last case 探索編 5
「にゃにゃ!やっぱりあの男の言う事に従っても碌なことは無いにゃ!!」
姫は闇夜にまぎれてやって来た、黒ずくめ連中を相手に孤軍奮闘していた。そう、孤軍奮闘である。
敵の総数は4人1班の2班、総勢8名もの大所帯だ。いくら本城宅が一般より少し広めの高級住宅としても、押入り強盗には過剰とも言える戦力であった。
その上、戦力にはプラスαがあった。
「はぁはぁ、乳尻太ももーーーー!!!」
「きゃーーーーーー!!!」
「あの馬鹿はにゃんで速攻操られてるのかにゃ!?」
もともと動きが遅く力に任せて戦うあかなめの戦闘スタイルと、特殊効果の一撃に掛ける襲撃者との組み合わせが最悪だったこともあっただろう。
この家は私が守るとばかりに、襲撃者の矢面に立ったあかなめは襲撃者の一人が持つ禍々しいナイフがかすっただけで理性を失い、目を回しながらも本能の赴くままに、姫の豊満な肉体を思うがままにむしゃぶりつくそうと、舌を伸ばしてくる。
精神効果を持つプライズを持つ敵は独りだとしても、他の者も曰くつきのオーラ溢れた武器を振るってくる、ナイフにレイピア、ブロードソードなどの、呪いのアンティークが縦横無尽に乱れ飛ぶ12畳の由紀子の私室を、姫は彼女を守りながら立ち回る。
「んにゃ~!こんにゃことになるなりゃ遠距離攻撃を磨いておけばよかったにゃ~!」
後悔後に絶たず。姫の戦闘スタイルは、持ち前の身体能力を生かした、ヒット&アゥエイを主体とするスピーディーな戦闘だ。ご近所さんの耳目を意識して銃火器などの遠距離攻撃手段を用いていない、襲撃者と相性は良いと言え、一撃でもかすってしまえばそれで終わりな今の状況では分が悪すぎる。
「キャーキャーキャーーーー!!!」
「にゃー!うるしゃい!お前は黙って丸まっとくにゃ!!」
襲撃者はかすればOKとばかりに、速度を重視し出鱈目に剣を振るう。いや、致命傷を負わせてしまえば面倒くさい事になるので必然的に素早く浅く攻撃しているのだが、それ故に、高速で繰り出される攻撃は、一対一ならまだしも、現在の状況では姫の身体能力をもってしても、捌くので精一杯であった。
「にゃッ!」
襲撃者たちは愉悦の表情を浮かべながら、いたぶる様に攻撃を続ける。既に彼らは目的を達成している。それは、彼らの1人が確保している、由紀子の母である咲の存在が物語っている。
咲を手中に入れた時点で、彼らの勝ちは確定である。後は日が変わり証券会社が開けば洗脳した咲を道具に株券を入手するだけ。この戦いは唯の余興である。
株式のルールなど知らない姫にも、その余裕の表情から勝負の流れは察していた。そのことが更に姫をイラつかせ、振るう爪の力みとなる。
真っ直ぐに突きこまれるナイフを蹴り上げると同時に、横なぎの剣を宙返りでかわし、逆から突かれるレイピアの一撃を手の爪で払い、足元を狙って薙ぎ払われる短槍の上に立ち、ボウガンの一撃を尻尾で弾き、あかなめの舌を蹴り飛ばす。
曲芸状態のいつ果てるとも知らない一瞬の攻防を永遠と続ける姫の集中力が途切れる瞬間が訪れた。
「にゃッ!?」
床に転がる家具の破片に姫は足を掬われ、バランスを取るため伸ばした手をレイピアが霞める。
「にゃにゃ!?」
ズシンと、霞めた左手の重さが増す。ほんの少しの切り口なのだが、その衝撃が体中に伝播する。左手は自由を失い、熱をもって痺れに支配される。
「蜂の毒かにゃッ!」
そのレイピアは、蜂の概念が込められたプライズだった。その一刺しを受けた姫の左腕は一瞬で使い物にならなくなってしまっていた。
「乳ッ!尻ッ!太ッ!ももーーーーッ!!!」
バランスを崩したたらを踏む姫の体を貪らんと、たっぷりと唾液を纏ったあかなめの舌が振るわれた、その時だった。
「かかか、なんとか間に合った様じゃのう」
突如室内に乱舞した葉っぱが壁となり、その一撃を受け止めたのだった。
「にゃ~、来るのが遅いぞこの狸」
「かかか、そう言うでない。それでも特急で駆けつけたのじゃ」
そこには、月夜をバックに不敵にほほ笑むマミ蔵(case9)の姿があった。
「ちっ!悪い予感が大当たりだ」
博士の研究所で解析を終えた倫太郎と晴彦は和孝を家に送った後、河童探偵社へと戻っていた。
一息つこうと、煙草に火をつけた倫太郎のスマートフォンに送られてきた通知を見た彼は、吐き捨てる様にそう言った。
「どの予感なの倫太郎君?」
「念のために援軍を要請していたマミ蔵からの連絡だ、例のあかなめ娘の所に襲撃があっているってよ!」
倫太郎はそう言い、スーパーカブのキーを取る。問題は襲撃が有った事だけではない、こちらが防御を固めているのを想定、あるいは把握したうえで、それを優に上回る戦力を回してきたことだ。
「了解、僕が送るよ。そっちの方が早い」
晴彦は、カバンから愛車のキーを取り出しながらそう言った、その時だ。再度倫太郎のスマートフォンが振動した。
状況に変化があったのかと思い、一旦はポケットにしまったそれを取り出した倫太郎は画面を確認した、そこに表示されていたのは、鈴子からの電話だった。
「どうし――」
「若!若!大変なの!カッパファームが!大規模な襲撃を受けてるの!」
倫太郎の言葉を遮って発せられた鈴子の叫びが、夜の事務所に鳴り響いた。
「クソっ!」
メキリと倫太郎は机に苛立ちをぶつける。
「いやまったく、これは困ったね。取りあえず、本城家には僕が向かうよ。一般人に手を出すのはルール違反だって事を訪日客に教えてくる」
「ああ頼んだ」
「了解、これもお仕事の内さ、気にしないで」
ビルの階段を駆け下りて、通りに出た二人を待っていたのは1台のタクシーだった。
「おい倫太郎!お前ん家が買収に有ってるってのは本当かよ!」
そして、そのタクシーから身を乗り出して大声を上げる、朝倉義明のと助手席に座る半透明の女性、秋月美紀(case3)姿があったのだった。
とりあえず、全caseの主要ゲストキャラ登場!




