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仮面の裏はよみにくい

 神海大人の件が片付き、討伐に参加した者達の傷や異能による副作用が収まった頃、潮音が目覚めた。しかし、この日より、ワシらには混沌とした日々がしばらく続く事となる。

 目覚めた潮音は兄であるワシは愚か、一切の人間と口を聞かなかったのだ。意識はしっかりしておるし、反応や挙動から見ても聴力や視力には問題がない。だが、潮音は誰がなんと言おうと口を開かなかったのだ。回復してから数日は、それはそれは大変だったよ。誰が行っても暴れ、様々な薬や処置も頑なに拒まれたからだ。まるで手負いの獣のようだった。そればかりか、食事も受け付けず、日に日に痩せてゆく潮音。紅葉や黒鎌嬢(エレノア)など毎日欠かさず会いに行くらしいが、笑顔を作りはすれど口は開いてくれないという。


「せっかく助けたはいいがあれではもたぬぞ……。ここは強制的に」

「戦鬼様、おやめ下さい。先日、それで大暴れしたばかりではありませぬか」


 同門の者達はただ1人を除き、頻度はまちまちではあるが面会に来た。仕事をしながらではあるから毎日来ている者も時間は短い。護衛官としての肩書きもある妖精坊(カルフィアーテ)と黒鎌嬢は特に忙しい。親子揃って高頻度でおいでになるが、時兎の親子方も多忙だ。今回の件もあり、八代目時兎である暁月様も後継の重要性を痛感されたのか、一人娘の子兎(ココア)に神官の職を教え込み始めたらしい。他の者達も仕事をこなしながら海の国へ訪れ、必ず潮音に声を掛けていった。こちらでの復興や研究に協力してくれている者達もいる。王都や様々な場所に仕事がある魔解(アリストクレア)魔弟(ニニンシュアリ)はそれでなくとも忙しい。椿様に連れられて魔法学の上位学位試験を受けるらしい詩詠(アルフレッド)も多忙。風来坊(レジアデス)は龍姫の御二方に捕まり、故郷へ帰省中との事。その中で、ワシに手を貸し、この地で働き続ける者が居る。

 赤羽(ミュラー)はずっと我が館の近くに滞在し、居残っているにも関わらず1度も顔を合わせていないらしい。赤羽は我が水研の末席へ入り、一武将として日々の鍛錬と奉公に励んでおる。真面目な男故、伸びも良い。ん? ワシか? ワシは仮の統治者ではあるが、志を同じくする武将達と共に、まずは国の復興に急ぎ足だ。潮音の事はもちろん気になるが、ワシなど無視されており、まともに視線すら合わせてくれなかった。公孫樹も同様だったらしく、今は触れない方がよいと判断したらしい。


「しかしなぁ……、あれだけ振り回したのだぞ? それを叱りもせずにただ放置しておくのは」

「先生、それは潮音ちゃんが1番よく解っていると思います。ですから私はそっとしておいてあげたいのです」

「公孫樹まで……はぁ、甘やかしおって。スマンがアタシは野暮用があってね。息子とリクを連れて1度帰る。その間に何とかおし」


 戦鬼様のご意見は最もだ。内情は我らが夜桜勇者塾の関係者と、海の国における一部の神官しか知らぬ。まさか、潮音があの神海大人の復活の原因であるとは言えまい。大元を辿り、原因には我が父が居るのだが、それも父が死に今となっては過去の事。家の責任はワシが取れるが、根本となる内容はどう庇っても潮音に向く。国を揺らがしかねない魔女として、潮音が酷い扱いを受けるのは目に見えている。実際に、内情を斜めから見た神官の一部がその様な言葉を放ったらしいがな。……しかし、神官達はその言葉を飲み込まざるを得ないさ。なぜなら、潮音は国を救った香潮様の孫娘なのだから。神社の存在が揺らげば、神官達も魔女扱いになる事は言うまでもない。腹は立つがこれが現実だ。

 こんな不安の中ではあるが、救いを求めた民を助けた神社の存在。魔解や戦鬼様の様な他国籍の高名な協力者が復興を援助している。また巫女の立場を引き継ぎ、ワシの嫁として迎えた公孫樹の姿もあり、国はまだ前向きに歩んでいる。水研の家や有志の集いにて寄付金や人手を集め、まずは復興を優先的に行う。様々な物を建設しているが、今は民が暮らす長屋が優先だ。家や仕事場を失った民が落ち着いたら農業や漁業、林業を徐々に盛り立てる。郊外の産業は手がつけにくい。二次災害の被害も有り得る。そんな懸念を乗り越え、以前の様に産業が芽吹けば少しづつ商業も立つ。まずは民が働きやすく、安全に暮らせる下地をしっかりとせねばならぬのだ。

 国も潮音も……確かに心配だが、ワシにはもう1人気に留めておる者が居る。ワシの弟達に聞けば、よく働き、頭もよく気遣いのできる者。そのような高い評価を受ける赤羽。ワシの弟子から傘下へ入った為、様々な職務における立場が高い。その分、多くの権限が与えられておるが、若輩だからとあまり強く出ないようだ。比較的下位の兵卒達は気味悪がる程らしい。やつもまっすぐで気持ちが揺らぎやすいきらいがある。混迷に巻かれてはならぬのだがな。いずれ、重荷に耐えかね潰れる。最後には正しい判断ができずに自滅するだろう。その前に助けねばならぬ。


「赤羽よ、今日来てもらったのには訳がある」

「は、何かご命令…」

「肩の力を抜け、お前にしばらく潮音の世話係を任せる」

「は?」

「2度は言わぬ。任せたからな」

「し、しか…」

「2度は言わぬ」

「はっ……。御意のままに」


 仕事はできる様だが、考えが回りすぎて回りくどいのだ。独特過ぎて融通の聞かぬ詩詠よりも柔軟ではあるがな。だが、この類はあまり目を離してすぎるとよくない。適度に膿を抜くか、断崖絶壁から蹴落としてやらねばならぬのだ。

 今回は、その両方。気に病みすぎ、仕事をしていた方が忘れて居られるのだろう。確かに、やつが働けば十二分に成果を出す。休ませてしまう期間は勿体なくもあるが、その十二分の成果は長く続いてこそだ。膿を溜め、痛みを紛らわすのは結果的に自らの首を絞める。ワシはやつには期待しておるのだ。ワシは器用ではない。それだから大きな過ちを見過ごし、重圧から逃げた。それを助けてくれる優秀な……弟子。内面にワシに似た部分がある若者を、ワシの作った渦に巻き込みたくないのだ。まぁ、断崖絶壁から突き落とさねば膿も出せぬ。どちらも絡み合っておる故な。責任感が強すぎるのも面倒だ。ワシが言えたギリでは無いがな。


「し、潮音様。お加減は……」

「……」

「聞き及んでおります。どなたともお話にならないそうですね。……本日は挨拶まで、また日を改め…」


 この様な監視はすべきではないと思ったが、ワシはあの子の主治医でもある。兄妹でもある故、この辺りの線引きが難しい。魔弟に頼み、潮音に気取られぬ様に状態管理を行いたく、特殊な機材を入れた。目覚めた直後の潮音は酷く不安定で、食事はひっくり返し、面会が来る度に酷く暴れた。今では窶れている事以外の状態は落ち着いている。

