥーサの目でした……」
テンパってるのかついにはギリシャ神話持ち出しやがった。
「? なんかよくわかんないけど一ノ瀬さんとっても可愛い。 もっと顔よく見せればいいのに」
「そ、そんな…… みんなの目が腐る」
「んー、こんな可愛い顔してるのになぁ。 もったいない…… あ、えい!」
「ひゃあッ!!」
一瞬の隙を突き吉原は一ノ瀬の長い前髪をピンで後ろに纏めた。 なんたる早技…… 結構凄いぞ。
「取っちゃダメだよ? 逃げてた罰」
「ひ、ひええ……」
吉原はいきなり怖い口調になる。 まるで俺が逃げた分まで今の一ノ瀬と合わせて凄んでいるような……
「なんたる公開処刑…… お嫁に行けない」
「寧ろ逆だよ? 一ノ瀬さんの人生観変わるかもよ?」
「強引だな吉原」
「一ノ瀬さんにはこれくらいがちょうどいいかもよ。 ほら、一ノ瀬さん立って?」
「くッ、殺せ……」
「お前案外余裕あんのな……」
観念したのか吉原に手を引かれ校庭へ出ると通り過ぎる奴らが見慣れない美少女に目を奪われる。
あんな子いたっけ? 状態になっている。 でも改めて一ノ瀬ってやっぱり可愛かったんだな。
すると吉原の友達が居た。 サッカー部のマネージャーだったのか。 2人は吉原が連れている一ノ瀬を見てビックリしている。 そしてこちらに近付いてきた。
「え? 嘘? その子……」
「うん、一ノ瀬さんだよ」
「あ、あうう…… 見ないで」
「そのキモい反応…… 確かに一ノ瀬だわ。 ていうかめちゃくちゃ可愛いんだけど? なにこれ?」
キモいのか可愛いのかどっちだよ?
「あ、芽依が一ノ瀬可愛くしたの?」
「そんな事私が出来るわけないじゃん、長めの前髪後ろに纏めただけだよ。 みんな一ノ瀬さんの事雰囲気だけで見ようとしないからわかんないんだよ。 前にも言ったでしょ? 一ノ瀬さんって結構可愛いって」
「うん、まぁ…… ビックリ。 芽依並みじゃん、うわぁ〜、こんな顔してたんだ」
吉原の友達2人にもマジマジと見られる。 もう一ノ瀬は茹でタコみたいだ。
「そ、そんなに見ないで」
必死に顔を手で覆い隠そうとするが2人にガッチリと手を掴まれ動けなくなっている。
「あれ? こんな子いたっけ?」
「あ、東堂先輩」
いきなり登場したこの爽やかイケメンはサッカー部の2年の先輩だ。 俺でも知ってるくらいモテまくっている。
「やぁ、芽依ちゃん。 遊びに来たの? ていうか芽依ちゃん以外にこんな可愛い子いたんだね?」
「あはは、ちょっとまりえ達に絡まれちゃっただけです。 この子は一ノ瀬さんで私の友達です」
「へぇ」
すると東堂先輩は一ノ瀬にグイッと詰め寄る。 一ノ瀬はビビって後ずさる。
「あわわわわ……」
「ん? どうかしたかい?」
どうかしたかい?って…… 一ノ瀬にそんな事するからだろ。
「おッ! 吉原じゃん! てか誰? その可愛い子は!」
「やれやれ、うるさい連中が来ちゃったね」
サッカー部の他の部員も集まってきた。そして一ノ瀬はあっという間に男共に囲まれてしまった。
「あ、あれ? あれれれ……」
あちゃー、一ノ瀬の奴泣きそうになってるわ。 そして質問責め。 一ノ瀬のオドオドした態度が男子のツボにきたのか鼻息が荒い……
「あー、やっぱ顔が可愛いとあんなんでも余計可愛く見えちゃうんだろうなぁ。世の中見た目ね。てか芽依、あんたの立場も危ういかもね? 男子好きそうじゃん、あの見た目であれだと守ってあげたくなっちゃう〜! とかで」
「ん〜、 別に。 どうでもいい人から好かれても面倒なだけじゃない?」
吉原は一ノ瀬と俺とでどこかへ出掛けようと思っていたようだがその日はサッカー部が一ノ瀬を離さなかったせいで頓挫してしまった。




