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山住まいは忙しい。

 幼い日々に職人としての高みを目指して歩みだした。だが、歳を重ねながら力をつけてゆく過程で、俺にはとある変化が現れていたのだ。煌びやかな場所、王都や地方の都市部ってのは…俺には合わなかったんだよなぁ。

 そんな中で最も俺に影響を与えた言葉、それは俺の視界を真逆の方向へ向けるだけの強い衝撃を与えてくれたのだ。一流の鍛冶師ってなんだと思う? 俺は師匠に問われた時にこう答えた。


『より強い武器を作る鍛冶師』


 だが、今は違う。以前の立場から離れた今なら、師匠の言いたい事がよく解った。俺は今、辺境の山奥に住まい、小さな鍛冶工房と自給自足での生活をしている。……生活するだけだとしても周囲の村の方々に助けられているがね。

 この山は以前の職場である王都から極めて離れた辺境だ。

 まぁ、左遷されたような物だけども、今更それに怒りや強い感情はない。むしろいい機会だったしな。本来ならもっと早くに気づかねばならない事にも気づき始めた。俺は俺の両手に余る事はしないと誓ったんだ。俺に出来ること、それは俺が作ることができる至高を目指すこと。それだけだ。その為に俺は一度全てを捨ててここに来たんだからな。


「ごめんくださーい!!」


 あぁ、五月蝿いなぁ……。俺の仕事には集中力を要し、小さな感情の変化が如実に現れてしまう。仕事の内容にもよるが、俺は職人として最高の仕上がりを見せたい。そして、何よりもお客の喜ぶ物を作りたいのだ。

 ……そんな俺の所に来るお客は主に3種類。

 山間、山裾、平野の小さな集落に住む住民の方。丁寧な対応をしてくれる人ばかりで、この人達ばかりならなぁ……と思う。時期にもよるが一番多いのは農家の方々が多い。ただ、それだけだと俺の生活は立ち行かない。何しろ俺が使う素材の中にはかなり高額な物もある。それを買えるだけの元手を農具の手入れや新調で稼ぐ事は不可能に近い。仮にそれが実現できる状況だとしても、かなりの依頼数が必要だ。過労死しちまうよ。それに理由はまだまだある。土地柄とでも言うべきかな? ここは辺境……。言っちゃ悪いがど田舎の小さな集落が点在する土地。そんな土地に現金での高額な報酬を支払える大地主や豪族は希だ。

 これじゃぁ悪口ばかりだが、俺はこの土地が気に入らない訳じゃぁない。こんな地味な商売だが皆が皆を大切にし、各々をたてる事で自給自足を補い合う。そんな関係が出来上がっているのだ。それに本職の鍛冶師は貴重だからだろう。かなり優遇してくれているしな。支払いや物流も原始的ではあるが、ほとんどが物々交換で生活必需品や食料をサービスだと沢山くれたりする。……王都の冷え切った人間関係より俺はこちらのが肌に暖かい。移住した当初なんて親切にしてくれただけで……、暖かくて……忘れかけてた感情が再び蘇ってきたよ。


「よし、農具の修理なんかは終わりだ。しっかし、みんな丁寧に使ってくれてるよなぁ。これなら作ったかいもある」


 感傷に浸ってばかりだから心配になる? 歳の割に老けてるって? はぁ? こんなに呑気で商売になるのかってか? いいや……なる訳ないだろ。さっきも明言したが、資金がなけりゃ高価な金属なんかの素材は手に入れる事ができない。

 心配せずともそんな時に助かる高額報酬をもたらす依頼主がちゃんと居る。小さいしど田舎だが、一応は独立した工房持ちなんでね。そこからの依頼は一度の受注にしては割に収入が良くて助かっている。そんな仕事にも慣れがあり、請け負い易い。実は俺もこちらが本職に近いからな。


「最近、依頼が多いな。討伐するべきモンスターでもいるんだろうか? ……戦じゃなけりゃいいんだが」


 ギルドが組織する武装商隊の隊員、フリーの冒険者達への武器や道具の供給だ。冒険者は冒険者ギルドと呼ばれる国家や地方自治に縛りの無い協会に登録する。その協会に斡旋され様々な仕事を請け負う人々への物品販売だ。……販売はギルドショップの店員がしてるけどな。俺が1人で製作から営業、物販まですんのには限界がある。

 だいたいにして一口に冒険者ギルドと言えども、エージェントがする請負方の範囲は様々だ。……長旅をせずに近場で仕事を探し、萬屋(よろずや)のような感覚で働く人物も居る。大多数の冒険者は拠点を固定せず、旅をして依頼をこなしたり、フリーの調査活動をして自分でネタを探し、ギルドに情報提供して次の冒険や目的の為の資金を稼ぐ。そんな彼らには旅の小道具や言わずもがな武器が必要だ。俺は依頼があれば選り好みなく請け負うため、冒険者ギルドからは割合と仕事を回してもらえるのだ。

 それに施設なんかの増改築も俺は請け負い、冒険者達の間でも使いやすいと評判らしく、嬉しい限りなんだがね。ギルドの受付嬢から聞いた話だが、最近じゃ俺の武器や防具類はブランドとしてちょっとした人気もあるらしい。まぁ、普通の武器は玩具みてーなもんなんだがな。


「ごめんくださーい! 居ないのぉ?」


 ……そして、最後のが今回の依頼人。不定期だし、彼らの来訪自体で何が起きるか解らないから……な。たいがい危険な依頼主ばかりが来る。彼らはどの土地にも存在しはするのだが、極少数派だ。高い実力を持つ冒険者の中には、国王から任ぜられた勇者と呼ばれる巨大戦力が存在する。それらが俺のような物好きや、一部の格式高い工房に依頼を寄せているのだ。

 彼らには並大抵の武器では通用しない。個性が強すぎ、常識が通用しない。それだから彼らが使う武器は普通の職人の鍛えた物ではダメなのだ。様々な局面で耐えられない。それだけじゃない。素材の構造的にも難しい物が多く、下手な職人が手を出したら触っただけで粉々……。なんて事も有り得る。


「オグさーん!! 武器のていれ……、あれー?」


 皆が皆そうではないが、この類の奴らは無遠慮で突然に来る。ここは辺境で連絡が取りにくい事も理由の一つだ。俺は王都の鍛冶師が作る連盟から除名されている。いろいろと確執もあるから、本当なら俺との付き合い自体が体裁としては微妙なことだ。お忍びで来る連中にはそういった理由もあるにはある。……俺にも仕事やら予定があるんだがよ……。

 その辺を譲歩し、俺が仕事を請け負うのは彼らにも理由があるからだ。彼らが使う為に耐久力を持つ武器や鎧を作るだけならば、一流の鍛冶師を志した者なら可能だろう。しかし、耐久力のみではダメなのだ。勇者はあくまで強力なポテンシャルを持った者達だ。彼らの能力を引き出せる武器を彼らは求めている。だから、勇者達は……職人を選び、より強力で、見た目の良い武器を好む。……至極当たり前な話だがな? 難しいんだぞ。デザイン性や職人が作る武器の相性もある。作り手の性質が武器にも出るのだ。

