表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロスフォラ  作者: Rouge
5/6

第4話 舌戦

「うむ、次だ。」


 その言葉を俺は意外な程冷静に聞いていた。

 少し前までの俺ならこれから行うことを考えて取り乱していただろう。間違いなくあいつら、いや、あいつの影響だろうな。

 第1印象はまるで記憶にない。どこにでもいる普通の青年だと思った。俺はあいつが裏切るまではずっとその印象だった。今思えば、連れていた女性の表情が少しこわばっていた。普段なら気づけていたはずだ。

 それが分からないほど無意識に彼らを認識していなかった。それは恐らく、いや間違いなくあいつ、ゼノの仕業だ。どんな方法なのかは今でもわからないが。

 裏切りは迅速だった。気付いたときには負けていた禍々しい鎌を突きつけられ、俺はようやくゼノの本性を見た気がした。底のない闇。俺は恐怖した。

 その後、俺は理不尽な契約に憤りはしたが、今ではそれで良いと思っている。もう二度と対立しないで良いのだから。

 だから言葉遣いを変えた。彼への敬意を示すために。そのためにも今回の作戦、必ず成功させる。


「我々黒龍がさらなる力を手に入れるために、どうすれば良い?」


 その言葉に場に沈黙が満ちる。ここではいつも発言がない。自分の真似をされたくないから。

 俺は頃合いを測る。そして


「1つ提案がある。」


 俺はそう、切り出した。



 俺の真剣な様子に気付いた皆は驚いた顔をして、一瞬の後嘲りに変わった。3人を除いて。


「今、我々黒龍の勢力拡大を阻害しているのは白虎。それは誰もが心の内では同意することだろう。」

「おい、貴様弱腰になったか!恥を知れ!」


 1人突っかかってくる奴がいる。"黒龍は最強の存在"という暗黙の了解があるためこういう奴が出てくる。

 そいつに向かって説明しようとして、


「おい、少し黙れ。」


 ヴァレスだ。彼は少なくとも聞く気になったらしい。

 俺は意外に思いながら口を開く。


「白虎は正義を掲げている。だから周りから人気がある。ヤツらはそれを知っていてさらに治安維持で人気をとっている。だから構成員が多い。そりゃ、自分達を守ってくれる正義の味方はみんな大好きだ。なりたいと思うのが普通だろう。

 ウチとヤツらが勢力均衡を保っているのはウチが質的有利を得ているのに対してヤツらに数的有利をとられているからだ。」


最早俺以外、誰も言葉を発さない。話に引きづり込めたらしい。畳み掛ける。


「ではどうすれば良いか。

「簡単だ。

「人気の秘訣を無くせば良い。

「人は弱い生き物だ。

「誰しも自分の身が1番可愛い。

「自分に危機がくれば簡単に人のせいにしたくなる。

「責任転嫁はいけません、って言っているヤツほどな。

「そうすれば身近な人にあたる。

「お前のせいだろって。

「そうなれば人気は右肩下がり。

「低空飛行さえ出来ずに墜落する。」


「ドルエンさん。」


ここで他から声がかかる。

こいつはリュース。覆面で顔を隠しているふざけたヤツだが有能で、短い間で瞬く間にボスの右腕にまでなった。


「原理はわかりました。では具体案をお願いします。」


あくまでも丁寧で、しかし鋭く踏み込んでくる。だが想定通りだ。むしろ反応してくれなければ困る。


「わかった。」


しかし、ここまでの展開を予想してみせたゼノには震えてくる。


「結論から言うと、街を爆破する。」

「はい?」


 リュースは呆けた声を出す。わからなかったのか?


「爆弾という魔法具がある。時間を設定したらその時刻に爆発するというものだ。」

「いや、そうじゃなくてですね。」


 冷静…冷徹なリュースが珍しく取り乱している。


「何でそのようなことをするのかを聞いているのです。」

「先に言った通り、白虎の人気を失墜させるんだよ。」


 だからこんな簡単なことに気づいていない。


「街を爆破すれば当然そこに住んでいる人は危険にさらされる。場合によっちゃ、死者も出る。そしたら住民は考えるわけだ。誰のせいだってな。もちろん爆破したヤツが悪い。だが犯人はもういない。住民は行き場のない怒りを抱えることになり、やがてその怒りがある方向に向かって爆発する。」


 ここまで言うとリュースは理解したらしい。他の幹部はまだ疑問符を浮かべているし、一応優秀だったらしい。だがその優秀さもゼノには敵わない。


「白虎はその街の治安維持を請け負っていた。」


 その言葉で首を傾げていた幹部にも理解の色が浮かび始める。


「治安維持を請け負っていたのに守れなかった。それは街の住民な怒りを向けるのに十分な理由だと思わないか?」


 リュースとヴァレスが目配せをする。


「もう1つ、問題があります。街を爆破…それもそこの住民が強い怒りを覚える程の爆破をすれば、流石に政府も黙ってはいません。」


 政府か…。今までの黒龍と白虎の争いは、政府にとって敵が潰し合っている状態だったから放置されていた。白虎が治安維持しているとはいえ、その街が政府の所有物であることには変わりない。


「街の爆破で政府に目をつけられたら、白虎と政府を同時に相手取ることになって、今後の活動に影響が出ます。」


 黒龍は汚れたこともしているだけ余計に、な。


「だから黒龍ではない組織にやってもらう。」

「?え…なんっ…??」


 リュースが動転している。


「黒龍がしたら政府に目をつけららて、困る。なら他にやって貰えば良い。普通だろ?」

「何処がですか!……それにそう都合良く代行してくれる組織があるはずが…………貴方まさか……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