 赤羽はあの時に潮音を止められなかった事を酷く悔いていた。今の赤羽の力では刺し違えても勝てぬだろう。潮音は初代水研に近しい存在。確かに、赤羽が天土と呼ばれた勇者の血筋でもな。ましてや潮音に手傷を与えぬ様にと、配慮した攻撃で勝てる訳がないのだ。その辺りは過ぎた事だからどうにもならんが。赤羽と潮音を突き合わせたのは、互いに言いたい何かを隠しているからだ。仕事に打ち込み傷から目を背ける赤羽、現状を拒絶する事で目を背けている潮音。どちらも、手放しに見てはおれぬ。どちらも大切な者だ。弟子と妹。潮音を救おうと尽力したあやつだから、ワシは信じておる。潮音を信じてくれるだろう。


「……やっと、来てくれましたね」

「?! は、はい。お加減はよろし……」

「私はそんな事を聞きたくて、待っていた訳ではありません」

「……申し訳ございません。ですが、わたくしは貴女のお体を案じております。姫が回復されるまで、わたくしは意をあかせませぬ」

「……。解りました。貴方が……兄上の差し金で私の世話係となったと言うことですね?」


 この会話が始まりとなり、潮音は赤羽にのみ口を開いた。……しかし、これはあくまで最初の段階だ。潮音と赤羽が互いに何らかの気持ちがあるのは解っている。赤羽の方はワシが直接聞いておる故に知っておるがな。潮音は赤羽にもその辺りは答えぬ。最初の内は赤羽もその辺りを探った様だが、潮音も頭がよい。知略の場は互角であろうから、なかなか広がらぬ。

 問題はそれだけではない。

 潮音の意図が解らぬ行動だが、手探りで動く赤羽を試す様に潮音は赤羽を小間使いにする。食事は必ず赤羽が食べさせねば取らぬ。部屋へ配膳するのみでは済まない。あれでは赤羽が哀れな気もしたが、食事を一切取らないあの状況を改善できたのだ。まずは体を治す為にこの前進は使わねばならぬ。赤羽が箸で掴み、口元へ運ばねば口にせぬ事が解った日から、赤羽は酷い有様だ。食事の世話だけではなく、潮音は何かにつけて赤羽を使う様になった。友人達からの見舞いの手紙を読ませ、夜に寝付くまで枕元に居させる。朝起きる前には潮音の枕元に居らぬとへそを曲げ、その日の食事を取らん。逆に何かしら気の利いた行動を赤羽が取れば、処方しておる薬も口にする。赤羽は仕事と割り切っておる様ではあるが……。何度となく辞退を申し出てきた。その度に最もらしい理由を付けて復職させるのだがな。それももう1週間になる。外目には潮音の血色や窶れもおさまり、……以前ほど明るくはないが、ほぼ回復した様に見えた。外目にはな。


「……」

「おはようございます。潮音様」

「……やっと、名前で呼んでくれましたね。それでは、ご褒美に一つだけ。お答えしましょう。貴方が知りたい事を」


 言葉を選ぼうとしている赤羽に潮音が詰め寄り、10から始めて数を数え出す。制限時間のようだ。すると、赤羽は5秒の辺りで言葉を発した。

 『何故、面会や診察を拒んだか』……だった。

 潮音はつまらなそうに反対側を向いたが、『約束しましたしね……』と呟き答えた。どうやら潮音は血奮時の記憶があるらしい。記憶に留めきれない人を殺めた。無抵抗の者も殺めたのだと言う。徐々に潮音の瞳が赤く染まる。血奮だ。まずい。赤羽……どうにかして逃げてくれ。

 潮音は……死にたかったと微笑みながら呟いた。いくら血奮での暴走状態だったとはいえ、たくさんの人を殺め、たくさんの人々に迷惑をかけた。神海大人と繋がった時……死ねる。と思ったと言う。殺してくれると。しかし、潮音は助かった。赤羽の周りを時計回りに歩きながら狂った様にそう呟き続け、急に止まる。自分の我儘さや、信頼してくれた人を裏切る様な行為、それすら受け入れてくれる優しい仲間……。潮音は考えたはずだ。潮音はこれからもその様な人々を脅かし続けてしまう。そこまで語ると元々座っていた布団の上に戻った。


「……、何故。あの時殺してくれなかったんですか?」

「わたくしは姫にお仕えする…」

「私は……そんな事が聞きたいのではありませんっ! ……私、てっきりミュラー君は私を殺し、止めてくれると思ってました」

「……」

「でもぉ、ずうっと…手加減して、私を傷つけまいとしてくれましたよね? だから、責任をとって欲しいんです」


 潮音は再び立ち上がり、最後に呟いた。

 『私を生かした責任を……一生』……と。表情1つ変わらないミュラーにも驚いたが、血奮を発症し、自我が揺らいだ潮音が彼に危害を加えなかった事にはいっそう驚いた。赤羽は朝食を取りに行くと言い、1度部屋を出る。もちろん、赤羽はその為に出たのだろうが、ワシは潮音の状態について話を聞きに向かう。想定に近い事を潮音が抱えていたのは解ったが、赤羽の話といろいろ食い違ってくる部分が現れてきた。潮音の口ぶりでは確定的に殺せる場面があったにも関わらず、赤羽はその場面で潮音へ強く出なかったと取れる。しかし、赤羽はあの時、完膚なきまでに叩きのめされた……と話した。

 何なのだろうか。この違和感は……。

 赤羽はワシが問うても浅い答えしか出さぬ。赤羽が潮音を殺めなかった事を悔いていると言う選択肢も考えたが、この段階ではあまり有力とは言えない。もう少し、様子を見る他ないか。

 相も変わらず、潮音は赤羽を小間使いしている。赤羽の努力のかいもあり潮音は友人達と話すようになり、日常生活に支障のない範囲になった。しかし、皆は知らぬが、赤羽が食べさせねば食事は取らぬし、気分の浮き沈みで薬をうけつけなんだりもする。それに日に日に要求も過激になり始めている。最近では監視するのを控える程だ。


「ねぇ、ミュラー君」

「はっ……」

「隔離された…誰も来ない一室。男女が二人きり。……することは?」

「それでは、わたくしの昔話でもお聞かせしましょう。療養の時、楽しみもなくてはなりません」


 このように、赤羽はするりと抜けるが、この後の潮音は不機嫌となる。潮音をどの場面で宥め、どのように落ち着かせるか。赤羽には苦労をかける。あの手この手、場面を読みよくやってくれてはいるのだ。

 本当は、これをすると潮音の機嫌が一気に悪化するからよくはないのだが。ワシが赤羽を潮音の居室から連れ出す。案の定だが、潮音はいい顔はしない。血奮手前、目がちばしり、歯ぎしりをしているのだ。ワシに対してな。これまで潮音はわがままな部分を抑制し、押さえ込んで来ていた訳だ。今、なぜタガが外れたのかは解らぬが、これまでの事を考えれば今くらいはな。とはいえ、戦鬼様の言い分も解らぬではない。さて、どうしてくれようか。

