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規格外達の戯れ

「え? その為だけに僕は呼び戻されたの?」

「う、うん。ダメだったかな?」

「あ、いや、うん。構わないよ『その顔は卑怯だ』」

「お兄様……『ちょっとチョロすぎやしませんか?』」


 うん。泳鳶(エイト)よ。お前はちょろ過ぎるぞ。

 パール嬢が何をどう誇張して連絡を取ったのかは知らないが、旧ルシェ領にある一地方を10歳という幼さでまとめた天才少年が俺の目の前にいる。視線は恨めしそうに俺に向いたが、例の報復に関わり、表沙汰にされていない部分までを説明。聡明かつ堅実な泳鳶ですら、最初は『は? マジっすか?』……と彼らしからぬ声が飛び出した。事の重要性とパール嬢が何を考えているかを考えたらしい。

 当時3歳のチビが魔法学書を欲しがったなんて言うからな。何事かと思ってはいたが、やはりコイツは凄まじい。

 あまり派手な事をしないから地味になりがちだが、間違いなく泳鳶はこの中では1番理知的で落ち着いている。見た目は歳相応ながら、少々あたふたして挙動不審なパール嬢のサポートをできる辺りがすげー。ただ、泳鳶を呼び出すのに間接的に関わった潮音嬢の娘達はそれを覆す不安材料だ。あと、7歳前後の双子がさらに加わり、おなじみの毛玉の5つ子も来てる。もはや何も言えん。コイツらを何も考えずに野に放てば以前の『宗教国崩壊戦線』よりもえげつない被害を出すだろう。

 そんでもって最初の問題が勃発。パーティーの構成メンバーだ。あと、お目付け役。やっぱ人気はパール嬢と泳鳶だな。


「んうー! アタシもパー姉とがいい!」

海雨(ミサ)……。わがままはよしなさい。それから言葉遣い」

「ゔーーっ!!!! 真面目腐ってるとパー姉と同じパーティーには……」

「そもそもこの場では僕とパール嬢は最年長。別々になるのが当たり前だろう? ん?」

「……え?」


 ……いつもなら髪を結ったり、まとめたりはしないパール嬢。それが綺麗に梳かれた髪を結い、薄く化粧もしてるな。妙に飾って来てると思えば……。10歳児だぞ? ちょっと色めくには早いんじゃないか?

 物悲しそうな声と共に、パール嬢は空色と濃紺を組み合わせた和装である泳鳶の袖を掴んでいた。目や表情は口で話すよりもド直球の主張をする。先程、妹を嗜めていた泳鳶だが、袖口を引かれ、涙目で見つめられてしまうと困惑の中に沈んでいる。うん。唐変木系主人公だな。俺は馬に蹴られたくないからほっとく。泳鳶からは『え?! 見捨てないでっ!』という視線を向けられたが……。諦めてくれ。俺はまだ死にたくない。

 あと、パール嬢は人気だ。

 兄弟姉妹からは頼れる姉として。朧月はずっと遊んできた親友のような位置だ。嵐月はそんな姉を見ているからか、パール嬢も姉として認知している。蓮華と檜枝の執着はないが、パール嬢が優秀なリーダーたりえる存在だとは肌身で感じたらしい。また、自由人な5つの毛玉はパール嬢か泳鳶の抑制しか効果がないからな。俺は母親の兄弟弟子だから辛うじて叱れるが、アイツらを整列させられるのはごく一部だけ。

 ………………。そんなこんなで現在のギルマスであるレミ嬢に連絡を通してあったから、とりあえずは問題なくお目付け役が用意されていた。今回招集されたのはかなりの大御所。まず、神殿騎士が4名。聖騎士団から聖騎士アランと聖騎士アルリーシア。暗黒騎士団から暗黒騎士レギウスと暗黒騎士リーズグリュー。いずれもSS級勇者資格を取得している神殿騎士の中でも指折りの戦力だ。なんたってエレノアとカルフィアーテの子供達、黒騎士姫ノアと煌騎ブランが新たに仲間入りしたからな。見た目は可愛いし、初めての外出から少し緊張気味だが、潜在能力だけならばS級勇者も真っ青なチビ達だ。


「「はじめまして。よろしくお願いいたします!」」

「よろしくー!」

「よろよろ!」

「父母からお話は聞いていますよ。従姉妹にあたりますから、遠慮なく頼ってください」


 ウチの姉妹は相応ながらパール嬢……、カリスマ性パネ〜。

 ノアとブランは溢れる姉性を隠しもしないパール嬢にひしっと抱きついていた。それを真似する様に、本能優先の育ちをしている毛玉の5つ子がパール嬢と双子を包む様にして抱きついた。可愛らしいは可愛らしいんだが、パーティーの分配がさらに難しくなる。普通なら5~6人で1つの括りをし、人間関係や役割の重要性を学ばせるんだが……。もう団体で居た方がいい気がしてきた。その方が揉め事も少なそうだし。

 それに、まだまだ俺は不安だ。神殿騎士が4人、俺が居るから大丈夫だとは思わない。この戦力だと子供達のが優勢だからな。泳鳶からの希望で軍の方からも援軍が来ている。まー、潮音嬢の最高戦力だ。レヴォナンテ女史とキース。お目付け役のメインは潮騒家のわがままお嬢様、海雨嬢。無口な暴れん坊、麻雨(アサメ)嬢。……大食少女、3女の歌雨(カサメ)嬢。将軍の暴れん坊姉妹は旧ルシェ領では有名な話だ。泳鳶は兄1人で三姉妹を御しているんだからすげーよ。

 次に鬼の勢力からコビンとオルグリーズを隊長にメイド隊から選抜されている。コイツは過剰かとも思ったが、最近プラチナランクになり、X級認定を受けた真勇者クレイン・ソーラと、嫁さんの夜明けの聖女セナがデートついでに来ている。この2人は結構前ではあるが、見合いからは時期を空けて正式に結婚した。というのも、ソーラの母親、リンダさんがソーラが武勲を立てなければ正式な結婚を認めなかったからだ。ま、それも真勇者と言う肩書きを得たソーラだから半年以上前にはクリアし、盛大に婚儀が行われている。それに合わせ、主な活動拠点をエウロペへ移しているからな。今じゃアイツの名声は留まる所を知らない。最後に冒険者ギルドから……フォンドンとレミ嬢本人が来ている。


「貴方も苦労人ねー。ニニンシュアリさん」

「仕方ないさ。自分の娘とその友達の面倒は見なくちゃな」

「やっぱ聖刻は異質な国ねー。医療や生活基盤が整ってるのが大きいとは言え、民間までそれなりの教養がある。それに孤児ギルドなんかの民間協会が生きていくのを国が積極的に支援していたのも凄いわよねー」