 頼ってくるのはそうだが、だからと言って俺が迷惑していない訳じゃない。軒先で騒いでいる幼女のような見た目の勇者へ俺は歩み寄って行き、背後から……俺の武器を後頭部へ突きつける。大口径の拳銃だ。今のところは俺でなけりゃ使えない代物でね。売り物にはできねーのがなぁ……。


「わーぉ、私、そういう演出…だぁ〜い好きですよっ!!」


 振り向きざまに満面の笑みを見せながら、彼女は俺へ強烈な振り抜きを向けてきた。目はガチだ……。

 しかし、俺にも勇者の武器を手がけているだけの実力がある。自分の実力も無く、あんな物騒な物を作れないだろう? 全ての斬撃を拳銃のフレームで受け流し、追撃を避けるために大口径弾を数発撃ち込む。予想はしていたがその弾丸すら見事に斬り裂き、叩き落としてくれる。……勇者としてはまだまだ卵のような彼女。だが、ポテンシャルは本物だ。代々を受け継ぐ勇者の家系から輩出された……金の卵中の金の卵。さて、お前はどんな闘いを見せてくれる? 九代目『時兎(トキト)』!!


「へへっ! さぁて、今日は勝たせてね!!『頑張って鍛錬してきたもん!!』」


 楽しげに武器を向け続ける少女。一撃が強烈でこんな乱打を少女がしているなどと考えたくもない。受け止めたり弾き返すなんてのは無駄な力を使うだけで、彼女の思う壷だ。なら、彼女が嫌がる手を選べばいい。彼女はせっかちで短気だ。……焦らしに弱い。

 それに俺をなめてやがるな。軽業混じりに後ろに下がり、俺に体勢を整える余裕をわざと残してやがる。俺が武器を準備していないと思っているんだろう? そんな事がある訳ないだろうが……。毎度毎度の連絡無し、相談無しの来訪には…そろそろ灸をすえなくちゃならんと思っていたんだ。来たら……痛い目みてもらうつもりでな。それもこれも親が放任しすぎたせいだよ。まぁ、こう言っちゃなんだが、彼女の親が放任したせいで俺が歳は若いが親代わりみてえなもんだし。

 少し打ち合いをすると急に下がった。だが、一貫して刃を向けては来ない。あくまであまい狙い手だ。模擬戦…となる。だが、勇者レベルの模擬戦は一般には模擬戦ではなく『災害』だ。もちろん、手加減はしていてもな。早くも決着をつける為にせっかちな幼女は俺に向け、明確な攻撃の挙動を固める。アイツ……アホだな。そろそろ学習してくれ……。


満月斬(フルムーンカット)!!」


 この子の母親とも懇意にしているだけあり、この一族の攻撃特性はよく知っている。この一族は勇者としての特性を血筋で受け継ぐ。だが…口伝剣技のパターンはオリジナルが多く、完全な踏襲をしない事が多い。一族の代表となる責務を背負う当主……『時兎』の名を襲名する娘は特にだ。

 膨大な待機エネルギーの解凍を一瞬で行える体質に加え、両親から受け継いだ柔軟かつしなやかな肢体、細いくせに密度が高く質の良い筋組織。化け物もいいとこだよ。骨格も(オリジナル)に近くはあるが関節可動域の常識外れな広さ……。さらに、勇者にも珍しい代々受け継がれる家督継承型の異能。……襲名する事で代々受け継ぐ『時兎』の力。しかもこの子は歴代希に見る相性の良さを見せているのだ。

 それが制御しきれていない。その事から彼女の早すぎる襲名には条件が付き……、不名誉な二つ名までが付きまとった。


「『さすがは始祖返りの狂兎だな』……」

「なっ?! なんでっ!?」

「お前さんは迷いが無いからな。太刀筋が綺麗で先読みされやすい。単純な力比べで押し勝てる相手なら…それでいい。だが、……格上相手に今の牙は命取りになる。それから……」

「ひぃぃっ!!」

「何度となく言ってるが……来る前に連絡を寄越せっ! このアホ姪がぁっ!!!!」


 彼女の挙動を頭上から見ると解る。進行方向へ前進しているはずなのに、斬撃は楕円ではなく円形に見える……。そんな強烈かつ理不尽な胴打ちをフレームで受け流し、拳銃を首元へ止め背後を取った形だ。冷や汗を流している幼女へ訓戒を投げ渡した後、俺は貯めていた怒りを放つ。かなりの力を込めた拳骨を脳天へ打ち込み、店先で説教を垂れる。

 正座をさせ、わざと開けた店先でだ。こうでもしなけりゃこのアホ姪は学習しようとしない。甘えてくれるのは構わんが……、俺にだって俺の仕事や都合があるからな。ただ、本当ならば(コレ)は俺の仕事ではないし、この子の年齢ならば既にできていて当たり前の事なんだよな。

 俺は今年で29歳になる。この子は歳の離れた兄の娘である。今年で20歳になる立派な成人だ。ちなみにこの国での成人は16歳なんだけどな……。その上で鑑みても見た目は未だに幼く可愛らしいが、……そこはお袋さんに似たんだろう。八代目時兎さんは……40代初頭なのに娘と瓜二つの現役勇者だ。いや、瓜二つではないか……。全体的に娘のが幼い。

 脱線が過ぎたな。今更ながら正しておくが、兄夫婦も教育面ではこの姪を甘やかした訳ではない。この子は特別な立ち位置にある。本来ならばありえない偶然が重なりに重なり、この子は現代勇者では次世代戦力の筆頭候補だ。だから、親は甘やかさずともその周囲では彼女へ媚び諂い、利用し……彼女を道具にしようとした。天然全開なこの幼女勇者はそれすら跳ね除け、プレゼントを沢山してくれる都合のいい付き人ってくらいに見てたらしいが……。おまけに好奇心も旺盛で跳ねっ返りもいいとこだな。お陰で我儘な部分だけ治らず、今でさえ叔父である俺に甘え込んでいるんだからな。


「でぇ〜? その様子じゃぁよ。お前さんの時兎はなんも悪そうには見えないんだが?」

「そうだけど…違和感があるの。それに他の鍛冶師にこれを触らせたくないんだよね『オグさんに作ってもらった……初めてのプレゼントだし』」

「なら、兄貴(オヤジさん)に頼め。わざわざこんな辺鄙な所に来る必要はねぇだろ?」


 膨れた……。頭にたんこぶ、涙目で頬が膨れ、駄々を捏ねる気満々だな。まぁ、こうなると俺にも義務が発生するのだ。実は勇者の武器には面倒な特徴がある。勇者の武器を作る工房は様々な立場や格式、言っちまえばレベルとかランクがある訳だ。そんな中でも勇者の武器は作った人間に見せた方がいい……。なぜなら、作った本人や使用者にしか弄れない程に複雑な技工、工程など様々に施されている物がほとんどだからだ。そして、この九代目時兎の持つ双刀時兎は俺の初仕事。俺が世の中に名を轟かせる事になった作品だ。