 赤羽は素直に着いてくるが、ワシが何故こやつを連れ出したかを問うては、平生を装うのは難しかろう。あの惨劇の中をたまたま生き残った兵卒がおり、その者の話を聞いたのだ。その者は牢に捕らえられている主人を1人にできぬと、そこに向かっていたらしい。その時、口論していた潮音と赤羽の一部始終を聞いてしまったと言うのだ。平謝りされたが、今回はその行動が2人しか知らぬ内情を引き出せる。感謝以外にはない。そう語り、その者と共に居た数名も我が館に招いて話を聞いた。


「皆の衆、よく集まってくれた。では聞かせてもらおう」


 1人目は年老いた近衛兵で、知将として名高い将の側近だ。この者はワシもよく知っている。

『姫様は……とても悩まれていらした。ご自身の内には留めきれぬ物がある。お父上を討った後、姫様がそれに囚われる様ならば……殺してくれと、あの若者に話しておられました』

 老兵の話を聴きながら、その話から納得した様な素振りを見せる若い女性の銃兵。先程の老兵の部下らしい。

『わたしは主人の牢を見つけたのですが、破壊が難しく鍵を探していました。その折りにお二人の姿を目にしたしだい。目が血に染まる姫を必死に抑えようと試みていた様ですが……叶わなかった様で。わたしも自らの身の危険を感じ、その場から逃げました』

 最後は逃げ遅れた老将の娘だ。父を探す先程の2人に鍵を見つけ、届けに行こうとした折に鉢合わせしたらしい。

『……あの若者は、姫様を好いておるのではないでしょうか。姫様は徐々に理性を失い、強硬な者達を次々に斬り殺しておりました。しかし、わたしは……目の前に居たにも関わらずここに居ります。赤羽の若者がわたしを守り、泣きながら姫をずっと説得しておりました。姫様も……泣いておられましたよ』

 ……これら3人の話を聞く限り、潮音との戦闘の際、初期は無抵抗であった潮音。潮音としては父を殺めた後は自害するつもりだった。しかし、神海大人の干渉が予想外に強く、血奮に囚われたのだろう。赤羽はその段階で何とか抑えようとしたができなかったのだな。その後はやつが話すとおり完膚なきまでに叩きのめされたと。


「のう、赤羽。お主は、ワシに話していないことがあるのではないか?」

「いえ、わたくしは事を全てご報告致しております」

「ふむ、強情だな。何故、潮音がそなたを傍として選んだのだろうな?」

「……」


 潮音は自分の中にある複数の心で揺れていた。血奮を患う自分は、いずれ制御できなくなり過ちを犯す。それが恐ろしい。血奮により人を殺めてしまう前に…大切な人を失う前に。どうにかして抑えねばならない。自分の存在を消す事を選んだのだろう。だが、同時に仲間達との思い出や時間を失いたくない。潮音は相対する結論に至り、苦悩したはずだ。

 血奮……。水研の家に生まれる始祖帰りに現れる異常体質。強さの程度はその血の濃さにより、代により変化する。強い感情によって現れると言う言い伝えのみで、深くは知られていない。その為、史実が答えの様に伝わってしまった。血奮は必ずしも怒りの感情によって突き動かされる訳ではない。答えとして受け取られた伝聞書に現れる二代目水研は『怒り』であったらしいな。だが、潮音は恐らく違う。ワシも詳しくはよく知らなかった。潮音がワシに隠していたからだ。神海大人の件以前に急激に潮音が血奮に囚われる頻度が上がりだした。先程言った通り、血奮には様々な現れる原因がある。幼い頃の潮音は血に強く反応した。だが、ワシが行った経過観察によれば物理的な物より、心情的な物事の方が圧力としては強い。その中で、ワシは結論を見出した。

 潮音はこれからは自分の感情と闘わねばならぬ事。香潮様が抑え、封印具により封印された神海大人の神通力は、もう二度と潮音を苦しめる事はない。しかし、潮音は度々あれを発症する。あの3人の話を聞く限り、神海大人の悪影響だけではあの様な症状の出方はないのだ。そこから読み取れる答え……。潮音はとっくに血奮を克服し、自身の力で抑え込める。しかし、神海大人に飲み込まれた。制御できていたと本人も思っただろう。その時、潮音は感情に突き動かされ、揺らいだのだ。

 何に恐怖したか……。自身の死についてだ。単に今から死ぬからではない。潮音自身ができぬ時、その者に殺して欲しいと……。頼んだ相手の気持ちに気づいてしまったから。潮音は激しい後悔と、自分の身勝手さに打ちひしがれた。その結果が神海大人との繋がりを開く事に繋がるのだよ。神海大人が欲するのは強い心。潮音の心はこの場面で強い反応をしたのだな。


「で、では……」

「潮音も今年で23だ。ワシは様々な理由から妹の人生には口をださぬ。しかしなぁ、お主は別だ」

「は?」


 まてまて、焦るな。もう1人分の結論。これは赤羽の苦悩についてだ。赤羽の思考能力ならば、これまでの論調から理解はしただろうな。だが、それ以前にやつとて悩んだ。潮音の思いを受け入れる事で、こやつは立ち上がった。王都を離れる時点では、潮音の自害を止める事に揺らぎはなかったのだろう。しかし、死にたいとあの場面で話しておった潮音を殺さず、潮音の力を抑えきれず敗れたのだ。その後はワシらも神海大人の復活を止めきれなかった。結果から言うならば、やつは大きな災厄の引き金を引いたのだ。ワシや皆は潮音が助かった事、あの時の赤羽の判断と潮音を1人にせなんだ事、大いに評価しておる。これこそがこやつに過分な重圧を与えてしまった。

 こやつは引き止めておる最中、潮音がはばからず放った言葉で理解してしまった。けして、潮音の苦悩は小さくはない。潮音の様に溜め込み続けても、耐えられるだけの心がある故……、これまでは何とかなっていたのだ。

 幼い頃に引き起こした事件。あれを朧気にでも覚えて居るならば、さらに苦悩は重いはずだ。だから、ワシは無理に動かぬ様にしてきた。そうせねば、潮音は自暴自棄に陥る可能性が高かったからだよ。赤羽は全てを見ずとも、潮音の態度や揺らいだ気持ちから見て取ってしまったのだろう。それでもできなかったのだな。

 潮音の願いではなく、こやつの願いで潮音を殺められなかった。それが形となり潮音の魔を解き放ち、ワシらを振り回したと言う苦悩。それをこやつが受け取ってしまった。本当ならば、潮音を殺してしまった方が、潮音には楽だったに違いない。1人で背負ってゆくには重すぎる物を捨てられる。同時にワシや兄弟、国の懸念が晴れるのだからな。赤羽は潮音の思いを受け入れなんだ事を悔やんだのだろう。やつの手で……殺めてやれば、潮音は楽だったのでは? とな。


「馬鹿馬鹿しい」

「な、なんと! 今なんと仰られましたかっ?! 姫はそれほどに心を……」

「ワシは、潮音を救いきれなかった兄として、これまでを背負い込んできた。お前の様な飛び入りの若造が1人で背負う責任ではない! 馬鹿たれがっ!」

「しかしっ!」


 確かに、直前に弾を込めたのは潮音だ。何故、あの場面で父の暗殺など目論んだか……。そして、その引き金を引いたのはお主だ。だが、それ以前に……背負うべき人間がおる事を忘れてはならん。

 潮音がその様に生まれた原因は誰が作った? ワシらの父、水研 漣だ。

 潮音の重圧に気づきながら寄り添えず、命を絶って先立ったのは誰だ? 潮音の母君だよ。

 その後の潮音の苦悩を共に背負わなんだのは誰だっ! このワシ、水研 太刀海……。

 何故末端の事態を目の前にしただけのお主が、全ての責任を背負おうとする? 何故、お主は人のせいにしようとはしない? むしろ、この様な場面ではお主の責任など無いに等しいわっ! 出会って長い友でもない、ましてや国の根元も知らぬただの同門に……、そんな重荷を投げ渡したのは誰だ? 潮音であろう? 