 パール嬢やオーガ家の姉妹を見ながらレミ嬢が愚痴を零した。愚痴も零したくなるだろうな。実は俺は今この場に居る連中をパイプや相談役としてここに呼んである。

 シルヴィアさんのせいとも言えなくもないんだよな。

 遅かれ早かれ露見したのだろうが、今の聖刻は師匠や椿様が口添えし、なんとか回っている。あと、不知火さんや魔族の暗部達が鬼や兎に協力的故にうまく回せているんだよ。やりようが無かったことも事実だが、シルヴィアさんを主軸に商売や運営をしていた協会が、軒並み王都の影響圏から離れつつあるのだ。それは冒険者ギルドや孤児ギルドも同じ。最初の問題は孤児ギルド出身の冒険者が王都から流出している事。首都である王都近辺から自然との共存者が姿を消し、首都の警務官や衛兵だけでは魔物などの襲撃事件を抑えられなくなり始めている。そして、冒険者が少なくなると、行商人が減った。流通が弱まるにつれ、大きな商会が本拠地を王都から外していく。職員や下働きの孤児ギルド員達が別の場所へ。

 他にも職人ギルドや商業ギルドなど、まだまだ動きはあるが、人口流出の増加が各派閥から止まらないのだ。その行先が……エウロペ高地を含む『魔境』の裾野だった。レミ嬢はそれを『当たり前だろ』と言わんばかりに手を返して話してくれる。それを知ってか知らずか、楽しそうに草木の採取や野山での歩き方を主にフォンドンやコビンから学ぶチビ達。俺も立場がなければ楽しむのになー。

 ウチの嫁さんがストを起こしたのも、この流れによる物だ。本来、人1人が抜けた程度でこんな事はありえないはずなんだが、苛烈な時勢を御旗に縋って駆け抜けた代償なんだろう。シルヴィアさんを失った政府は各部門の統括が上手くいかず、程度の差はあれどお粗末な汚職や隠す気のない不正が露見。因みに、形だけシルヴィアさんを追いやった様に見えた連中は……既にこの世に居ない。パール嬢やエメラルダ嬢だけではなく、他勢力の暗闘が勃発していたからな。俺らが手を下すまでもなく、勝手に夢見て勝手に消えて行ったんだよ。


「そういえばおめでとうございます。レミ嬢も3人目を妊娠したんですよね?」

「ありがとう。……まー、雲行きは怪しいのだけど」

「それはウチも同じですよ。俺は毎晩心月を宥めるので精一杯ですから」

「それは大変ね。やはり、エウロペへ本部を移すのが吉か」

「でしょうよ。ウチも近々神殿を実質的に閉鎖するらしいです」

「それ大丈夫なの?」


 あー、大人しくしてれば我が子らの愛らしいこと。蝶よ花よと育てる気は無いが、蝶と花を愛でている我が子らは可愛い。親バカだな……。

 あっ。目を離していたら毛玉の姉妹が一塊になって昼寝してやがる。花畑の中だから気づかなかったぜ。静かだとは思っていたが。まー、やりたいようにやらせればいいか。真面目な子達はそれに準じているし。パール嬢と泳鳶が率先して引率し、薬草や判断し易い毒草の区別なんかを周知、実地として採取をしたらフォンドンやコビンが答え合わせか。なかなかいい感じだな。我関せずとばかりに昆虫採集を楽しんでいる子も約1名いるが……。あと、いつの間に連れてきたのか、フォンドン、コビンの組にレジアデスが加わり、長男のナーガロークがサフィーナ嬢にひったくられていた。

 そう。サフィーナ嬢が1人で土の国まで行くのには理由がある。レジアデスとベラドニアの間の子にご執心なのだ。まだまだ幼い龍王子ナーガローク。彼を将来の旦那に育て上げるつもりらしく、物凄くその辺に熱心だ。暴れん坊が大人しいに越したことはないから構わないけど、抱きしめられたナーガロークはウザそうな表情の中に諦めが現れている。後でいい肉でも差し入れとこう。あのレジアデスの子だとは思えないくらい礼儀正しい。また、サフィーナ嬢を振りほどかないのは、彼女の父である師匠を尊敬してるからのようだ。うん。泳鳶に次ぐ常識人枠だな。あ、こっちに気づいた。……うん。わかった。肉な。

 この柔らかい日常を見ていると忘れたくなるが、やはり早めに育てねばならない。それに合わせて最低限の機能を残し、王都近辺の活動範囲を縮小するのがよいだろう。どの道、エウロペの裾野のが今は安全だ。


「いつ見ても恐ろしいわね。1番小さい子ですらゴールドランク冒険者並の戦闘力か……」

「それには同意だ。個人が集団を圧倒できるこの世界では、力が際立っていれば戦闘経験が無くても十分脅威だからな。たとえ何歳だとしても」

「そうね。あの子達は神殿騎士様方のお子様?」

「そう。今じゃ名前も呼ばれなくなったが、パーティーは独星の導き。魔法格闘家のカルフィアーテ・ワールテアルロと金星の集い、暗黒騎士エレノアの双子だ」

「……貴方達の仲間内って双子の率が高くないかしら?」

「まー、その辺は巡り合わせとしか。ウチはまだ双子はいませんし」

「そう……ね。『まだ? ってまだ例外続きの子供を設けるつもりなのかよ』」


 神殿騎士の姉弟は生まれてこの方ずっと騎士に囲まれて育った。そのせいか普段着にさえ飾鎧のパーツがある。術式付与や特殊な細工が少なく、装飾が凝っている点から、作ったのは義父さんだろう。師匠ならゴリッゴリにギミックを詰め込んだ作りにしたはず。

 幼いながら騎士の所作が垣間見え、佇まいや構えが1級品。武芸はどちらも両親手ずから教えているようだし、養育係兼護衛の聖騎士アルリーシアと暗黒騎士リーズグリューが備える武具からも見て学ぶ。生粋の騎士姉弟。

 姉のノアは……父親寄りで魔法による着脱を可能にした特殊な手甲。爪甲(クロー)とも言う。他の装具などもかなり軽量化し、軽い身のこなしを重視したバトルスタンスは美しいとさえ言える。つか、あの年齢の子供にと刻然砲石の鎧は奮発しすぎだろ。そのノアの教導役はアラン。アランも国家殲滅級の使い手のはずなんだが……。

 弟のブランは母寄り。鎌使いだな。しかもかなり魔法に長けている。空間に満ちる魔素を読み取る感性は羨ましい。呼吸をする様に魔法を使う為、その一挙一動が道化師のよう。姉のノアが軽量化を突き詰めたスタイルなのに対し、ブランは全身をくまなく魔法と特殊金属で守る重装騎士。ハルバートを使うソーラに似ているが、ソーラの獲物が1つなのに対し、大量の首狩り鎌を魔法で操る。リーズグリューが技を教導しているが、彼女に弄ばれてはまだまだ。芸達者ではあるがまだまだ浅いさ。10にも満たないのだからあたりまえ。

 あと、この双子は個人より2人でのタッグがむちゃくちゃ強い。双子と言うなら蓮華と檜枝は下手にくっつけると反発し合うが、対象的なまでに2人は背合わせの乱戦に強い。……スキルを見られれば解るかもしれないが、特殊なスキルや称号を持つかもしれない。