 おっと、忘れていた。この子は確かに九代目時兎を襲名している。だが、この子の名は時兎ではない。この子の名は……。


「我、勇者の心紅(ココア)。……」

「口上が思い浮かばないなら適当で構わない。……お前ら勇者はホントに自由だよな。まぁ、国家がスポンサーだから大変なのは解るが」

「えへへ……。私、オグさん優しいからだぁ〜ぃ好きだよ!」

「へぇ…へぇ…、それなら大人しく店番でもしててくれ。この時間帯だからどうせ客なんか来やしないがな」

「うんっ♡ 『オグさんと二人きり……嬉しい』」


 この心紅が若年勇者の筆頭候補であるのは何も力だけではない。家柄、血筋、武芸の才。様々にある。腹が立つ事にけして頭が悪くはないんだよ。このガキは……。

 工房に入り、まずは普通の武器と同じように手入れをする。この時兎は心紅の先祖、初代時兎が使っていた半双刀時兎を参考にした。刃の軸をより強固に硬く、異能者の能力伝達を加速する為、魔法回路も緻密に作り上げたのだ。ただし、刃の形や柄などは心紅に合わせて作っている。初代の用いた乱れのない一直線の直刃が美しい刀とは違う。時兎の血筋は本来は技巧の血筋。パワーゴリ押しの心紅のような闘い方ではなかったのだ。まぁ、そこは初代時兎の結婚相手に起因する。

 より詳しい話は追々になるが、心紅は細い腕に似合わず剛腕だ。だから、刃は分厚く、形状も特殊で奇抜な刃形。見た目はククリ刀に近いが刃は両刃で、栓抜きの様な返しがついている。素材は天聖砲石(テンショウホウセキ)。魔鋼を含有する巨大隕石の一種だが、その隕石の中でも特に希少で、とても特殊な状況下にあった物から得た金属を用いている。

 美しい刃は薄らとタマムシ色に輝くため、美術品としても有名だが……。その実態はこの子、もしくは俺達くらいしか扱えない。普通の勇者には重すぎるのだ。……残念ながら勇者も十分普通じゃねぇんだがな。


「我、オーガが命ずる。世の理と結び、封ぜられし力……。今、解き放つ!!」


 ……自己紹介が遅れて済まない。俺の名はオーガ。実は俺の兄貴も名はオーガ。俺は家名を襲名せず流れの鍛冶師だから、あまり名乗らないがね。兄貴は八代目のオーガ。七代目オーガである我らが父が兄の師匠だ。俺は……理由があり六代目に教導されたがね。

 国王より兄貴や俺のような鍛冶師、勇者は支援されている。何故ならば勇者は国防の主戦力。戦争となる場合で敵ならば最も驚異的であり、味方になれば最も心強い戦力だからだ。その勇者のバックアップには全力をかけるに決まっている。スカウトや育成、武器の作成など多岐にわたりな。

 俺はその中でも特に目をかけられた存在だった。兄よりも技術は上と評価されている。しかし、俺は政局や様々な方針、軍の圧力などを嫌い、全てを捨ててここに来た。父には勘当されたような物だ。だが、優しい兄は俺を心配してか、たまに面倒な人を寄越す事もある。……俺達の様な特殊な力を持つ者は、それだけ拘束された中で生きているんだよ。


「どっこも悪かねーじゃねぇかよ。……だが、使い手が違和感を覚えてんなら話は別か。兄貴に手紙を書かなくちゃな」


 勇者だって生き物だ。種族にしたらいろいろ有りはする。それでも一定で変化が無いなんて事は無い。だから、俺達のような鍛冶師がいる。

 特に仕事の面では顕著だったよ。国営の学舎工房(クラフト・アカデミー)に務めている時はまさにそれだった。家柄があり、兄貴のような専業と異なる俺は便利使いをされやすい。本来ならば引く手数多であるはずなんだ。俺が国からの補助や保護を断り、財団や様々な繋がりを断ち切らなければな。

 嫌いなんだよ。あ〜いう糞みたいな手続きや役人なんかとの関わりがな。鬱陶しくてよ。

 だが、俺も職人だ。頼まれた仕事は完璧にこなす。兄貴は一芸専業で家名を重んじ、刀匠としての技を極めたため、刀鍛冶で刃物以外はあまり得意としない。対する俺は様々な加工、装飾、服飾……多岐にわたりこなす。職人を名乗ってんだ。中途半端はありえないぞ? どれも一流さ。

 連盟に登録こそしていないが、俺もランクの低い勇者レベルの実力もある。だから、この姪の変化に気づき寄り添いながら武器へ映し出さねばならない。勇者の武器は即ち心だ。鏡に映し出すレベルでの表れをみせる。


「お〜ぃ、心紅」

「うん? なぁに?」

「お前、何かがあったからこっちに来たんだろ?」


 心紅の種族は女神族。本来ならば魔力が高く、神官や巫女となる場合が多い。外観が幼く小柄なのは、母親である八代目時兎さんの血を強く受け継いだ結果だ。しかし、能力や体機能においては我が血族が強く関わっている。なぜ、『狂兎』なのかと言う部分だ。

 神話レベルの話だからな、俺もにわかには信じられないが、原因の根幹はそこにある。俺達のような雑鬼族は騒乱の血として本来ならば疎まれて来た。それはこの世界を救ったと言われている初代勇者達の英雄譚にも現れている。血腥い闘いに…慈悲を向けない殺戮者が俺達の先祖だからだ。心紅は見た目こそ可愛らしいが、一度闘い始めると止まらない。本人も止め方が解らないようなのだ。それが理由で彼女はまだ条件付きの襲名で……お守役に俺が宛てがわれた。一族の嫌われ者に…な。

 それに箱入り娘とは言わないがこの子はかなり世間知らずだ。連絡はよこさないわ、家に置き手紙すらしない。そんでもってよく食うし好き嫌いも激しい。見た目とモデルは可愛らしい癖に食性は肉食寄り……。そんな不安定なガキが力に呑まれ暴走し、王都で暴れた時に起きる被害は想像もつかん。俺もそれを理解した上でこの子の相手をしている。それにお目付け役は俺だけではないし……、この子は確かに強いが現段階の最強ではない。まだ、この子には猶予がある。

 我らが国は国土こそ小さめだが……戦力だけを見れば世界最強も揺るがない程だからだ。勇者の存在に頼りすぎではあるがな。そして、俺達のような創造具師(クラフト・スミス)にもだ。


「私、一応は勇者って言われてる」

「そうだな。お前は現代勇者にしては規格外の強さだよ。しかも、磨かれていない原石だ」

「だから、自分が怖くて……どうしたらいいか解らないの」

「ふむ、お前が全力で立ち回れば確かに危険だな。無責任な事に国はその保護を金や施設でしかしない。人を育てるのは教育なのにな」


 珍しくしんみりする姪の頭を撫でながら、今回彼女が相談してきた元凶を抑え込むための処置、彼女の使う時兎に複数の封印を仕掛けた事を教えた。それの説明も詳しくするが、現在の世相やこの子や若年勇者の待遇…そんな世渡りのアドバイスに近い話をする。まぁ、なんだ……。世渡りに失敗した俺が言えた義理じゃないんだが……。

