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矢印の先に
深夜の住宅街で、街灯に照らされたアスファルトにガムテープを貼り付けている少女を見かけたら、目を留めないはずがない。
ましてやそれが、片思いの女子であるなら。
僕は、コンビニでアイスを買ってきた帰りだというのに、気付けば物陰から彼女の行動を覗き見ていた。
彼女は、路上にガムテープで矢印を書いていた。
一つ作り終わると、次の街灯の下へと行って、また矢印を作り、そして角を曲がって姿を消した。
少し間を置いてから、そっと角の向こうを覗きに行く。
だが。
「あ!」
振り向くと、僕の背後に彼女が立っていた。
気まずいので、僕から話しかける。
「な、何してるの?」
「輪廻ごっこ。終わるまで、ぐるぐる回るの」
つまり一周回って来たのか。
「ねぇ、それなぁに?」
彼女は僕が手に持っていたコンビニの袋を指差した。
アイスはすっかり溶けてしまっていた。
でも彼女の目は輝いていた。
「食べてもいい?」
「そんなんで良ければどうぞ」
彼女はアイスの袋を開けて、棒を取り出す。
「当たりだ!」
夜の街灯の下で、僕と彼女は二人で笑い合った。