「「ふぃー」」

「お疲れ様です。ブラン様、ノア様」

「まだまだ皆の足元にも及ばないねー」

「うん。見習わないとねー」

「いえ、……お2人は同年代の方々と比べても実力は上位かと」

「とは言え、まだまだ実地で学ぶ機会は多いですよ。我々がお教えできる機会がある内は、微力ながら力を尽くさせていただきます」

「「お願いします!」」


 日課らしい。一頻りの鍛錬を終えた2人は、泳鳶やパール嬢が居る塊へ加わった。幼児仕様の騎士服をわざわざ用意させてたのかよ。まー、いいけどさ。

 次はなんだ? 何かの接近に臭いで気づいたらしい5つ子が、目配せの後に音もなく散る。いつもはボケーッとしてるアイツらだが、こういう時はいかんなくハンターとしての本能を顕にするみたいだ。

 コビンの話ではキースとレヴォナンテ女史が見張っているはずだから、ヤバいヤツは通さないはず。……と、なると。チビ達でも大丈夫なヤツを無視したんだろうな。それでも一応は気にしてレミ嬢が見に行ってくれた。俺も行くけど。レミ嬢が身重な事もあるが、基本的にはオニキスの娘達がどのレベルかを知りたいのだ。あの娘達は母親が母親だからな。何が起きてもおかしくない。

 ……いやいやいや。焦るレミ嬢。そらー焦る。俺も焦った。

 毛玉の5つ子が屠っていたのは市街地守備の警備隊が連隊を組んで当たる『魔物』。『暴虐猪(マーダー・ボア)』の群れだ。冒険者レベルで言えばシルバーランクのパーティーが2〜3組であたるのが妥当な危険度。勇者ならば、周辺被害を気にしないならば、A級が1人居れば事足りる。

 俺達レベルならなんら問題ないんだが、あの子達の年齢だと殺されていて然るべきなんだが……。暴虐猪は1頭の雄が複数の雌を囲うハーレムで生活する。暴虐たる所以は縄張りの侵害には死を持って償わせる点。あと、ヤツらは雑食。たまに調子に乗った冒険者が行方不明になるのもコイツらが関わってる場合が多い。しかも近縁種と見分けにくいって落とし穴付き。

 そんな暴虐猪の群れ。しかもかなりデカい群れだったのだが、一応警戒して武器を構えているレミ嬢もアレは自衛のためだけ。見れば見るほどに猪側が可哀想。さすがは『雷虎』の血筋。自分たちよりも体格、力、第六感に優れた猪を屠る。

 先頭はプラーネ。両手には枝払い用だろう刃渡りが長い鉈が握られているが、材質は伝説級。レミ嬢すら目で追うのがやっとであろう瞬足で分厚い猪の皮を切り裂き、血の飛沫を舞わせる。剣速だけなら一流の剣士レベルだ。また、刃から伝わる感触で致命傷に至らないのはわかっているのか、彼女は体力の続く限り駆け回る。疲れると軽やかに木に登って高みの見物。ヘイトを稼ぐには最高の手段だが、アレはウザイ。

 とりあげられた順。つまり姉妹の順で動いているらしい。次はアーヴ。これまた豪快。プラーネが与えた裂傷は、確実に猪から判断能力と体力を奪っている。その荒ぶる猪の眉間に片手斧を振り下ろし、息の根を止めていく。頭蓋骨がかなり堅固な猪系魔物に対し、あの一撃は恐れ入る。体を捻り、刃に重心を乗せて振り抜く身のこなしもなかなか。両手に握られた片手斧が後列に抜けられない様、的確な動きをしているがやはり手数が足りない。

 それでもレミ嬢が動かないのは3番目のシルバーナが居るからだ。アレは酷い。動きが速い姉2人とは打って代わり、シルバーナはどこから出したか、全身フルプレートメイルの両手に大獲物。鈍重を絵に書いた様な外観だが、アレは小さな要塞だな。右手に両刃の戦斧(バトルアックス)、左手に戦鎚(バトルハンマー)。普通ならば大の大人が1人で1本持つ獲物だが、涼しい顔でぶん回し、2人を掻い潜った猪を叩き潰す。長柄の獲物だが、アレはあーいう使い方の武器じゃねーはず。


「…………」

「うん。レミ嬢。アレはオニキスの子達だな」

「間違いないな」


 はい、4人目のクーバルティア。彼女はオニキスの娘ながら獲物は刀。打撃や薙斬りを好む姉達とは違い、一閃による居合を使うらしい。あと、小物は好きじゃないらしくて、大人しく狩られた猪の血抜きと解体をしている。まー、たまに現れる小型の肉食動物を、威圧で失神させられるだけ眼力がある子だが。

 5番目のアインは……。何あの子。アレはロケランじゃね? つか、体の周りに飛ばしてるマギ・ドローンは俺のお古だよな? 森を焦土にする気か? アレは対龍装備だぞ? ……構えて悦に入ってるだけか。なら構わん。撃つなよ? 振りじゃないからな? 3回言ってないからな?!

 ……6人目? ……ん? 何度数えても6人居るな。そういやーずっと気になってたんだが、最後のアルニム……。コイツずっと上の姉達とごっちゃにされてたから考えから抜いてたが、何者? …………おう、アインちょっと。アレは何者? 養子か。竜胆と一緒に森から抜け出た中に、まだ赤ん坊だったのが居ただろうって? 居たな。確かに。それがアルニムか。種族も獣人の神獣族、分派は違うが雷虎だったから養子にしたと。……なしてそんな重要な話が俺に来てねーの?

 狩り終えた5つ子に聞いてみた。アルニム自身があまり周りに知られたくない恥ずかしがり屋。姉妹で唯一の斥候職に加え、作戦参謀も兼任。また、あの5つ子+1が『毛玉』と呼ばれる理由にもなるのだが、いつもあの姉妹は全員が一塊で過ごしているから。俺が結構一緒に過ごしているのに気づかなかったのもそれが理由。食事やオヤツにしてもあの5つ子+1は1つのプレートに全員分が盛られるせいで判別できんのだ。


「ニニンシュアリさん。あの子達って本当に獣人?」

「あー、そう思うのも理解できる。冒険者の獣人は獣に近いヤツが多いが、獣人の全てが体毛モコモコという訳では無い。獣の血が濃いとなるらしいが、中でも特殊な神獣族は基本は人の形だ」

「耳や尻尾だけなのよね。それなのに獣人のトップ冒険者を軽く超えるなんて」

「人に近い獣人は人に近い力しかないからな。基本は弱い。街中で生きるのに特化してる。それだからこその神獣の血だ」

「神のみぞ知る……ってこと?」

「そういう事だ」


 オニキスがかなり厳しく躾ているせいか、毛玉+1姉妹は華麗とも美しい友取れる手つきで肉を解体、保存していく。時間停止機能付きの魔法袋に次々に詰め込む。しかも比較的綺麗な状態の物から悲惨なものまで分けて。

 アルニムがこちらに歩いてきた。やっぱアルニムは毛玉+1姉妹のブレインらしい。

 野性的な他の姉妹がやれない伝達や報告をレミ嬢にしている。まだ毛玉+1姉妹は冒険者では無いため、買取に手数料や書面でのアレコレが要るのだ。それをレミ嬢に説明しながら、色分けした魔法袋の中身の確認とプレゼントだと何枚かの上質な1枚皮を取り出す。その賄賂を預け、『よろしく』と呟いて毛玉姉妹の集まりに混じって行く。ちゃっかりしてるなー。