 そもそも勇者が表立って戦う時代はとうに過ぎ去っていた。俺達の先祖が戦った神人大戦をはじめ、人類は様々な騒乱を体験したのだ。その神と人との闘いに幕を閉じたが…、次は人が生み出した(アクイ)との闘い。果ては主義主張の異なる人どうしの闘いだ。だが、それも二代前には完全に終息している。確かに不仲な国や自治の間柄はあるさ。だが闘いが互いに不利益にしかならない事を既に知っているからだ。そうなれば俺達は備え以外にする事はない。無い方がいいんだよ。

 争いは確かに勝った勢力は栄えるよな。虐げた者から奪う事ができるから。しかし、今は違う。神と人が戦った最初の勇者達から学ばなかったこの世界の人間達は……、勇者と言う諸刃の剣の恐ろしさに気付いていない。目を背けている者も多いしな。


「オグさんは私の事怖くないの?」

「お前を怖いと思うことはあるさ」

「……」

「お前、馬鹿だし俺の事を考えずにいきなり来たりするからな。その勝手さ具合と横暴さが怖い。あとアホさ具合がな」

「何それぇ!! 私は真剣なのにぃ!!」


 店先のソファに座り、そっぽ向いた。むくれた姪は単なる飼い兎だ。幼い頃から知っているだけあり、可愛らしい。……がこのアホは本当に手がかかる。何故、俺に自分が託されたのかも理解してない様だしな。……俺は確かに鍛冶師であり職人だ。だが、それ以外にも仕事が無い訳じゃない。この子の両親は立場上目立つからできずとも、俺にはできる。

 ……少し前にこの国は勇者に依存していると言ったな。

 俺は平穏を求めてこの辺境へ移り住んだ。俺自身の平穏……とは違う。そして、この子の両親はこの子を勇者にしたくないらしい。平穏無事を祈り、拘束されること無く自由な時間を…満喫させたいのだろう。それをさせる為に選ばれた俺は、あくまでも仮の保護者ではあるがな。

 勇者は……生きた存在だ。意思のない兵器や武器じゃねぇ。間違っちゃいけねぇよ? 人間から心を奪った先に残る物が何か解るか? 破滅だよ。人間が作った戦争の道具、(アクイ)は結果的に人間に牙を向いた。……同じ轍は踏んではならないのだ。


「その答えはお前が…俺より強くなったら教えてやるよ」

(パワー)だけなら……」

「ア〜ホ〜かっ。俺がどういう存在か……知らねぇだろ? お前が知ってる俺は表面だけさ。知らない方がいい事もある。それでも知りたいってんなら……俺に頼らず、強くなれ。馬力じゃぁねぇぞ? お前が……勇者である事は変えられない事実さ。お前は人として強くあれ。心を強く持て……。なっ?」


 まだ、理解はできねーよな。何かを考えるような素振りはしているが、まだ完全な理解はできていないように感じる。だが、それはそれだ。頭をくしゃくしゃと強めに撫で回す。不安げな表情は抜けきらない。この子は俺に懐いてくれている。さて、手を差し伸べると言えば聞こえはいいが……。旅をさせよう。

 兄夫婦が俺に託しているこの子の運命。俺が舵を取るのは……もぅあってはならない。だが、霧に包まれているこの子の行き先を照らしてやる事くらいはできる。それを伝える為に心紅の父、俺の兄へと手紙を書いた。この子に外の世界を見せるためだ。格上の同世代と出会い、井の中の蛙から変わる機会を持つ為だな。その相手が俺でも構わないが、俺では少しばかり歳が違いすぎる。旅をさせる前に叩き潰す形にしてはならない。幸い、俺の周りには様々なタイプの若年勇者が来る。

 理由は簡単。俺の名は方々に売れているが、悪い評判もあって現役の代表格となる勇者からは嫌煙されっぱなしだ。ただし、若い稼ぎ所が無く、名の売れていない若年勇者には工房を選ぶ余裕など無い。格式が高い工房を利用するにはそれなりの勇者の階級が必要になる。だが、若い勇者に階級を上げやすい仕事が極端に少ない今、俺はそんな彼らの拠り所としても立場を固めつつあった。強い結び付きは無くとも冒険者ギルドからの仕事を回す事などもしてやれる。良い機会だ。このアホにも…旅をさせるかな。


「ごめんくださいませ」

「おぉ? そうかもうこんな時間か……。済まなかったな」

「いぇ、……私は階級すらない無名の者。御方は……八代目時兎様では?」

「ははは!! 違う違う。こいつはその人の娘だよ。そっくりだよな?」

「え?」

「は、はじめ、まして、わ、私は九代目時兎……です」


 目の前の少女も心紅と同年代だ。ただし、この少女は心紅とは段違いの実力を持つ。経験値や様々な知識の点で、籠の鳥に近い彼女とは違い自由だった事も起因するがな。それにこの少女……。いや年齢的には既に成人していて、見た目も大人びているから少女とは言い難いな。それに心紅との年の差は上に二歳だ。

 自身の早とちりに少々赤面している。彼女の名は汐音(シオネ)

 この国の勇者ではないが友好国の勇者だ。しかも……この子はネームバリューと実績がないだけで、家柄や力は心紅と同等以上だ。バトルスタンスも心紅と似ている。引き合わせとしては良すぎるタイミングだ。彼女の武技は穏やかな表情には合わないが一刀一閃。ターニングポイントとでも言おうか? ライバルとは言わないがな。さて、楽しみだよ。


「九代目時兎様? ですが、お若い……」

「私、今年で20歳です」

「えっ? 私は22歳です。歳も近い……。あの、もし宜しければ模擬戦でも……」

「いいんじゃないか? 心紅にはいい刺激になるし」

「『あの方が笑顔をっ?!』」

「汐音には自身の技を見直すいい機会だ」

「『わ、私以外に女の子が出入りしてるなんてっ!! うぅっ!!』」

「ん? まぁ、意気込むのは構わないが……力は抑えてくれよ?」


 俺はいつでも止めに入れる様に武器を準備してから二人の間合いを見る。既に試合は始まっているはず、……なんだがなぁ? いつもなら我先に間合いに飛び込み、奇抜で予測の難しい体術を駆使する心紅が微動打にしない。気味の悪い時間だけが流れる。

 二人のバトルスタンスは一刀一閃。パワーゴリ押しタイプの闘い方を好む心紅。彼女は面打ちよりも、重い刃に汎用が効かせやすい胴打ちを主体にする。対する汐音が用いる武器は……薙刀。彼女の先祖も……神人大戦の勇者だ。初代は男性で水を器用に扱い、多彩な技芸や加護の併用は神業とさえ……。そんな先祖からの一族踏襲の強い水研(ミトギ)の家。的確かつ遠心力を用いた強打にリカバリーの速い棒術を合わせた体術は美しくもある。

 一言に一刀一閃と言えども彼女らは違う。

 心紅は突貫からの強打、汐音は引き込み…打つ。一撃の重さを生かした二人だけに、どちらが有利とも言い難い。スタンスだけではな?


