last case 決着編 2
カチカチとトリガーの音が空しく響く。
「ボス!ヤバイ弾切れだ!」
優作はそう叫び声を上げる。戦線の一画を支えていたM60の制圧射撃が沈黙したのを確認した、敵はその穴を突かんと一気に進攻を開始する。
「くっ!ええぃこの!洞ノ助!術符も底が見えて来た!大技はそう何度も打てんぞ!」
天山が遠距離攻撃を切り上げ白兵戦の準備を始める。
「ブヒー!ブヒヒー!」
野生に帰りつつある豚山3兄弟は、防御結界を張りながらも隙を見て続けていた投石攻撃の弾切れを訴える。
皆、限界が近づいていた。
そして、その時を待っていたとばかりに、一斉攻撃が仕掛けられる。
「Go!Go!Go!猿共の抵抗はこれで終わりだ!」
小隊長は、先頭で大きく腕を振り一斉攻撃の指示を出す。
「まったく、御前のお遊びも困ったものだ、こんな猿共を相手にするのに一々買収工作など仕掛けることは無い、この様に実力でもぎ取ってしまえばよいのだ」
数十名の戦闘員が、近代銃火器や古典的な白兵武器を手に、河童家に進攻する。その様はまるで迫り来る津波の如くだった。
散発的な攻撃では、その進攻を抑える事など出来ない。大河に一石を投じても、所詮表面に波紋が浮かぶだけなのだ。
だが、投げられたのが爆発物ならば、魚位は浮かべる事は出来るかも知れない。
「優作!アレを使え!」
「了解です!」
洞ノ助の合図に優作は切り札のスイッチを押す。
ピッ、と言う。軽いスイッチ音共に、河童家の庭石がドスンバスンと次々倒れ、そこから幾つもの黒光りする円柱状の物体が顔を覗かせた。
「目標的敵中心!カッパファーム最終防衛兵器全弾発射!!」
轟と、地響きを立て。河童家の庭を爆炎が紅に染める。
これこそは、河童家の誇る害獣駆除の最終兵器、AGM-114ヘルファイアである!
着弾点より発せられる、光と熱風が洞ノ助たちの頬を焦がす。常人では目を開けている事さえ困難な、超々単距離爆撃の中でも、洞ノ助と天山はその忍者視力でもってはっきりと光の中を観察していた。
「見たか洞ノ助」
「おう、見たぞ天山」
二人は見た、しかと見た。
こちらへ散開して進攻していた敵が、着弾の前に態々密集体系に戻ったのだ。そして爆煙が晴れた後に現れたのは殆ど無傷の敵陣営。
「やはり、奴らは特殊な防御法を用いておる」
天山が忍者アイを光らせながらそう言った。天狗忍者は視力が命。千里眼の術により、爆炎の向う側を見渡してそう結論を述べた。
「ああ、だがその効果範囲と基点は把握できた」
洞ノ助は前方に何かの膜を投影しながらそう言った。河童忍者は水術を得手とする。水遁空気羽織の応用で張った特殊なレンズ越しに一部始終を見て、そう結論を述べた。
「おまけに、それを発動中は此方への手出しや移動も出来んと見た」
「うむ、利点も欠点も分かったが……」
「ああ、此方が劣勢なのは変わりない」
敵は唯の木偶と言う訳ではない、1対1ならそこらの雑兵になど先ず遅れは取らないが、これまでの敵の動きを見るに敵は精鋭。詰められればいずれ数の暴力で敗北は必至となろう。
ジリ貧の状況を覆す一手が必要だった。
その時だ!
天を舞う2羽のカラスの姿があった!
「社長!間もなくポイントです!」
爆音轟くヘリの中、操縦者が後部座席に聞こえる様に声を張り上げる。
「了解!貴方はこのまま帰投してよろしくってよ!」
「ラジャー!それではご武運を!!」
「ええ、ありがとう。それじゃあ行くわよ明」
「了解です!翔子様!」
そうして、2羽のカラスはパラシュートも付けずに数100mの上空から飛び出した。
「「天狗忍法百符舞空術!」」
幾つもの護符が天狗の翼を象る。漆黒の翼は雄々しく広がり風を掴み、一羽ばたき。そののち二人は翼をたたみ、自由落下に任せて大地を目指した。
「天狗忍法、招雷超激振!」
「天狗忍法、招雷大激振!」
ズガガガガンとステルスモードで上空より接近し、行きがけの駄賃とばかりに振りまかれた雷が敵陣で炸裂する。
「お父様!ご無事で!」
「翔子!どうしてここに来た!」
ハラハラと、翼の役目を終えた護符を散らせながら、翔子は天山の元へと駆け寄る。
「あら?これも仕事の内ですわ。私は倫太郎君に敵の正体を探る事を依頼されましたの。それを知るには、実際にこの目で見るのが一番ですわ」
翔子は不敵に笑ってそう答える。
「そっ、そうでございます、御屋形様」
ひいふうと、いきなりの大技の連発に明は呼吸を見だしながら追従した。
「かっ!まぁいい。お前の仕事だ好きにしろ」
「ええ、私は何時でも自由にしていますわ」
翔子ははらりと自慢の髪を流した後、敵陣を睨みつける。
「敵は中々のやり手ですわね」
今のは最高のタイミングで最大の攻撃を叩き込んだ筈だった。だがしかし、敵に与えた損傷は10名ほどを再起不能させただけ。今までの攻撃で与えたダメージを含めても未だ30名程度は健在である。
「ああ、だが君たちのおかげで道は開けた、やはり防御術を発動していない間に技は通る」
洞ノ助は感謝の言葉を述べつつも、敵陣を睨みつけ構えを取る。
「そうじゃな、やはり分散させて確固撃破を狙うのが上策か」
「いやいや、御屋形様!敵との距離は目と鼻の先!そんな事不可能でございます!」
「そんな事は分かっちょる!じゃが押してダメなら切り開くじゃ!
洞ノ助!貴様は下がっちょれ!敵の目標は貴様じゃ!貴様が取られればこの戦は負けじゃ!」
「むぅ……」
「そう言う事じゃ行くぞ翔子!敵陣を撹拌する!」
「はい!お父様!」
親子二人が決死の覚悟を決めて特攻しようとしたその時だった。
敵陣の背後からけたたましい自動車のエンジン音が鳴り響いて来たのだった。