 ただ、その毛玉+1姉妹の度肝を抜く展開が待っていた。

 血抜きの処理や毛皮から削ぎとった肉の臭いを嗅ぎとった、凶悪な『魔獣』が乱入して来たのだ。おかしいとは思っていた。なんだって山の中に広い縄張りを持つ暴虐猪がこんな人里近くの森に? ってな。原因はこいつか。三角鱗獣ディプラドーザ。ま、ディプラドーザにしてもおかしいんだがな。コイツにしたって洞窟を住処にする為、山奥に住まう事が多い。人の手が入り、開けた森にコイツらが求める獲物は少ない。

 怯えは無いが、毛玉+1姉妹はフォーメーションを変えて表情を厳しくする。一撃必殺の高威力が売りのクーバルティアとアインが組み、速度と牽制が上手いアルニムが補助へ。先程の暴虐猪にスタミナを使っているプラーネ、アーヴ、シルバーナは後ろで回復と機を見て合いの手を入れるつもりらしい。勝てない事はないが、無傷は無いだろう。……と言った感じだ。なぜなら、毛玉+1姉妹の明確なタンクであるシルバーナは、他の姉妹の防御を考えた技を持ち合わせていないから。シルバーナは単体でヘイトを稼ぎ、引きつける事で他の姉妹に叩かせる為の役割だからだ。


「レミ嬢」

「ええ」

「大丈夫です。僕が行きます」


 ディプラドーザがクーバルティアへ、返しがついた三本の角を向けて突進の構えを向けた時だ。さすがに俺やレミ嬢が排除の構えを見せたが、それよりも先に動いていたヤツが居た。速いな。……コイツが戦ってるのは初めて見る。ギリギリまでは見極めるか。レミ嬢も気になるみたいで獲物を納め、颯爽と現れた少年を見つめる。潮騒将軍が嫡男、潮騒 泳鳶。

 武器は太刀と脇差。あと、どんな種に入るとかそんな括りができない物だ。形を形容するのも難しい。強いて言うなら……刃物で枠を取ったサーフボード? しかも真ん中は長めに取られたグリップで、彼が造形した水を利用したボード。登場にしても魔法で水のレールを作り、それを波乗りよろしく滑って来たんだ。速度は波乗りにしてはおかしい速度だったが。

 しかも『僕が行きます』と言う前に、ディプラドーザの麻痺毒ブレスを水の幕でブロック。ついでとばかりに乗って来たボードみたいな武器で返し付きの角を刈り取り、素手で触ると傷だらけになるヤスリのような鱗を水でコーティングしていた。……最後はエグかったけどな。頭がいいから封殺の仕方も完璧だ。それができる実力は両親から受け継いでいるし、危険度が高い程度の魔獣なら完封も可能か。いやいやいや……。ディプラドーザはその特殊性も相まって、ゴールドランクパーティーか、S級勇者が出張る魔獣だぞ?!

 武器を全て封殺されたディプラドーザの最期は……破裂。もしくは圧死。

 泳鳶は気づいていたんだ。ディプラドーザが一体ではなかった事に。その為に彼はできるだけ早い解決を考えた。ディプラドーザは常に番で行動する。並の武器では歯が立たない為、魔法使いが必要だが、かなり狡猾で動きも速い危険な魔獣。それも動きや技を封殺すれば形無し。その結論が魔力量に物を言わせたゴリッゴリのゴリ押し。ブレスを吐かせない為の水マスクを口からぶち込み窒息。鱗をコーティングしていた水の圧を急激に加圧し、外皮から圧迫。内と外からディプラドーザは破裂し、後ろの毛玉+1姉妹は『えー……』って言いたげな視線を泳鳶に向けていた。そして、殺されてたディプラドーザの背後より、怒り狂って突っ込んで来た2体目のディプラドーザを水でコーティングされた太刀で一刀両断。……俺も『えー……』って言いたい。コイツ、どんな訓練を続けた? まだ5歳に満たなかった頃の潜在能力ではここまでの育ちを期待できなかった。……俺は言わねばならないから泳鳶だけに聞こえる様に話をする。


「決意は買うが……、過ぎたる力は身を滅ぼぞ?」

「……解っています。しかし、僕はそれを超えねばなりません。彼女と釣り合う男になるため…いっだ! 何するんですか!」

「たかだか10歳が何を言ってんだよ。そういうセリフは成人してから言いやがれ。まー、死にたくないなら少し鍛練の幅を狭めろ。そのまま行くと魔力腺と神通力腺の摩耗が激しくなる。早死はしたかねーだろ?」

「それはもちろん」

「なら、俺が相談に乗ってやるから。無茶はすんな。努力ってのは、先を見て積むもんだ」

「はい」


 ……なんだかなー。コイツらマジで爆ぜねーかな?

 もう、両親が認めたら婚約行けんじゃね? いや、師匠はまだしもシルヴィアさん辺りは既にタイミングを見極める体勢に入ってるのかもな。あの人ならありうる。勘違い唐変木はラブコメの鉄板だが、俺はラブコメ嫌いなんだよな。甘ったるくて吐き気がするから。だからって昼ドラ系のドロドロはもっと嫌い。読むなら勧善懲悪かユルユルした日常エッセイが好みだが、アレは物語り以外にはありえないしな。俺は知ってる。都合のいい話は無いってな。

 ディプラドーザ2体を瞬殺した泳鳶は、凄まじい速さで突っ込んで来たパール嬢に馬乗りになられてポコスカ胸を叩かれていた。

 ……泳鳶だから耐えられるが、上に乗っているのはトン単位の体重で鋼より硬い肉体。それを動かせる馬力で振るわれたら……。うん。常軌を逸した存在でなければ、一瞬で肉が弾け飛んだスプラッターな情景のできあがりだ。水の防御魔法を何度も展開しているが、一撃で破られるからまさに焼け石に水。上手に弾けましたー! なんて馬鹿なボケはしない。耐えられてるだけだ。泳鳶にはそれなりのダメージが蓄積する。やめて、泳鳶のHPはもうすぐ0よ! なんて馬鹿なボケもしない。保護者で唯一パール嬢を掴みあげられるレジアデスが、パール嬢を泳鳶から引き剥がす。意識はあるがぐったりしている泳鳶。フォンドンが魔法薬に含まれる高級回復薬を手渡し、パール嬢へはルビリア嬢に遠回しな苦言とフォローを頼んだ。うん。俺はまだ死にたくない。あの年頃なら体重を気にしだしていてもおかしくはないからな。あの子の一挙一動はどれをとっても殺人的だ。痛いでは済まない。


「ご、ごめんなさい。でもっ! 泳鳶も悪いのです! 何の相談もなくフラっと……心配したんですから」

「パール嬢よおー。そこは泳鳶の顔を立ててやれって。こん中では最年長の男子だ。プライドってもんがある。『真実は、あの程度の輩で地形を変えられたら、こちとら溜まったもんじゃねーだけだがな』」