「『動いてこない? でも、相手は技巧の家系。私から打って出れば確実に巻かれる』」

「『相手は未知数。出方を見たかったんだけど……』」

「『致し方ない。私から……うそっ?!』」

「『動かないなら私から行く!!』」


 ほぉ、心紅が動いたな。それにお互いの情報がないから読み合いになる中で、双方が焦らし合いをする展開。アホ姪の割に考えてたんだな。それに心紅の重い刃を柄で受けたのは、汐音にしてはらしくない安直な考えからのミスだ。

 相手の武器から解るだろうに。汐音の薙刀は重くみても25kg。刃は重いが柄の部分は軽い素材を選んだ設計だ。この武器も俺が作っているからよく知っている。対する心紅の双刀は片方の刃だけでも50kg近くある。刃渡りも長く、この類の武器にしても規格外だ。時兎の力がなければあの子でも使い切れないだろう。

 柄で受けているのに火花が散り、苦虫を噛み潰したような汐音。それもそうだ。俺だって真っ向からあんな重さの武器を受け止めたかぁないさ。心紅は時兎に愛されている。だからお袋さんに言わせれば初代にも引けを取らないらしい。だが、決定的にお袋さんと違い、心紅には足りない物がある。


「『この速度で止められた……』」

「『くっ!! お、重いぃぃっ!!』」


 両者が一撃のぶつかり合い……。いや、心紅の先制攻撃から動いた展開だがどちらも引かない攻防だな。ただ、手堅い汐音が耐え切ったためにその展開は再び膠着状態だ。押し切る事に益を見出さなかった心紅が膠着を解き、飛び退く。

 状況から防戦一方に見える汐音だが、経験値は彼女の方が数段あり、残念ながら手数や自身の技が制限されている心紅の方がかなり劣勢だ。しかも心紅は短気すぎる。だから今の刺激で彼女のスイッチがかかっちまったかも解らない。闘争心を顕にした物はまだ確認できないが……。

 それよりも解り易いのは汐音の気持ちの切り替わりだ。やはり経験値の違いが大きいな。さて、中断させる用意だ……。新米勇者の模擬戦は本当に何が起きるか解らない。だから、審判に上級勇者以上の実力者が必須だ。俺の本職は職人だが、条件は満たしている。

 片目が真紅に染まった心紅。いきなりのエンジンフルスロットルかよ……。汐音も本来のバトルスタンスを取り、薙ぎ倒す気満々だ。

 先手は心紅。常人では見えない速度での心紅による特攻。どんな地形、気象、荷重、阻害にも対応する奇抜な体技は一族の誰も使わない。彼女の体術を教導したのは……七代目オーガ。我らが父だ。無双とまで唄われる狂兎は舞う。双刀の乱舞は美しくも恐ろしい物だ。だが、地面を砕き、草原を耕す割に攻撃は汐音に掠りもしない。これが汐音の本来の得意技、流し薙だ。これのヒントは俺が教えた。

 状況を打開するため、心紅の双刀が光る。体の使い方が奇抜なため、どこからどの様な斬り込みが行われるか、素人では予測は愚か…対処さえ難しい。汐音は若干遅れながらもそれが解ったのか、攻撃を受ける覚悟で先に致命的な一撃で決める技を選んで来た。心紅は逆立ちの体勢から急激に体を捻って飛び上がり、左太腿と脇腹を砕き潰す軌道を狙っている。もちろん、自身の防御など考えていない。汐音は柄を短く持ち直し、刃を心臓へ突き通すつもりだ。……まったく、これは模擬戦だぞ。手間かけさせやがって。


「双方、止まれ……」


 手始めに経験の薄いお嬢様方の武器を跳ね飛ばす為の射撃を。次に体術を用い、双方に攻撃を止めさせる為の強烈な威圧を加える。先に効果が現れたのは心紅だ。体が空中に浮いた状態の彼女には、慣性の法則が働き易い。しかも重心が先端に近い部分にある心紅の双刀は時兎の力で制御しているに過ぎず、自身の筋力ではその衝撃に耐えるだけの対応力は今の彼女にはない。双刀が跳ね飛ばされ、心紅も衝撃に流されながら転がる。地面で受身を取り、我に返ったようだ。

 同時に汐音の薙刀も穂先へ撃ち込んだ弾丸により、手を離れて回転しながら宙へ舞う。彼女の場合は心紅とは異なり、特殊な能力で攻撃力を上げている訳では無く、武技による鍛錬からの技術だ。だから、より対処し易かった。どちらも武器が離れたと同時に闘争心が消えている為、威嚇は些かやりすぎとも感じたが……。それだけ勇者とは危険な存在なのだ。心紅はこれが怖いのだろう。自分が自分で止められない。……止まらない力。汐音はそこは経験済みだ。だから、怖くはないのだろうが悔しそうだな。


「お疲れさん、2人共」

「すみません。また、お手数をお掛けしました」

「『ま、また?!』……あ、あのオグさ……、いえっ! コホンッ! 叔父上と汐音さんのご、ご関係は?」

「はぃっ?! え、ええとですね?」

「まぁ、妹分と言うか…そこそこ聞き分けのいい生徒だな」

「……うぅぅ〜『と、唐変木ぅ』。ん? えっ? お、叔父上?」

「あぁ、この子は俺の兄貴の娘だ。10歳くらい離れてるから親子に間違われる事もたまにあるがな」


 昼の少し前に俺の元へ現れた心紅、昼を少し過ぎた辺りで来訪した汐音。時間帯もあり、模擬戦の終了と共に2人の腹の虫が限界を超えた。派手に赤面している2人には簡素で悪いが飯を用意する。心紅は割と早く立ち直ってくれたから良かったんだが……、汐音はこういう所が乙女過ぎて少々面倒だな……。両手で顔を隠しながら店の一角でうずくまってたし。しかも店の1番隅っこでソファーにより影になる場所でな。

 心紅が慰めていたようだが、最後には心紅が汐音を引き摺るようにリビングへ連れてきた。そんなコントを繰り広げていた2人に飯を出し、1人で使うには広い家のリビングでくつろがせておく。俺の弾丸を受けた2人の武器を集中して見るためだ。2人を隔離した理由か? ……汐音は落ち着いた人物で物腰は柔らかく、王族としてのどんとした居住まいも既にある。ただし、意外と子供みたいな娘で、新しい事に興味を持つと周りが見えなくなるのだ。そんな汐音に誘発され、心紅までこちらに来てはそれこそ作業どころではない。汐音は邪魔にはならない。だが、心紅は確実に邪魔になる。だから、集中するとは言えど、手が離せる時は彼女らの状況は逐一監視しているんだよ。


「汐音さんは高位勇者を目指してるんですか?」

「いぇ、結果的に……その道を歩んだだけですね。私の目標は…私を私と見てくれる方を……ふふっ」


 2人は模擬戦の時とはうって変わり仲良く飯を食っていた。食べ方は兎のようなやつなんだがな……。好物はステーキってんだからよ。……うちで出てくるのは良くても干し肉とチーズ、ライ麦パンぐらいだ。物足りないのだろうが、出てきた物には文句は言わない。それにどちらかと言うと上品な手つきでパンを食べる汐音を見て立ち振る舞いを変えてきた。貴族モードの心紅だ。

