第2話 騙し討ち
「その計画で白虎を罠にかける?お前ら馬鹿か?
最初の火種があからさま過ぎる。それでは罠を警戒しろといってるのと同じだ!
そんな杜撰な計画、本当に成功するとおもっているのか?!」
はあ、興奮しちまってる。これでは相手するのが大変だな。だから
「成功する必要は、ない。」
冷水を浴びせる。これで少しは冷静に会話が出来るだろう。
「最低でも少しは白虎が混乱する。それで十分だ。それに失敗しても損害はゼロだ。」
「なるほど・・・」
よし、これでもうしばらくは話し相手になってくれるだろう。
隙間風が少し強くなった。
「それにお前が心配する必要はない。」
「なに?」
若干いぶかしみ、警戒レベルをあげてきたがもう遅い。
「時間だ。」
次の瞬間、入口の扉が飛んできた。比喩ではなく、本当に。黒龍のヤツらは固まっている。だが俺とセネカにとっては予定されたことでしかなかった。
今壊されたばかりの扉の方へ向かう。
扉から白い服を着た連中、白虎が入ってきた。
「なっ、どうゆうことだ!?」
俺は答えず、言った。
「お願いします。」
その言葉と同時に魔法が飛ぶ。白虎のものだ。それにより、黒龍のリーダー(ドルエンというらしい)以外が倒れた。ドルエンはその場にへたり込み、茫然としている。が、次の瞬間、俺を烈火の眼で睨む。
当然気付いているが、無視する。
「さすがだな、セル。」
「まあ、こんくらい普通だろ。」
セル、ジーギス、サナの3人には白虎を味方につけ、ここに連れてくることを頼んでいた。俺らだけでは黒龍のヤツらを倒せないかもしれないとふんだ。故に俺らの戦力温存も兼ねて白虎に黒龍の制圧を任せたわけだ。
「それで、アレは?」
「もちろん出来ておるのじゃ。」
俺はジーギスに別件で依頼をしていた。鍛冶魔法で俺の武器を作ってくれと。
鍛冶魔法と普通の鍛冶との違いは、武器に魔法を帯びさせることが出来ることだ。そしてもう1つ、生きた武器になるということ。所有者の意図をくんでくれ、自由に大きさを変えることが出来る。ただし、所有者として武器に認めてもらわないととてつもなく重い使えない武器となる。
ジーギスが俺に鎌を渡してくる。
おれが手に取る。その瞬間、鎌が大きく脈動した。何かが武器から流れ込んでくる。が、俺はそれを力づくでねじ伏せる。ひと際大きく脈動し、色が黒く、禍々しい色に変わっていく。
「予想はしておったが、あっさりと所有者として認められよるか。
そいつはお前さんの死滅魔法が込められている。お前さんが死滅魔法を使うときはお前さんにとっての同類、つまり人間にしか効果がない。だがその武器の死滅魔法は武器にとっての同類、つまり無機物にだけ効果がある。」
これが俺が武器をジーギスに頼んだ理由。俺が使う死滅魔法は人にしか効果がない。だがそれだと使い道が少な過ぎる。
それに無機物にしか効果を発揮しないということは、魔法を発動させていれば有機物はすり抜けることができる。つまり人を殺さない武器。まあ、魔法を発動させなかったら普通の武器として使えるんだけどな。
「ありがとう。」
礼を告げると、俺は記念すべき俺の…名前はどうしようか、とりあえず死滅の大鎌、死鎌でいいか…死鎌の仕事第1号といこうか。
ドルエンに近づいていく。そして死鎌を突きつける。
「ひぃっ。た、助けて下さい!」
ドルエンはみっともなく命乞いをした。死鎌の禍々しさは威圧感たっぷりだ。
「うーん、どうりよっかなー。」
俺は焦らす。
「なっ、何でもしますから!」
「何でも、と言ったな。」
その言葉が欲しかった。ドルエンは一瞬危険を感じたようなそぶりを見せたが、結局は覆さなかった。危険があろうと自分が生き残るには要求をのむしかないとわかったのだろう。
俺は懐から1枚の契約書を取り出した。
「これに血判しろ。」
「はっ、はいぃ!」
ドルエンが指先をかみ切る。
「ちなみにその契約内容を反胡したらお前死ぬから。何、簡単だ。俺に絶対服従すれば良いだけだからな。」
死滅魔法の応用だ。全くわきが甘いにも程がある。俺もこんなにも素直にやってくれるとは思っていなかった。血液は自分を表すものなんだから気を付けないと。
「ふっ、ふざけるな!。」
「“黙れ”。」
契約があるから逆らえない。
「お前は取り合えずいつも通りに生活してもらう。ただし、今日あったことは誰にも漏らすな。わかったらいけ。」
「・・・はい。」
俺を殺意のこもった眼で睨んできたが、素直に出ていく。
それを見送った俺は
「白虎の皆さん、ありがとうございました。」
作戦フェーズ2に移行した。