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プロスフォラ  作者: Rouge
2/6

第1話 初手

「悪い、遅くなった。」


 そう言った俺を先にいた人達は責めなかった。


「…気にしない。連絡もらったし。」


 その場所、空きビルの地下に着いていた内の一人、サナの視線はセネカを向いている。野郎2人は気付かなかった連絡をしてくれたらしい。目で感謝を伝えておく。

 それにしても、あの無口なサナが彼女にしては長く話した。それはサナとセネカが仲良くなった証拠か、それとも彼女もこれからのことを想像して興奮しているのか。

 いづれにしても良い兆候であることを願おう。


「おい、そんなことより、始めるのじゃろう?」


 ジーギスだ。ジジイ臭い口調だが、まだまだ若い。ジーギスは俺らの中の唯一の大人だ。この場所を手に入れたのも彼だ。

 俺は頷く。周りを見れば幼馴染であるセルとセネカも頷いている。


「さあ、革命の準備だ。」


 後で知った。その時よ俺は物凄く歪んで笑っていたと言う。


            ◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺らはまず手札の確認から始めた。


 5人いるが、使える魔法はそれぞれ違う。

 死滅の一族である俺、睡眠の一族であるセネカ、病気の一族のセルに、影の一族であるサナ、鍛冶の一族のジーギス。たったの5人しかいないが、かけがえのない仲間たちだ。

 ちなみに俺の死滅魔法、セネカの睡眠魔法、セルの病気魔法は特化魔法だ。人にしか効果を及ぼさないかわりに、効果は絶大だ。使える場所は限られてくるが。

 以上。これが現時点の俺らのカードだ。他にも一族の所有物だったり、使用人だったりを使えたりもするが、主には俺たちしかいない。

 とわいえはっきり言うと、俺らは強い。人間を相手にするならば。何せ特化魔法の使い手が3人もいる。

 けれども俺たちは所詮5人でしかない。数には敵わない。


 と、俺は確認を終えた。仲間の目に理解が浮かんでいた。


「そこで、コレだ。」


 俺は2通の手紙を出した。俺らの初手になる予定のカードだ。

 今度は疑問符が多い。コレの説明はまだしてないしな。・・・セルの目尻の涙はきっと気のせいだ。断じて退屈の欠伸をしていた、何てことはないはず。


      ◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺とセネカは4人に囲まれている。それも全員イカツイお兄さん。そして一段高いところに更に3人。内、1人は偉そうに椅子に座っている。

 こいつらは街のアンダーグラウンドの二大組織の1つ、“黒龍”に所属する奴らだ。力だけを重んじ、汚れたことでもなんでもやる組織だ。コレを手に入れる。

仕掛けは既にすんでいる。後は時間まで俺が注意をひきつければ良い。

 だから俺は不敵に笑っている。これはこちらの度胸、力を示す上で最低条件だ。相手の興味が離れたらそこでデッドエンドだ。危険な綱だがこれを成さねば俺たちは前に進めない。


「で?白虎で内輪揉めがおこると?」


 ようやくこちらの観察が終わったのだろう。まあ、時間を掛けてくれるのは都合が良い。


「あぁ、俺たちが起こす。」


 一応、へりくだってみる。(ゼノの認識の中では)セネカのため息が聞こえる。


 黒龍にとって、対立相手で唯一黒龍に匹敵する力をもつ闇組織“白虎”。白虎は正義を掲げている。そのため、組織方針が正反対の黒龍とはたびたび衝突している。それが混乱している、そこに付け込んで攻めるべきだ、攻めるなら協力する。そんな内容を書いた手紙を組織の中でのし上がりたいコイツに送る。コイツは手柄を独り占めするために誰にも知らせない。もしくはもらしたとしてもここには他の幹部級の人物は連れてこない。情報をなるべく漏らさないようにするために護衛の人数を極限まで削り、本人がわざわざ確認に来る。


 どれか1つでも間違っていたら、俺の作戦は成り立たない。まさにギャンブルだ。だが俺は賭けに勝った。

「段取りは?」


 襲撃のための打ち合わせ、だとでも思っているのだろう。力自慢の黒龍への誘いだ。当然のように戦いを自分たちが担当するのだと。

 実際の目的は未来の襲撃ではなく、現在の時間稼ぎだというのに。


「俺たちは既に白虎に食い込んでいる。」


 まあ、これは嘘ではない。そして相手の興味を引いている。つかみは良さそうだ。


「白虎にも当然派閥がある。黒龍にもあるように。そこで複数の派閥に美味しい話を持ち掛けて、俺たちは行方をくらます。そうすればどうなる?」


 相手は・・・だめだ。無表情だ。反応が分からない。


「利益がかぶるから争いになる。問いただそうとしても俺たちはいない。人は欲深いから得られる利益が無視できない。だから敵を排除しようとする。」


 反応はない。だが、10秒で考えた作戦は言い終わった。締めくくるしかない。


「これで内乱は完成だ。後は黒龍が漁夫れば完結する。」


 あまりにもお粗末な作戦。ここまで聞いてくれただけで驚きに値する。

 と、ここでようやく反応があった。


「・・・それで?」


「・・・報酬に黒龍内での立場を用意してほしい。」


 こちらの利益を告げ、これまでの説明を補強しておく。動機があると納得しやすい。が、


「その様なことを聞いているのではない!」


 急に大音声をあげられた。

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