 外目には微笑ましい限りだな。俺は叔父だから一緒に暮らしては居なかった。だからあの子の事を詳しくは知らない。……王都での閉鎖的な生活の中では彼女のようになってもおかしくない。幼い頃から心紅には同年代の友人は1人も居なかったのだ。

 箱入り娘……か。

 国が定めた最上級戦力の勇者家系に生まれた一人娘であり、超の付く才能の塊。国の立場としては絶対に失う訳にはいかない。国の至宝。……次代には最強の戦力候補だ。隔離された場所で囲われた存在。俺とは対極の……。それも有り俺は兄夫婦の意思を汲んだ。この子が望むのであれば、俺はそのように育てるだけさ。


「九代目時兎様は八代目時兎様から技術指導を?」

「いいぇ、私は……襲名こそしたんですが勇者らしい事は何も。まだまだ未熟な子供なんですよね。叔父上に甘えないと……自分を見せられない」


 良かった。2人の武器はどこも壊れちゃない。……俺も戦闘行為は久しぶりでな。少し加減ができてなかったんだ。っと、2人は……。

 おっ? 俺と汐音の出会いか?

 そうだな。こんな土地に王族の姫君が共も付けずに1人で出入りしてるのも不思議だろうな。汐音は兄が何人か居る。俺はその兄貴の1人と級友でね。だから、間接的には汐音を知っていたのだ。汐音の兄貴は勇者ではないが国を護る『守護職』で、俺はたまに彼の武器も手入れしている。お忍びの客が居るってのはこの類だ。

 汐音の出身地は政治と宗教が手を取り合い成り立っている。国の政治と国防を担う武家の水研家。その家にはもう1つの役割がある。水に愛された海の国は漁業、農業、林業を支える巫女を祭りあげていた。巫女は代々を国で最も強い力を持つ女子に任ぜられる。

 そんな中、海の国で最も力を持っている水研の家に念願叶って生まれてきた末っ子の姫君、それが汐音だ。それはそれは可愛がられて育ったそうだよ。……実は汐音は巫女であり、高位の王位継承者であるため、立場的には勇者などはしない方がいい。そんな彼女は兄妹の中で最も強力な魔法力と武芸の技を持ち合わせ、平穏な世界に生まれた稀代の戦姫である。その事は汐音も心紅も変わらないがな。


「……叔父(オーガ)さんも九代目時兎様にとてもめをかけていらっしゃる。羨ましい」

「そ、そうですか?」


 汐音はとても真面目で自身が背負うであろう思いや責任を遵守する。そんな汐音にはとある理由があり、力をコントロールする為に精進したいと言う意志が強かった。その為に勇者の学堂……『学舎』へ通いたかったのだ。しかし、彼女の父は汐音が国外へ出る事を許さなかった。一人娘を外に出したくない父親により過保護に囲われていたらしい。……そんなある時、彼女は決起した。父親に大反対されながらも国の外堀を守護する兄の力を頼り、半ば家出をする様に友好国であるこちらの国で実力を積んでいたらしい。

 その中でどの様にして知り得たのかは解らない……。当時、学術研究の最先端、特に勇者や武具、魔鋼の扱いでは他に追随を許さなかった俺の所に現れたのだ。『弟子』にして欲しいとな。当時も突っぱねたが…その後、またこの山間で出会った。それから少しして汐音が引き起こした大事件が大事も大事だった。だから今でも弟子ではないが、物覚えが良いから扱いとしては妹分だよ。


「私は海浜都市である海の国の出身です。美潮(みしお)の里を国元とする水研家に生まれました。ですが、私は幼い頃から力が強すぎた事で度々問題を起こしていて……」

「汐音さんがですか? そんな風には見えませんけど……」

「そう言った条件で話すのでしたらば、九だ……」

「えっと、私は心紅といいます。せっかくなので名前で呼んでほしいです。それに……汐音さんは私よりも2つ年上ですし、もっと楽にしてください。私、嬉しいんです。同年代のお友達が……初めてできて」


 汐音が目を見開いている。

 感情の統制を一時的にでも崩される様な衝撃。確かに大人びているし、実際、この汐音は心紅よりもかなり早くに自立したはずだ。そんなあの子にあの表情をさせるか……。汐音も予想外だったんだろうな。心を育てる。心紅に足りない部分を育てる為に……。たくさんの出会いをして欲しいんだ。先程も垣間見た異形の兎。あの様に表裏が乖離し、自身の手で元に戻せない心紅。汐音やこれから出会うであろう友人達が、変わってゆく足がかりになってくれると思う。

 見た目は全く違うが、可愛らしい妹と優しくおっとりした姉のように見えるな。

 彼女らは確かに今、スタートラインに立った。……だが、2人共今の模擬戦で課題が俺にはハッキリ見えた。2人はまだまだ未熟すぎるのさ。彼女らが単独で勇者として実戦を経験するのは危険すぎる。一昔前の勇者の独り立ちは成人と共にだった。しかし、経験を積む機会が少なくなり、一族が国家をスポンサーにする大勇者の家系でなければ支援すら幅を狭める今……。その大勇者の家柄すらこの有様。時代が移り変わるとはいえども……備えは必要なのにな。じゃなけりゃ諸刃の剣は自らを討ち滅ぼす。

 特に小国家である海の国の様な国はな。(シオネ)や兄達は危機感を覚えたんだろう。しかし、国主があれではな……。だから、俺は汐音を影から鍛えている。確かに俺は職人。勇者の教育は分を越える。……俺も兄貴も元勇者候補だったとしたら? まぁ、過去の話しさ。


「もぉー!!!! オーガさぁん? 何回目ですか!! おねーちゃんカンカンでしたよ!!」

「ん? あっ…やっべ」

「まぁた忘れて……って!!『ちょっと待ちなさいよ。なんで女が2人も居んのよ! アタシだって気軽にお茶するような仲じゃないのに!!』」

「済まないな、紅葉(モミジ)。勇者様2名のご来訪でな」

「汐姉は知ってる。ギルドからついでに依頼書渡すように言われてたし。……けど、そっちの子は?」


 心紅は慣れた相手や、気が強くてもズケズケ来ない相手ならば驚かない。だが、この紅葉のタイプは苦手なようだな。紅葉は良くも悪くも包み隠さず、素のままに接するタイプだ。心紅はこれまで無遠慮な態度で突っ込んでくるタイプの人種には出会わなかったんだろうな。紅葉もそこまで押し込んでは来ないんだぞ? 心紅が過敏すぎるな……これは。

 とうの心紅は一気に気持ちが揺らいだようだ。ビクついて気持ちの防衛よりも、逃避へ一気に気持ちが向いたらしい。ノーモーションでの高速移動をし、汐音の後ろに隠れた。汐音は確かに強い。それでも肉体派の勇者では無いから見えなかったんだろうな。汐音がその挙動に1番驚いていた気もするが……。心紅がお袋さんから受け継いだ力に素直に驚いている。彼女ら時兎の加護を受けた人物は、彼女らに関わる時間を歪ませる事ができるんだよ。時兎に愛される事で能力の幅は更に拡大する。この子は類を見ない程に相性がいい。さぁ、どうなる事やら。

