表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奈落の闇の中でも確かなモノ  作者: 杜若 白花
7/56

 夕食までまだ時間があるから、夜行に構ってばかりでは私の式神が寂しがるだろう。


瑠璃(るり)


 一声呼べば、直ぐに何もない空中に眩い白い光と共に現れたのは、(らん)という、神獣とか霊鳥とかいわれている、術師の分類では神霊とされる存在が現れた。

 瑠璃は直ぐに私の指に留まって、美しい声で鳴いている。



 この子はとても小さい。

 日本で一番小さい野鳥だと言われるキクイタダキ位小さい。

 


 正し見た目は南米の鳥のケツァールに似ていると思う。

 もしくは北海道のシマエナガ。この鳥には敏捷な所も似てるかな。

 でもキクイタダキに似ていない訳じゃないとも思う。小さい所とか、俊敏な所と体型等。



 瞳は漆黒で真ん丸。

 羽の色は野鳥のオオルリより綺麗で、蝶のレテノールモルフォみたいな鮮やかで光輝く青が大半だ。他の色は紫に白、銀とか赤や金、翠。

 瑠璃には青色の長い尾羽があって綺麗だ。

 それ以外にも飾り羽が長くて、身体の三倍以上ある。

 飾り羽は伊藤若冲の鳳凰みたいな感じでとても豪華。



 頭の上にも見事な飾り羽。

 嘴も足の鉤爪も猛禽類の様で鋭い。小さいのだけれど。

 ハヤブサ系の猛禽類ではなくて、翼の感じから察するに鷹系の猛禽類って感じだ。



 身体は丸くて小さく、ふわふわで本当に可愛い。でもとても綺麗。

 横顔は凛々しい感じなのに、正面は本当に愛らしくて可愛いのだ。

 一粒で二度美味しい、ってやつだな。



 声も凄く綺麗である。この世ならざる感じというか……

 普段はピッと鳴いていたりする。

 その声も和音がっかっているというか、不思議な感じ。



 この子は私にとって、とても特別な存在だ。



 術師の家系の子は一族を守護している神様達や家の方針とかでも違うのだが、だいたい四、五歳位から式神と絆を結ぶ。

 何故かというと、力が強ければ強い程、術師の子供は美味しく、食べた相手の力を爆発的に高める。

 だから、その子供を一番に優先し、守護する存在が必須なのだ。



 とはいえ、幼い者の式神はたいてい幼い式神になってしまう。

 幼い式神はそれはそれで危ないのだが、一族の守り神がいれば、それ程でもないし、成長すれば問題は無くなる。



 一族の守り神は、色々制限がかかっていて力を思う存分に揮えないのも、式神と絆を結ばなければならない大きな要因だ。

 それでも生まれて何年かは神様達も守護が手厚く出来るのだが、色々制限があって、大きくなるにつれて難しくなる。



 式神の力は術師の力を増幅させるのも、式神を早く得る必要がある理由の一つだ。

 一緒に成長していけば、双方の力がとても高まるから、早いうちに式神を得るのは当然の事なのである。



 私が出来損ないだというのは、四歳になる頃には分かっていた。

 一応、朧とはいえ霊的な存在は見えるから、普通の人よりも霊力はあるだろうと判断はされた。



 霊力が標準より強いという事は、餌として優秀だという事でもあるから、心配した祖父は、私にも早めに式神を得られるように手配してくれたのだ。

 これは式神の影響で、潜在的な力があれば目覚めるかもしれないという配慮でもあったらしい。



 けれども、初めて儀式を行った五歳から、私は何年も式神を得られなかった。



 何度霊的な存在を喚び出そうとしても、ダメだった。全く現れないのだ。

 最も召喚能力に優れた人が何度やっても無駄だった。



 本来、こんな事はあり得ないのだという。

 私は一応そんなに強くはないが、治癒能力と浄化能力を持っている。

 だから、術者の下位よりマシなはず、らしい。



 だというのに、誰も私に会いには来てくれなかった……



 十歳になったある日、何度目か分からない召喚の儀式で、執り行ったのは、これまた何度目か分からないお祖父様だった。

 そして、奇跡が起きたのだ――――





 あの日から、瑠璃は私の側に居続けてくれている。

 どうして私を選んでくれたのかは本当に分からない。

 この子は話せないから。



 それはそれは見事な澄んだ綺麗な声で鳴くが、人の言葉は話さない。

 神霊は人と会話するら事もあるらしいのだが、この子はしない。



 まあ、式神は話さないものもいるのだし、意思疎通は可能だから問題ない。

 言いたい事もまあ分かるし。



 本当に、私みたいな出来損ないに、何故高位神霊が絆を結んで式神になってくれたのか、周りの人達も現在進行形で悩んでいる。

 瑠璃のおかげで、どうにか私はそれなりの扱いを受ける事が出来る様になったので、本当に助かったし、私を選んでくれた事が何にも勝る程、嬉しい。

 瑠璃も私といて幸せを感じてくれたのなら良いのだが……



 私を庇うお祖父様達に、迷惑が掛かりにくくなったのは本当に良かった。

 瑠璃に相応しい相棒に成りたいが、能力はからっきしで、守ってもらってばかりで申し訳なく思っている。



 祖父や従兄弟達を始め、私を助けてくれていた人達にも感謝している。

 伯父や伯母を始め、何度も召喚の儀を行う事を反対していた人達がいたのは知っているのだ。



 それでも行ってくれたのは、本当にありがたいと思っている。

 どう恩を返して良いやら分からない。





 夜行は私の膝の上で丸くなって撫でているからか、気持ち良さそうに目を閉じている。

 瑠璃は肩に留まって歌を聞かせてくれている。

 うん、幸せだと実感する。



 私は恵まれていると思う。

 何不自由なく育ったし、愛情を掛けてくれる家族はいるし、気にかけてくれる友達もいる。式神の瑠璃だっていてくれる。



 だからこれ以上を望むのは烏滸がましいのは分かっている。

 それでも従兄弟の陣と昔の様な関係に戻りたいと思うのは我が儘だろうか。



 考えていたら落ち込んでしまった。

 気遣う様に瑠璃が空中に浮遊し頬をツンツンしている。

 夜行も目を覚まし、こちらを見つめている。

 ごめんね、心配かけて。微笑んでお礼を言う。





 何故霊的な存在である夜行や瑠璃が私にも見えるかというと、彼等が実体化してくれているからだ。

 これは神々や神霊、精霊、妖達には可能だ。

 精霊や妖は下位の存在だと、実体化して普通の人にも見えるようにするにはちょっと手間がかかる。



 霊的な存在が実体化していない状態だと、私は朧にしか見えない。

 つまり、霊的な存在が実体化さえしてくれれば、姿は普通に見える。

 まあ、霊力が無い人もそうだったりするのだが。

 

 

 とはいえ、普通、人の霊は実体化とか恐ろしく強くないと不可能だから、まず見えない。

 大体、人の霊に実体化するメリットとか無いと思う。

 それなりに強い霊なら、憑りつきさえすれば零感というまったく霊能力がない人以外見えるらしいし。

 

 

 そう、普通の人も少ない量ではあるが、霊力を持ち合わせているのだ。

 だから周波数が合えば、霊力があまりない普通の人でも霊が見える。



 霊が見えたという人の大半は、霊力が強いから見えているのではなく、周波数が合ったから見えているのだと言う。

 あと、見えていると思っているが、単なる錯覚や思い込みの産物も多いらしい。

 

 

 でも私は周波数も合わないのか朧にしか見えない。

 何故だろう。

 物心ついてからの最大の疑問だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