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忍者探偵・河童倫太郎  作者: まさひろ
真(ちぇんじ)賢者の石を追え!
31/68

case6 導入編 1

「それでは、定例会議を始めよう」


 某所のカラオケボックスの一室。数人の少年たちが音と光の洪水の中に集っていた。

 温度を取るのは、髪を金色に染めた、軽薄そうな少年だ。

 しかし、その浮ついた身形とは真逆の、落ち着いた、静謐な空気を身に纏っていた。

 そう、その全てを見通すような目は、正に『賢者』の如しだった。





 彼の名前は、平和通和孝《へいわどおりかずたか。とある博士の狂気の実験の副産物として誕生した、人造賢者である!


 その実験とは、「この世で最も性欲の強い中学二年生男子の賢者タイムを利用し、それを分析、凝縮、圧縮すれば、人の三大欲求から解き放たれた賢者を作れるのでは?」と言う博士の思い付きから始まった。


 その実験はあろうことか天文学的確率で成功を引き当て、博士は目的であった、賢者の石の生成に成功。実験に賛成した哀れな被害者の中でも、特に性欲が強く、特に頭の悪い(すなお)な数人が賢者へとクラスチェンジしてしまった。


 まさに、遊び人は賢者への近道であった事を証明してしまった彼らは、自らに宿ってしまった力を悪用される事を恐れ、ちょっとした騒動を起こした後に、博士に、賢者の石生成実験の凍結及び破棄を取り付け、全ては闇に葬られた。

 そのはずだった!





「やはり、誰かが嗅ぎまわっているようだ」

「その様だね、このままでは博士の身に危険が及んでしまうかもしれない」

「それだけは、避けなきゃいけない。望んでこうなったとは言わないが、彼女は僕たちの生みの親、彼女を守るのは当然の義務だ」


 賢者となった彼らの生活は激変した……、と言う事にはならなかった。自らの能力をひけらかすのは賢者の振りをした愚者である。能ある鷹は爪を隠すと言う故事に習い、彼らはその本性を隠し続け、可能な限り。元の生活をなぞって暮らした。

 それでも、漏れ出てしまう、賢者オーラは隠しきれるものでなく。


親や教師、同性からは。

「最近真面目になったな!」

異性からは。

「時々見せる透明な眼差しが素敵!」


との好評を貰っていたが、ある意味で残念ながら彼らは賢者である。周囲の評価や異性からのアプローチ等に、一喜一憂する様な精神状態からは程遠い高みにあった。


 そんな彼らの孤高の精神がアラームを鳴らすのが、今回の状況であった!





「では、ケースE015だね」

「資料は?」

「もう纏めてある」

「対価はどうする?」

「FXで作った活動資金から、適正価格を払う」

「やはり河童倫太郎(かわどうりんたろう)《かれ》よりも、豊前翔子(とよまえしょうこ)《かのじょ》の方がいいのではないのか?」

「確かに彼女の会社の方が手は広い、事態は確実に収まるだろう。だが、秘密を知るものは少ない方がいい」

「そうだな、その点彼の会社は良く言えば少数精鋭。秘密が広まる確率はぐんと下がる」

「リスクとリターンかしょうがない事だね」

「そうだね、多少頭が良くなろうと、全ての確立を操作する事など不可能、精々が小金を稼ぐ程度さ」

「それにしても、勝手に金策は不可。まるで新選組だね」

「事実それを参考にしたからね。まぁ金策してどうこうしようと言う欲望も無いが」

「最高峰の知力と引き換えに三大欲求から解き放たれた今の状況が、賢者と言うにふさわしいか、時には思う所もあるがね」

「僕もそう思わないでもないが、元に戻りたいと言う欲望も無くなったからね」

「違いない」


 人造賢者である、彼らの集い。通称「賢者の会」の集いはこうして幕を閉じた。

次に幕が上がるのはこの物語の主人公、河童倫太郎の事務所である。



レビューを頂いた記念に賢者軍団再登場。

またしても、史上最高にイカ臭い賢者の石をめぐる戦いが始まる!

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