 ワシが噛む事で悪い方向へ転がる事はあれど、好転はせぬ。お主を呼んだのは、潮音に自覚させる為だ。赤羽がどんな気持ちで潮音の傍となったか。ワシらを謀ってまで秘密裏に海の国に入り、何も知らぬ同門を父の暗殺に巻き込んだ潮音に気づかせねばならぬ。あの子ももう大人だ。それなりの責任の取り方、折り合いの付け方は解るだろう。自らの進退の付け方もな。ワシの願いとしては……生まれから過酷な運命を背負わされたのだ。これからは、自分の為に生きてもよいであろうに。


「ワシはお主が混迷に巻かれる事は看過できん。1人の将である前にお前の師だ。弟子の迷いが深いのであれば、手を差し伸べねばならぬ」

「し、師匠……」

「それから、潮音と婚儀を取りたいならば、ワシよりも先に白槍、赤八を説得する事を推奨する。あの2人はワシなど比にならぬ程に潮音を可愛がっておったからな」


 途端に狼狽えだした赤羽。この態度は本物だな。潮音を手にかけられなんだのは、潮音がそれだけ大切な存在であるからだ。もちろん、ワシらが潮音を守り続けたのも、潮音が大切な家族だったからである。ワシらは直接手を差し伸べる事はできなかったのだ。様々な理由があるが、ワシの立場もあればワシの性格もあった。言い訳ではあるが、過去に潮音の人生に傾倒し続ければ今のワシはなかっただろう。魔解ではないが、立場と言うものをこれ程邪魔に思った事はないぞ。

 だからこそだ。赤羽には自由にいて欲しい。いつだったかな? 潮音は夜桜勇者塾でワシと話しておる時に言っていたのだよ。『空は自由でしょうか?』とな。赤羽、お前はただ気分転換の為に飛んでおったに過ぎぬだろう? しかし、潮音にはあれほどまでに、自由に大きな空を舞うお前が羨ましかったのだよ。……そのお前が傍につき、潮音に協力してくれただけで潮音にはどれほど心強かったか。同時に、お前が潮音をなんとしてでも思い留まらせようとした事は、その後に潮音を強くした。今は何をしたいのかはよく解らないが、あの子にはあの子の考えがある。


「しかし、自由とは義務の上にある。それに今の潮音は見過ごせぬ。お前を小間使いするのはお前達2人の間の事だが、進退を先に表してもらわねばならんのだ。そうせねば納得せぬ者も居らぬ訳ではない」


 神海大人の件、血奮の事。潮音を取り巻く事情が沈静に向かうにつれ、潮音には守られていた部分の露出が課された。これまでは拘束され自由に動けなんだが、これからは自由になる。潮音は確かに水研の娘だが、父亡き今のワシは潮音を政略的な物に巻き込む事はせぬ。潮音は制限されてきた場所を自分で決め、新たな居場所を自分で決めねばならぬのだ。先程語ったが、自由には対価がある。これからは潮音は守られぬ。守って欲しいならば、それなりの覚悟を持って相手を選び、対価を払わねばならぬのだ。

 赤羽はこの話をどう受け取っておるかな? ワシは潮音が良いならば……、と言うが。本心はそうではない。巫女にはならぬ様だから選択肢は変わってこよう。しかし、潮音がこの赤羽に執着するという事をどう受け取るべきか。

 これは赤羽の今後にも関わる。赤羽は役職を持たせず、高位の権限と待遇を与え、自由に働かせるつもりだ。それは勇者を続けたいと言うこやつの意見を踏まえた結果。海の国には幸いなことに頭の柔軟な将がおる。寄り添ってくれた彼らとの兼ね合いもあるのだ。あえて役職を与えるならば、ワシの側近となろう。既に首席執政官として、各将の家臣団より推挙された者と内政を行う白槍。赤八は以前までの動きと変わらぬ。荒れた内情に目を付けた盗賊や海賊の討伐、様々な復興の為に日夜走り回っておるようだ。今ではその漢気と、根元に隠す面倒見の良さを武器にし、仲間を増やしつつあるのだからな。

 だからこそ、赤羽には潮音を任せた。ワシら3人の兄にはできぬであろうが、こやつになら潮音も心を開くだろう。


「……よし、解ってくれたな」

「は、はい」

「潮音の所に戻るも、今日は休むも好きにしろ。ワシも用向きがある故な」


 赤羽との会話を聞いていた者が居た。まぁ、公孫樹に聞かれたとて大した問題ではない。……ワシが進めたいのは潮音の進退だけではないのだ。ワシにもワシの道がある。道があれば進むも退くもあるからな。

 公孫樹は神社に顔を出し、各神通力脈を調べていたらしい。学識的な事はワシには解らぬが、公孫樹曰く今のところ問題は少ないようだ。魔解が固定したおかげで作業も楽になったようだしな。その公孫樹には定位置がある。ワシの館に仮の引越しをした公孫樹は、ワシの部屋の隣を占拠した。使っていない部屋だから何も問題などないがな。2人で寛げる時は必ずワシの横に来る。なんでももう逃げられない様に、との事。ワシはあまり信用がない様でな。しきりにこれからの事を問われる。公孫樹の母君である椿様はもう自由にせよ……、と仰られた。これまで手に入らなんだこちらの国の文書を研究する為、この館に当分は仮住まいされる様だ。


「あの2人ってできてたんだ」

「もう一押しだな」

「潮音ちゃんはどうしたいのかしらね」

「それは解らぬ。あの子の痛みは、あの子にしか解らぬからな。寄り添うても全ては解らぬのだ。だから、ワシらは語らう。お互いに気持ちを確かめる為にな」


 公孫樹のカンに触ったらしく、頬を抓られた。だから、反省はしておる。二度とあのような事が無いようにすると誓ったではないか。

 ……と、前座はこれくらいで良いかな?