 呆れて冷汗を流している汐音と紅葉。ん? 次は紅葉だぁ? そうだな。紹介するよ。

 紅葉は俺の工房から最寄りの冒険者ギルド、エウロペ山岳支部に務めている受付嬢の『見習い』だ。出身もこの付近らしいな。仕事の上ではこの子の姉である公孫樹(イチョウ)さんが受付嬢をしているため、その口利きで最近務め始めたらしい。だが、仮採用なのにも彼女自身の理由がある。

 この国にも色々な理由がある。この子はまだ状況としてもそこまで重たくはないが……。ちょっと前まではこの子は学生で、帰省する度にアルバイトをする感覚で俺とギルドの文通を助けてくれていたのだ。実はこの子は……。


「そうね、そんなにビビられてちゃ話もできないし、自己紹介するわ!」

「……(ビクッ)」


 露骨にビビってんなぁ……。心紅のビビり方に俺が驚いている。まぁ、仕方ないか。対人の経験があまり無い訳だからな。まぁ、そろそろ耐性つけてくれなきゃ困るんだがよ。

 リビングに面した中庭から箒ではなく、長杖に跨った紅葉が降りてきた時にはさすがに俺も驚いたが……。俺にも用事が無いわけじゃないんだぜ? だから、できれば先に連絡が欲しいんだ。定期メンテナンスなんかなら良くとも、急な持ち込みでは対応しきれない。もっと言えば俺は工房に仕事をくれるギルドからも直に仕事を請け負っているんだ。実はこれからも予定がつまっていた。まぁ、可愛い姪の頼みだしなぁ……。


「アタシは紅葉! 今年で17歳の元勇者候補生でぇす。よろしくっ!」

「……ぇ、えと。わ、私は……九代目時兎の心紅です。今年、20歳になりました」

「はぁっ?! 九代目時兎ぉ?! 王都の…超の付くお嬢様……って年上?!」

「ひぇっ!!」

「紅葉ちゃん、あんまり怖がらせないの。心紅ちゃんも大丈夫だから、ちょっと口調は強いけど優しい子だから……」


 戸惑ってる心紅か、面白い物を見たな。心紅は年齢や人間性を無視できる天然だと思って居たんだが……。どうやら違う様だな。これまでは上手いこと流して来ていただけで、自分に直接の干渉をしてくる相手には極端に弱いようだ。……違うか。無視する様に生きてきたのかもな。

 呆気に取られて椅子に座りながら簡単な説明を受けていた紅葉。紅葉はまだ恵まれた血筋で遠縁の一族が有名な勇者家系だ。だから王都の物では無くとも、国家の強い補助を受けた学舎に居たらしい。しかし、彼女自身には家柄や何よりもツテが無かった。だから、成績は良くとも卒業後の進路や立ち位置がまとまりきらず、勇者になるのは諦めざるを得なかったのだとか。

 この様に素質はあっても勇者にはなれない。俺は……見方によっちゃぁ勇者になんか成らない方がいいとも思うがね。だが、勇者は国から支援を受けられる。詳しい説明はしなくても理解してくれているとは思うが、勇者は公からの資金を得られる高給取りだ。……いろいろな事情があるのならば考えなくはない方法だよ。


「心紅ちゃん、この子は紅葉ちゃんよ。ギルドの受付嬢見習いで、今もお仕事の為にお勉強中なの」

「……ご、ごめんなさい。急な事で驚いてしまいました。紅葉さんも失礼しました。私、外に慣れてなくて」

「こっちこそごめんね? それに堅苦しいし紅葉でいーよ」

「は、はい」

「へぇ、綺麗な金色の目ぇ。確かに魔力はかなり強いわね。しかも、技力も持ち幅が高い……。それに……なんか……、オーガさんに似てる」

「それは俺の姪だからだよ」

「姪?! ってオーガさんってお幾つなんですかっ?!」


 だから…29歳だよ。兄貴と違って小柄だし童顔だからか? あんまり上には見られないよな、俺。下には見られるが……。

 駄賃の代わりに紅葉へも飯を出し、……いつの間にやら汐音が茶の準備をしている。最早勝手知ったる我が家だな。自分だけじゃ茶なんか飲まないから構わないが……。リビングの中心にある囲炉裏を囲み、紅葉の持ってきた封書に皆の注目が集まる。茶菓子を食べながらそんな話をし、ギルドからの依頼についての話題が飛び出した。


「紅葉ちゃんは何で見習いなの?」

「あぁ、気になるの? アタシは受付嬢に必要な書士や経理なんかの資格が無いの。だから、見習いって期間を踏んである程度の試験を免除してもらいながら勉強してるの」

「へぇ……私、読み書きも怪しいかも」

「お前は特殊だからな」


 ギルドに来る依頼は様々だ。お金の無い人々が村単位での依頼をしてきたり、もちろん個人での依頼もある。大口の依頼の例で言えば公共工事や祭事なんかの公募もあるし、地方の大規模な害獣駆除や過疎地域の農業支援などもするのだ。基本はギルドの庁舎へ冒険者が出向き応募したり、ギルドの推薦から斡旋を待つ。……これは表向きの依頼が提起、受理、公募・斡旋、実施される例だ。ギルドが受理する依頼には表に出せない依頼もある。

 これこそギルドが自治に関与しない事で得られる特権だ。もちろんそれなりの金も動くし、ギルドの影響力が強まるならば……危ない橋も渡る。そういう場合には冒険者ギルドに登録されているエージェントへ個別に斡旋が行われるのだ。勇者にもランクがあるように冒険者にもランクがあり、受託可能な依頼もそれらが影響するのだ。

 そぅ、これは……。そういう依頼だ。封書を開け、そこに居たメンバーで話し合う。本当ならば紅葉と心紅には見せてはならない。シャットアウトするべきだが今更だしな。

 汐音と俺がセットで呼ばれる場合には嫌な予感しかしない。これは絶対に敵対国の『勇者』絡みの依頼に決まっている。しかも『国王軍』から何らかの息がかかったものだろう。だから俺がギルドの庁舎へ行けなかったため、早馬代わりに使われている紅葉までもが動員されたのだ。紅葉は元勇者候補生で学舎も卒業している。ある程度の戦闘もできる。それに移動魔法にかけては一級品だ。敵国の隠密部隊などに重要な手紙を渡す邪魔をされてもある程度は対応できる。ギルドも彼女のそこを信頼して雇っているらしいし。

 ……待てよ? 俺が関わるってんならどうせ秘密裏な任務になる。なら、『旅』を早めようか。デモンストレーションも兼ねてな。都合のいいことに俺の周りに集まる有能な卵達が次々に来てくれている。……今日の予定じゃぁあと2人ほどくるからな。内1人は立場が微妙に異なるが。