「で、ですが……」

「ねね様。ねね様が出られると、この地域がさら地へと整地されてしまいます。パ…こほん、父上はその辺りの実力を見極めよと仰りたいのかと」


 ルビリア嬢の歯に衣着せぬ発言に、一瞬だけこの場が凍りついた。文字通りの絶対零度だ。パール嬢の魔法利用範囲は師匠と同じ全属性(オールラウンダー)。しかし、体が放出に向かず膨大すぎる氣を使えない為、この様な気持ちが高ぶった時だけ現れる。……が、パール嬢はアホやバカではない。すぐに深呼吸をし一言詫びを入れてから、未来の夫候補をべた褒めしに行った。実際、あの手際は見事だよ。叔父の太刀海先生から教えを受けた『水研流伝剣法』や母の『水研流伝魔法亜術』を見事に使いこなしている。

 そして、更なる問題が浮上した。

 三角鱗獣ディプラドーザがこんな市街地近辺に出没した理由。まさか下級ながら飛竜がいたとは……。冒険者が減った以外にもいろいろとありそうだな。両翼が炭化し、体のあちこちに切り刻まれた痕が残る飛竜の死体。引っ張って来たのはエメラルダ嬢の従者達と鬼のメイド数人。その真後ろには更に可哀想な飛竜を牽引するエメラルダ嬢の従者と、キース、レヴォナンテ女史、オルグリーズが続いていた。成程、潮騒公の懐刀の2人が見えなかったのは、番の飛竜の存在を確認したからか。

 飛竜が急に現れたのはおそらく縄張り争いか、新たな番がこの辺りを縄張りにしたから。竜は野生動物だが、人が考えるよりも知能が高く用心深い。そして傲慢な生物ではなく、身の丈よりも小さな世界に収まる。人がしっかり生活圏を管理していれば、滅多な事でもなけりゃ竜はその地に現れないんだよ。人にとっても竜は脅威だが、竜にとってもそれは同じ。これが龍だと話は変わるが、竜は生態系上位者と言うだけで最上位ではないんだ。実際、普通に狩られる。


「かー……。これはこれは……冒険者ギルドとしちゃ大失態だな」

「大丈夫だよレミ嬢。この場の人間は誰一人責めはしねー。むしろ娯楽の提供を喜んでるヤツが多いぞ」

「それはそれで勘弁して欲しいんだけどね。人里に凄く近い場所に竜が巣を作った予兆を見逃したとあっちゃーなあ……」


 冒険者ギルドのトップとしては失点かもしれないが、タイミングは凄くいいがな。この後はどうかわからんが、しばらくはチビらを冒険者ギルドに協力してもらって学ばせるんだ。俺やお目付け役はしばらく付くが、いずれは独り立ちさせる。かち合う冒険者もほとんどいない。また、まだまだエウロペの裾野へ渡れない小さな冒険者見習い達の安全の為、活用してくれてると考えればいいだろうさ。

 物は考えようだ。

 今回の件で俺は改めてチビ達に積極的な教育を施す事を考えた。俺は師匠に依頼され、チビ達の面倒を見ている。国だとか企業、神殿、協会……。どんな括りをしようが、簡単に文明を滅ぼせるチビ達がこれだけ元気だと、危機感は増大の一途。今は常識と言うか、感情の抑え方が中心だな。この辺りは徐々に教えなくちゃならん。特に露見した上の3人の個性は見逃せない。

 大丈夫だろうと放置しといてなんだが、ちょいと危険なヤツが出た。直接的ではなく間接的ではあるがな。

 鬼の子達はどいつもこいつも気狂いじみた強さだ。戦闘におけるスキルだけじゃない。初戦闘ながら血を見ても何とも思わなかったり、急所を心得ている辺りな。だから、元より目を離すことができなかったが……。まさか泳鳶までもが問題を露にしたか。頑張りすぎってのも場合によっちゃー死に繋がるんだよ。特に今回の泳鳶については気づけて良かった。おそらく、あの年代の体にはギリギリだろう。あれ以上の魔力と神通力の回転を上げ続けたトレーニングは、泳鳶の体の内部構造を焼き切る。魔力腺や神通力腺は体の中でも特殊な部位だ。1度壊れてしまうと余程リスキーな施術を施さねば修復は難しい。言わずもがなそういった施術には死がチラつく。なまじ中途半端な魔法医学に知識を持つと、懸念が渦巻いて焦燥が嵩む。


「……どうしました? 師匠」

「かなり面倒な事になってきやがったな。鬼の諜報網や兎を使ったが、馬鹿げた事実が判明した」

「勿体ぶらないでくださいよ」

「あ〜〜。すまん。ちょいと現実逃避したくてな。異界との『転移門(ゲート)』が見つかった。しかもかなり厄介。デカい上に広がってやがる」


 …………………………。んっ? ヤバくない? 

 酷いクマをつけた師匠が話すには、以前の勇者召喚の召喚陣を無理やりに閉じたのが理由らしい。勇者召喚の召喚陣が不十分な準備で起動し、対象を選択しきれず召喚した。それが例の巨人。巨人に意思は宿らず、術の性質から何らかの感情を喚び代にする事で喚んだ訳だ。その時にエゼルビュート激しい怨嗟が映り込み、俺達が苦労して押し込んだんだよ。

 ……え? なして『悪神(ノアール)』が出てきてんの?

 師匠の調べを補足してくれる為、わざわざパール嬢にお願いして喚び出してもらったらしい。どうもこうもなく、偶然の産物としか言えないと悪神の言。巨人に関してはこちらの世界のアホがやらかした結果だが、今回師匠が調べて見つけた転移門(ゲート)はかなり面倒らしい。概念生命体が住まう第4の空間では大騒ぎらしいな。感覚的には自分らが管理していた水道管が地震かなんかで、あちこち破損して水が噴き出しまくってる状態らしい。

 勇者召喚の召喚陣と偶然たまたま、天文学的なまでにかけ離れた物の一致と言うか……。うん。他の世界の神々から詫びが来たんだと。

 どうにもこうにも、異界にも勇者召喚と言う文化があるらしく、そちらの世界でそれをやろうとした。しかし、失敗。言わずもがなだが、異なる世界同士を繋げると言うのはそれだけのリスクを伴う。で、今回やらかした結果。その異界の一部が次元の狭間にダストシュート。……した物を偶然たまたまエゼルビュートがゴミ箱から拾い上げたらしい。


「それ、めちゃめちゃヤバくないですか?」

「ああ、めちゃめちゃヤバい。おそらく、地殻ごと転移門を通過し、接続され、吐き出された段階で転移門はぶっ壊れるだろうさ。問題は多々あるが、俺達としてはその呼び出された陸地に居るヤツらが友好的かどうかだ」