 この国の結婚適齢は15歳。本来ならば学舎へ留学する以前に婚儀を済ませねばならなかったが、さすがに王都での期間が長く遅らせたのだ。だからとは言わぬが、ワシはまだ婚儀も執り行っては居らぬ。

 実は弟達には既に妻が居る。白槍には落ち着いた雰囲気ながらしっかり者の嫁が居るのだ。出身は公家だが、どうやら白槍以上の策士であるらしい。赤八はやつに似合いの活発な嫁子だ。歳がかなり離れておるらしいが、あの赤八が尻に敷かれるのだから相当な暴れ馬よのぅ。出身は漁民の長の家らしい。

 こんな話をしながら、公孫樹に渡さねばならぬ物がある。ワシも細工物が得意なのだ。さすがに本職である魔解には到底適わぬが、こちらの文化に合わせた物を渡したかった。漆に我が家の家紋が入った小箱を見れば流石の公孫樹でも身構える。海の国は戦や重工業は盛んではない。食料生産と手工芸が盛んな国だ。独特の文化もある。嫁をとる婿は嫁に箸を渡すのだ。まぁ、食うに困らす事はせぬ……と言う証だな。この国は嫁から夫へは何も渡さぬ。


「お箸?」

「この国では嫁や家族へ飢えさせぬとの誓を立てる為、箸を渡す」

「へぇ、私から渡すものはないかなぁ……」

「もう、もらっておる」

「え?」

「海の国の男は、嫁をもらう為に箸を拵える。箸すら拵えられぬ不器用者に、嫁と家族を満足に食わせる事などできぬからな。ワシはもう、もらっておる。遅くなったが、我が家へ来てくれてありがとう」


 公孫樹にしては激しい反応に驚いた。この歳になると2歳や3歳の差など誤差の範囲であるが、公孫樹は32歳。姉さん女房であるな。その公孫樹にはもう1つ、渡さねばならぬ物がある。海の国は以外と面倒な風習が多くてな。男が食わせる……。それはこの国の女が強い故の文化。家を守る女は男より強い。その強い妻に屋号毎に仕事道具を渡す文化があるのだよ。これから男が働きに出る。その間は家族や家を守ってもらわねばならぬ。武家に嫁ぐ女はなお大変だ。領地に住まう嫁衆のまとめ役だからな。

 例を上げるならば、白槍は我が家では執政を行う次男だ。本家の跡取りでない為、また変わる。白槍が拵え、渡したのは文箱と筆記具一式だ。文官ならではよ。赤八は上質な作りの水筒と外套だったらしい。あの夫婦も異色だからのぅ……。ワシか? ワシは決まっておる。


「これは……簪? かしら」

「さすがに博識だな。ほれ、背を向けてくれ」


 公孫樹は言われるがままの体勢をとる。この世界では魔力の組成により、髪や体色が若干変化する。公孫樹は黄金色の艶やかな美髪だ。まとめていても癖すらつかぬ。簪で髪をまとめてやり、手鏡を手渡した。合わせ鏡で後ろを見せながら話す。

 嫁や家族を食うに困らせないのは、ワシの立場として当たり前だ。だが、今回の様に未曾有の事態に見舞われた時、自身の手が回らぬ時が来るだろう。そんな時、嫁に助けてもらうことになるだろう。夫となる我らは嫁を守る為、また自身が先立ったとし、家族が立ち直る為の時間を作らねばならん。共に手を取り合って生きてゆく為、先人が考えた文化である。稼ぎがおぼつかぬ若造には、他家の娘をもらう事はとても大変な事だ。このご時世、働いても働いても貧しい者は貧しい。ワシの様な立場であっても少しの油断が命取りになる。努力を怠れば富める者も落ちてゆくのだよ。家内安全や平穏な生活は、手を取り合い弛まぬ努力を重ねる事で得られるのだ。ワシが公孫樹の為、これから増える家族の為に全力を尽くさねばならぬ。その覚悟がなかなかできなかったワシは…、今の今まで公孫樹を待たせてしまった訳だ。


「素敵な考え方ね」

「古き文化にも汲むべき物は多い。良きものは受け継ぎ、新たなものを受け入れる。これからのこの国に必要な新しい風をな」

「そうだね」

「その筆頭となるのがそなたになったのだ。頼むぞ? 公孫樹よ」

「うん。任せといて」


 赤羽の仮住まいとしている小屋に灯りがつかぬ。どうやら赤羽は潮音の居室に戻ったようだった。長い時間をかけた説教と説得、あやつの意志を読み取る会話。ただ、待つ側には相当な長い時間だ。公孫樹に話し、潮音の監視についての説明をする。公孫樹も知らなんだから驚きは強かったようだった。

 潮音はずっとあのまま座り続けていたらしい。髪の毛は毛脚どころか全てが深紅に染まり、目もこれまでにないほど紅く染まっている。その目の前に何事も無かったように赤羽が座った。……案外、肝が据わっておるなぁ。公孫樹も『大丈夫なの?』と問うて来るが何とも言えぬ。これまでは何とも無かったようだが、これ程まで潮音が昂っておるのは初めて見る。体からは氣が漏れだし、何かをブツブツ呟いている。赤羽も声はかけぬようだ。さすがに尻込みしたか? 違うか。腹を括ったのだな。

 ワシがした話を悪い方に取ったかもしれぬ。赤羽の言い分を聞いた時にワシは改めて認識を変えた。あやつは責任に対して従順な訳ではない。あやつの信念が硬いだけだ。自身の正義。正しい事を正しいと押し切るだけの強い心を揺らがせたのは、潮音が初めてであった様だが。潮音を信じ、受け入れてやって欲しい……、とワシは願ったつもりだ。だが、やつは潮音のする事を全て受け入れる……、と強い思いをかためたかもしれぬ。その場合は兎に角危ない。潮音は短気だ。あの場では何が起きてもおかしくはない。力の制御ができない訳ではなく、強すぎる力の幅に他が対応できていないだけ。……まぁ、潮音がその幅を広げれば済む話だが、事はそんなに簡単ではない。どうする気なのだ? 赤羽よ。


「ただいま戻りました。……潮音さん」

「……言ったじゃないですか」

「?」

「貴方は言ったじゃないですかっ!! 私は私……。私が求めることには答えてくれるって!!」

「わたくしは、潮音さんが苦しんだ八つ当たりにお応えしている訳ではありません。貴方が、自由に生きたいと、貴方が生きたいと仰ったので今までお応えしてきました」


 ふむ、口論の内容か。そこまではワシも解らなかったが、潮音は父の暗殺前、何かの拍子に血奮が発症した。その際、赤羽が潮音の自害を思い留まらせようとしたのだろう。自害を止め、潮音の本音や思いが爆発したのだ。今は理性が強い。その潮音は堰が切れた様に赤羽へ向けて再び撒き散らしている。

 好きでお淑やかに振舞っている訳ではない。詰まらない習い事をしたかった訳でもない。全て、自分がしたかった訳ではない。そうならざるを得なかったから。そうしていただけ……。本当はしてみたい事もたくさんあった。わがままと言われたとしても、いろいろな物が欲しかった。でも、そんな立場には無かった。

 潮音は知っていた。ワシや弟達が必死に助けようとしていた事。自分が厄介者でも、何とかして潮音が潮音らしく生きられる場所を探そうとしていた事。だが、潮音が欲しいかったのはそんなものではなかった。潮音を認めてくれる人。何も言わずにそばに居て話を聞いてくれる人。ちょっとのわがままを聞いてくれる人。……ただ、何もなくても自然に寄り添ってくれる人が欲しかったのだ。