「しぃーしょー!! 待てども待てども来ないし……って何お茶してんすかぁ!」

「済まないな、オニキス。予定が立て込んでたのに急な持ち込みや模擬戦イベントが勃発してたんだ」

「オーガさん? 私達のせいにしてはいけませんよ? いい大人がみっともない。可愛らしい姪様がおいでになったのに……」

「元はと言えば、心紅が急に来たのが事の発端なんだがな」

「ひぅっ……」

「……は、八代目時兎?!」

「この展開も2回目だな」

「ですね……」


 五月蝿い方が先に来たな。

 コイツは……かな〜り歳の離れた俺の後輩だ。俺の母校でもあり、前の勤め先である工房学舎(クラフト・アカデミー)は本来なら王都のエリート中のエリートだけが入学できる場所だよ。ただし、例外中の例外がこの子だ。この子は出身がこの山間の村。本来ならば試験すら受けられない。だが、……とある理由があり一次試験を受験できた。更に二次試験、三次試験……、最終試験すら通過したのだ。そこまでやれてしまうと実力は本物だ。いくら国の機関でお役所的な処理をするとはいえど……、他を寄せ付けない成績優秀者を不合格にはできないのだ。……その辺はアホみたいに正直なんだよなぁ。あの学舎は……。

 異例の入学に加えてこの子はストレートでの卒業。一芸でも秀でれば学舎では落第などはあまり無いはずなのだが……。俺の年代でも何人もの落第者を見てきた。それだけ物作りでの独立と言う概念は難しいという事だ。それに学舎自体は苦労はせずとも、世間との温度差は更に過酷なものだ。俺も実際に苦しんだしな。

 ……この子もストレートに卒業できたはいいが、やはり家柄が無いことから王都では見向きもされ無かったとのことだ。今の世の中では技術や創作性の力は正当に評価されない。……かく言う俺も兄貴や多方面の学者達が認めなかったら、そのまま影に隠れる運命に変わりは無かった。運が良かっただけだ。

 問題はどこからどう突き止めたか知らないが、それを打開したくて俺の所に来たんだろう。……理由も安易に想像が付く。学舎を卒業した工房主、王都から離れている。こんな条件に加えて彼女の地元近くに工房を構えている。好条件すぎるよなぁ。


「何回か言ったが…俺は弟子はとらんぞ」

「アタイが女だから?」

「違う。お前の持ち込み作品でお前の力は評価した。だがな、俺ははぐれの鍛冶師だ。俺なんかに弟子入りした所で先が見えてる。お前の未来を潰すのは本意じゃねぇ」

「……あ、あの」

「何だ? 心紅。俺はオニキスと話してるんだが?」

「も、申し訳ありません。叔父上……。叔父上は……誰にも貴方の素晴らしい技を伝えず、絶やしてしまうおつもりなんですか?」


 心紅の一言で2人に変化が……。まずは同じ落ちを踏んだ。

 俺と心紅の関係に驚き、次に各々の反応を見せる。何回かそれに似た言葉は出てたはずなんだがなぁ……。俺はこの子の叔父だ。

 別に俺も人生を悲観してる訳じゃない。だが、現状では俺がしてやれる事は僅かだ。ガキの面倒見んのも嫌いじゃねーけども。俺の経歴は弟子にした後継達を不利にしてしまうかもしれない。その不安定さが俺には気に入らないんだ。せめて、俺がこの両腕でお前らガキを守ってやれる様な状態ならなぁ……。もう少しだけ、時間があったらよ。

 評価されんのは素直に嬉しい。だが、現実は少し違う。心紅の双刀は言わずもがなだが、汐音の薙刀、紅葉の長杖も俺の作品。これまでに作り貯めてきた極1部の作品だ。俺の勇者関係の作品はあまり日の目を見ない。いいや、見せていないのだ。それには俺なりの理由がある。俺の主義と言うか、誓いがそこにかかってくるからだ。

 俺は……俺の両手に余る事はしない。

 せっかく作ったから……俺も日の目を見せたかった。だが、俺の武器を使える現代勇者はほとんど居ない。勇者は確かに高いポテンシャルを持っている存在だ。勇者……力を持った存在にも強さがある。……そんな常識を打ち破った奴も……俺の隣で悲しそうにしてるんだがな。


「……はぁ」

「オグさん?」

「何度も言うが、俺は何においても弟子はとらん」

「……でもっ!」

「汐音! 俺がSランク勇者の資格を持ってっから来たんだろ?」

「はい……」

「紅葉! 俺が魔鋼や魔法の回路研究に莫大な知識を持ってる事を……学舎で調べあげたんだな?」

「うん……」

「オニキス! 学舎のアホどもや気位や権威ばかりを気にする上部の奴らを見返したいのは解る。だが、職人はそうあっちゃならねぇ」

「あぃ……」


 そして、最後の来訪者が来ていた。俺にも気づかれて居ないと思って居るようだ。あのガキは……。俺が王都にいる時に付き合いのあったとある御仁の一人娘で……今じゃ身よりもないから俺が面倒を見ていた子だ。

 俺が王都を離れる原因になった事件に巻き込まれたと言っておく。俺が様々な仮面を用意して生きていく事になったのはまさにこの子の父親が原因だったのだ。それをどんな風に思って居るかは定かではないが、物心着いた頃には俺にへばりついていて……同族だからたまに妹とか娘と勘違いもされる。


「エレ、出てこい」

「お気づきでしたか。父上」

「ちっ、父上?!」

「はぁ……周りを困惑させるような虚言を撒くな。俺は未婚だし、浮いた話は無かった。もっと言えば今の所は世帯を持つ気はない。……この子も冒険者ギルドの関係者だよ。紅葉と汐音は知ってるだろ? 濃霧の切り裂き魔……」


 途端に2人は武器を構えた。それに向けて攻撃の初動を見せようとしたエレを俺が止めたつもりだったんだがな。先に心紅が動いていた。その心紅が見えていなかったのだろう。エレは疑問符と……何故ここに心紅が居るのかを必死に考えているようだな。それにおそらく、エレは心紅ではなくその母であると思っているだろう。その辺はまぁ、後から落ちを拾うとして……。

 役者は揃った。

 俺は単独行動を好む。いざと言う時に仲間が居れば心強い時もあるが、場合によっては仲間を巻き込み危険に晒したりしてしまう。ましてや守りきれないなんて虚しい事実は作りたくない。だから、この女性勇者の卵達には旅をさせようとも思う。心紅を目にした直後から怯えだしたエレはもう少し手を施さねばならないかも知れないがな。

 1人で使うには広い家に今日は珍しくたくさんの客人が来た。丸め込んだりいろいろするのは大変そうだが……上手く行けば俺にもいろいろな利益になる。勇者は……諸刃の剣。俺がそうであったようにな。


「役者も揃った」

「え?」

「お前らには冒険者ギルドに通して若年勇者パーティーを組んでもらう。その上で……経験を積んで来い! 今のお前らに俺の位置は遠すぎる。……俺ん家を拠点に活動しながら、お前らに足りない物を培うんだ」


 5人。特にエレは訳も解らずって顔をしたが……。とりあえず、今日の予定は終わりを告げた。さて、明日から忙しくなる。

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