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奈落の闇の中でも確かなモノ  作者: 杜若 白花
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 桜吹雪が舞っている。

 その光景に目を細めながら、春の気持ちの良い風を教室の窓辺で浴びていた。



 風で長い髪が微かに揺れる。

 桜の花弁が舞い込んで、何とも幻想的だ。



 本日はこの瑞峰(ずいほう)学園高等部の入学式だ。

 とはいえ私は中等部からの持ち上がりではあるのだが。



 更に言えば幼稚舎から通っている為、もうかれこれこの学校に通うのは十二年目に突入した。

 新米とは言い難い高校一年生ではある。

 だがまあ、高等部の校舎は中等部とは離れた場所にあるから、初めて見る訳だが。



 それに、本日からこの高校は今までとはガラリと変わる。

 否、変わらざるを得ない、と思う。







 数年前の冬、太平洋を挟んだとある大国の、カリブ海に面した州の最大都市圏が全域にわたり、霊的な大規模災害に見舞われた。

 同時多発テロよりも多い死傷者が出た大惨事となったのだ。



 その霊的な大規模災害の中、撮影された映像や写真は数多く、直接霊的な存在の被害に遭った人達も多数で、とても隠蔽しきれない為、先進七か国にEUを加えた国々、それからとある三大宗教の内、一つのトップが共同で霊的な存在は実在すると発表した。

 元々、各国の裏ではそういう霊的な存在は認知されていたし、それ相応の対策機関等も秘密裏にではあるがあった。




 そういう秘密の存在達は公になってしまった。

 まあ、ならざるを得ない、が正しい。

 全てが公になったとは思えないが……



 これが凄まじい大騒動になったのだ。

 否定派やら肯定派やら入り乱れて大論争。



 収拾がまるでつかない。

 ヨーロッパやアメリカ等は、オカルトを学問として確立し、きちんとした専門機関とかあるそうだから、まだ増しだろうか。

 我が国なんかは酷いものである。

 

 

 だがそれでも確かな事がある。



 普通の人は不安だろう。

 だって霊的な存在が実在するならば、どうやって対処したらよいのだ。

 それこそ警察や軍の様に一般の人々を守る存在がいなくては、誰しも恐ろしくなるだろう。



 そこで、今まであった組織を解体、再編し、神秘省が日本に出来た。



 海外でも色々急ピッチで進められたみたいだ。

 特に霊的な存在は実在すると公式発表した国々は、それこそ寝る間も無い程慌ただしく組織を運用できるよう整備した。

 これに日本の術師や術者達が暗躍したとかしないとか色々聞いたが真実は分からない。


 ・

 術師は大和に組み込まれてから政治には基本的に不介入だったが、方針転換したのかなぁ……?

 大戦中からずっと理不尽に扱われて被害が出ているから、とうとう堪忍袋の尾が切れたのだろうか……?



 神秘省の主な職員の人達は、日本に存在する霊的な存在と長年対峙してきた、術師と術者である。

 私達とは別に霊的な存在を対処していたかつての神祇省や陰陽寮、僧侶の人達等に修験道や呪禁師等、または西洋ならばエクソシストやゴーストバスターとでも言うのだろうか。

 そんな人々とは私達は根本的に、とは私達の主観であるし、彼等にしてみればちょっと違うとの事だが、兎に角主観ではかなり異なるのだが、かつて大和と敵対していた関係で、今回面倒事の矢面に立たされたらしい。



 彼等との違いは、術師は最低でも二体の式神というモノを扱える存在である事だ。

 術者は一体の式神を扱う事がやっとの者が多い。

 我々と式神になってもらう方法が違うのであって、術師や術者以外も式神を持っている人もいるという話だ。

 まあそれ以外にも違いはあるのだが。



 術師も術者もそれぞれ基本的に先祖代々の職業だ。

 表向きは神主だったり公務員が多いが、他の職業を持っている者も多かった。



 術師は一族の長だったりする事も多い。

 対して術者は一族の人間でも力の弱い者である。

 そして術師の家系も術者の家系も、魔眼と呼ばれる、視ただけで相手に何らかの影響を与える事が出来る力を、代々それぞれの家系ごとの特色有りで持っている事が多い。

 それ以外の特殊な能力も家系ごとに色々あるので、その一族ならこういう特色だと分かりやすいと個人的には思う。

 性質や能力が大体一族で固定されている場合が多く、一種の家紋になっている。



 そんな彼等が通う学校、それが私の通う私立改め国立瑞峰学園だ。





 教室の雰囲気はピリピリとした緊張感に包まれている。

 お互いに触れれば静電気でも受けそうな雰囲気だ。

 入学式もまだとはいえ、中々他の人とも会話できない人が多い。

 仕方がないとも思う。

 彼等は元々術師とも術者とも関係のない一般人だったのだから、術師に対して緊張するのだろう。



 神秘省の人間はまだまだ足りない。

 間に合わせで何とか運用と言っても良い。

 何せ日本全国をカバーしなければならないのだ。

 それ以外にも海外との協力運用とか色々あるのだから、本当に足りないのである。



 元々術師はおろか術者も少ないのだ。

 その上更に神秘省の通常業務として定期的な危険地域の見回り等、色々面倒だったり厄介な仕事も沢山あるのだ。

 その神秘省の人員を増やす為に、潜在的に霊力という霊的な存在と戦える力を持った人間を選抜し、教育しなくてはならない。



 霊的な存在に相対する為には、国家試験を合格し、その上で寮生活しつつ一年間の講習を受けるのが必須となった。

 勿論、抜け道はあって、講習を受けなくても国家資格を得られるルートもあったりする。



 更に幹部養成には元々あった術師や術者の為の学校を改造し、試験を受け、合格した一般人を一人前の術師か術者に育て上げる事になった訳だ。

 元々高等部は全寮制だったので、高等部から一般人を受け入れ、併設されている大学を卒業した時点で、国家試験を突破した者は講習を受け、能力に依って上級職に就ける。

 一年間の講習を受けただけの人達とは待遇が違うのは確かな様だ。



 これも一応抜け道はあるらしい。

 術師や術者の家系の特徴として、凄まじく強い能力を持って生まれたら、現当主が後見人になって、その能力の高い子が幼くても当主に任命される事がある。

 当主に成れるほどではないが優秀な能力持ちは、適性があれば幼くても任務に駆り出されたりするから、それ対策だろう。



 そして私、伽儀理 瑠迦(かぎり るか)が高等部に入学する年に、一般人たちが入学する事になったのだ。





 変わるとは言ったが、もしかしたらそう変わらないのかもしれない。

 何せ一般枠から入った人達の中で、先祖代々術師の家系の人間に勝る人間がどれだけいるか……



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