「……貴方は言ってくれたじゃないですか。約束してくれましたよねぇっ?!」

「……」

「貴方は私の傍にずっと居てくれるって! 私のものになってくれるんですよね? 本当の私を受け入れてくれますよ……ね?」


 赤羽が潮音を抱きしめ、潮音の金切り声に近い叫び声は止まった。今は屋敷には椿様とワシら、使用人しかいない。不幸中の幸いか。赤羽がどんな説得をしたのかは知らないが、潮音の本心を引き出したんだな。そうだな。赤羽は否定をあまりしない。あまりにも理不尽な物事はさすがに受け入れぬが、できる限りは受容しようとする。潮音が揺らぐのと同じ時に赤羽も揺らいだ。潮音には拠り所がなく、心が不安定になったのか。これでハッキリしたな。潮音は赤羽に依存している。

 気遣いや遠慮などの抑制を強く働かせる事で潮音はわがままな本性を隠してきた。それは周囲の人間が与えていた環境にも起因する。

 ワシや弟達にはそれぞれの立場があり、迷惑はかけられない。潮音の仲間達の中では姉役の為、潮音は逆に頼られる立場だ。男衆も各々が独り立ちしておる故、強い依存にも近い事は頼りにくい。それまでは潮音の依存対象であった魔解は銀嬢と婚姻を結んだ。

 そんな中で赤羽はワシの弟子となり、少なからず潮音を気にしていた。男衆の中では潤滑油の様な役割となる事が増え、他の者達とは一風変わった切り口で物事を受け止めている。あやつは話を聞いたり負担は無いかなどと、あの子への気遣いも見て取れたからな。いつの間にか親しい存在になり潮音には、赤羽が不安を解いてくれる者になっていた。あるだろう? 生活の中で必ずこれでなくてはならない物がな。人とは言わず、生活の道具だったり場所。そんな鎮静剤の役割を赤羽がしていたんだ。確かにあやつは気配りがきくし、人に深入りし過ぎない。潮音は過度に踏み込まれて様々な内面が割れる事も恐れていた。……驚くほどに良い位置にはまってしまったのだな。

 だが、そんな赤羽が潮音の願い、死を選ぶ事を拒んだ。潮音にはその上で赤羽が告げた決意がこの上なく嬉しかったのだろう。潮音に生きていて欲しい。特別な人物であることがな。……しかし、潮音はそこまで気にかけ、支えてくれていた赤羽に頼んだ事を思い出した。強い悲観と焦りに飲み込まれたのだろう。その後悔と言う思念が……奥底に封じ込めて来た父への憎しみに再び火をつけた。


「……どうしたら、私の傍にいてくれるんですか?」

「どうしたらとは?」

「貴方の言う通りにしたじゃないですか。私がして欲しい事を貴方にお願いしました。恥ずかしくても、わがままであっても……。ミュラー君は素の私であって欲しかったのですよね? なら、私も貴方が欲しい。私は貴方が傍に居てくれるなら、家名も肩書きも要らない。欲しいのは、貴方だけなんです」


 その後、潮音が号泣し、赤羽も部屋を離れる事ができなかった様だ。深夜になるまで潮音は赤羽を話さず、血奮とは異なる目の充血と腫れが酷い状態になるまで泣き止まなんだようだ。赤羽の話を聞くうちに徐々におちついていったがな。

 泣き止んだ後はそのまま落ち着いた。潮音に赤羽がその後に伝えたのは……。まず、自立する事である。言わずもがなだが、赤羽はいつも一緒に居られる訳ではない。その為、一緒に居られる時間を作る為、潮音も努力をする事を覚えさせるつもりなのだろう。潮音はその場ではムッとした様に再び瞳が深紅に染まったが、渋々だったが赤羽の言葉を受け入れた。飴と鞭か。なんとも絶妙だな。

 しかし、潮音もただでは受けぬ。一定期間を継続できたら、ご褒美が欲しいなどと言うではないか。赤羽も少し考えた様だが、それを受け入れている。……この日からワシは監視をやめた。潮音は以前までの潮音に順調に戻り始めていたからだ。確かに、感情の昂りに合わせて血奮は出るが、どの様にしているのかは解らないが鎮静している。食事や社交も回復。徐々に以前のような保育所の手伝いや仲間達への世話もする様になるなど、あの後の回復には著しい物があった。そして、とある日。ワシは知っていたが、白槍、赤八を交えたワシらの話し合いの最中に赤羽が大問題……もとい、火種を投げ込んだ。


「……師匠、少々お尋ねしたい事があるのですが。よろしいですか?」

「うん? 構わぬ。入れ」

「珍しいな、赤羽君。貴殿からこの場に来るとは」

「うむ、して? 何用だ? 兄者の手を煩わす程ではないならワシが受けよう」

「それが……」


 赤羽はこの国の風習を知らぬ。来て日が浅いばかりか、赤羽の故郷は遠く離れた断崖の地。知る由もない。しかし、白槍は持っていた書物を取り落とし、赤八も茶を飲みながら固まっておる。その火種とは……『潮音からの願い』である。それも贈り物として『赤羽が手作りした飾箸』が欲しいと言うではないか。

 この国出身の者ならば本来の流れも心得ておる。箸を手渡すのは必ず男から。女子からせがまれるようではならぬ。まぁ、時と次第により変わりはするが、基本的に嫁をもらうのだからな。箸を渡し、婚姻への前向きかつ誠実な姿勢を御両親に示す為の儀式。そのため男からが主体となる。潮音の願いでもあるし、信用している弟子だからな。ワシはこの国の文化を伝えようかと考えたが、2人に止められたので一時保留にし、2人の意見を聞いた。赤八は潮音からの催促ではならぬと言う。しかし、白槍はワシから聞いた赤羽の出身地の事を考えれば仕方がないのでは? と譲歩案を出す。

 2人やワシの経緯にたちかえる話だからな。2人もワシも一般的な流れとは全く異なる。ワシと公孫樹は学舎の頃よりだからな。付き合いこそ長いが、今に至るまでの間も長かった。それに結婚適齢からは大きく外れ、相手である公孫樹は他国の大勇者家系の令嬢で長女。お互いにすれ違い、戦鬼様や椿様様には大変なご迷惑をおかけした。

 次男の白槍は相手方からの求婚。前時代的な体制である貴族制が限界を迎え、たくさんの家が絶える時代。その折に娘を幸せにしたいと願い、名家に嫁がせたいという両親の強い思いだ。何より2人の場合は娘子たっての希望からだ。なかなかの美男で有名な白槍、聡明な絶世の美女とまで言われた嫁子。実際美人だしな。2人は見合いをし、相性はよかった。だが、正式に受けるには様々に問題が残る。経緯を知るワシから言わせれば、それだからあの2人の恋は燃えたのだ。1番の障害。それは縁組に父が反対したのだよ。しかし、なだめ倒して白槍は押し切った。館まで新設し、別居になったがな。父と白槍が不仲だったのはそれもある。