『それはなさそうじゃのう。迷惑この上ないが、あっちの同類が言うには自己中心的で尊大なイカレ頭…らしいからな。全てがそうではないと思うが』

「……師匠、場所は?」

「元ハラビル神国の跡地から北西に10数キロ地点に複数。ちょいと前に国を焼いた場所だな。テナントは空いてるからちょうどいいとも言える」


 最後の方は投げやりで、明らかな嫌気に満ちたコメントの師匠。これには流石の悪神も苦笑い。

 悪神の詳しい話を要約すると、今回問題になる地殻が次元の狭間に飛ばされた理由はあちらの神と人の諍いが原因。こちらの世界でも知っている人間は知っているが、転移魔法はそれほど便利な魔法ではないからな。1番重要な3つの要素が補足できない。具体的には移動における経過時間、転移する距離、転移にかかるコスト。これらの設定を自動化できないからだ。転移魔法に『1度訪れて』……って条件があるのはこれが理由だ。じゃないと訳分からん空間に投げ出されても知らんからな。いつぞやの朧月がやらかしたアレはホントに九死に一生を得たんだよ。

 1つの世界内ですらこんだけ面倒なんだ。異次元からの転移となると、喚び出す物が喚び出した側の世界に適応できるとも限らない。そもそもあるのかも判らない。それこそ主神が身の安全を保証し、異界を直接的に繋ぐなどすれば……解らなくもない。ただし、そんな状況は世界の存亡よろしい訳で、人間の身勝手な都合でなんてありえない。そもそも俺達程度の者が異界から呼び出すには、対価が全く足りないんだ。あとさっきも言ったが条件設定が上手くいく訳が無い。知らない世界から似た感じのヤツを喚ぶったって……居なかったら呼べないだろ? あと、異界を指定するコード的な物があるらしいが、んなもんリサーチなんかできるかってんだ。


『その通りじゃ。概念たる我らとて所詮は下々の者よ。異界の同類に話を聞く限り、彼奴等は弱いらしい。こちらの野生動物にすら武に秀でた者が遅れをとると言いよった。我々とでは雲泥の差だな』

「なあ、それ自体が罠な可能性は?」

『有り得ぬ。神どうしでの契約違反は則ち死。あちらの、我々の同類が謝罪の意を表したなら疑いこそしたがの。あの自尊心が形になった存在……神がだぞ? しかも主神が直々に武神夜桜に土下座していた。まあ、アレだけタコ殴りにされれば……、心の一つや二つは折れるだろうよ』

「ぶふっ?!」

「まあ、ばーちゃんだからな。簡単には許さねーだろうしな」


 これも一部の人間しか知りえない話ではあるんだがな。……夜桜先生ことオーガス・ブロッサム様は、神々よりその偉業を讃えられ、新たな神族として姿を変えていた。

 俺達や一部の人間以外には見えないのもあるし、先生はあの人の人間時代よろしく『武神』に類する。しかも、かなり特化した能力らしく、先生の加護はマジでチートらしい。今のところその詳細を知る師匠によると公開してもいいが、後悔するぞ? と言われた。それでも一応聞いた。馬鹿げていたよ。師匠が『解析(アナライズ)』系の異能持ちの中でもかなり精密な異能持ちだから判るらしいが、マジでチート。全ステータス2倍と状態異常無効。ただ、この加護が解放される条件もおかしかった。漠然とし過ぎなのもあるんだがな。『死に直面し、死に抗う』らしい。

 現在、その加護を持ち、発動状態なのは師匠のみ。持ち合わせているのはもう1人。パール嬢だ。そのパール嬢ももう少しではないかと師匠は言っている。

 はい、脱線終わり。

 いつの間にやら竜肉を焼いてバーベキューを始めていた。パール嬢も器用に串を返してウチの姉妹に差し出す。……娘達よ、もう少しパール嬢を見習ってだな? まー、難しいか。調理班は従者各員に泳鳶とパール嬢。2人は修行の一環としてわざわざお願いしたと聞いた。パール嬢はできた子に育ってきたよな。怪しまれない様に俺も飯に加わり、同時に師匠は残像でもそこにあったかのように消えていた。


「アリストクレア様の言葉は確かなの?」

「十中八九、ハズレはない。あの人は慎重過ぎるくらいだ。あの人の能力なら俺達の調査結果から推察して当たりは付けてたはずだ」

「なら、早めに低ランクへの依頼受託制限と保証をしなくちゃだね」

「あー、そうだな。そっちはそれが必要か。業務提携の形を取るなら条件付きで固定転移門を貸し出すが?」

「…………考えとく」


 その日は初めての壁の外への外出を華々しく飾った子供達を連れ、聖刻の内壁に帰った。俺達の監視は付くが、明日からは彼女らはある程度自由になる。何故なら、今日見ただけでも各個人に明確な課題があったからだ。年齢差やタイプも混みである。

 明日から参加予定の新たな教官も居るだけではなく、明日からは実家ではなく夜桜勇者塾の金星館と独星館に移る事にもなっているしな。

 総まとめにはパール嬢と泳鳶がついた。パーティーなのかソロなのかはその個人の実力による。また、レミ嬢から信頼できるギルド職員を派遣してもらい、『霊峰出張所』を開設するしな。小遣い稼ぎに討伐や採取クエストを受けてくれるだろう。

 まず、固定パーティーが2つ。

 毛玉+1パーティーと騎士姉弟パーティー。特に安定していたのは騎士の姉弟の組だ。アイツらは突出した役割ではなく、様々な役割を2人でカバーしきれる様に訓練していたらしい。運搬と野営の下準備、調理などは姉のノアが。斥候、偵察、調査、採取は弟のブランが。特異技能もたくさん持っていたし、騎士にしとくのは勿体ない。

 ただ、感性は年相応。パール嬢がべた褒めしたら2人はしっぽを振る犬にしか見えなかった。『褒めて! 褒めて!』、『撫でて! 撫でて!』……。と、ばかりの双子。パール嬢も躊躇わずに撫でくりまわすからな。その2人の真横に並ぶ毛玉+1姉妹。魔法が苦手な事で幅は狭いが、探査や野営に特化した毛玉+1パーティーも年齢の割りにかなり有能だ。パール嬢も手を休めずに撫でくり撫でくり。褒め上手と言うべきか? この場は撫で上手だな。


「むー、パー姉とパーティー同じが良かった……」

「わがままを言わない。私達は自分の服も畳めなかった生粋のお嬢様なんだから。パール姉に迷惑はかけられないもの」

「ムウ……。仕方ない……」


 そう、野営とか以前に私生活がダメダメなお嬢様ズは、まずは生活教導を受ける事になっていた。メンバーは潮騒のわがまま姫達。……いや、この場合のわがまま姫は海雨嬢だけか。マイペースでボンヤリぽやっとした麻雨嬢とまだ5歳に満たない歌雨嬢はできなくて当たり前の歳だ。あと、私生活がダメダメなのは野郎にも。檜枝だ。あと、まだ5歳に満たない龍王子のナーガローク。できなくて当たり前な子達はいい機会だからと教える事になるが、海雨嬢や檜枝は駆け足スパルタで教え込むと意気込む教官……アークが居る。逃げるって選択肢はないな。うん。

 あと自分で大概でき、能力で全てをこなせるソロの連中。筆頭がパール嬢と泳鳶だ。ただ、この2人は面談や自分で選ぶ訳ではなく、夜桜勇者塾での教導として俺達が教える。体の守り方やアドバイザーも兼ねているからな。エメラルダ嬢はあらゆる面で完成系だ。戦闘のスキルに関しては、昨日の夜に師匠を決めて師事している。ルビリア嬢は生活一般は何とかなるが、出不精で外出嫌いなのを治さねばならない。お目付け役付きで、毎日外出させるとのこと。……最後、サフィーナ嬢。ナーガロークと一緒がいいと何を言ってもテコでも動かない。諦めて、ナーガロークの生活力教導と一緒に居るらしい。