 赤八は今年で25歳だが、嫁子は今年で14歳。婚姻は赤八が20歳で嫁子は9歳の時。ワシは既に国防拠点に居たので祝辞の手紙しか出してやれなんだが。赤八の場合はさらに特殊で、ご両親からの頼み込みからの始まりだった。赤八が嫁子のお父上を暴魚より助けたらしい。赤八は自身の命を顧みず、無謀な人助けをしてしまうやつだ。その漢気と暴魚を仕留め、自ら漁民に振る舞う懐の深さに感服したのだそうな。年齢こそ離れてはいるが、嫁子は赤八をしたっており、赤八も悪い気はせなんだらしい。当人同士は気質が近く相性が良かったらしいが、こちらも我が家の父が大反対。白槍は紛いなりにも貴族の出身である娘との婚姻だが、赤八は長とは言えど漁民家との縁組。体裁や実利にしか益を見ない父には害にはなれど利には遠い。そんな押し問答が過激になったが、ワシの仲裁が入り若干軟化。最後は父とは半ば縁を切った様に赤八が押し切り、婚姻を結んだのだ。


「しかし、知らぬとは何とも恐ろしいですな。兄者」

「口ではああいうも根からは反対ではないのだな。赤八よ」

「白兄よ。からかうのはよしてくだされ。ワシとて潮音の幸せを願っておるのです。しかし……、あまりにも」

「お主と嫁程ではない。潮音が23で、赤羽は18だ。それでは両人も賛同で良いのだな?」

「聞くまでもありますまい」

「当たり前にございます」


 しばらく時間を潰させてしまったが許容範囲の様だ。

 ……この2人が潮音の現状を知ったらどんな態度をとるやらわからぬ。潮音は繰り返していたせいもあり、赤羽が箸で口元へ運び、それを食べるのが癖になってしまったらしい。傍目には少し行き過ぎな夫婦にしか見えぬ。たまたま遭遇した公孫樹も呆れている始末だった。

 さて、飾箸だな。

 箸作り自体は大して難しい物ではない。しかし、どのような意匠を加えるかでその者の誠意を表すか。それが飾箸作りで最も重要だ。

 ワシは公孫樹の為に黒と赤の漆に合わせ、金箔で公孫樹の葉を誂えた物だ。実物を見せると弟達すら感服したらしい。それはなんでもよく。

 白槍はこの国に自生する杉の木では特に珍しい古木から取った材木を用いていた。あまり華美にせず、木目を生かした素の素晴らしさを見せた逸品だ。こちらも素晴らしいできだな。

 赤八はと言うと……本来は危険であるから魚人族ですらやたらめったらできんが、日も届かぬ夜闇の深海へ潜り、材料を得たらしい。紅い宝石珊瑚を荒く研磨した物だ。赤八らしさが出る良い品だよ。


「御三方とも素晴らしい作品ですね」

「他人事のような口ぶりだがな赤羽君。貴殿も似たような物を作らねばならんよ?」

「さよう、我らが妹に贈るのであろう? 相応の物を拵ねばなっ

!! はっはっはっ!!」


 この土地に不慣れな赤羽では何も手がかりがないのはあまりにもに不憫に感じ、ワシら兄弟で相応しい昔話を掘り起こした。

 『人魚の涙』と言う御伽話だ。あまりにも悲しい物だから、失恋の教訓の様にして伝わったものだがね。内容は叶わぬ恋をした一人の巫女と他種族の王子の話だ。巫女は身分から想いを遂げられぬ為、涙を流し悲しみを抱えながら祈り続ける。長い間泣き続けた結果、巫女は亡くなってしまった。しかし、巫女の涙は美しい砂浜になり、近くを通りかかったその王子の目に留まる。王子は小瓶にその砂を入れ、本国に持ち帰り、一生大切にしたそうだ。そうしなければならなかった様なきがしたのだと。

 白槍に大雑把過ぎると言われてしまった。……赤八はこの短い説明で寝ておるし。

 その砂はこの国では工芸品に使われている。そこを見つけ、どうにかして作って見てはどうか? とワシが語ると赤羽は張り切って飛び上がった。……忘れておった。あやつは鷲人だったな。数十分すると赤羽は帰って来た。ただ、あまり良い顔はしていない。白槍の予想が当たってしまったか。実はワシらも懸念がなかった訳ではない。神海大人との戦闘に際し、津波が海岸部を襲った。砂浜は大丈夫であろうが、工房は壊滅。再建には時間がかかるだろう。しっかり者の赤羽は相談の為、大量の上質な砂を持ち帰って来ていた。そこに運が良いのか悪いのか……。


「ん? 兄弟勢揃いで何をしてるんだ? 太刀海。神社の近代化改修工事と、これから建設予定になる政務館の草案と簡易だが設計図を……」

「そうか! こやつがおった!」

「んぁ? な、何だってんだよ。説明しろ」


 潮音が赤羽に要求した箸の話をした。すると、魔解からは別の提案があった。砂の特性や状態から察するに、造形や加工はそれ程難しくないと言う。魔力の微調整次第でなんとでもなるだろう。……との事。ただ、潮音にただ渡すだけでは詰まらない。贈り物として作るならば、様々な工夫を取り入れよと告げた。火の国と森の国の中間点にはたくさんの村がある。その森の国側には焼き物や木工生産に特化した村が点在するらしい。その辺りの村には『夫婦箸』なる風習があるらしいのだ。村の外から嫁ないし婿を迎える時、贈る側も迎える側も二膳の箸を用意する。それを婚姻を結んだ両家の調和の証として贈り合うのだとか。今回は赤羽の故郷の材料は不可能。それをどのような意匠で飾り付けるかがキモだとな。工房は魔解の物を貸してもらえるらしい。……大きな借りを作ってしまった。

 それから数日後、満足のいく作品ができた様だ。若干、寝不足気味の赤羽。今日もお勤めの為に潮音の元へ。毎日会っているはずだが、潮音も赤羽が現れると表情が変わる。あれほどに晴れやかな表情を見るのは久しぶりだな。これも起動するのは久しぶりになるが、結果が気になり機材を起動して5人で覗き見る。内容を知るワシら3人と監視の内容を知る公孫樹、協力者の魔解だ。魔解は作品にしか興味がない様子だがな。……最後まで赤羽に事の真相を伝えなんだのが吉と出るか凶と出るか。潮音の態度もソワソワしている。手に持っている小箱が気になるのだ。できあがるのに時間がかかるとはいえ、楽しみでない訳がない。待ちに待った物だからな。潮音にはこの関係を変える鍵となる物なのだ。赤羽は策を投じられておるのに気づけておらぬ。仕方ないがのぅ……。ワシらは潮音に甘いが、まさか魔解まで教えなんだからな。夫婦箸は箸の贈り物と言うだけだったからのぅ。


「潮音さん。以前言われたお箸です」

「で、できたんですか!」

「はい。どうぞ」


 桐の箱に入れられている箸は透き通り、引き込まれる様な青に泡粒の様に輝く結晶が光る箸。それと……どうやら故郷の品がないならと、やつ自ら作品になったらしい。紅い結晶に自らの羽を入れて固めた様だ。あの海岸の砂は鱗砂と呼ばれる特殊な性質をもつ砂。魔力を込めると、砂粒についている素体要素に合わせて発色し、魔力の微調整によって透き通り方が異なる。より手をかければかけただけ透き通り、頑丈になるのだ。あれだけ丁寧に作ったのならば相当な強度だろう。ちなみに、1度固まると二度と変形させる事はできない不思議な性質を持っている。あの砂の別称は人魚の涙だ。

 潮音は青い箸を見て目を輝かせている。しかし、赤羽の狙いはもう1つあるのだ。潮音から1度箸を預かると、赤羽は自身の手にあった紅い箸と1本ずつを入れ替える。それを呆けた様な表情で見ている潮音。顛末が読めたのか魔解は既におらず、野暮だと思ったのか白槍と赤八もこの先は見ずに去って行った。見なかった事が救いだな。潮音も既成事実を作りたかった様だが、この展開は読めなかった様でさすがに狼狽えている。そして、満足したのか、赤羽を見つめながら潮音が答え合わせを始めた。


「先に謝らせてください。ごめんなさい」

「? 何をですか?」

「やはり、ご存知ないですね。ふふふっ、私の勝ちです。これで、ミュラー君は私の物ですから」


 ひたすら訳が解らないと頭を悩ませる赤羽。解る訳が無かろう……。そなたの頭には答えの知識が無いのだからな。

 イタズラ好きな子供の様に含み笑いをする潮音。そんな嬉しさが漏れ出る潮音は婚姻の飾箸の話を赤羽に打ち明けた。これでもかと嬉しそうな表情だ。恐らく、赤羽はそれを教えなかった我ら兄弟と魔解へ小さな恨みの念を持った事だろう。潮音は箸を桐の箱にしまうと居住まいをただし、ミュラーに頭を下げた。今度は至って真面目な表情だ。

 なんの影響力も権力もない武家の娘。こんな自分だが、嫁にもらってくれるか? などとにこやかに言うではないか。想いを伝えられ、同時に既成事実を作られた赤羽。否と言えぬあやつも居住まいをただし、『負けました……』、と笑いながら答えている。事は収まり、潮音と赤羽の問題は……全て綺麗さっぱりとは解決されていないが落ち着いた。問題は新たにできあがったがな。何となく解ってはいたものの、可愛い妹が嫁ぐのだ。ワシも含め、兄達は複雑な物だよ。それも数日後には変わったがね。館内で赤羽の腕を抱き、幸せその物の表情をされては、ワシらも反対なんぞする気も失せたがな。そもそも……節度をもった逢い引きならばワシらも何も言わぬのだが。


「ふむ、スマンと言ったであろう」

「師匠も人が悪い。あの時教えてくだされば……」

「おっと忘れておった。もう少し先になるが、ワシと公孫樹の婚儀を行う。……お前達は夫婦としてでてもらうからな。役がある故、心せよ」


 ……大した役ではないがな。

 潮音の体調の回復と共にワシらも様々に動かねばならぬ。戦鬼様も潮音に御用があるらしいしな。まさか、この2人がこの期間で形になろうとはワシも思わなんだが、さぞかし驚かれるだろう。だが、戦鬼様の反応は何とも厳しい物だった。御用があると、式を目前にしていたワシらと潮音を集められる。そして、その席に赤羽が居る事から察したのだろう。戦鬼様は何も言わず、まずはワシら2人への言葉掛けを。ワシらもこの方を振り回したことには変わりない。それに関しては嫌味でも苦言でも、訓戒だとして受け入れねばならん。実の祖母ではないにしろワシらにしてみれば保護者の様なお方だからな。公孫樹もずっと頭を上げない。……そんな公孫樹の態度にはさらに苦笑いだったがな。魔解よりの贈り物。あちらの国の婚礼装飾品は既に受け取っているが、こちらの物は椿様に待つ様に言われていたのだ。その理由が……。


「公孫樹は知らぬだろうな。当日はこれを使いな。お古で申し訳ないが……」

「お古とは?」

「アタシの時に使った白無垢だ。それ以外の細々した物もある。シルヴィアは丈が合わなんだから着せなかったが、アンタなら着れるだろう。直しは既に済ませてある」


 そして、刃鬼(クルシュワル)様からも彼の紋が入った仰々しい箱が手渡された。魔解も城鬼(リクアニミス)様も細身だ。刃鬼様の物は合わなかったがワシならば……と用意して下さった様なのだ。このご家族にはどれほど世話になるやら。『気にするな、倉庫の肥やしが1つ減ってワシも助かっておる』などと無表情に語られているが……。

 ワシらの婚礼衣裳や様々な小物、車など。更にはお祝い金までご丁寧に用意してくれている。戦鬼様からは重たい言葉を放たれたがな。ワシや公孫樹に期待しておる故……なのだと。この祝いは言わば初期投資の様な者らしい。銀嬢が森を、我妻の公孫樹が海を……まだ定まらぬが誰かが火を背負う。巫女には調和が求められる。新たな時代を迎え、戦鬼様はそれを行う為に動き出したと語った。海の国も新たな風を受け、変わって行かねばならない。我が父が舵取りを誤り、座礁した船を立て直す事から始めなくてはならぬ。新たな船で新たな風を受ける事はそれはそれは難しいだろう。追い風も吹けば向かい風に阻まれる時もある。時には嵐に揉まれるやもしれぬ。そんな時、船を導く者達は結束し、船を守りながら進まねばならない。


「時には港に入り、熟慮する期もなくてはならぬ。それに新たな風を受け入れるのはアンタ達だけじゃない」

「はっ!!」

「ありがとうございます」

「アタシは見込みのないやつらに投資はしない。それは昔も、今も、これからも変わらん。潮音、前に出な」

「はい……」


 まずは高らかな音が響き、戦鬼様は潮音の頬を打った。赤羽が立ち上がろうとしたが、公孫樹が止める。潮音も微動打にせず、戦鬼様からのお言葉を待っている様だ。戦鬼様は魔解と刃鬼様を前に出し、これまた仰々しい箱を前に出す。戦鬼様がより高位者へ贈り物をする時に用いると言われる箱だ。1枚1枚を丁寧に貼り重ねられた戦鬼様ご自身の鱗を用いる作調。家紋ではなく、戦鬼様が個人で用いる紋がしっかりと見て取れる。

 潮音に開ける様に言葉が飛んだ。潮音は恐る恐る、箱を開き中にある宝具に目を見開いた。そこからは魔解の説明が入る。潮音の暴走を抑える為の宝具だと言う。正確には宝具を元に魔解が造形し、能力を強化した物らしいな。魔解は手招きし、赤羽を近寄らせた。そして、赤羽の右腕に取り付け、潮音にも同じように左腕へ取り付ける。粗方の説明があり、刃鬼様からも戦鬼様からの依頼だと言って潮音へ手渡された。薙刀の刃だ。潮音の薙刀は魔解の作品で潮音の魔法を助長する作り。しかし、それではもはや不十分だ。良い機会だからと魔解と刃鬼様との合作で新たに拵えたらしい。それだけ手渡すと戦鬼様はあとは個別に話すと言ってその会を閉じた。……感謝しきれぬ。ワシだけではこの視界は開けなんだ。皆様、ありがとうございます。

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