 加えて、新たな生徒も来たしな。


「お久しぶりにございます。ニニンシュアリ様。父母からもよろしくお願いいたしますとのことです」

「よろしくお願いいたします。姉共々、本日よりお世話になります」


 今日来たのは海神の巫女候補の2人。渡波(トナミ)嬢と二十波(ハタミ)嬢だ。あまり差はないが、子供達の最年長になる水研の娘達である。本当は弟も連れて来たかったらしいが、まだ水研流伝剣法を一式学んで居ないため、今回は見送りになったらしい。ちなみにお目付け役に来たのは海神勇兵団の長。赤八さんの奥方である甲虎嬢だ。

 懐かしそうに渡波嬢と二十波嬢がパール嬢と話をしている。ただ、海神の姫達はニヤニヤしながら少し遠くでレジアデスから槍術を習う泳鳶へ視線が向いていた。茹でダコ状態のパール嬢を見れば話の内容は聞かずとも理解できる。うん。

 さらに『気狂いハイエルフ』の一族から4名の新人が。6歳前後の娘達が従者のエルフ達に連れられて歩いている。ただ、緊張の度が過ぎているのはエルフの従者達だったが。この5年でゴールドランクの有名パーティーにまで上がったエルフの弓士パーティー。ラシャーテ、アン、フィリー、ヘンリッタ達だ。夜桜先生に叩きのめされた被害者の会だよ。

 そりゃーな。俺達が居るとエウロペの竜は逃げる。勝ち目がないからな。勝ち目があるヤツには襲いかかるから竜は厄介なんだ。……これを言うと彼女らのプライドを酷く傷つけるかもしれんが、あの4人だけなら狙われるだろうが……後ろの4人が居るから襲撃は無い。彼女らは『気狂いハイエルフ』家、爛華の楓さんとこの3つ子と柘榴のとこの子だ。先頭は物怖じや緊張が一切ない柘榴の娘、黒百合(クロユリ)。楓さんの3つ子は誰が前とはなく、物珍しいのかキョロキョロしている。上から天葉(アマノハ)空葉(ソラノハ)星葉(ホシノハ)。3人とも歳の割にちょっと小柄か。まあ、ハイエルフの特徴的な耳と、楓さんに似た顔立ちだからな。さぞかし美人に育つだろうよ。


「「「「よろしくお願いします」」」」

「おう、黒百合嬢、天葉嬢、空葉嬢、星葉嬢。あっちに叔母上がいるから、挨拶に行きな」

「「「「はい」」」」


 歳を指す言い回しを紅葉嬢が異常に嫌がるからな。母の姉妹である『叔母』と言う言葉を凄まじく嫌うんだ。機嫌が悪くなるとめんどくさいことこの上ない。だからわざわざ『叔母上』と呼んでいるのだ。

 とりあえずの追加はこれで終わりだ。まだまだ増える。絶対。

 もう既にハイエルフの子供達に関しては名前がわからんのだよな。椿様の血族は皆似たり寄ったりで区別がつかないんだ。特に成長の区分に変化の少ない幼い時期はな。それに加えて名前を間違えたりすると、もう露骨な程機嫌が悪くなる。面倒この上ない。つーか、下手したら今の母親勢ですら名前があやふやな人もたくさん居るだろうな。だって、基本的には公孫樹様と紅葉、鬼灯しか表立たないし。たまに楓さんや柘榴。(アサガオ)さんか緋薔薇さん、白檀さん辺りはでてくるか。あの人達にしたって、入れ替わり芸を毎度毎度の楽しみにするくらいだ。それくらい似てるんだよ。

 ましてや幼児の時期のエルフやハイエルフは親の形質すら判断しにくい。檜枝や蓮華くらい個性があれば判りやすいんだが。それを当てにしてもしゃーない。

 懐かしいぜ。仕事の関係上、現地を離れられないヤツら以外がこの場に集まりつつある。俺とレジアデスの目の前に転移魔法を使って嫌味にブロンドを翻す野郎が出てきた。揃って顔面を殴ったのはご愛嬌。そのアルフレッドとは別に自分の娘達を撫で繰り回す父親が1名。ミュラーだ。アイツも変わったなー。あんまり素性をさらけ出す様なヤツじゃ無かったし。さらにいつの間にやら子供達を可愛がるカルフィアーテも居た。アイツらホントに自由なヤツらになったよな。


「このメンバーが全員集まるのはいつ以来だろうな」

「ミュラー、おっさん臭いぞ」

「仕方ないだろう。俺も気づけば4人も子供を養う父親だぞ? あ、次もあと半年くらいで産まれる予定だけど」

「あー、まー、そーだな。俺もいつの間にか子持ちだったか」

「ははは、ここに来た時は考えもしなかったよね。まさか僕ら皆がこんな立場におさまるなんてさ」


 最後にカルフィアーテがまとめた言葉が全てである。若気の至りと言うかな。俺は魔法工学以外には興味はなかったはずなのに、いつの間にか結婚して娘2人に腹に1人。

 ミュラーはまだまだ増やす気満々な潮騒嬢に振り回されているみたいだが、それなりに充実しているようだ。カルフィアーテもな。何かしら隠してたのは知ってたが、まさかやんごとなき人種だとは思わなかった。そのカルフィアーテも今じゃ立派に父親してやがる。んで、アルフレッド。コイツも苦労してるみたいだな。根が真面目だからあちこちで振り回されているらしい。特に紅葉と檜枝の関係が多い。最後に子供が産まれたレジアデス。レジアデスは今や自由な龍をまとめる位置に居る。理由はいくつかあるが、龍が敬う破天荒娘が、その息子を将来の伴侶と選んだからだ。まー、本人は寝耳に水だったろうが。

 父親達が集まっていた為か、息子達が集まって来た。

 いくら歳が小さくても女の子ばかりの中では居ずらいか。意外だったのはそのメンツに檜枝がいた事。あまり気にしないと思っていたが、サフィーナ嬢の拘束に辟易していたナーガロークと話していた。紅葉の息子で時たまアホな事をやらかすからか、要注意人物には違いないんだが……。よくよく考えたら女系の『爛華』家に唯一の男子。肩身は狭いようだ。蓮華と檜枝の関係を見ても苦労は見えているか。その中でも上手いことやれているのが、潮騒の長男である泳鳶とカルフィアーテの息子、ブラン。この2人は心配無さそうだな。


「父上、お久しぶりです」

「おう。また背が伸びたな。それで? パール嬢とはどうだ?」

「あ、いえ、それはまだ」

「ミュラー、あんま煽るな。お前みたいにのらりくらりはできないんだぞ? 体を壊す前でよかったぜ」

「なに?」


 父親全員が泳鳶とミュラー、俺のやり取りに注目した。

 この場にいる子供達の中では泳鳶は最年長。続く檜枝、ブラン、ナーガローク、マブル、コークスだが、全員に高い魔力と神通力が備わる事は既に解っている。息子達にはまだ理解はできんだろうが、泳鳶が今直面している事は明日は我が身と見るべきなのだ。

 ミュラーには確実に、包み隠さず言わねばならない。本当ならば太刀海先生にいて欲しいのだが、あの人も忙しいからな。今は簡易的であっても俺が見るべきだろう。

 泳鳶はパール嬢に釣り合う様にと過激な鍛練を続けていた。俺達が10歳の頃なんて適当に訓練しても、体を壊すような事態は招かなかったんだがな。しかし、泳鳶をはじめとしたこの子達はそうもいかん。この後年頃になるだろう娘達に関しては、軽く紅葉へ話してあるから見てくれるだろう。息子達は俺が見る。

 ミュラーだけではなく、アルフレッド、カルフィアーテ、レジアデスも表情を固くした。神通力の過負荷が死に直結する事は嫌という程、師匠から言い含められていたからな。産まれてすぐの泳鳶は良くも悪くも凡庸だった。解析異能で見ても懸念点は数える程しかなかったんだがな。その数える程の物も成長に応じて出るだろうと予想できたから油断していた。しかし、泳鳶はどうやって気づいたのか、自身の才能を無理やりに拡張していたんだ。混血の中でもかけ離れた生育地である種が混ざると、稀にこういう事が起きるんだよな。


「ほー。んじゃ泳坊はかなーり無茶をしたんだな」

「ああ、死には至らなかっただろうが、まだまだ体が未熟な内にやれる限界ギリギリだ。ミュラーは解析異能がないから解らなかったかもしれないが、気にしてやってくれ」

「わかった。感謝する」

「おう。それからその点はそっちのチビにも言える。檜枝よ。お前も誰から聞いたか知らんが、あの苦行をやってんだろ? 今は長時間の継続はやめろ。これは絶対だ。下手すりゃ死ぬ。アルフレッドも気にしてくれ」

「ああ。よく言い含めておくよ」


 幸いにもナーガロークは鍛練とかの年齢ではないし、龍人族は幼い龍の成長には過保護過ぎる程に過保護だ。龍は成体になる以前にイキった個体が早死する例が散見する種族。だからこそレジアデスもあんな性格ながらルールは破らないし、他人の為以外には無茶はしない。それは息子の世話にも現れている。母親のベラドニアも今ではかなり丸くなったが、以前はかなり尖っていたからな。レジアデスが息子を気にしていたのも頷ける。

 ちょいと居ずらいだろう泳鳶と檜枝だが、俺達は誰も責めるつもりはない。泳鳶の年齢になれば、周りとの差にも気づくだろうし、背伸びもしたくなる。俺達も経験したからなー。ただ、俺達はそれで体を壊したり、未来の可能性を摘み取ってしまうのは望まない。その点には母親達も同意している。娘達のがいろいろ飛び抜けているからな……。俺達では手に負えないってのも否定できん。

 ん? なんぞ? ああ、ブランは大丈夫だ。お前を教えているリーズグリューが意外と慎重だからな。あまり突飛な事はないぞ。…………。悪い悪い。別にお前らを蔑ろにした訳じゃない。そもそもマブルとコークスは師匠から能力をいくつか封じられている。今の年齢で使うには危険な異能は使わせないつもりなんだ。男児ながら彼らは女神の血筋だ。肉体は相応の物。つまり内包する能力もそれに相応しい能力なんだよ。舞台が整うまでは我慢しなさい。代わりと言っちゃなんだが、お前さんらが知りたい魔法工学の一部を教えてやろう。あと、俺が居る事が条件だが、銃の訓練も見てやるぞ。


「「ホント?!」」

「あー、ただな、お前らが俺の使う銃に向くとは限らんとだけ言っとく。場合によっちゃ、コビン兄ちゃんかキース兄ちゃんに頼むかもしれない」

「「使わせてくれるなら何でもいい!」」

「おお、そうか。ま、勉強が先だからな?」

「「当たり前! 準備しないと怪我をする!」」


 マジでガキらしくないなー。

 男は男で話していたら、向こうもかなり盛り上がっていた。『独星の導き』が集まったからな。『金星の集い』も当然集まる。

 いろいろと情勢不安はあるが、ブレないヤツらはマジでブレない。特にウチの嫁さんや娘達。夜桜勇者塾から少し離した場所に、聖刻の王都から直通になる転移門を用意したのだ。これはやかましい我が家の女性陣からの要望。あと、遠回しに義父さんも。ウチの嫁さんが朧月や嵐月と離れるのをひどく嫌がった。やっと巫女教育を施せる年齢になったのに、いきなり自分と引き離されるのをそれはもう嫌がったのだ。もう30近い嫁さんが駄々っ子を炸裂させ、それに50近い義母さんが加勢したからな。カオスとはこの事。いい歳した女性に廊下でジタバタされるのは……正直見苦しい。あと、呆れもヤバい。義父さんからも頼まれて師匠やシルヴィアさんにも許可を取り、各所に根回しをして転移門を設置したんだよ。

 まず、一番願っていた心月と義母さんの為に時兎の神殿、常春の庭に。次に潮音嬢の要望で彼女が詰める旧ルシェ帝国首都、『フォート・ルシェ』にも1組。さらに海神国の某所に1組。聖刻王都からかなり離れているからな。聖刻のハイエルフ達の本山、大図書館付近に1組。こうなると鬼灯にも配慮してアルセタスにも1組。そんで別口に師匠が設置した物が3組ある。詳しい理由は知らないが師匠が作ったのは森の国、アグナス国、空中神殿だ。


「にしても、かしましいと言う言葉はあるが……あそこまで集まるとな」

「「騒音被害……」」

「おい、マブル、コークス。お前ら絶対に近くで言うなよ? 濡れ衣レベルで俺らが責められるからな?」

「ちげーねー。お前らもだぞ? 泳坊、檜坊、ブラン坊」

「「「はい」」」


 いろいろ感慨深くはあるが、師匠の調査結果も気になる。大人や深い部分を理解でき始めている年長4人には伝えた。時期や規模は不明。地殻ごとこちらの世界になだれ込んだ後に、どんな影響が出るかも全く予想できない。

 諸々の仕事を片付けた師匠。聖刻の政変でシルヴィアさんの復帰を望む勢力から雲隠れしているシルヴィアさんも久々にこの場に来ている。いやー、懐かしい。……夜桜先生まで居るからね。神界の詳しい事は言えないらしいが、神格化したと言っても限定的らしい。本当にタチの悪い……。チビッ子達と母親グループに夜桜先生を混ぜた組はしばらく放置だ。さて、俺も覚悟を決めねばならん。俺達も失う物なんて命くらいな根無し草じゃねーからな。嫁に娘に……。無くしたくない物が沢山だ。

 パーティーの仲間と互いにオッサン臭くなったなんて酒を酌み交わしながら語る。……見た目だけなら師匠が一番若いなんてのがな。そんな馬鹿な……って感じはするけども。

 不安な事がないなんてのは有り得ない。だからこそ、俺みたいな存在は必要ですだと言う。よく分からん師匠の言だが……。さて、どう受け取るべきかな?

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